• ロボットとは何か 人の心を映す鏡
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    ロボットで考える人間の中身

    「人に心はなく、人は互いに心を持っていると信じているだけである」生粋の科学者である石黒浩が切り出したるは、そんな哲学的な命題だ。普通の人ならば、少し本を読んだり思索にふけって「ふむ難しい」と投げ捨ててしまう話だろう。しかし彼は、人間を知りたいという欲求を工学的なフィールドで追い求めて続ける。見かけと動きを人間に似せたロボットは人間らしく見えるか。遠隔操作ロボットと会話したらどうか。そんな考えで作られた「人間らしい心の無い」ロボット達を見れば、自分に心はあるのだろうかと、そう感じること請け合いである。

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    2019年12月20日
  • にぎやかな未来
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    SF短編を基調とした何でも短編

    筒井康隆は初めてだったが、短編集ということもあって、彼独特の世界観を存分に楽しめた。主人公がおかしいかと思えば実はおかしいのは世界だったり、おかしな世界観でありながら実はただの現実だったり、冗談かと思えば本気だったり。冒頭からの怒涛の掌返しに、思わず舌を巻いた。秀逸なSFの世界観にはため息をもらし、ちょっとした皮肉や子供らしい可愛らしさもには頬を緩め、淡白な狂気に触れるとページを繰る手が止まる。それでいて、どの物語もオチは一貫してキレイ。十人十色の筒井康隆アンソロジーだった。

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    2019年12月16日
  • ニンギョウがニンギョウ
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    非論理的でキレイな日本語

    今まで読んだ小説の中で、一番訳がわからなかった。23人の妹を持つ主人公が、17番目の妹が死んだために映画を見に行く。上品そうな紳士にクレカを借り、すれちがった熊の少女から17番目の妹からの電話をもらい、辿り着いた先では宙づり逆さで映画鑑賞。足が腐ったために5番目の妹と出かけ、雪の降らない街の処女雪を踏みしめ歩くと、人体交換屋から足が妊娠しているとの宣告。他にも喪失感と名付けて脳髄を買ったり、「当然のことながら」ピアノの黒鍵が鍵の形をしていたり。リアルと虚構が五分五分で混ざりあった奇怪な小説。

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    2019年12月13日
  • この世でいちばん大事な「カネ」の話
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    生存本能を刺激する力強い本

    「そうだよ! これが現実だよ!」主人公が最後に死ぬ映画こそが、当時小学4年生の著者に刺さった。小さい頃から暴力の飛び交う父と母の間で眠り、窓ガラスの無い戦場みたいな家を目にし、窃盗集団とも言える不良友達を周りに抱えていた。周りにお手本が誰もいない中、何とか東京の美大へと向かうが、その矢先にギャンブル中毒の父親が自殺。同級生の女の子達は不安で仕方なくて、心の寄る辺を探してヤリマンになっている。それらの原因を「貧しさ(≒カネ)」であると断言し、最後に、自分で力強く稼いで生きる人間になれと訴える。力強かった。

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    2019年12月09日
  • やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。14
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    最後の最後まで俺ガイル

    認めたくなかった恋心を認めた瞬間。曖昧にしてきた関係に終止符を打つ瞬間。なにせ9年間に渡って騙し続け、一言も言葉にすることはなかった感情である。鳥肌がたたない訳がない。登場人物全員を巻き込んだプロム、そして先輩の卒業式。前半は由比ヶ浜との掛け合いを中心にしつつ、センチな雰囲気をかもしながら進んでいく。しかし突如何かを悟ったように泣き出す由比ヶ浜。そして比企谷は雪乃下の方へと手を差し伸べ、その挑発に載って雪乃下もその手を取る。それでも言葉になったのは雪乃下の最後の告白だけ。比企谷八幡に最後まで感服だった。

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    2019年12月09日