筒井康隆のレビュー一覧
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本書が単行本で出たときに買ったのだが、積ん読になったまま幾星霜。
宇宙を航行している大船団がある。その一宇宙船に船団司令部より指令が下る。使命は惑星クォール全居住民の殲滅。
鼬族の人口爆発により彼らによる犯罪が頻発。特に凶悪な鼬族約千名を3度にわたり惑星クォールに流刑にして約千年。鼬族は惑星クォールで文明を再び発展させ、刑紀九九九年に到り、「大空からの殺戮者」が襲来する。
そういう話なのだが……
なのだが……
まずコンパスが登場する。なぜなら、指令が下る船というが文具船だからである。船長は赤鉛筆で、副船長がメモ用紙、繊維じゃなくて船医は紙の楮(こうぞ)先生だったりする。文房具は生 -
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文壇をテーマにした小説らしいということで読み出したがすでにそうしたものには『大いなる助走』がある。うろ覚えで恐縮だが新進作家が文壇の俗物どもにいいようにされて最後にぶち切れて文壇皆殺しをはじめるといった話でなかったか。筒井康隆ともあろう者が同じようなものを書くとも思えぬ。と読み出してみると似たエピソードが導入となっている。つまり私小説を書いている同人誌作家が文壇の前衛作家を狙って爆弾事件を起こすというのが冒頭。しかし本書のテーマは「文壇」ではなく「文学」なのだ。
そこで書評の導入もこんな風に路線変更。
私は週に1回だが、少々遠方に仕事に行っている。これまで自家用車で行っていたが、諸般の -
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本作は文学的実験である。しかし同時に娯楽小説でもある。実験の主たる手法は反復。
「おれ」は美術評論家で、母親と妻、幼い娘、出戻りの妹とその娘と先祖代々の家に住んでいる。ストーリーは「おれ」の本が売れたり家を建てたり画家と付き合ったりという美術評論家の日常であるが……
「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」と妹が言いにくる。とばっちりを受けたら大変と家族を奥の部屋に避難させ、「おれ」は二階の窓から様子をうかがう。すると家の前ではやくざと大学生が喧嘩している。喧嘩がエスカレートして死人が出たところで、再び「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」。とばっちりを受けたら大変と家族を奥の部屋に避難させ、 -
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筒井康隆の傑作の1つである。登場人物の自我からの脱出の顛末。自我同士の絡まり合いとぶつかり合いによる、時空がねじれ合うドタバタなのに、不思議と最後までするすると読めてしまうのはタイトルにも有るサンバをはじめとした音楽的リズムの賜である。20年ぶりに再読したが相変わらず新鮮。自我により世界が想いのままにねじれのたうつのは、映画「マトリックス」「インセプション」の元ネタになったのではないかとの説もあるが、無いだろう。むしろ下地に有る夢野久作や、どっちが下地かわからないつげ義春の作品が時々フラッシュする。最後の論文のパロディがやや退屈と思ったところで、「これからがパロディでなく、これまでがパロディで
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表紙が素敵だったのとタイトルに惹かれて購入しました。
「愛のひだりがわ」というタイトルから、”愛”という
概念を主軸にしている内容と想像していたのですが、
とっても単純な意味でした♪
(勿論、概念の”愛”も大きなテーマの本です。)
そして、「愛のひだりがわ」の意味が分かった瞬間、
新幹線で読んでいたにも関わらず涙が我慢できませんでした。
タイトル一つでもこんなに意味があって、心を打たれるのは
さすが筒井先生です。本当に言葉が大好きなんだと思います。
今のままでは将来の日本は作中で描かれている様な
日本になるのだと思います。そうならないように…子供が
こんなに苦労したり悲しんだりする日本にならな