あらすじ
死を恐れつつも死について知りたい我々のために、あの唯野教授による世界一わかりやすい講義が一度かぎりよみがえる。読まずに死ねない名著『存在と時間』超入門。これが教授の遺言だ!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
『文学部唯野教授』という小説で、小説に登場する唯野教授が授業をする場面が、都度都度登場し、ハイデガーの『存在と時間』についても第5講解釈学の授業で触れている。
この授業の補講が本書になるのかな?ハイデガーの哲学を、それはそれはとてもわかりやすく教えてくださっている。『存在と時間』を読む機会がある人は、本書及び『文学部唯野教授』の授業を受けてから取り掛かるのが良いかと思われる。全体像をなんとなく把握することが、短時間でできてしまうことがすごい。
Posted by ブクログ
ここまで平易にハイデガーの『存在と時間』を読み解くことができるのかという驚きの一冊。現存在が気遣いの存在であり空文を駆使して生きているが、そこから本来の生に戻してくれるのは死への不安である。一方で、死を絶対化していいのかという否定神学批判が展開されるのが、その後のポストモダンの思想であるというのが私なりの理解。
解説は大澤真幸によるキリストの二重性(生きて死んだ神)に着目したもの。頽落したキリストの弟子たちの話を書くことで『存在と時間』に話を合わせつつ、死への恐怖から神に祈りながらも結局殺されるキリストを描く。復活しては元の頽落に戻ってしまうので、あくまでも死ぬときの重要性を強調する。しかし復活するからキリストはキリストたり得たとも思うので、このあたりはもっと考えを聞きたいと思ったところ。
Posted by ブクログ
ハイデガーの入門編として、100分de名著や新書と合わせて読みたい本。入門書を読むたびにハイデガー特有の言葉に辟易するが、具体的なストーリーと合わせて説明されると、なるほどそうだったのか、とわかったような気になる。ここでいうわかったということとか、ハイデガーを入門するということとか、どうも死を隠す空談のように思えるが(死は入門してはくれない!)、自分勝手に理解するというのもまた違う話なので、死を眼の前にしながら恐る恐る入門するというなんとも不思議な感じだ。まぁ解説にもあるが、時にはユーモアも必要だろう。
Posted by ブクログ
哲学書のなかでも、難解と言われる本の一つ『存在と時間』を、できるだけ嚙み砕いて、要点を抑えたのが本書である。「現存在」や「世界内存在」など、普段の生活では使わない用語を、本書の著書である筒井康隆が、読者が今後、『存在と時間』を理解できるように手助けしてくれる。入門書として本書以上のものはないだろう。哲学書の解説であるにもかかわらず、所々ユーモアな表現もあってか、硬質な内容を和らげてくれる。このような工夫が施されているのが入門書と言われる所以である。それだけではない。本書の解説を担当する大澤真幸も秀逸である。『存在と時間』は、人間の死に対する指南書として読み込める。そのため、読者自身が精神的に不安な時、とくに日々死を意識してしまう人が読むと、ハイデガーの主張に共感できるのではないだろうか。
Posted by ブクログ
ここまでシンプルにハイデガーを解説してポイントを外さないのは素晴らしい。死への先駆性について、解説の大澤真幸さんの文章と合わせて理解が深まった。
Posted by ブクログ
これを読んでハイデガーが分かるかどうかは別にしてこう言う考えなんだねーって思う。
易しく説明なんて本当は出来ないんだろうけれど書く人の咀嚼した内容で話して貰える本書籍のようなものは大変助かる。
読んで次の段階に頑張ってみようという気にさせてくれる。
頑張って存在と時間が読めるかというと難しいかも知れないけれど、次のステップにいつか繋がる気がする。
繋がらなかったらもう一度読もうと思う。
Posted by ブクログ
難解なことで有名なハイデガーの『存在と時間』についてわかりやすく説明されている。わかりやすい説明になっても正直なところ難解ではあるのだが、外観くらいは理解できるように噛み砕いてくれているので、入門としてちょうど良いと思う。
存在と時間は「本当に難しすぎて理解しづらいことで有名である」という点を念頭に置いて読むべき。もし理解できなくても落ち込む必要なんてなく、むしろ難しすぎる点を笑い飛ばすくらいの心持ちでいるべきだろう。
Posted by ブクログ
この本じたいはとても分かり易いけど、引用されている原文は恐ろしく難解。筒井さんよくこんなの読んだな…ハイデガーで歯が立つのはこの本までな気がする…。
