あらすじ
ある日、少年の頭上でボールが割れた。音もなく、粉ごなになって。――それが異常の始まりだった。強い“意志”の力に守られた少年の周囲に次々と不思議が起こる。その謎を解明しようとした美しきテレパス七瀬は、いつしか少年と愛しあっていた。初めての恋に我を忘れた七瀬は、やがて自分も、“意志”の力に導かれていることに気づく。全宇宙を支配する母なる“意志”とは何か? 『家族八景』『七瀬ふたたび』につづく美貌のテレパス・火田七瀬シリーズ三部作の完結編。
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第1作ブラックホームドラマの『家族八景』、第2作ハードSFの『七瀬ふたたび』に続くシリーズ完結編。といっても昔は「七瀬シリーズ」なんて括りはしてなかったけど。テレパスの主人公というのが同一なだけで、前2作はまったく毛色の異なる作品だし、本作もまたそれらとまったく異質な作品である。SFジュブナイル小説を思わす学園ミステリーな導入から、画家とその妻の謎を冬の田舎の山村に追うミステリーへと展開し、後半は、広大な宇宙の意識の中で繰り広げられる母と子のエディプスな恋愛を通し、私という意識、私の中の無意識というものの在り様を肌で感じさせてくれる。これをとてもわかりやすくエンタメ小説として感じさせてくれるところに感心した。自分は巨大な綾波レイ=碇ユイを思い出してしまったのだが、思えば庵野監督の『シン・ヱヴァンゲリヲン』も、師匠の宮崎駿監督の「恋人に自分を産んでもらう」という『君たちはどう生きるか』も、本作がどこかでモチーフになっているのかも知れないなぁなんて思った(ただしあくまでモチーフであり本作は「母への恋」自体には特段の関心を示していない)。『エディプスの恋人』がこの小説のタイトルであると同時に、本作の中で宇宙意志が用意した舞台名でもあるというメタ構造という落としどころもさすがと思った。
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今までにない読書体験だった。
ラストにとんでもない視点が提示されて、初めて本当の意味でタイトルの意味がわかる。
七瀬は『エディプスの恋人』を演じさせられる為にこの世に再創造された存在である、ということに気づくなんて読者の誰も想像できなかったんじゃないかな。
智広の身勝手に超能力を信頼している人間性に個人的にはずっと注目していたし、七瀬がそれとどう向き合うのか、そして七瀬が一人の人間として、「火田七瀬」として、自分自身とどう向き合うのか楽しみにページを繰っていたわけだけど、ここに帰着させるのかという。
最初は超自然的ミステリー的な始まり方なんだけど、後半の展開がすごい。
七瀬が頼央(智広の父親)から話を聞き終わった後に、アイドルグループが体育館でライブをしていて、隠し芸という名の子供じみた茶番を知性のある男観客が大盛り上がりで本気で感動している姿を見るシーンも素晴らしい。
七瀬がそれを見て思うシーンが以下。
七瀬ははっと座席から身を浮かし、中腰のままでまじまじと周囲を見わたした。これは現実なのか。夢ではないのだろうか。それとも現実そのものが夢のさほど変わらぬのであろうか。自分たちにとっての現実とは宇宙の対極に存在している「彼女」の夢の舞台、その舞台上での、「彼女」によって紡ぎ出された幻のようなうたかたの群像劇なのか。今、七瀬の急激な動作にも、彼女の方を向く者はひとりもいず、観衆はすべて熱狂し、歓声をあげ、舞台に向かって拍手している。非現実感が七瀬をとり巻き、彼女は自分の存在が根抵から切り崩されていくような恐ろしいほどの不安に苛まれ、またしてもじっとしていることができなくなってしまった。(p.259)
演目に従って、茶番劇のようなパフォーマンスをするガールズ・グループの舞台を見て、彼女は自分のいる世界を疑い始める。女の「性」としての役割を消費して、知性ある男たち観客のために茶番劇を演じるアイドル・グループを見て、七瀬は自分自身が置かれたこの現実世界すらも、この夢現な舞台と同じなのではないか?と。
彼女は会場を抜けて、雑踏を歩き続ける。自分自身の存在を確かめる、自分のいる足元が現実であることを確かめるために。
しかし、その疑いは遂にラストシーンで確信に変わってしまう。確実に死を迎えた仲間たちの再創造とその消失を決定的に悟ってしまった七瀬は、自分でマリオネットとして『エディプスの恋人』を演じることに首肯した。
この劇を終幕させるために。
