筒井康隆のレビュー一覧
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かなり前に書かれた筒井さんのこの小説執筆論が、令和の時代に小説家になろうとする人間に、とても参考になる。
昨今、小説投稿サイトの増加などに伴い、小説を書く人は激増している。新人向けの小説コンテストも多く、規模の大小を問わなければ、投稿できるコンテストは毎月十件くらいあるのではないか、と思う。
そのような環境の中で、短編小説のあり方はまさに多様化していて、筒井さんが言う「小説は自由だ」との主張は説得力を増している。
この本で紹介されている事例は海外作家のものが多いがゆえに、短編小説における様々な試行錯誤の事例が、テーマ選定、文章の構造の斬新さ、という視点に偏っていることは否めない。
令和時代における国内短編小説のカンブリア爆発的多様化は、日本語の特性をフル活用した文体の多様化に負う部分が大きいのではないかと思うが、そのような事例の紹介はない。
とはいえ、「何を書くか」「どう書くか」のそれぞれの軸において、小説はなんでもありの自由なものである、という主張はそのまま流用可能である。
つまり、この本の講義の内容は、具体例としては少し古いかもしれない。だが、短編小説論としては最前線に返り咲いているのだと思う。 -
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筒井康隆のブラックユーモア小説。架空の大学「早治大学」文学部英米文学科の唯野教授を中心とする露悪的な大学組織のドタバタ劇と、唯野教授による文学理論の講義が交互に進んでいく。
文学理論目当てで手に取ったが、筒井康隆のナンセンスで下品なユーモアが面白くかなり自分好みの内容だった。
文学理論の方は、印象批評、新批評、ロシア・フォルマリズムまでは簡単だし、いかにも文学理論らしくて面白いのだが、第4講からはまるきり現代思想の話に。門外漢ゆえ分からないが文学理論ってこんなに思想にベッタリなんだろうか。ちなみに現代思想の解説としては、他の新書や一般書と比べてもかなり分かりやすいと思う。 -
購入済み
面白かった
面白かった。
前作では、人間の心理を描写するための表現上のツールとして
テレパスが使われている印象だったが
今作では、打って変わって、
能力者バトルのような活劇
超能力者の葛藤、超能力者同士の協力と対立などがあり
とても面白かったです。 -
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ネタバレ素晴らしい読書体験だった。
幼少期に生殖機能を暴漢に奪われ、煩悩を知らずに育つ貴夫と周囲を描いた、一族の栄枯盛衰ストーリー。
古風な語彙が非常に多く、最初は戸惑うが、段々とその文章に引き込まれてこうあるべきだと錯覚させられる。日本語の奥ゆかしさと、貴夫の聖人伝が融合して、難解だが居心地の良さを与えてくれる。
終盤の仇敵を赦す場面などは、キリストそのものではないか。神々しい貴夫の姿が私に想起させられた。貴夫が作中で教祖と揶揄される、そして現実となるのは無理のないこと。
貴夫一族がどのような未来を辿るのか、私の妄想は膨らむばかりである。 -
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ネタバレモナドの領域同様、こっちも御書印巡りのときに買ったやつだったはず。モナドよりだいぶ昔のはずだが。
こっちはSF短編集だった。小説の背景設定を見ると、だいぶ昔に書かれたものっぽくはあった。1964年から78年の作品。
・いじめないで
出力が穴開きテープというだいぶ古いタイプの人工知能と、世界崩壊後に唯一生き残った男性がやり広げるドタバタ喜劇というか。酒をかけられたり、部品を破壊されそうになり怯える機械と、どんどん酔っ払っていく男性。そして最後には全部埋もれて終わり。登場人物が二人というミニマルな話。
・しゃっくり
