筒井康隆のレビュー一覧
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おびのりさんにお薦めをお願いしてもらった筒井康隆作品です。ありがとうございます!
紹介していただいたのはずいぶん前で、ずいぶん前に購入していたので、積読本に埋もれて探せなくて読むのが遅くなりました。最近、積読本をちょっとだけ片づけたのです。
キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた”富豪刑事”こと神戸大助が迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を…次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く”刑事もの”の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦した傑 -
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高校生の時に読んで以来の再読。当時は筒井康隆についてあまり知らない状態で読んだから、単なる哲学的なSFとして読んでしまっていたけれど、彼の他の作品をいくつか読んでから改めて触れると、壮大な実験小説なのだということがわかった。解説で池澤夏樹が書いているが、物語で神様を出すというのは、展開がなんでもありになってしまうから御法度なのだが、筒井康隆はこれをうまい具合に処理していて、破綻もなく(展開の後半でわかることだが、むしろ破綻を前提にして)小説を書いているようだった。同じく池澤は、このGOD以上の存在として、作者である筒井康隆を挙げていたが、結局GODはこの話が小説だということも知っていたわけで、
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購入済み
お達者で何よりです
45年程前からの愛読者としては「昔の先生ならもっと短くまとめてた、もっと多次元の世界をSF的に描いてた」のではないかと想像してしまいますが、今回は先生の今が感じられて
、これも善きかなと思いました。「時をかける少女」は永遠に不滅です。 -
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テレパス七瀬シリーズ第二弾。
超能力者は七瀬だけではなかった。短編を追うごとに次々と増えていく、超能力者たち。彼らは敵?それとも味方なのか?
家政婦として働き、孤独な超能力者として描かれた七瀬だったが、今作ではすでに別の仕事を転々としながら、身をやつしながら生活する。相変わらず、人の心が読めてしまうがために、のらりくらりと危機をかわしながら過ごす。
しかし残念なことに、世の中には、超能力をよく思っていない人達もいて、中盤から、能力者と、非能力者の戦いが始まる。
前作の日常風景から少し離れて、物語の規模が大きくなった気がします。パプリカとはまた違うテイストの世界観に、筒井康隆さんの才能、特 -
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ネタバレ聞き慣れない難読な単語が多く、注釈でそれぞれの意味が記されているがそれでは足りない程難しく書かれている。一つ一つ意味を確かめながら読む時もあれば、なんだかスルスルとその漢字が持つ空気感だけで意味を感じ取り読み進める時もあった。ラストに印象的に示されたスケープゴートがこの作品の主題であって、それを表す事に、ここまで詳細に1人の人生、貴夫の人生を書き連ねて行く事を果たして筒井さんの他誰ができるのでしょうか。性の根源を切り取られた男性、貴夫がどのような生涯を送るのか、読者として簡単に想像を細かに組み立てられる人は殆ど居ないと思います。ああ、そりゃこうなるよね、当たり前だよね、と読み進められるはずはな
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映画『パプリカ』に、原作があることを本屋で知りましたが、読みたい気持ちを後回しにし続けてました。
登場するキャラクターたちが、躍動感を持ちながら展開していく物語。その一方で、文字から映像に変えることの難しさを肌で感じます。
夢と現実の区別がつかなくなる展開の話は、例えば『インセプション』という話がありますが、あちらは夢の奥へ奥へと進んでいく物語で、何となく似ている気はしますが、面白さの部分では、こちらとは全く違っていて、どちらも好きだったりします。
『インセプション』の中に登場する夢の設定は、どちらかといえば、夢の中で建物を作り出すなど、理性的で、『パプリカ』の夢は、精神疾患に関わる話で -
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ネタバレ映画を一度見て、訳が分からず途中で見るのをやめてしまったのを悔いるくらい面白かった。こういう話だったのか。
賢く美しくチャーミング、仕事熱心で欲望に忠実な敦子が魅力的に見えて仕方がなかった。好意を持った患者にだけちょっと行き過ぎた治療を施す、そのモラルの欠如も夢の中ならではで、自宅で秘密を共有した特別感もまたそこに加われば、親密さが増していくのも頷ける。ノーベル賞だって何だって手に入れる、この静かな自信と欲深さが何故か嫌みではなく、好ましいものとして映った。男たちが争わず敦子の意思を尊重し、本気で愛を寄せているからかもしれない。男女の愛というより、女神を崇拝するのに似ている。敦子であってもパプ -
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「わたしのグランパ」筒井康隆。1999年初出。文春文庫。
薄い文庫本で、文字が大きくて読みやすい。素晴らしい。なんにつけ文庫本はかくあるべしという文字の大きさです。
筒井康隆さんは1934年生まれ。個人的にも30年以上読んでいる、好きな小説家さん。
この2~3年小説書いておられるのかはちょっと分かりませんが。
筒井さんの65歳くらいのときの小説が「わたしのグランパ」。
東京の中流?サラリーマン家庭の中学生・珠子の家に、長く「旅行(刑務所)」に行っていた祖父が帰って来る、という話。
一件疫病神に見える祖父だが、(実際にかなりアウトローな人なんだけれども)人としてマットウで、珠子のいじめを -
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ネタバレ「筒井調」満載の短編集。メタ・パラフィクションもあって、堪能した。
ひとつ不思議なのが、エッセイの「ウクライナ幻想」が「付録」として掲載されていること。著者がその昔、旧ソ連を訪れたときの思い出を、イリヤ・ムロウメツの物語とともに書いている。
ただ、その中身はと言うと、「今はただ、不幸な戦いの中にあるウクライナの首都、あの伝統の町キエフに戦禍が及ばぬことを(後略・文中ママ)」とか、「日本贔屓のお嬢さんを持つプーチンに、自国民の大多数と欧米諸国との板挟み状態に立つ苦境を乗り越えて平和への道を探ってほしい(略)」などと書かれてあってザワザワさせられ、思わず奥付を何度も確かめた(文庫発行日は令和3