「意志」によって再創造された存在である主人公が、「意志」に逆らえない運命を悟り、「意志」に押し付けられる理不尽を受け入れて、『エディプスの恋人』を終わらせるために。
七瀬個人が女性であるからこそ、エディプスの恋人として選ばれて、その役を演じさせられる理不尽には本当に舌を巻いた。特に恋人として、女性として一番大切な破瓜の痛みさえ感じさせられず、代替させられてしまう理不尽はあまりにもえげつない。
筒井康隆にあっぱれ。伊達に文壇で好き勝手やってない。
にしても、自分はこの作品を単独作品だと思って読んでたんだけど、七瀬三部作の最終作ということに、読み始めてから気づいた。
最初のテレパスの描写とかわからんかった。
でも、この順番で読んでて良かったのかもしれない。
家族八景、七瀬ふたたびも当然読みます。
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個人的に、エディプスの恋人の登場人物のイメージ像が伊藤潤二作品の画風にぴったり合う。(七瀬→富江さん、香川智広→四つ辻の美少年)
香川くんの名前(普通)がかけがえのないすばらしいもののように思える七瀬が普通の女の子みたいで可愛いすぎる。
筒井康隆の意外なまで(宇宙はさほど話の舞台にならないから)真摯な宇宙への畏怖がある。
エディプス(男の子が母親を慕い父親に反感を覚える傾向であるエディプスコンプレックスから来ている)(=智広)
エディプスの恋人(=火田七瀬)
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無意識のエディプス的傾向を母親=「彼女」側からのアプローチで智広に対して実現させてるのか、結局のところその無意識は智広側から膨れ上がってきていてその結果が「彼女」をこういうかたちの存在にさせているのか、、、とかを考えたりした。
包み込むっていう意味での母性をSFっぽく体現している感じがしておもしろかったし、終盤に七瀬がどんどん現実の構造に際限の無い疑いを持つ不安定さを見せたことでおもしろに拍車がかかった気がする。
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七瀬さんに幸せになってもらおうと、作者である筒井さんは、本書に登場する「意志」の如く振る舞ったのだと感じました。
人間の心理描写に秀でた作品とのコメントがあったのがきっかけで『家族八景』を読み始めた物語でした。七瀬さんの話は、いつもまでも続いてほしいという思いもありますが、ここで終了のようです。まだ続きも描けそうですが、筒井さんはどうお考えなのでしょう?
しばらく、筒井康隆さん作品を読み漁るというマイブームは続きそうです。
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七瀬三部作の最終章。
前作では、超能力者の仲間たちが抹殺され、七瀬自身もかなり危険な状況で終わってしまった。
この本では、七瀬はある名門高校の教務課職員として働いており、前作からどのように生き延びたのか、暗躍する組織もまったく触れずに物語は進んでいくので、七瀬が主人公であるものの、スピンオフ的な作品なのかと思いながら読んでいきました。
(最後の方でその謎は解かれるのですが)
不思議な力で護られている高校生の香川智広。そして七瀬は自分の意思か何かの意思の力で智広と相思相愛の恋愛に堕ちていきます。(今まで男性を避けてきた七瀬がそうなることに少し嫉妬した)
さてさて、内容は詳しく書けないのと自分の表現力が弱いので終わりにしますが、香川智広の父の頼央が失踪した妻の珠子や智広との幸せな過去を顧みて話すシーンは何10ページもかけて書かれており凄い。そこからラストまで一気に読んでしまう迫力がありました。特に頼央と形を変えた珠子との性的シーンは麻薬的でとてもエロティックなもので、こういう感覚のまま死んだら人はなんて幸せなのかと本気で思ってしまった。(エロい自分だけかもしれないけど)
そして、手塚治虫の火の鳥に通じるような、壮大な宇宙的な発想、結末に感動しました。よかった。
Posted by ブクログ
ある日、少年の頭上でボールが割れた。音もなく、粉ごなになってーそれが異常のはじまりだった。強い”意志”の力に守られた少年の周囲に次つぎと不思議が起こる。その謎を解明しようとした美しきテレパス七瀬は、いつしか少年と愛しあっていた。初めての恋に我を忘れた七瀬は、やがて自分も、あの”意志”の力に導かれていることに気づく。全宇宙を支配する母なる”意志”とは何か?
