筒井康隆のレビュー一覧

  • 富豪刑事

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    おびのりさんにお薦めをお願いしてもらった筒井康隆作品です。ありがとうございます!
    紹介していただいたのはずいぶん前で、ずいぶん前に購入していたので、積読本に埋もれて探せなくて読むのが遅くなりました。最近、積読本をちょっとだけ片づけたのです。


    キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた”富豪刑事”こと神戸大助が迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を…次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く”刑事もの”の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦した傑

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    2023年02月27日
  • 脱走と追跡のサンバ

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    実験的な小説であるものの、最後まで読み通せるほどのおかしさや面白さに満ち溢れていて、今でも新鮮な、読み応えのある作品だった。
    「虚人たち」は小説という形式のなかでもがく話だが、今作は世界そのものから脱出しようとするわけで、筒井康隆ならではの世界把握があまりにも独特で、かつ的確。現代社会と適応しすぎたあまりに通時代性を失う作品はあまたあるが、この小説は現代のそれを正確に理解しているのにもかかわらず、そうなってはいない。筒井康隆の力量が十二分に発揮された作品だった。

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    2023年01月29日
  • モナドの領域(新潮文庫)

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    高校生の時に読んで以来の再読。当時は筒井康隆についてあまり知らない状態で読んだから、単なる哲学的なSFとして読んでしまっていたけれど、彼の他の作品をいくつか読んでから改めて触れると、壮大な実験小説なのだということがわかった。解説で池澤夏樹が書いているが、物語で神様を出すというのは、展開がなんでもありになってしまうから御法度なのだが、筒井康隆はこれをうまい具合に処理していて、破綻もなく(展開の後半でわかることだが、むしろ破綻を前提にして)小説を書いているようだった。同じく池澤は、このGOD以上の存在として、作者である筒井康隆を挙げていたが、結局GODはこの話が小説だということも知っていたわけで、

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    2023年01月17日
  • パプリカ

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    アニメ映画を観たくなって、先に原作を読んでおこうと。
    文章だからこそできるストーリーなのかなというのが感想なので、どんな感じで映画になったのかな。

    和製インセプションだなと思ってたら、インセプションの方がパプリカをオマージュしてるみたい。びっくり!

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    2023年01月08日
  • モナドの領域(新潮文庫)

    購入済み

    お達者で何よりです

    45年程前からの愛読者としては「昔の先生ならもっと短くまとめてた、もっと多次元の世界をSF的に描いてた」のではないかと想像してしまいますが、今回は先生の今が感じられて
    、これも善きかなと思いました。「時をかける少女」は永遠に不滅です。

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    2023年01月08日
  • 笑うな(新潮文庫)

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    人間観察が上手い作家さんなんだろうなぁと思った。
    風刺アニメやブラックジョークが好きな人に勧めたい。

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    2022年12月31日
  • エディプスの恋人(新潮文庫)

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    無意識のエディプス的傾向を母親=「彼女」側からのアプローチで智広に対して実現させてるのか、結局のところその無意識は智広側から膨れ上がってきていてその結果が「彼女」をこういうかたちの存在にさせているのか、、、とかを考えたりした。
    包み込むっていう意味での母性をSFっぽく体現している感じがしておもしろかったし、終盤に七瀬がどんどん現実の構造に際限の無い疑いを持つ不安定さを見せたことでおもしろに拍車がかかった気がする。

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    2022年12月21日
  • 七瀬ふたたび(新潮文庫)

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    テレパス七瀬シリーズ第二弾。
    超能力者は七瀬だけではなかった。短編を追うごとに次々と増えていく、超能力者たち。彼らは敵?それとも味方なのか?

