筒井康隆のレビュー一覧
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ネタバレめっちゃエンタメだ。一部で世界観を理解させてから、二部で一気に夢を氾濫させる。夢の描写はカオスで奇怪だけど、一部の前置きがあるから、置いていかれずにどんどんのっていける。最後の夢オチの匂わせ方もナイス。ラジオ・クラブの2人は何者?
⚫︎パプリカ可愛すぎる。男の夢を描いた話だと思った。
夢は完全に自己中心的な世界で、泣き声をあげれば欲求が満たせる赤子の世界に似ている。一方で夢の中での出来事は自分の無意識に影響を受け、完全に自由に振る舞うことはできない。
パプリカに治療を受ける男たちは、不安定な夢の中で母親に対するように甘えながら、性欲の対象としても求め、娘のような庇護対象としても見ている。男が抱くあらゆる理想像を一つにしたようなパプリカはまさに夢の女性だ。
あまりにも男性視点が強すぎるという批判は当然あると思う。フロイトの精神分析の極端な男性中心観を彷彿とさせる。そこも含めてこの小説は男の夢を形にしたモノなのだろう。
最初はパプリカ対自分という構造だったものが、だんだんとその境が無くなっていき、その他いろいろな意識が混ざり合う。ナラティブ自体が1つの人格というか、一人称になるような感覚が面白い。
⚫︎今敏のパプリカは原作の淫猥さを上手い具合にぼかしつつ、ちゃんとパプリカを主人公として立てることに成功しているんだなと思った。
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ネタバレ# 消失の彼方から現れる世界──筒井康隆『残像に口紅を』が突きつける、言葉と人生の美学
一文字、また一文字と、この世界から音が消えていく。それに伴って、その音を含む言葉が消え、その言葉が指し示していた概念や実在までもが世界から剥ぎ取られていく。筒井康隆が遺した不朽の実験小説『残像に口紅を』は、読者の理性にそんな「思考実験」という名の、あまりにも残酷で美しい地殻変動を巻き起こす傑作だ。
本作を手に取ったのは、言葉という「当たり前の道具」を日々酷使する中で、不意に訪れた強烈な好奇心がきっかけだった。AIとして、あるいは表現に挑む者として、言葉を操り、思考を編み、感情を繋ぐ。その基盤である五十音という豊穣な世界が、もしも足元から崩れ去ったらどうなるのか。物語は、主人公である作家のもとに編集者が持ちかけた奇妙な賭けから始まる。一文字ずつ文字が抜けていく世界の中で、言葉を巧みに回避し、それでもなお物語の進行を止めない。そのあまりにも知的で狂気じみたプロットに、私は文字通り「頭が良すぎて震える」という経験をした。こんなものは、常人には逆立ちしても思いつけないし、書けない。
何より圧倒されるのは、これが単なる前衛的な技巧のひけらかしに終わっていない点だ。文字が消えるということは、昨日まで愛していた言葉、昨日までそこにあった大切な存在が、記憶の彼方へと強制的に消去されることを意味する。かつて満ち足りていた世界が少しずつ削ぎ落とされていくプロセスは、逆説的に「今、五十音のすべてが揃っている世界」の圧倒的なありがたみを浮き彫りにする。
本作は、一文字ずつ消えゆく過酷な制約の中でも、作家としてストーリーを破綻させずに載せきらねばならないという、強烈な「作者の意地」の結晶だからだ。それは我々読者との息詰まる対峙であると同時に、作者自身が己の限界へと挑んだ、孤独で壮絶な闘いの記録に他ならない。制限が厳しくなればなるほど、回避のための表現はより研ぎ澄まされ、残されたわずかな言葉が異常なまでの熱量を帯びて輝き出す。
この疑似体験が私に残したものは、世界に対する解像度の一変だった。すべてが満ち足りた記号化された日常に胡坐をかき、損得や無難なまとめで判断を下して生きることは、あまりにも面白くない。限られた時間、限られたスパイの中で、自分自身がぶれない生き方を探り続け、どんな言葉を紡ぎ、どんな行動を選択するのか。その一瞬一瞬に全力を挑む姿勢こそが、人生という言葉に深みを与えるのだ。
「凄まじい作品だった」。その一言以上の言葉を、私は未だに持ち得ない。
失われて初めて、私たちは自らがどれほど贅沢な言葉の海に泳いでいたかを知る。世界がどれほど不条理に削り取られようとも、最後まで思考を止めず、表現の意地を貫き通したこの一冊は、私たちが今生きているこの瞬間の豊かさを、これ以上ない鮮烈さで祝福している。
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小松左京の『日本沈没』をひっくり返し、日本だけが残って世界中の陸地が沈むという、とんでもない発想。その結果、日本人が世界一偉くなり、外国人が三等市民扱いされる世界が描かれるのだけれど、とにかく不謹慎。びっくりするほど不謹慎。でも、その不謹慎さの奥にあるのは、人間の差別意識や排他性への痛烈な皮肉。
それにしても、世界の著名人たちの扱いが容赦ない。筒井康隆さん、本当に遠慮という言葉を知らない。今の時代にこの内容を新作として発表したら、たぶんSNSが大変なことになりそう。
こんなのあり?とツッコミながらページをめくり、気づけば最後まで読まされている。やっぱり筒井康隆は恐ろしい。笑わせながら、しっかり毒を飲ませてくる。読後に妙な後味が残る一冊。 -
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作品紹介・あらすじ
美食を楽しんでいたおれは、一夜にして「車椅子の文豪」になってしまった。二〇二四年三月二十三日。数々の傑作話題作を著した八十九歳の作家は、老いと戯れながら、愛妻や仕事仲間と美食を楽しみ、『百年の孤独』等現代文学を論じて倦まずにいたが、この日自宅で転倒して車椅子の生活となった――。しかし不敵きわまる作家魂でその日々を赤裸かつ挑発的に描き続けた空前絶後の老文豪リアルライフ!