ー文庫うらすじより
もの凄い本を読んだのかもしれないと思いました。
『七瀬三部作』第三作。
私と同じ昔の田舎の高校生だった親友のAちゃんが「読書は苦手だけど七瀬のシリーズだけは好きなの」と言っていた七瀬三部作。
前にも書きましたが、こんな前衛的な本をあのAちゃんが高校生の時に読んでいたなんて、信じられません!!
来月Aちゃんの誕生日なので久しぶりにLINEしてみます。
SFは、ほとんど読んでこなかったジャンルなのですが、このくらいは普通なのでしょうか。
人の心が読めるテレパスの七瀬。第一作の『家族八景』では人の心は著者の筒井康隆さんがこれでもかと書かれる程、腹黒いものなのかと思いましたが、今回は大いにあり得ることかもしれないと思い直しました。
さすがに『家族八景』のような家族はあまりないのではと思いますが。
これは、孟母のお話です。
設定が斬新で(昭和56年初版になっていますが)とても面白かったです。
筒井さんは予定通り?
「家族百景」から始まった「テレパス 七瀬シリーズ」の3作目で(恐らく)最終章。1章の時に筒井さんはこの結末をすでに組み立てていたのかが気になります。だとしたら、やっぱり恐るべし筒井康隆。単なる超能力ものではない、「精神小説」とも呼ぶべき新分野だと思いました。
ただ、近年の筒井さんは精神分析の記述とストーリーテラーとしての巧みさのバランスがやや崩れて、難解な記述が多く、正直ついていけない作品もチラホラ。本作品はギリOKと言う感じです。
しかしシリーズ全体として見ると、少女に近かった七瀬が「大人の女」になり、同時にそのテレパスとしての精神世界も成長して行く過程での「気付き」を描いた本作は、そのラストの意外性と妥当性も含めると「七瀬シリーズファン」には納得のいく終わり方かなと思いました。
…と、ここまで書いて思ったのですが1章が,起承転結の起、2章が承、本章が転と仮定すると(一見「結」に見えますが)、もう1作ラストが出るのかも。かなり可能性は低いですが、鬼才、筒井さんならば可能性は0ではないかも。あるいはアニメで出すとか。本作品みたいな筒井さんの「精神小説」は「パプリカ」みたいなアニメの方が伝わりやすい気がしました。
…それも筒井さんは最初から織り込み済みだったりしてね。
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何という壮大なラストなんだ。
読み終えたけど凄すぎて言葉が出ない。
第一作『家族八景』の家政婦から始まって、
第二作『七瀬ふたたび』で超能力での戦い、
そして本作、全てを超えて宇宙?、神?、精神世界とスケールが大き過ぎて頭が追い付かない。
テレパスを持った家政婦からこんなラストを誰が想像できるだろうか。
本書を読んでいてずっと気になっていたことがある。
まずタイトルのエディプスとは何だろう?
そして二作目の超能力暗殺集団と、ラストで七瀬はどうなったんだ?
エディプスとは調べればすぐ分かった。
ギリシャ神話の『オィディープス王』の物語に因んで名付けられたようだ。(オィディープスが父を殺し実母と結婚してしまう物語)
そして暗殺集団と二作目のラスト、タイトルの意味、全てが本書のラストで明かされる。が
一体どこからどこまでがあの意思の力だったのか?
全て思惑の内だったのか?
そもそも超能力者は何のために生まれたのか?
いや生きている全ての人間があの意思の力によるものなのか?
もう話が大き過ぎて頭がパンクしそう。
そして『オィディープス物語』と重ねるととても奥深さを感じる。
既知の範囲を超えた世界の描写は読み手の想像力をどこまでも膨らませ、大きなロマンを感じさせてくれる。
私もあの意思の力によって生かされているのかも?
