筒井康隆のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
不思議と引き込まれる怪作
知人からの推薦で購読。夢中で読み進めた。
「読めるんなら読んで見ろ」と威嚇されたような初印象。
実際に読みづらい。しかし、引き込まれる奇妙なテンポがある。
作者の文章力か自分が波長があったのが良かったか、両方か。
三章は特に読みづらいながらも、視点などが切り替わる前後が支離滅裂とは思えないし、前者が大きいだろう。
作者の自己主張も同様に直前の展開、作者の自己投影物である文房具の軌道と象徴の反芻も兼ねている。
一方でこれは賛否両論と言われれば確かに納得である。
一章、二章とカリカチュアに笑い、あるいはヒヤリとしていると
三章で耳元にまで接近された作者に息を吹きかけられたような思いをした。恐ろしい。
全三章を通して虚構と現実の心理的距離を縮める、明確な誘導レールが引かれており、
読者へ拳をたたき込みたい魂胆を感じる。
三章の作者要素は蛇足という声も分るが、文房具たちの弔いも兼ねた現実への重ね合わせの総仕上げであり、
無いと雰囲気から別物になってしまうだろう。
文房具という身近な道具をチョイスしたのも的確である。
印象的なシーンは、人生の虚無感の両極と言える日付スタンプとナンバリングの結末。
一瞬にして映画的な鮮やかさが目に浮かぶ。その直前の鋏の酔生夢死、「真理」を知った画鋲の狼狽といい、笑えない。
あの集団において優しすぎた紙の楮先生の、予想外に非暴力で、それ故に限りなく残酷な最期!
そして彼の儚い願いを目にした上でのラストシーン!
冒頭で自己に苦しみ泣いていたコンパスが、しかし無言で次世代を残して去り、
後には何に繋がるかも描かれない夢がその次世代から生まれる。美しすぎる。 -
Posted by ブクログ
筒井康隆作品との出会いは、中学生の時のNHK少年ドラマシリーズの「タイムトラベラー」。原作は「時をかける少女」。やはりファーストコンタクトしたテレビドラマの方にイメージが固定されがちで、その後に読んだ文庫本からはあまり感動を得られなかった記憶がある。しかし、他の文庫本を読み進めるに連れて、どんどん筒井ワールドに引き込まれていった。
今回の本では、今まで知らなかった、というよりも読者が知り得なかった情報、つまり制作サイドの貴重な情報が得られた。これまでも制作関連情報は各種雑誌の特集・あとがき等で断片的に公開されてきたが、これだけ多くの内幕が判ると、更に作品の理解度が高まる。
作品リストは、これまで何度も形を変えて公開されてきたが、今回も出版した単行本・文庫本等を中心にまとめられているが、作品一つ一つを中心に纏めたリストをそのうち自分で作ろうかと思っている。ただ、その前に十分に調査して無駄な作業をしないようにしよう。 -
購入済み
いやあ爺ちゃんカッコいいなあ。これに尽きる。
理不尽な相手には断固として引かない。腕も立つが、何より度胸が据わっている。
あまり使われなくなった言葉だが、硬骨漢という表現がぴったりだ。 -
Posted by ブクログ
実はわたし、筒井康隆って『時をかける少女』しか読んだことがないのに、なぜか手に取って一気読み。面白かった〜。
黎明期のSF話は、たぶん星新一や小松左京のほうからは読んだことがあるけど、筒井康隆視点だといっそうハチャメチャ。筒井が会社をやめて自分のオフィスを持ったとき、その向かいのビルにある会社に偶然、眉村卓が務めていたとか、神話的すぎる(笑)
凄まじい執筆エネルギーと速筆ぶりにも驚かされた。あと、語りの面白さ。何度も声に出して笑ってしまった。これに関しては日下三蔵さんの引き出し方のうまさと、絶妙なまとめ方のおかげでもあるのでしょう。私にとっては、筒井康隆への入り口になりそう。最低限、48億と、只野教授ぐらいは読まなくちゃ。あと、竹書房から出た短編集と。 -
Posted by ブクログ
言葉を噛んでしまう。言い間違える。同じ事を二回言いがち。物覚えが悪い思い出せない。忘れ物はするなといってもする。この症状はすでに自覚しており、ああ家族や他人様の迷惑にならぬ様留意しよう。とは言えども現実は容赦無く私に試練をくだす。ままならぬ。そこで怒り出すと尚立場が危うくなる。はたから見れば八つ当たりして大人気ないじゃん誤解だ己に腹が立っているんじゃと言い訳も通用しなくなり冤罪じゃ私は無実なんじゃと弁解しても頑固爺の烙印を押される顛末を迎えようとしている。ならば、この本を読んで処世術の一つとして美学を確立しよう。さすれば、おじいちゃんという暖かさが伴う受け皿が待っているかもしれぬ。なに決して忖度ではないぞ勘違いするな馬鹿者。おやおやまだまだ未熟。
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SF短編を基調とした何でも短編
筒井康隆は初めてだったが、短編集ということもあって、彼独特の世界観を存分に楽しめた。主人公がおかしいかと思えば実はおかしいのは世界だったり、おかしな世界観でありながら実はただの現実だったり、冗談かと思えば本気だったり。冒頭からの怒涛の掌返しに、思わず舌を巻いた。秀逸なSFの世界観にはため息をもらし、ちょっとした皮肉や子供らしい可愛らしさもには頬を緩め、淡白な狂気に触れるとページを繰る手が止まる。それでいて、どの物語もオチは一貫してキレイ。十人十色の筒井康隆アンソロジーだった。