Posted by ブクログ
『最終講義』の名の通り、まるで中学生や高校生に戻って面白い先生の講義を受けているような気持ちになれる。
本書で指摘されている通り、ハイデガーに触れる上で大きな障壁になるのが、数々の概念(というか、言い回し?)なのだが、本書はそれらの話を最小限に抑えて解説を進めてくれている。おかげで、ハイデガーの視座は私たちが直感的に感じ取っているものと近いということが分かりやすく、説得力がある。
読書慣れ、哲学慣れしていない自分のような人に、読んでもらい、哲学の身近さを感じてほしい。
Posted by ブクログ
わかった。というかわかった気にさせてくれたことと、メタ要素を保ち噛み砕いた解釈を与えてくれたことが、雛目線での親鳥に思えて筒井先生死んだら泣くやろなあと謎の感動感情感想。
Posted by ブクログ
取っつきにくい用語を日常用語に。それぞれの関係を分かりやすく、用語の使われる順番や配置に細かく気を使いながら解説。とどのつまりを大胆に。わたしは
NHKの100分で名著を見たあとに気になって読んでみた。いつか本体のハイデガー読んでみてもいいかなと思いました。誰が誰の弟子でというのがわかったのも収穫。複雑な気持ちの背景がある?ようで少し痛いかも。
Posted by ブクログ
■評価
★★★✬☆
■感想
◯ハイデガーは初見では意味不明だったが、この本や用語集を見ながら狙いを理解して、その狙いに向かって言葉やフレームワークが展開されているとすると、踏まえることでわかりやすくなった。
◯原文から入門書では取り逃がすことがあるが、一方でわかるようにもなる。自分の言葉で置き換えてみて、最終的には原文にあたってみてそこから受ける雰囲気など、汲み取ったうえで話をしないと議論が深まらないなと感じた。
Posted by ブクログ
筒井康隆著『誰にもわかるハイデガー』は、哲学の巨匠ハイデガーの思想を平易に解説し、読者がその骨格を掴むための絶好の入り口となる一冊です。
私自身、以下のフレーズに特に感銘を受け、改めて人間存在や死といった普遍的なテーマについて考えさせられました。
師弟関係が紡ぐ理解の速さ
ハイデガーの思想がどのような歴史的背景や思想的伝統に基づいているのかを示唆しています。
フッサールという巨匠の教えを受け継ぎながらも、ハイデガーはそれを独自の視点で発展させ、現象学から解釈学へと哲学のパラダイムを転換させた点が魅力的です。師弟関係の中で生まれる新たな洞察や理解のスピードは、単なる知識の伝達を超えた創造性の源泉とも言えるでしょう。
人間存在と「現存在」
「現存在という言葉です。これは早く言ってしまえば、人間のことなんです。人間というのは常日頃、常に新しい自分の可能性というものを見つけて生き続けている存在なんですね。」
ハイデガーが提唱する「現存在」という概念は、私にとって非常に共感を呼び起こすものでした。
人は一瞬たりとも同じではなく、常に新たな可能性を探求し、変化し続ける存在であるという視点は、自己成長や日常の選択に深い示唆を与えてくれます。
死と未了性:存在の宿命と向き合う
「もし死後も意識をもつことができれば、そのときにこそ、人は、自分の未了性を自覚し、反省したはずだ。私はまだまだだった、」
このフレーズは、ハイデガーが提起する「死」を通して自己を見つめ直すという哲学的問いに直結しています。
死という普遍的な現実に直面することで、人は自らの未完の可能性―未了性―を認識し、今この瞬間にどのように生きるべきかを問い直すのです。
『誰にもわかるハイデガー』は、難解と思われがちなハイデガーの思想を、親しみやすく解説することで、読者に「存在するとはどういうことか」を問い直す機会を提供してくれます。
師弟関係を通じた知識の伝承、現象学と解釈学の対比、そして人間の絶え間ない変化と死という宿命――これらのテーマは、現代を生きる私たちにとっても大いに考えさせられる内容です。
Posted by ブクログ
哲学の専門家ではない有名な作家が、1990年池袋でハイデガーについて解説した講演?を文字にしたもの。全体の3分の1は、『ふしぎなキリスト教』とかの大澤真幸先生の解説がついていて、「よくわかる上に、『存在と時間』のエッセンスをまことに的確に抽出している。(略)専門家ではない、『唯野教授』こと筒井康隆さんが、かくも正確に紹介できるとは。驚きである。」(p.106)と書いているから、専門家お墨付きのハイデガー紹介、ということになる。