何て思わされる、凄い一冊でした。
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七瀬三部作を読み切った。
1作目はおどろおどろしく、2作目はエンタメ小説、3作目の本作は作者が自分自身のために書いたような難解な小説だった。
難解ではあるけれど、考察がとてと面白い。
まだ読み終わった直後であり、自分の考察がまとまっていないので、ゆっくりまとめていこう。
七瀬三部作は父のおすすめで読んだので、父と意見交換をすることが楽しみ。
七瀬三部作、特にエディプスの恋人は同じ小説を読んだもの同士で意見交換するまでが楽しみ方のセットと感じた。
週末、父の意見交換をすることが本当に楽しみだ。
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七瀬3部作の最後の本
人の心が読める力を持つ七瀬
2作目の最後で生き果てたと思いきや、唐突に普通にある高校の事務員として働く七瀬から始まる
何だったんだろ?と思ったけど、それにも実は理由があった
神ともいえる意志が七瀬の人生を翻弄する
その意志は、全能の力を自分の夫と、特に息子のために使う
神なのに、ものすごく自分勝手で、親バカの極致ではないか
けど、中には嫉妬して相手を貶めたり、気に入らない物を殺したりする神もいる
それは神じゃなくて、大きな意志と呼ぶ方があってるのかもしれない
神について少し考えた一冊だった
Posted by ブクログ
久しぶりに壮大なSFの世界観に陶酔してしまった。筒井康隆先生はやはりSF御三家と称されるだけある。
「彼」を包括する"意志"というものは宇宙、言ってしまえばこの世の全てとも言えるだろう。非常に不確実で抽象的な存在である。同時に「彼」という一人の人間に向けられた母性でもあるということ。この、明白なコントラストに筒井康隆の色が感じられた。
記憶が薄れて来た頃にまた読みたい。
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4.0
ラスト数ページが全て。
こう来ましたか!
という驚きとともに子寂しい読後感。
賛否両論あるだろうが、40年以上前の作品ってことを考えると凄いなと
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23歳の七瀬が生きているのを見て、理由は分からないが助かったんだ!と半信半疑で見守っていたら、まさかこんな展開になるなんて。シリーズを超能力者の話として読み始めたため、三作目の視点の壮大さは意外だった。面白かった。
でも超能力を持って生まれた者の行く末として、最後までとても悲しい道が用意されていて、読み終わった後どんよりしてしまった。結局七瀬は幸せになっていない。やはり私は彼女に幸せになってほしかったのだと思った。
愛し合う二人の間に割って入る母親という存在が正気じゃなくて、読んでいて気が狂いそうだった。七瀬はもっと怒っていいのだけど、観察者であり理性的で賢い七瀬は自身の感情をぶつけることがあまりない。これがまた悲しいなと思う点だ。
人間ひとりひとりに意志などなく、全知全能の存在が人間を操っているだけだとしたら、やはり人間はショックを受けるのだろうか。
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『家族八景』『七瀬ふたたび』に続く、俗に言う七瀬シリーズの完結編。
異能SFの雰囲気は影を潜める、というよりかは作者の中で“異能”というものをより深く推し進めたであろう本作は、形而上的な色合いを帯びる。
生物の上位存在の様なもの..宇宙意思..定まった呼び方の無いこういったものに対し、本作はかなり突っ込んだ、かつ文字化に成功している作品かもしれない。七瀬シリーズの幕引きに寂しさもありつつ、個人的には支持したい締め方。
面白かった
前作、前々作ともまた違ったお話でした。
前作の続きを期待して読むと
肩透かしを食らったような感じになってしまいます。
結末をどう受け止めるかは読み手次第ということでしょうか。
他の人の意見が聞きたくなる結末です。
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『七瀬ふたたび』のラストからどうなって本作に繋がったのか疑問に思いながら読み始めるも、次第に、そんなことは忘れ読み進める。ラストでなるほど納得の理由でうまく前作と繋がった。これにはまんまとやたれたという感じ。図形的な文章表現も出てきて前衛的。他の小説では見たことがない「赤字の文字」は極北と言えるのではないかと思う。
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七瀬3部作の最後。この世界、そして七瀬自身も神に操られた存在であると気付く。太母の意思で、七瀬は復活し、存在し、行動する。現実存在とは、そのような「神」的者のシナリオによって演じさせられているのだ。それを受け入れるしかない。七瀬は、エディプスの恋人を演じるしかない。