タイトルを見ただけでは内容が思い出せなかったが、交差点にいた主人公だけじゃなく、世界中で10分間が繰り返される話。だがハルヒとかだったらメインキャラだけが記憶を保持しているだろうが、今回は全人類が記憶を保持しているので、10分間が永遠に繰り返され、その間に死ぬ人は生き返り、頭が狂っていく。主人公が、ループする10分間を使って本を何冊か読むというのが、賢いけど違う意味で狂ってそう。
主人公も狂いそうになったところで不意にループが終わって、日常に戻っていく。
タイトルのしゃっくりが何かのきっかけだったのかとちょっと読み直したけど、特になかった。
・群猫
地下の地下の地下にある漆黒の下水道で生活している盲目の猫たちやワニがテレパシーを会得して、猫たちがこれまでワニに食い散らかされてきた復讐を遂げるだけの話。SFっちゃあSFだが…
・チューリップ・チューリップ
なんでチューリップなんだ?タイムマシーンを作ってしまった男性が、ちょっとしたズレで4人に増え8人に増え、16人になり…
過去に戻ったら宇宙が膨張しているから過去の世界では現代の体だと巨人になってしまっているという解釈は面白かった。が、終わりが意味わからんかった。
・うるさがた
これもまた人工知能、というか機械に命令される話。途中まで二人、後半は三人だがやはりミニマル。小さいSFが面白いわー。人の気持ちを理解しない機械との漫才で、最後の終わり方もめっちゃ良かった。
・やぶれかぶれのオロ氏
こっちもまた機械との漫才状態。人間の報道は意思が入ってしまい、信用できないので機械の報道陣だけを呼んだ結果、ちょっとした発言の矛盾を突っ込まれまくり、更にその矛盾に耐えられなかった報道ロボットが次々に爆発していき、最後の機械が壊れたあとに主人公もキレすぎて死んだ。
・堕地獄仏法
思ったより長かったのに終わりが突然だった。打ち切りかな。
固有名詞がやたらと実在のアレコレに近いし内容もなかなか危うい、筒井康隆節だなぁ。
最後は主人公がなにか問題解決のための物語を書いたりするわけではなく、拷問を受けるところで終了。
・時越半四郎
時をかける男性!
やたらと現代感を持った侍、しかもテレポートまでできる江戸SF!なのに最後はテレポート先の座標に鳥がいて、心臓部分にめり込んで死亡という悲しさ。デートしてた姫がかなりのトラウマを被ってそうで哀れ。
・血と肉の愛情
ミノタウロスの皿めいたお話。この星に不時着した異星人の人が主人公的ポジションかと思いきや、途中でサラッと食べられる。愛も食欲も同じ、「食べちゃいたいほど可愛い」を地で行く星の人たち。
・お玉熱演
選ばれしブサイクであるお玉さんが未来人にもてあそばれて、猿回しのようなポジションで動画を撮られる、なんか今で言うyoutuber感がある。
・慶安大変記
予備校と大学生の戦争が勃発。筒井康隆的展開がガッツリで、もうすぐに血みどろ展開になる。ちょっとお互いを挑発しただけでどこからかポンポン銃器が出てきて予備校生も大学生もどんどん死ぬ。
あと、予備校を大学に昇格させるのを予備校生がしれっと要求してたりする。
なにより、全部終わったあとに主人公が普通に予備校に入って勉強を続けるのがまた良い。
・公共伏魔殿
悪の組織NHKを揶揄ったお話。放送センターの地下には隠された施設があり、ディレクターが好き勝手やってたり、一発屋タレントが飼い殺しされていたり。NHK、許さん!
・旅
桃太郎や西遊記を追体験するバーチャルアトラクション… のように思えるが、実際は犯罪者の大脳を取り出し、そこで半永久的に疑似体験をさせる刑罰。怖すぎるけど、割とみんな好きなことできてるから刑罰になってるのだろうかと思った。
・一万二千粒の錠剤
一粒飲めば一年長生きできる錠剤を100粒、120人の20~25歳のできる若者にプレゼント!
ただし名前は一般に広く公表するし、錠剤はこの12000粒しか存在しないしもう作れない。
なぜ公表した…
そりゃ血で血を洗う闘争になるよ。
・懲戒の部屋
徹子の部屋かな?