『誰にもわかるハイデガー』というタイトルだし、『試験に出る哲学』のブックガイドでも紹介されていたので、読んでみた。何となく分かるけど、正直通勤電車の中でサラッと読んだだけでは、正直なんかよく分からなかった。でも本当に一瞬で読めてしまうくらいの分量なので、もう1回くらい読んだら、少しはもっと分かるのかもしれない、という感じ。要するに死(時間)を意識して生きることが実存(「自分の可能性を見つめて生きる存在のしかた」(p.47)、というまとめで良いのだろうか。
たくさんの用語がよく分からないのだけど、「企投」とか、実生活で出来ることなのかな。死を引き受けて存在することを了解するために、「今の自分を超えるために、絶え間なしに自分の可能性を自分に向かって投げかける。」(p.56)というのは、一見すると分かりやすいのだけど、そんな程度の理解でいいのだろうか。なんかよくない気がする。あとは確か『試験に出る哲学』で知ったことだと思うけど、ハイデガーがナチス党員になったという事実は、高校の倫理の中で実存主義ってかっこいいなと思っていただけに、やっぱり驚きというかガッカリしてしまう。「宿命という言葉は『存在と時間』の最後に近いところでですね、共同体の宿命だとか民族の宿命だとか書いているんです。そして、ここからどんどん展開していってハイデガーはナチスに入党してしまう」(p.96)ということだったらしい。
あとは大澤先生の解説のところから。まずテクストの読み方の話のところで、「笑いによってテクストに対して距離を取ることができれば、自然と、解釈に創造性が宿る」(p.111)、つまり「書かれていることを相対化しつつ、発展させるための想像力が発生する」(同)から、笑いを伴う読解にはより豊かな理解という効能がある、というのは面白いなと思った。あと最近、たまたま英語の授業でやった単語帳の中にsecureという単語があって、その近くにたまたまcureという単語もあったけど、この2つは「安全secureとは、cureがない状態という意味だ。(略)したがって『安全だ』とは、『cureを欠いている』ということになる。」(p.121)ということでこの2つがつながっている、というのを知った。あの単語帳は偶然?もしかして当然つながりを感じるべきだった?あとハイデガーのところで分かりやすいのは、「人が真に倫理的になるのは、つまり良心をもとうと真に決意するのは、このとき、終局的な〈出来事〉がすでに起きてしまったとき」(p.131)というのはすごいことだけど、その後の例が分かりやすかった。要するに締め切り前に慌てる、という、その感じでいいんだろうか。そして、「『過去』のところを、『現在』に置き換えることができたとしたらどうであろうか。未来に起きるはずの〈出来事〉をすでに起きてしまったこととして体験し、そこから、現在を、過去を見る視線でもって遡及的に見つめることができたとしたら、どうであろうか。(略)それはとても難しい。難しいが、不可能ではない。」(pp.136-7)で、その実例が、メシアはもう来てしまったというキリスト教、というのも何となく分かった。こういう未来のさらにその先から未来を見る、みたいな、こういう視点は日常でも活かせそうだけど…。
ということで、何となくは分かるし、よりよく生きるために自分の日常や生き方に活かせそう、とは思うけど、そもそもそういう打算的な視点が含まれていると実存とは言えない気もするし、そういう理解じゃダメなんだろうな、と思ってしまう点、本当に「わかった」ことになるのか、という懐疑的な気持ちを持って終わってしまう本だった。(26/09/28)
Posted by ブクログ
ハイデガーの解説本の中でもいちばんわかりやすいと言う評価の「ハイデガー『存在と時間』を解き明かすNHKブックス」を読んでみたものの、まったく理解出来なかったので、さらにわかりやすそうなこの本を読んでみました。
結果は、理解出来たとまでは言えないけど、「なるほど、こういう風な事が言いたかったのね。」程度のことはわかりました。
『存在と時間』には。現存在とか平均的日常性とか、実存とか、本来性、非本来性とか、よく分からない単語が頻出するんだけど、まずはこの本から読んでみると、多少は理解の助けになると思います。
Posted by ブクログ
自分と同じ年代に書いた存在と時間という本、それをわかりやすく解説してくれる本。知らないことがたくさんある。週末は哲学について考えたが、考えがかえってまとまらず混乱中
Posted by ブクログ
ハイデガーが哲学者であることすら知らない(やばい)状態で読み始めた。本編も解説も基本わかりやすいけど、時間と良心が出てきたところから意味がわからなくなった。ゴールを自覚して、もうやっちゃったことはやっちゃったからこれから軌道修正しよ!ってことでは…ないか…更に聖書とか神をを引き合いに出されてもピンと来ない…。もう一回読んでみます。