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Posted by ブクログ
筒井康隆のブラックユーモア小説。架空の大学「早治大学」文学部英米文学科の唯野教授を中心とする露悪的な大学組織のドタバタ劇と、唯野教授による文学理論の講義が交互に進んでいく。
文学理論目当てで手に取ったが、筒井康隆のナンセンスで下品なユーモアが面白くかなり自分好みの内容だった。
文学理論の方は、印象批評、新批評、ロシア・フォルマリズムまでは簡単だし、いかにも文学理論らしくて面白いのだが、第4講からはまるきり現代思想の話に。門外漢ゆえ分からないが文学理論ってこんなに思想にベッタリなんだろうか。ちなみに現代思想の解説としては、他の新書や一般書と比べてもかなり分かりやすいと思う。
Posted by ブクログ
面白かった。流石筒井康隆。大学では英文学の教授、裏では小説家として文学理論を体現するような小説を書いている唯野教授の目を通して、ドロドロの大学内部の権力闘争とそれにまつわる珍事を描く。また各章のラストは唯野教授による文学理論講義で締めくくられているため、本作を読むだけで文学理論の概観を知ることができる入門書のようなものにもなっている。
ウィットに飛んだ言い回しも教養に支えられた作中で披露される文学知識も全て素晴らしい。サクサク読むことができる口当たりの軽さと裏腹に読むと本当に大学の講義を一期分聞き終えたかのような満足感も得ることができる。大学の内部事情に関してはかなり悪意的というかコメディ的に誇張・脚色はされているだろうが、「ここまでじゃなくとも近いことはあるのだろうな」と思わせるリアルさ。小説としてもある種の暴露本としても理論の入門書としても、色んな面で楽しむことができる作品である。
……のだが。現代に復刊は絶対できないだろうな、という問題作でもある。時代を反映しすぎている。悪い意味で。言ってしまえば差別表現がすごい。特にひどいのがエイズ差別とゲイ差別。読んでいるだけでぎょっとするような言説がポンポン出てくる。が、そういえば一昔前の日本ってこんなだったわ、ということをすぐに思い出してしまう。そう言う意味では歴史的な資料ではある。この本の発刊当時の日本がどのような空気感の中にあったか、このような公然とした差別が『差別』とすら認識されずにまかり通っていたか、ということの何よりもの証左だからだ。内容に改変を加えて差別表現を抑えれば……と考えたくなるが、正直ストーリーの根幹にそれらの差別要素ががっちり組み込まれてしまっているから無理そう。
本作は非常に面白く読む価値のある本だ。すでに様々な人が触れている通り文学理論の概観を知るにはうってつけ。おまけに小説としても読んでいて面白いのだから素晴らしい。が、それはそれとして内容表現は現代からみると非常に問題がある。往時の小説を読むときはままあることだが、差別問題の是非は一旦置いておいて、『そういう時代であった』事実をきちんと念頭に入れたうえで楽しむ作品であろう。
Posted by ブクログ
読む前は小難しい文学のお話が最初から最後まで続くのかと思っていたが、大学教授たちのドタバタ劇場があちこちで展開されるスラップスティックな小説だった。ブラックユーモアに溢れ、象牙の塔ともいわれるアカデミズムの世界を痛烈に批判。大学教授というと自分を律して研究に打ち込むイメージが先行するけど、小説内に登場する教授たちは欲深くて嫉妬深くて非常識でドジでマヌケで愛すべきおじさんたちばかりだ。
各章の前半部分はMrビーンが出てきそうなコメディー。後半では唯野教授による文学、哲学の授業という緩急のある構成。読み進むうちに筒井康隆の世界にどんどん引き込まれていくが、なにぶん無教養のため唯野教授の授業が難しすぎて理解がおいつかない。印象批評、新批評、ロシア・フォルマリズムあたりまではなんとかついていけた。現象学、解釈学、受容理論まできたらもう白眼をむくしかない。筒井康隆の博覧強記っぷりには脱帽だが、きっと島田雅彦みたいにどこかの大学の教授でもやっていたに違いないと思ってWikipediaで調べてもそんな事実はなかった。見たり聞いたりした話を自分の世界に落とし込んで、さも本当らしく小説世界を作り上げる。その力量にこりゃすげえやってひっくり返った。
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