電車内でのちょっとした騒動から痴漢の濡れ衣を着せられた上にどんどんえらいことになっていく、女性専用車両などもなかったはずの頃に書かれたリアルすぎる短編。あまり笑えない。
・色眼鏡の狂詩曲
突然作者が登場。海外の人が日本を見るときの色眼鏡vs日本から海外を見るときの色眼鏡。
中国人があるある言ってるあるのはこの頃からあったんあるだなぁ。ネット時代の今でもそんなに変わってないんだろうなと思う。
解説にもあったが、今読んでも、時代背景が古い感じはするように思うときはあるけど、ネタとして普通に楽しめる。筒井康隆作品だからなのか、SFだからなのか。
と言っても、昔過ぎて言葉遣いが違って読めないとかじゃない限り、内容を理解できなかったりネタがわからなかったりというのはそうそうないような気もした。 -
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ネタバレいつどこで買ったか全く記憶にないけど、たぶん御書印もらうときにテキトーに買った本のひとつだろうな。
筒井康隆作品を読むのはめちゃめちゃ久しぶりなので感覚を忘れていて、最初にバラバラ死体が出てきて、パン屋で発見された部位と同じ形のバゲットが流行るという謎めいた展開になり、さあ誰が犯人なんだろう…とドキドキしながらページをめくっていたところ、パン屋の常連だった教授が突然全知全能の神に憑依されるという展開で、あっ、そういえば筒井康隆作品だったわ、と気づいたと言うか思い出したというか。
その後はもうずっと筒井康隆感。人々がとにかくGODに翻弄され、そして全てはGODの予定、いわゆる「モナド」の通り。
モナドというとどうしてもゼノブレイドを思い出してしまう。意味合いも同じだった気がするけどあっちは武器名か。
メタ要素も出てきて、平行世界の説明にかこつけてこの世界は小説だとネタばらしするわ、時をかける少女の展開と同じだとか言い始めるわ、キャラクターがもう出番がないことを悟ったり、とても良い。
関わった人たちの記憶を全て消してGODも消えるが、なぜかダイヤモンドだけ分裂しているという、また別世界と融合してしまったということかな…
最近普通の小説ばかり読んでたから、逆に新鮮で一気に読み終わってしまった。
しかし帯にも「おそらくは最後の長編」と書いてあるが、筒井康隆さんも1934年生まれ、もう89歳か… 本当に最後の長編になりかねんな…
同様にいつ買ったか覚えてない短編集もあるから続けて読んでみるかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ摩訶不思議。滅茶苦茶やん。
そう思って、はじめの方は読み進めた。
さすが奇書と言われるだけある。
小説界のラーメン二郎と誰かが書いていたが、言い得て妙。それくらい濃厚。
心して読んで欲しい。
単なる読書ではなく、筒井康隆への挑戦となる。
執筆に6年をかけたらしく、終盤では他の創作の依頼は断ったらしい。筒井康隆の集大成的作品とも言われている。
ーーーあらすじと感想ーーー
第一章 文房具
宇宙船団の中のひとつに、山ほど文房具が乗っている文房具船があり、文房具たちは全員どこか狂っている。そしてP20までに大学ノートは死に、ダブルクリップが自殺する。
は?
自分は大事だと思うところや物語のキーになっているところに線を引きながら読むタイプだが、この本に関しては、見返してみると自分でも何故そこに線を引いたのか全くわからない。
少しだけ登場人物(文房具)とその性格を紹介すると
自意識過剰なコンパス
性欲が抑えきれない糊
誰彼構わず喧嘩して殴られるホチキス
精神崩壊を起こしている輪ゴム
自分を天皇と思っている消しゴム
初老ナルシストの下敷き
大作家である三角定規兄弟の兄
兄への嫉妬に狂う三角定規兄弟の弟。などなど。
文房具たちは、どこまで行くのか、いつ帰れるのかも分からない宇宙航海のせいで、一人残らずみな気が狂っていると書かれている。閉鎖的な文具船の中ではそれが増幅され、結果として狂っていることが正常という逆転現象さえ起こっている。
なんとか航海を続けていたが、ある時中央船団から『惑星クォールの全住民殲滅』の指令が届く。
第二章 鼬族十種
惑星クォールの歴史物語。これがまた重厚で、二章だけで世界史の教科書を読破した気分になる。参考書を読む時のように何度も何度も、前ページの地図や家系図を見直すことになる。
惑星クォールに住んでいるのは流刑されてきた鼬族の子孫で、原始的な状態から文明社会を築き上げていた。核兵器すら開発する。
血塗られた歴史は世界大戦へと行きつき、最終的には核戦争が起こってしまう。それはちょうど文房具船が住民殲滅に来襲したのと時を同じくしていた。
第三章 神話
文房具対鼬の戦争。
目線が何度も切り替わり、空間や時系列の移動も激しいのだが、読み応え抜群。バトル小説。
第1章、第2章を読み終えたご褒美だとも感じた。面白い。
そして賛否両論を引き起こした箇所が出てくる。僕は映画『大日本人』を思い出した。面白い人はここに行き着くのかとおもった。
最後のセリフも最高だった。
筒井さん曰く
「第一章でまず、SF嫌いと、主人公にしか感情移入できぬレベルの者と、物語の展開だけを求めて小説を読む読者が疎外される」
「第二章で、人間がひとりも登場しないことがはっきりし、人間以外の者に感情移入できないレベルの読者が排除される」
「第三章で、通常のエンターテインメントの如く漫然と読んでいても筋は追えるとたかをくくった読者は作品から拒否されてしまう。あたり前だ。そんなに気軽に消費されてたまるか」 -
Posted by ブクログ
おびのりさんにお薦めをお願いしてもらった筒井康隆作品です。ありがとうございます!