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2作目の「七瀬ふたたび」を飛ばしての作品だったけど楽しく読めました。生まれて初めて恋心を抱いた相手が高校生。超常現象の行方を追った結果それが全知全能による亡き母親によってであって
それに従い認めざる負えない中、自己の存在自体にも悩む。しかし、最終的にはこのタイトルを超えて七瀬が幸せな方向へと向かったので良かったかな。
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テレパスである火田七瀬は、私立高校の事務員として、突然存在する。彼女自身、現在の自分に疑問を持たない。彼女は、ひとりの男子高校生に興味を持つ。彼の周囲では、たびたび不思議な現象が起こる。そして、理由もわからぬまま、少年に惹かれていく。
彼の父親と会い、彼を巡る強い意思の存在を知ることになる。それは、かつて少年の母親だった女性の意思だった。母親は、選ばれし大宇宙の支配者となりその意思は宇宙に偏在しているのだった。
少年の母親の意思は、七瀬の肉体を一時的に支配して、息子と肉体関係を持つ。その刹那に、七瀬は宇宙意思の感覚を経験する。そして、七瀬によるその世界観の表現となる。
壮大なファンタジーに行きつき、好みが分かれそう。人は、何者かの支配下にあり、支配者は時間と空間を操る。大きな意思に反して、息子への愛には固執する。ギリシア神話のエディプス、実の母親と知らないとはいえ結婚してしまう悲劇を、息子に背負わせる。七瀬は、息子に与える為、その生も愛さえも操られる。
家族八景の火田七瀬が、この最終作の世界観でラストを迎えるとは。
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七瀬3部作の第三弾。
読んだのは学生時代以来かな。
「存在」がテーマになっていて哲学的。
こういうストーリーだった? という感じで印象が違った。
最後の方は七瀬がもっと偏在化して、活字がもっとはちゃめちゃになってるイメージだったけど…
他の本の印象と混ざってたか。
いや、私も宇宙の意志に操られているのかもしれない。
読了。
これはまた凄いテーマを当てはめて来たなという感じ。前2作も裏側にあったのかな?この反則技は好きです。七瀬シリーズ満足な完結の仕方。電子化は無理かと思ったらその手があったか。
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『七瀬ふたたび』からの繋がりが全くなく、唐突に学校篇が始まった。冒険的でハードボイルドな前作とは異なり、いきなりミステリー小説のような調査が始まり、あの緊迫感はどこに消えたのかと戸惑い、置いていかれる思いがした。
これまで物語の舞台は家族から国へと広がってきたが、本作では宇宙や神にまで拡大した。さらに置き去りにされた感覚を覚える。
しかし、前2作との繋がりを探しつつ「これは一体何の話なのか」と思いながら読み進めると、最後の最後で一気に収束していった。
自分の感情や記憶までもが宇宙意志に関与されていることに気づく不幸。恋に落ちることを「心を奪われる」と表現することはあるが、そこに第三者の意志が介在し、しかも未熟なその第三者の自己都合であると悟った場合、人生に前向きでいられるだろうか。これは「知らなければよかった」の最上級であると思う。
神の存在を信じる人は多いのに、以後ずっと神の関与を疑いながら生きていかなければならないのは、最後に仲間との再会を受け入れられなかった七瀬にとってしんどいはずである。納得感のある結末ではあったが、これまで応援してきた七瀬にとってはバッドエンドになってしまった。
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七瀬3部作の3冊目
果たして七瀬の命は助かったのか?
前作の続きが気になる……と思ったら!
今作、舞台は私立高校の教務課事務員の七瀬
⁇あれれ…
特異な精神構造を持つ学生香川智広に興味を持ち調べてゆく
彼は本人の力ではなく、絶対絶命のピンチに遭遇すると、何者かの「意志」で助けられ危害を加えようとする相手はてひどい反撃に遭う!
(これって既視感!十二国記 魔性の子の高里のようではないか!)
2作目最後、七瀬は命を落としたか?
と思われたのに、何と3冊目では、女神?宇宙の意思?が七瀬を再び生かして、女神が人間であった時の息子智広と七瀬を操ってゆく‥‥絶句
七瀬の人生は、超能力を持って生まれたため、
散々苦労した挙句命も落とし、と思ったら
女神?とやらに思うままにされる
何なのだろう!
3作目、よく分からなかった!
