筒井康隆のレビュー一覧
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「時をかける少女」を超えたジュブナイルというと似たような惹句だった「わたしのグランパ」はあまり印象に残る小説ではなかったんですが、これは傑作の言葉に偽りなしです。主人公の愛は12歳で母を失う。行方不明になった父を探す愛の旅が始まる。舞台は近未来と思われる日本。社会は治安が悪く、強盗・殺人が跋扈し、少女が一人で旅するには危険すぎる旅だった。そして、左手の不自由な少女のひだりがわには常に守ってくれるものがいた。特殊な能力を持った少女のロードノベルは、「時をかける少女」よりも「火田七瀬」シリーズを彷彿とさせたなぁ。テーマ的には別に珍しいことを書いている訳ではないんだけれど、「善意」と「悪意」について
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Posted by ブクログ
比較的淡々と事実を連ねているようでもあるが、やっぱり面白い。単純な出来事も、往年の若い頃の筒井康隆氏がいかにも書きそうな内容・文体で書いてこられると、やはりそう来たかとそれだけでファンは大喜びしてしまう。
どちらかといえば、幼少年期〜青年前期ころまでがあまり発表されていない内容なので、興味の対象が大変興味深い。さらに、そういう若い時期を経ているからこそ、あの作品群が生まれてきたのだとも納得させられるものがあった。
しかし、御大のことだから、自伝に書くことと決して書かないことは、ちゃんと計算し尽くしているのだろう。
おっさんには幾重にも楽しめる本なのは間違いない。 -
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ラゴスの生涯をかけたひとり旅。
ラゴスの何事にも囚われず自由な生き方、好奇心の探求は誰もが羨ましく感じるのでないだろうか。
そんな自分の心に正直に生きたラゴスの半自叙伝的な物語。
物語は突然高度な文明を失った代償として、人々が超能力を獲得しだした世界。
ラゴスの生涯をかけた旅の目的はなにか?という話。
旅先での出会いや別れ、特別な体験は退屈な日常から解放されスリリングで魅力的だ。
二度も奴隷になったり、一国の王様になったりと波瀾万丈でジェットコースターのよう。
羨ましいことに行く先々で女性から好意を寄せられる。奴隷は羨ましくないけれど。
旅先での面白いというか哀れなエピソードは壁抜けの能力 -
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『怖いのは音が消える世界ではなく、作者の突出した語彙力なのではないか』
本作は五十音の“音”が消えていく世界を、あくまで実験的に描いた作品。
音が消えていくのだから、その世界において使われる言葉も段々と限られてくる。
例えば、“あ”という音が消えれば、『愛している』や『明日』と言った言葉は失われる。
だが、突然消える音に苦しみながらも、なんとか類似する言葉で物語を進められているのを見て、驚愕してしまった。
もちろん音が失われていくのだから、使用される言葉が難解になり続け、『あの言葉の代用か!』と考える時間が増える為、サクサクと読み進めることは難しくなる。
そして、それは非常に重い愛のメッ -
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作品紹介・あらすじ
91歳、最後の文豪の途方もない人生
「この自伝は極力、自分が見聞きし体験したことに限っている。」
生まれて最初の記憶、初恋、戦時中に過ごした幼年期、映画とジャズ漬けになった少年期、演劇に夢中になった青年期、同人雑誌から作家デビューし時代の寵児となり、断筆宣言を経て現在の活躍まで。最後の文豪、“笑犬楼”こと筒井氏が驚異の記憶力でつづる、濃密なるライフヒストリー!
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一時期、星新一氏のショート・ショートと筒井康隆氏の作品を交互に読むのが習慣になっていた。どちらの作品も大好きで、今でもたまに読み返すことがある。残念ながら星氏はすでに故人となってしまったが、筒井 -
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「もしひとつの言葉が消滅した時、惜しまれるのは言語かイメージか」
題名だけ知ってるいわずとしれた名作を読んでみよう第2弾!
まさに実験小説…!
いわゆるメタ的小説なんだけど、これが1995年に記されているのがすごい。
小説を読み慣れていないとめちゃくちゃ時間かかるし、消えていった言葉を模索しながら読んでたらとてもじゃないけど途中で投げ出してしまう、と思ってエンタメ小説として読み終えました。
老後に時間かけてつぶさに読みたい気もするけど、(余程の物好き、文学オタクでない限りは)そこまで検証して読むものでもないようにも思う。
解説では、小説内の五十音の定義・消失の流れについて細かに分析されてる -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界から1文字ずつ音が消えていく
あまりにもインパクトのある謳い文句の小説があると教えてもらってすぐに買った本。音が消えていってしまうから仕方がないのだけれど、とにかく出てくる言葉が難しい。まじで難しい。わからない言葉が多すぎて、ずっと読書のお供はグーグルレンズだった。(グーグルレンズがある便利な時代に生まれられた幸福を再認識した。感謝。)読み進めるのに頭も時間も使うから、まったくさくさく読めず、読む事自体疲れるのがわかっているからたまにしか読まずで、何年もかけて読む羽目になった。(勿論良い意味で)
ストーリーは正直突飛に感じてしまう部分もあったけれど、1989年に発売しているらしいので、 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんで裏表紙にメタ・ミステリーって書くんだよー。最後のちょっと感傷的な終わり方にもはまったから、何も知らずに読んでたら文句なしに★5つついたのにー。メタだってわかってたせいで、途中で”おれたち”って表現の不自然さに気がついたもんな。そのせいで最後の衝撃は絶対にちょっと薄れちゃってるって。とか言いながら、俺もここに書いちゃってるけど。とにかくミステリーに関しては、あとがきもオビの解説もない方がいいっていうのは、ある意味真実かもしれない。
基本的に、俺って密室トリックみたいな正統派のものより、叙述トリックみたいなメタな方が好きみたいだな。「十角館の殺人」に対する評価があれほど高いのも、生まれて