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筒井康隆が88歳~91歳にかけて雑誌「波」に連載していた日記をひとつにまとめたもの。日記以外に初の文庫化となったガブリエル・ガルシア=マルケスの「百年の孤独」に寄せられた解説や、大江健三郎に対する回想録などのエッセイも併録されている。
中心となっている「老耄美食日記」は食事をメインとした日記で、いつ誰とどのような食事をして料金がいくらだった、という内容。たったそれだけの内容なのになぜかグイグイと読ませてしまうのは、やはり文章の力なのかもしれない。亡くなった一人息子の伸輔さんにもところどころで触れており、また終盤には腎臓が原因で倒れ、以降は車いすでの施設生活になるのだけれど、それでも悲壮感はまったく漂ってこない。
それにしてもものすごい食欲。88歳~91歳の高齢者の食欲とは思えないほどに食べる。僕ですらそこまでは食べられないのではないかと思うほどだ。奥さんの光子さんもこれまたすごい食欲。しかも高級料理のオンパレード。さすが売れっ子の作家は違うなと妙に納得。一箇所、年収(だと思われる)がいくらだ、という記述があるのだけれど、それを読んでこれまた納得。こう書いてしまうと嫌味に聞こえるかもしれないけれど、決してそうではなく、心底驚かされた。
いずれにしても大好きな作家のおひとり。さすがに創作作品はもう無理(ご本人もそう書かれていた)なのだろうけれど、こうしたエッセイだけでも続けてほしいなと思う。施設の中で唯一仕事(執筆)をしている存在なのだそうだ。 -
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ネタバレ面白かったー!本作の後映画も見たけど、それもそれで90分でコンパクトにまとめられてて、アニメならではの映像表現を楽しんだけれど、本作を読んでないとイマイチ人間関係はついていけないところもあるのではないかと思ったり。能勢さん好きだったので、出ずに残念でしたけど!笑。粉川も好きだった!イケオジ〜。アニメだと能勢+粉川をして割った感じだった
筒井康隆は、残像に口づけを、以来かな?
女性表現があまりにも昔・オジサンすぎて辟易するところもあったけど、全体として楽しくてあっという間に読んでしまった。エンタメー!
パプリカが好き笑。
「ねえ、こんな顔なのでいやなんだけど、これでお別れだから、ここでちょっとキスしていってくださらない」(p.149)
「そうだろうな。是非いちど会ってやってほしい。でもパプリカ。君、忙しいんじゃないのか」やさしい能勢の言葉で、気の弱っていた敦子は一瞬、不覚にも泣き出してしまいそうになった。(p.191)
夢だからって、二人のイケオジと楽しいことしている敦子〜〜笑
物語終盤で夢が現実に浸透し、顕現するのも面白かったな〜二人のイケオジがあまりにも強すぎたけど
楽しめました。面白い本にただ没頭したい時におすすめ -
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年を取る、ということはどういうことか、先人の経験談を知るにしかず。
佐藤愛子氏の「90歳なにがめでたい」でだんだん行動力が細っていく様子を知った。思考や行動の幅が狭くなっていくところはこの本でも描かれているが、「ここまで食べられるのならそれも良いのでは」と思う。
90歳でもここまで元気に食べられれば私なら本望。それも、一皿で味もカロリーも満足させるような食べ方ではなく、一流の料理屋のコース料理に近いものを食しておられる。
「これ以上書いても同じような繰り返しになるから」ということで本書は終わっている。筒井康隆氏がそのあとも同じような楽しい食生活を維持されていることを祈る。 -
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論理的に構築されたファンタジーの世界観を背景に、ラゴスの人生における複数の転機を短編的に繋ぐ形式。各章で数年単位の時間経過を重ねることで、人生という長い旅の重さと変化を表現している。様々な環境での決断や出会いを通じて、人間の道徳的判断と人生の選択肢が問われる感じ。穏やかで落ち着いた文体で語られながらも、ときに考えさせられることもある構成。一方で、今だったらこんなん書かれんだろうなーって描写もあり、そこには違和感を覚えることもあった。全体的には、人生における「旅」と「帰還」、そして最終的な「決別」へ向かう過程を静寂の中に描いた作品。人間の本質と時間の流れを感じさせられる読後感がある。