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Posted by ブクログ 2024年03月01日
「文学やるなら常識捨てて、世間の糾弾身に引き受けて、何でも書くのがまともな作家」(コロナ追分より)
「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」帯に大きくそのように書かれている筒井さんの作品集。1934年生まれの89歳。2020年末~23年、86歳〜89歳までの25作品が収録されている。
巨匠で...続きを読むあり、文豪。書き上げ、出版していただけたことがファンとして嬉しい。
SF、ブラックユーモア、ドタバタ劇など、多彩な“筒井ワールド”がギュッと詰め込まれている。
「書いている最中から、『もうこれ以上ないな』と思った」
「書いたら面白そうだという着想はあるけど、書く前や書きかけて、『ああ、これ前に書いてるわ』って」
そう語る筒井さんが最後に書き上げたのは、昔知り合った小料理屋の女将が出てきたり、劇団の女優が久しぶりに公演を行ったり、人生を振り返って書いたのだろう。哀愁を感じるものが多かった。
特に好きだったのは、楽屋では役作りに専念してくださいと助監督に厳しく言われ、復讐を試みる『楽屋控』、時間航行し、古代人を連れてきて環境整えて現代の美食を食べさせる『美食禍』。最高のショートショート。
そして以下の3作を語らずには、この本を読んだことにならないだろう。
『コロナ追分』では、コロナ禍の日本・世界の出来事をめちゃくちゃリズミカルな文体で茶化しながら綴った。めちゃくちゃ面白い。そして最後には今を生きる作家へのメッセージが付いている。本当に筋が通った不良作家のままずっと生きてこられたんだなあと、感動した。直木賞選考委員を批判して暴れ回った『大いなる助走』から何一つ変わっていない。最高。
『カーテンコール』は名前+セリフの脚本形式で書かれていて、若いころに見て影響を受けた映画の記憶を、監督や俳優らの奔放な会話を連ねることで想起していく。過去の名作に明るくないから理解できない部分も多々あったので、後で調べて視聴したいと思う。
『プレイバック』では検査入院中の筒井さんのもとに、『時をかける少女』の芳山和子、唯野教授、富豪刑事、パプリカら、過去の作品の主人公が訪れ、筒井さんに向けて「よくもそのように書いたわね!」と非難めいた言葉を残して去っていく。筒井さんしか書けないようなすごい設定。筒井さんは言い訳したり、受け入れて謝ったり。面白いなあ。
そして最後、なんと小松左京と星新一が筒井さんのもとを訪れる。
小松左京は「おれの日本沈没の、たった三十枚のパロディで儲けやがって」
星新一は「そもそもおれのアイデアだ。おれの言ったことやしたことをそのまま小説に書きやがって」と言うために出てきたのだ。
そして最後「なんでそんな長生きなんだよ」と言われた後の筒井さんのセリフ、粋だったなあ。
———紹介(公式より)———
巨匠、最後の挨拶(カーテンコール)は25篇もの怒濤的傑作掌篇小説集!
著者曰く「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」(編集者「信じていません!」)。
筒井文学の主要登場人物が打ち揃う「プレイバック」をはじめ、巨匠がこれまで蓄積した技倆と思索の全てを注いだ、痙攣的笑い、恐怖とドタバタ、胸えぐる感涙、いつかの夢のごとき抒情などが横溢する圧倒的傑作掌篇小説集爆誕!
Posted by ブクログ 2024年03月16日
全部で25編の短編集。
怒涛のように筒井康隆劇場爆発!の後半7編がめちゃくちゃ面白い。
コロナ追分で言いたい放題笑 このお話大好きやわ。お話っていうより独白やんもう。すごい共感できたわ。
冒頭から前半にかけては、さすがに筒井康隆も気持ちまで歳とったんちゃうん?おっさん臭だけがプンプンなんちゃうん?と...続きを読む思ったけど、いらん心配でしたわ。
ある意味、初期に戻った?ていう作風。あ、おっさん臭は増してたわ
あの筒井康隆の、誰がこんなこと思いつくんや!ていうとんでもない設定ではないけど、なんかオモロイなぁ〜ってゆうアレ。
これで最後とが言わんと、まだまだ書いてほしい!
