筒井康隆のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「まずはコンパスが登場する。彼は気がくるっていた」
こんな一文で始まるこの小説は、あらすじにもある通り文房具たちがイタチの星を侵略する三章構成物語。
宇宙船の乗員である文具たちがどのように気が狂っているかを描写した第一章「文房具」。とある人物(?)の視点によって描かれた、イタチたちの星クォールの歴史を詳細に綴った第二章「鼬族十種」。そして戦争の様子が様々な視点によって描かれている第三章「神話」。
内容は圧倒的であり、質量を感じるほどに緻密。読み応えのある大作。常軌を逸する濃密さ。
文房具たちのキチガイっぷりと鼬たちの歴史、そして両者の歴史が、1ページの大半が文字で埋まるぐらいびっしりと。特に第二章にあたる「鼬族十種」は、実際の地球の歴史をなぞるような流れが延々と書かれているが、これがだいたい中世の封建制度の頃から第二次世界大戦ぐらいまで、実際の歴史とは微妙に形を変えて数百ページにわたって続いている。
各章、同じ物語であるというのに、まるで別種の小説を読んでいるような気分に。それだけのボリュームがある物語だった。
その上、色々な意味でやりたい放題。実験小説という表現に偽りはない。
句読点や改行が極端に少なかったり、画像が挿入されてたり、ホチキスが飛ぶシーンを文章のレイアウトで表現したり、改行なしで唐突に場面(視点)が変わったり、挙句の果てには著者自らが登場したり。本当にやりたい放題。
それだけに読む人を選ぶ。万人には受けいれがたい。
だがそれがいい。 -
Posted by ブクログ
筒井康隆作品はもっと沢山読んでる気がしてたんだけど
実は「男たちのかいた絵」と「時をかける少女」、それから以前レビューに書いた「家族八景」しか読んだ事がありません。
何で読んでると思ってたんだろう??
好きだから?(笑)
愛のひだりがわ、というと昼ドラのタイトルか何かという気がしてしまうんだけど、
左手の不自由な「愛ちゃん」と、いつも愛ちゃんを守るように左側にいてくれる心の優しい人たちの、愛ちゃんのお父さんを探す長い旅に出る…という物語。
途中で色んな災難に見舞われ、そのたびに結構思い切った行動で乗り切っていく愛ちゃん。
その精神力の強さには脱帽です。
時々「ちょっとそれはやりすぎじゃ…」
と思っちゃうところもあったけどw
「ファンタジー」を現代に置き換えるとこういう事になるのかも。
そう、これは100%のファンタジーです。
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Posted by ブクログ
WEB本の雑誌「作家の読書道」で貴志祐介さんが紹介されていたのを見て興味を持ち読んでみました。いや、もうすごいとしかいいようがない。「読む人をかなり選ぶ」という書評を大分見かけましたが、『今読んでる本、文房具とイタチの戦争の話なんだ!』と言われてあっけに取られない人はそういないと思います。しかも『文房具はみんな気が狂っていて、イタチの歴史は共食いと放屁で・・・』なんて言った日には、「…あんたそーゆーの好きよね」の一言で片付けてしまわれる悲しさに出会えます。いや、確かに大好物ですが。そんなんで中々人には勧めにくいのですが、我こそは大丈夫!むしろ好物だ!!と思う方は是非挑戦してみて下さい。久々に絶対映像化は出来ないぞとゆうか映像化してもこの面白さは絶対表現できないぞと思える純粋な「小説の面白さ」を存分に味わえる作品でした。・・・いや、これが「純粋な」小説かどうかはかなり疑問ではあるのですが。ただ、厚さ以上に時間がかかりますので(文字の量が半端ない)お時間のある時に。
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Posted by ブクログ
97年までの作品はそれこそ全部読み尽くした筒井好きだったが、その後はぷっつりだった(満足してしまったのだ)。最近、筒井の名前を(時評含め、パプリカ、時かけetc)聞く事が多く、また読みたくなって、買った。
それぞれ何時ごろの作品か明示していないが、ほとんどは読んだ記憶があった。そういうものは冒頭の3行で思い出せた。筒井は、どれもが筒井の文体なのに、作品だけの文体がある。すごさだな、と思う。
『下の世界』の最後の一行に、ガツンといかれた記憶を思い出した――いまでは、トオルをまるで自分みたく感じる。『走る男』の、オリンピックの事務員に以前感じた索莫としたやるせなさを、「こうならないように時代をどうにかしよう」と前向きに捉えられるのは、以前に読んだ10代の頃限定の特権だな、と思った――このやるせなさに、いまは暖かみすら感じる。
あの頃の自分の一番、はふたつあった。『わが良き狼』と『佇む人』だった。
涙が出た。感想は書けない。10年後に、もう一度読もうと思った。
6年ほど前か、高校生の頃読んだ時、分かったつもりになっていた事が、今度は「しっかりと」、「まだ」分からないと感じられた。掴めないなりに泣かせる(6年前と同じく)ものがあった。
小説には、ワインと同じで、読むべき時があると思う。
この2つの作品を、本当に味わうには、どこか若いな、自分、と思えた。
僕は、筒井でよく笑ったのとたぶん同じくらい、よく考えて、よく泣いた。『懲戒の部屋』で怯えて泣いたし、『霊長類、南へ』で茫然として泣いた。『俗物図鑑』でも感動で泣いた。これは変だと思うが、ともかくビル屋上に孤立し、最期の時まで、全くもってよくわからない世間に立ち向かいながら、屹立して死んでいく俗物の姿に泣かされた。
『七瀬ふたたび』や『旅のラゴス』でも、やっぱり泣いた。リリカル筒井と言えば、長編ではこのふたつだと思う。
自分が筒井に、そのリリカルを銘打った短編集で何を求めたかというと、20も半ばになって、でももう一度泣かせて欲しかったのだ――そしてこの短編集は、この上なく、期待通りだった。