無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
本作は文学的実験である。しかし同時に娯楽小説でもある。実験の主たる手法は反復。
「おれ」は美術評論家で、母親と妻、幼い娘、出戻りの妹とその娘と先祖代々の家に住んでいる。ストーリーは「おれ」の本が売れたり家を建てたり画家と付き合ったりという美術評論家の日常であるが……
「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」と妹が言いにくる。とばっちりを受けたら大変と家族を奥の部屋に避難させ、「おれ」は二階の窓から様子をうかがう。すると家の前ではやくざと大学生が喧嘩している。喧嘩がエスカレートして死人が出たところで、再び「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」。とばっちりを受けたら大変と家族を奥の部屋に避難させ、「おれ」は二階の窓から様子をうかがう。すると家の前ではやくざの抗争だ。ついにパトカーが来ると、再び「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」。とばっちりを受けたら大変と家族を奥の部屋に避難させ、「おれ」は二階の窓から様子をうかがう。すると家の前では下っ端相撲取りが喧嘩している。喧嘩がエスカレートして死人が出たところで、ようやくループから抜け出して次の展開に進む。
といった具合。反復というのは音楽では古来当たり前の技法だった。ソナタ形式では提示部を反復する。というのは主題をすぐには覚えられないからである。展開部で主題は様々に変化を施され再現部で再びもとの主題がもとの形で戻ってくる。現代の芸術でも美術ではミニマル・アートがあるし音楽でもミニマル・ミュージックがある。ただ、本書でなされている反復はクラシック音楽的なものではなく、ジャズのアドリヴの意匠のようにも思える。演劇でも反復の技法があるし、反復のないダンスなんてあり得ない。ところが文学では反復というのは忌避されるだけだった。この「反復」については『創作の極意と掟』のなかで入念に解説されていて、先頃映画化された『All You Need Is Kill』などゲーム小説への言及もある。
作品ではこの反復自体が魔術的リアリズムとして機能する。さらに死んだ父は思い出の父として平気で作中に登場するし、幼くして交通事故で亡くなった長男も思い出の中で成長して成人となって登場する。これも繰り返し登場するという「反復」でもある。浮世絵の始祖といわれる岩佐又兵衛のことを調べるために彼の住んでいたあたりに直接行ってみようと思い立てばそのまま万治三年の江戸に行ってしまう。
表紙のフクロウは要所要所で顔を出す、これも反復のひとつの形態である。バーニーガールは表紙には2人しか書いてないが10人ほどいるコロスで途中で出てくる(あるいはこの2人は歌手になった「おれ」の姪と娘かも知れないが)。古代ギリシャ劇のコロスつまりコーラスの語源となったものである。舞台に上がって状況を説明をしたり注釈したり観客に語りかける。これを普通の小説的の記述の中でやってしまうのだ。コロスもまた反復のひとつの技法である。
反復のリズムがギャグを生むこともあるし夢と現実の混淆を生み出しもする。しかしこの反復の律動に身を委ねていると、ああ人生ってつまらない繰り返しだなあなどといった想念も頭に浮かんでくる。ヴァニティとは、空虚、むなしさ、無意味といった意味で、転じて虚栄心の意味もある。踊る空虚。
Posted by ブクログ
コピー&ペースト小説、漫☆画太郎小説、はたまた何度も見るが微妙に細部が違う夢小説、サザエさん小説、走馬灯小説、エンドレスエイト小説 形容できません
多分、真面目な読者程序盤早々に面を食らって本を閉じるか呆れると思うけれど、よく耳にする日本音楽を頭に浮かべて欲しい。恐らく同じ単語は繰り返されているし、何なら背景に流れる音楽は何周か同じフレームが流れているはず。そのガワを文学に取り入れたのがこの作品だと思う
物語、ストーリーテリングより技法運営を見る本、だろか。
何か20年後くらいの僕の頭の中、見え方はこうなっているような気がして。そんなこと考えながら読んでいたら本編339頁に4時間もかかりました
もう少し歳を重ねたら何か違う物が見えてきそう(気付けそう)
話筋とはまったく関係ないかもしれないがスルメ味がまだ隠されているような豊かさがある
それが御大の策略なのかはわかりませんが…
Posted by ブクログ
実は、筒井康隆さんの本はこれまで読んだことがなくて、これが初めてだった。
はじめ読み始めて、
なんだこれは?
って?マークばっかり浮かんでたけど、
特に素晴らしい物語があるわけでもないのに、
繰り返しのリズムの中で少しずつ変化していく話がその先どんな風に進むのかが気になってしまって、夢中で読んだ。
突き刺さるような言葉とか、いろいろな人間模様とか、深い感情の洞察とか、
そういうのがあるわけでもないのに、リズム感が楽しい。
こんな小説もあるんだなと感心する。
ただ、同じような作品は二番煎じ的な感じになってしまって、書けないのかなとも思う。
解説に、同じような繰り返しに見えて、少しずつ変化していくのは、
音楽ではよくある手法と書いてあったけど、
なるほどだから楽しいのかと妙に納得させられた。
Posted by ブクログ
まさに吃りの小説。何度も何度も同じ文章が繰り返されるが、繰り返される度に少しずつ主人公の心情やら他人に対する印象やらで新しい情報が盛り込まれ、徐々に描かれている状況が理解できるようになるような気がする。
繰り返されて来たエピソードたちが一堂に会す瞬間は、不思議なカタルシスがある。
白いフクロウや兵隊、匍匐前進や鳥の羽ばたく姿など、多分に示唆的なキーワードが多く出てくる。「夢」というキーワードも重要。それらを丁寧に紐解くことはとても興味深いのだと思う。読み進めながらだと、同じ言葉の繰り返しでだんだん頭がボーッとしてくるので、あまり考えられなかった。
同じ文章をひたすら読むという行為に途中かなり辟易したが、それでも最後には「この小説は人生そのものを描いているのだ」と思わせるのは(解説込みで)さすが筒井康隆と言ったところ。物語として面白いかと聞かれると、返答に困る作品。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
小説・文芸
ビジネス・実用
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