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SF界の神様 筒井康隆さんの七瀬シリーズ最終巻。
最終巻から読んじゃったけど普通に楽しめる良作!
他者の考えが読めるテレパス(超能力)をもつ
主人公『火田七瀬』は、自分が務めている学校で
別の超能力が発生するのを目撃。
その出処を探していると1人の異端な高校生の
存在が浮かび上がる。しかしここから急展開。
教諭の七瀬と高校生である「彼」が恋仲になる。
しかしその愛情にはある理由が……。
というタイトル回収をしっかりしてくれる作品。
SFとエディプス・コンプレックスを掛け合わせる
あたりやっぱり筒井さんは天才だなと。
SF好きな人にこそ読んで欲しい、SF味変できる良作。
ぜひ読んでみて!
Posted by ブクログ
「七瀬シリーズ」の第3弾。
高校の事務員として働くことになった七瀬は、香川智広という男子生徒に向かって飛んできたボールが、とつぜん粉々にくだけ散るという異変に遭遇します。彼女がテレパシーの能力をつかって智広の心のなかをさぐると、ほかの生徒たちにはけっして見られることのない絶対的な自信があり、やがて七瀬は彼が神のような強大な「意志」の力に守られているという確信をいだくことになります。
智広と彼を守る「意志」の源をさぐるために、七瀬は絵描きである智弘の父の頼央の故郷を訪ねます。やがて彼女は、頼央から「意志」にまつわる秘密を教えられますが、しだいに彼女は自分の智広に対する関心も、それどころか自分自身の存在ですらも、「意志」の力にもとづくものではないかという疑問にたどり着くことになります。
最初は、前作である『七瀬ふたたび』とのつながりがわからず、前作とはべつの世界線のストーリーだと思って読み進めていましたが、最後のほうで前作とのつながりが示唆され、本作の壮大な仕掛けが明らかにされています。ここまで舞台装置が大掛かりなものになると、SF的な世界観の根幹となる問題につながっていくことになりますが、これもシリーズの締めくくりにふさわしいテーマといえるのかもしれません。
Posted by ブクログ
1作目とも2作目ともまた違う作風。
「宇宙意志」まで話が飛んでいってるけれど、神の依怙贔屓な展開はあまり面白くない。
ただ前作との繋がりが示されたシーンは、3作品目が作られた理由であり、伏線の回収であり、圧倒的な絶望感を叩きつける結末そのものになっていて凄かった。
Posted by ブクログ
3部作のラスト
結末がやばい
その結末はないだろうと思いながら読んでたらその結末だった
まあこういう話ってことでいいのかな
3部作だけど、どれも全く趣が違う
Posted by ブクログ
面白かった? よく分からない。正直、頼央の話以外はあまり面白いと思えなかった。後半になって智広の母が世界の云々というところから、読者を楽しませるために描かれているものではないと感じた。エンタメ小説ではない。前作や前々作のようなエンタメを期待していたので少し残念だった。ただ、誰しも一度は考えたことのあるような、自分という存在の唯一性、それの真に迫るような文章は圧巻だった。死の恐怖を連想させるそれにドキリとさせられる。そして、最後の七瀬が全て思い出すシーン、とても良かった。
Posted by ブクログ
七瀬三部作のラストを飾る一冊。前作『七瀬ふたたび』が超能力者の闘いを中心に描いた作品で、今作もそういった内容なのかなと思って読み始めましたが、今作はそのスケールの大きさに驚愕しました。
地球規模で女性化が進んでいる、という考え方は時代も感じられて面白いなと思いました。
Posted by ブクログ
実在論という観点から超能力を相対化したんかもしれん。
形而上的な存在が世界を操ってるんだとしたら、超能力者もそうでないやつも吹けば飛ぶような存在として大した違いはないと。
サブカルとカウンターカルチャーの違いを影山民夫さんが話しているYouTubeを見たけど、日本はカウンターカルチャーは無くてサブカルが群居していると指摘していた。
サブカルとしてのSFがメインストリームになりかけてた時代なんだとしたら、なんとなくわかるけど、多分その時代は大人の話として聞いてた俺は、やっぱり超能力者という設定にピンとこない。
ただ「家族八景」からみるとスケールが格段大きくなっているのは間違いなく、先生の本腰の入れようは大いに感じられる。