    家政婦として働き、孤独な超能力者として描かれた七瀬だったが、今作ではすでに別の仕事を転々としながら、身をやつしながら生活する。相変わらず、人の心が読めてしまうがために、のらりくらりと危機をかわしながら過ごす。

    しかし残念なことに、世の中には、超能力をよく思っていない人達もいて、中盤から、能力者と、非能力者の戦いが始まる。

    前作の日常風景から少し離れて、物語の規模が大きくなった気がします。パプリカとはまた違うテイストの世界観に、筒井康隆さんの才能、特

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    2022年12月10日
  • 聖痕

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    ネタバレ

    聞き慣れない難読な単語が多く、注釈でそれぞれの意味が記されているがそれでは足りない程難しく書かれている。一つ一つ意味を確かめながら読む時もあれば、なんだかスルスルとその漢字が持つ空気感だけで意味を感じ取り読み進める時もあった。ラストに印象的に示されたスケープゴートがこの作品の主題であって、それを表す事に、ここまで詳細に1人の人生、貴夫の人生を書き連ねて行く事を果たして筒井さんの他誰ができるのでしょうか。性の根源を切り取られた男性、貴夫がどのような生涯を送るのか、読者として簡単に想像を細かに組み立てられる人は殆ど居ないと思います。ああ、そりゃこうなるよね、当たり前だよね、と読み進められるはずはな

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    2022年12月02日
  • パプリカ

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    映画『パプリカ』に、原作があることを本屋で知りましたが、読みたい気持ちを後回しにし続けてました。

    登場するキャラクターたちが、躍動感を持ちながら展開していく物語。その一方で、文字から映像に変えることの難しさを肌で感じます。

    夢と現実の区別がつかなくなる展開の話は、例えば『インセプション』という話がありますが、あちらは夢の奥へ奥へと進んでいく物語で、何となく似ている気はしますが、面白さの部分では、こちらとは全く違っていて、どちらも好きだったりします。

    『インセプション』の中に登場する夢の設定は、どちらかといえば、夢の中で建物を作り出すなど、理性的で、『パプリカ』の夢は、精神疾患に関わる話で

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    2022年11月20日
  • エディプスの恋人(新潮文庫)

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    七瀬さんに幸せになってもらおうと、作者である筒井さんは、本書に登場する「意志」の如く振る舞ったのだと感じました。
    人間の心理描写に秀でた作品とのコメントがあったのがきっかけで『家族八景』を読み始めた物語でした。七瀬さんの話は、いつもまでも続いてほしいという思いもありますが、ここで終了のようです。まだ続きも描けそうですが、筒井さんはどうお考えなのでしょう?
    しばらく、筒井康隆さん作品を読み漁るというマイブームは続きそうです。

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    2022年11月09日
  • 七瀬ふたたび(新潮文庫)

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    人の心を読むことができる七瀬さんを主人公にした小説。『家族八景』に続く二作目にあたる。前作では孤独な超能力者だった七瀬さんは、同じような能力を持った人たちに出会う。
    仲間はできたが、敵がいることもわかる。超能力者の根絶を目指す組織があるようだ。仲間との安住の地は、戦場へと変わっていく。
    ひやぁー こんな終わり方をしてしまうのか。
    さっそく、三作目である『エディプスの恋人』を読み始めることとする。

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    2022年11月07日
  • パプリカ

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    ネタバレ

    映画を一度見て、訳が分からず途中で見るのをやめてしまったのを悔いるくらい面白かった。こういう話だったのか。
    賢く美しくチャーミング、仕事熱心で欲望に忠実な敦子が魅力的に見えて仕方がなかった。好意を持った患者にだけちょっと行き過ぎた治療を施す、そのモラルの欠如も夢の中ならではで、自宅で秘密を共有した特別感もまたそこに加われば、親密さが増していくのも頷ける。ノーベル賞だって何だって手に入れる、この静かな自信と欲深さが何故か嫌みではなく、好ましいものとして映った。男たちが争わず敦子の意思を尊重し、本気で愛を寄せているからかもしれない。男女の愛というより、女神を崇拝するのに似ている。敦子であってもパプ

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    2022年10月20日
  • 富豪刑事

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    アニメの富豪刑事が3周してしまうほどとても面白く、原作も気になったので購入。

