筒井康隆のレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
忘
なんだか面白くなってきたところで,いきなり包丁で切り落とされてしまったような終わり方。
もっとロマンスがあったり,すべてが繋がっていくのかと思った。
淋しいのは,会えなくなることより,忘れられてしまうことより,忘れてしまうことかもしれない。 -
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唯野教授個人は饒舌な小男、モラルも低くて女子生徒に手を出したりする俗っぽさ。周りのキャラクターも小便を漏らしたり、小狡い性格だったり、全然立派な人物はいない。
大学教授たちの世界は政治根回し、足の引っ張り合いばかりで期待ほど勉強していない。
でも講義はとても面白い。欄外に及ぶ知識の深さ、紹介される本は膨大で、文学理論は全てはわからないけど、読みやすく砕けた表現になっている。難しいから参考文献をもっと読んでもう少し知識が増えてから読んだらまた面白いかもな。
毎章唯野をめぐるドタバタしたエピソードで始まり、講義で終わる話の型も決まっている。
斉木が蟇目と衣服を調えながら研究室から出てきたあたりから特に面白かった。 -
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タイトル作品を含めた筒井康隆作品集。なんというか、この人はまさに「天才」というよりは「奇才」と呼ぶべき人なのかもしれないと改めて思う。ストーリーとしての面白さを持ったまま、文学を、日本語を、常識をことごとく(いい意味で)おちょくってくる。評判高い「鍵」もさることながら、個人的には「死にかた」「三人娘」あたりもとても良かった。一見荒唐無稽なストーリーの中に、何か人間の本質をえぐるような、そんなエッセンスが散りばめられている。
今では問題視されるような表記もたくさんあるけど、ある意味これも筒井康隆節といえばそうなわけで。本好きは、一度読んでおいて損はないと思う。 -
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「残像に口紅を」で筒井先生熱が呼び戻されたのだけど、一気に読んでしまってすぐに冷めてしまうのももったいないので、ちょっと時間をあけてこの本を本棚から引っ張り出してきた。
どの小説もアイロニカルで痛快。1960~70年代の日本をシニカルにとらえているのだけど、当時から50年以上経ってもその皮肉が色褪せてないのがすごい。50年経った今なら、当時をふり返ってシニカルに書くことはたやすいだろうけど、筒井先生は当時同時進行でそれをやってのけてるのがすごい。
そして、50年経った今の日本に対しても、これらの小説にこめられた皮肉がそのまま適用できてしまうかもと感じられ、とっても反省させられたりもした。 -
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2014年から2017年くらいにかけて行われた筒井康隆が自作について語るトークショーや対談集をまとめた一冊。筒井康隆の素晴らしい記憶力と、インタビュアーである編集者の博覧強記ぶりによって、どのように名作の数々が生まれたのかを知ることができるし、当然その誕生の背景も様々な面白おかしいエピソードに彩られている。
個人的に一番面白かったのは2008年に発表された「ダンシング・ヴァニティ」の誕生秘話であった。本作は”差異と反復”という言葉そのものであるように、ストーリーが微妙に差異を孕みつつ繰り返す反復されて生きながら進んでいく。
その背景には、新潮社に対して試しに原稿料を半額で良いと言ったら、先方が思いのほか喜んで半額が通ってしまったために、「半額なら手抜きでいいか」となったエピソードがあるという。手抜きをするためにコピー&ペーストで作れる小説を書きつつ、それが意外にも良い出来になるという点に、御大の作家としての力量を感じざるを得ない良いエピソードであった。 -
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おもしろかった。
AIという言葉こそ使われないものの、発達しきった人工知能が人間の欺瞞をあばく話がいくつかあって(いじめないで、やぶれかぶれのオロ氏など)すなおに笑える。「時越半四郎」は、AIではないけど、やはり日本人の不可解な思考回路を笑いとばす話で最後にちょっとしんみり。しかし、これ、1966年初出だから50年以上前だけど、今も変わってないどころかいっそうひどくなってるんじゃない?
「しゃっくり」はタイムループの話。このアイディアだけで長編も書けるのにね(北村薫の『ターン』とか)。最後に憑き物が落ちたようになる人々がおかしい。
「慶安大変記」は、初出が高3コースだったという大胆さが笑える。よく学年誌にこんなアナーキーな作品を(^_^;; このガンガンエスカレートしていく感じ、なぜか痛快。
表題作の「公共伏魔殿」なんかは、「ありそう!」「わかる!」と笑いつつも、クライマックスがひたすら気持ち悪くて(笑)ここらへんはもう好みだなと思うわけですが、全体としてすごくおもしろく読めました。じつは筒井康隆、ずっと食わず嫌いしていたので(このエグさが、かつては無理だった)これからもう少し読んでいこうと思います。 -
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ネタバレ知らなくていいこと、ってあるよね
壮大な物語へ、そして、どうしようもないエンド。
読み始めて、あれ?前作で七瀬死んだよね?ってなるところを後回しにされ、どんどん話は進んでいく。
七瀬は「意志」の存在に気づき、その謎を追う。
七瀬が勤めている学校の生徒(「彼」)がその「意志」に護られていることに気づき、
その両親について調べ、失踪した母親がその「意志」
ということを知る。
1人の女性(「彼女」)が人間ではなくなり、
「宇宙意志」へと進化?変貌?する。
肉体を持たず、偏在化する。
(ここのあたり、めっちゃ好きだった…)
「彼女」の「意志」で、「彼」と七瀬は惹かれ合うが、
「彼」の童貞を「彼女」が七瀬の肉体に入り込むことで奪い(奪ってはいないか…)、
七瀬は「彼女」として偏在化し、全宇宙を感じる。
このあたりから七瀬は現実が夢のように思われてくる。
喪失しているときに、「彼女」の使者に会い、
前作で死んだはずの超能力ーズが近くにいると知る。
が、彼らは死んだはず。
彼らは死んで、そのあと「彼女」によって甦らされたと七瀬は疑う。
そもそも七瀬はなぜここにいるのか?
七瀬も前作で死んだはずなのに…
それもこれも「彼女」の「意志」なのではないか…
すべては「彼女」の「意志」と悟り、
七瀬は「彼」の恋人としての舞台で生きる(諦観)
うーん。
この七瀬シリーズがハッピーエンドではなくてよかった。
全部暗いけど、それぞれ少しテイストが違くて、
エンターテイメントとして楽しめた。
わたしは最後が一番好き。
七瀬ほどにすべてを知らなければ、
超能力者でなければ、「彼女」の存在など知らなければ、
ラストのように人生を諦めることはないんだろうなと思った。
だから普通に生まれてよかったと思った。
でも一方で、「彼女」のような神の存在によって
動かされていることもありえるという恐怖も感じた。
こんなエコ贔屓な神であったらちょっと困るけど、
自分の力ではどうにもできないことってきっとあるよね。
前作との繋がりが、最後の最後にわかるのがとても良かった。
ちゃんとスッキリさせてくれる。
七瀬はいつか頼央みたいになってしまうのかなと思わされた。
知らなくていいこと、ってあるよね。