紹介していただいたのはずいぶん前で、ずいぶん前に購入していたので、積読本に埋もれて探せなくて読むのが遅くなりました。最近、積読本をちょっとだけ片づけたのです。
キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた”富豪刑事”こと神戸大助が迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を…次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く”刑事もの”の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦した傑作ー文庫うらすじより。
主人公の刑事神戸大助はホテルオーナーの父である神戸喜久右衛門の財産を使って、難事件をお金をトリックに使って、じゃんじゃん解決していくという一風変わったミステリーですが小粋でとても面白いです。
時々、演劇を思わせるような演出場面があったり、ミステリーなのに笑いを誘うという筒井康隆氏の本領発揮のミステリーではないでしょうか。
特に最終話「ホテルの富豪刑事」は笑える展開が続きました。
文庫発行が昭和59年になっていますが、古臭さは全くありませんでした。
深田恭子主演でドラマ化というのも納得でした。 -
Posted by ブクログ
高校生の時に読んで以来の再読。当時は筒井康隆についてあまり知らない状態で読んだから、単なる哲学的なSFとして読んでしまっていたけれど、彼の他の作品をいくつか読んでから改めて触れると、壮大な実験小説なのだということがわかった。解説で池澤夏樹が書いているが、物語で神様を出すというのは、展開がなんでもありになってしまうから御法度なのだが、筒井康隆はこれをうまい具合に処理していて、破綻もなく(展開の後半でわかることだが、むしろ破綻を前提にして)小説を書いているようだった。同じく池澤は、このGOD以上の存在として、作者である筒井康隆を挙げていたが、結局GODはこの話が小説だということも知っていたわけで、完全に筒井康隆が優位というわけではなさそうに思える。だから個人的に、フィクションの枠を超えて、本当に神様を降ろしてしまったのではないかと思ってしまった。
確かに、こんな壮大なメタ/パラフィクションをやってしまったら、もう長編を書く気はないだろうし、書くこともできないだろうと思う。なんなら、過去の筒井康隆作品で扱われてきた不条理な世界観は、もしかするとこのGODが黒幕なのではないかと思ったり。
とにかく久々に読めて、とても良い読書体験となれた。 -
購入済み
お達者で何よりです
45年程前からの愛読者としては「昔の先生ならもっと短くまとめてた、もっと多次元の世界をSF的に描いてた」のではないかと想像してしまいますが、今回は先生の今が感じられて
、これも善きかなと思いました。「時をかける少女」は永遠に不滅です。 -
Posted by ブクログ
テレパス七瀬シリーズ第二弾。
超能力者は七瀬だけではなかった。短編を追うごとに次々と増えていく、超能力者たち。彼らは敵?それとも味方なのか?
家政婦として働き、孤独な超能力者として描かれた七瀬だったが、今作ではすでに別の仕事を転々としながら、身をやつしながら生活する。相変わらず、人の心が読めてしまうがために、のらりくらりと危機をかわしながら過ごす。
しかし残念なことに、世の中には、超能力をよく思っていない人達もいて、中盤から、能力者と、非能力者の戦いが始まる。
前作の日常風景から少し離れて、物語の規模が大きくなった気がします。パプリカとはまた違うテイストの世界観に、筒井康隆さんの才能、特に心理描写が色鮮やかで、書く上で非常に参考になりました。
三部作と言われておりますが、いったいこの話、どう続くのでしょうか。そんな不思議な読後感でした。