    アニメと原作では神戸大助自身、登場人物、設定など全く違ったので最初は戸惑ってしまい、少し読んだだけで放置しちゃったけど、改めてちゃんと読んだら「なんでこの面白さに気づけないまま読むのを諦めてしまったのだろう?」と思うほど楽しく読めた作品。

    78年に発行されたものだからかなり前の作品だけど若者の私でもするすると読めた。あっという間に読み終わっちゃったから寂しい気持ちになったけど、またクスッと笑いたい時に読もうと思う。

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    2022年11月09日
  • 誰にもわかるハイデガー 文学部唯野教授・最終講義

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    『文学部唯野教授』という小説で、小説に登場する唯野教授が授業をする場面が、都度都度登場し、ハイデガーの『存在と時間』についても第5講解釈学の授業で触れている。
    この授業の補講が本書になるのかな?ハイデガーの哲学を、それはそれはとてもわかりやすく教えてくださっている。『存在と時間』を読む機会がある人は、本書及び『文学部唯野教授』の授業を受けてから取り掛かるのが良いかと思われる。全体像をなんとなく把握することが、短時間でできてしまうことがすごい。

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    2022年08月18日
  • わたしのグランパ

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    「わたしのグランパ」筒井康隆。1999年初出。文春文庫。

    薄い文庫本で、文字が大きくて読みやすい。素晴らしい。なんにつけ文庫本はかくあるべしという文字の大きさです。

    筒井康隆さんは1934年生まれ。個人的にも30年以上読んでいる、好きな小説家さん。
    この2~3年小説書いておられるのかはちょっと分かりませんが。
    筒井さんの65歳くらいのときの小説が「わたしのグランパ」。

    東京の中流?サラリーマン家庭の中学生・珠子の家に、長く「旅行(刑務所)」に行っていた祖父が帰って来る、という話。

    一件疫病神に見える祖父だが、(実際にかなりアウトローな人なんだけれども)人としてマットウで、珠子のいじめを

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    2022年08月05日
  • 世界はゴ冗談(新潮文庫)

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    面白かった。御歳でこれらを書いたのはすごい。やはり筒井氏の短編は読み進められさせるというか、アイデアに圧倒されて表現方法にも圧倒されることが多い。一番面白かったのは『ペニスに命中』、最も印象に残ったのは『メタパラの七・五人』。メタパラ、は本当に凄かったというか、突然自身の足場がなくなったような不安感とフィクションに入り込んでいく不思議さ、ワクワクさがあった。ペニスに命中は単純に面白かった。ただただ文を読んでいるだけで楽しい。飽きなかった。

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    2022年06月02日
  • 邪眼鳥

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    主体が欲望の対象とであうことがないと亡霊になるという発想が面白い。
    タイムスリップなどのスリップが、ずれること、接地点をなくすことという解釈も言いえて妙だな

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    2022年05月28日
  • 世界はゴ冗談(新潮文庫)

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    筒井は久しぶりだけど、やっぱり異常に面白い。よくわからないところも含めて面白いのはなぜなのか。どれも好きだけど、「不在」と「小説に関する夢十一夜」が好き。昔の筒井っぽい「教授の戦利品」も。最後のウクライナのエッセイでしみじみ。

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    2022年05月13日
  • 世界はゴ冗談(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「筒井調」満載の短編集。メタ・パラフィクションもあって、堪能した。

    ひとつ不思議なのが、エッセイの「ウクライナ幻想」が「付録」として掲載されていること。著者がその昔、旧ソ連を訪れたときの思い出を、イリヤ・ムロウメツの物語とともに書いている。

    ただ、その中身はと言うと、「今はただ、不幸な戦いの中にあるウクライナの首都、あの伝統の町キエフに戦禍が及ばぬことを(後略・文中ママ)」とか、「日本贔屓のお嬢さんを持つプーチンに、自国民の大多数と欧米諸国との板挟み状態に立つ苦境を乗り越えて平和への道を探ってほしい(略)」などと書かれてあってザワザワさせられ、思わず奥付を何度も確かめた(文庫発行日は令和3

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    2022年05月13日