Posted by ブクログ 2024年02月16日
何だか、星新一のショートショートを読んでいる気分で、サクサク進む。筒井康隆を読むのは、何十年ぶりか?よくもまぁこんな作品が書けるものだ。この年齢でこの頭の柔らかさと、創作力は、脅威的。
Posted by ブクログ 2024年01月13日
なんか凄い展開になってしまう掌編集
この何処へ行ってしまう終わり方は余韻を残すものもあり、呆気に取られるものもある
筒井康隆にしかできない芸当だ
最後は現実にまではみ出してくる
付録までつけて、これで引っ込んでしまうの?
Posted by ブクログ 2023年12月11日
オビのとおり、ほんとに最後なのか?
この本を読む限り、益々意気軒高なのではと拝察するところですが。
はじめて筒井作品を読んだのは、中学生のころだったか。たまたま家に何冊かあったので。子供心に「なんじゃこりゃ」とびっくりした記憶がある(とくに短編)。かと思ったら、美しかったり心温まったりする作品もあ...続きを読むったりして。エッセイも抱腹もので面白かったなー。
Posted by ブクログ 2023年11月27日
著者が「これがわが最後の作品集になるだろう。」
と言っているので、是非とも読んでみたいと買いました。「時をかける少女」、「パプリカ」など、有名作を続々と描き続けた、筒井康隆氏、彼の今までの創作活動を集約したような、作品が25編も描かれています。特に筒井ファンにオススメなのは、「プレイバック」です。彼...続きを読むが今まで創り上げた作品の登場人物たちが、作中に出てくるのです。
もう一度、彼の過去の作品を読みたいと感じました。
Posted by ブクログ 2024年04月29日
正直オチがよく分からないものもあったけれど、文章の上手さは格別。最小限の文字数で内容がしっかり伝わる。驚天動地のどんでん返しに持って行くばかりがショートショートではない、というスタンスも感じられる。
Posted by ブクログ 2024年04月07日
オチがなかったり意味がわからないものも多いが、最後の方にある「プレイバック」は別格。
今まで筒井康隆を読んだ分だけ跳ね返ってくる内容となっており、読み終わる頃にはこみ上げるものがありました。
Posted by ブクログ 2024年02月05日
短篇集だけあって読みやすいが、内容は難しくて社会風刺的。2020年末から執筆した小説を集めた本らしく、時事的な話が多い印象。
最初の方で読むのをやめかけたが、「楽屋控」「美夜禍」「夜は更けゆく」「手を振る娘」「文士と夜警」は読みやすかった。
「プレイバック」は作者過去作品の登場人物や亡くなった小説家...続きを読むなどが現れて入院中の作者と会話する、作者ファンには嬉しい小話だと思う。
Posted by ブクログ 2024年01月31日
掌篇の背景に死を思わせながら自身の生を見つめて言葉を紡いでいく。私たちの日常はひとつの物語に終始するのではなくルーティンな営みに励み時折妄想で多様な世界を旅する。心地良さで構成されている世界は理想郷ではなく思考停止した隷属社会であり、不快・苦悩を受け入れてこそ世界はときめきを宿すのではないか。と筒井...続きを読む康隆の筆致から感じる。
Posted by ブクログ 2024年01月19日
文壇の最古参、最長老となりつつある作者が、もはや何の遠慮もいらないとばかり、好き放題に書き散らかしたかのような小品集。
着意だけで書かれ、落ちがない作品も散見される。
もう長編は書かないのか。
Posted by ブクログ 2024年01月17日
40年來の、ほどほどファンです。七瀬シリーズが最も好きですが、ショートショート、特にジュブナイル向け短編中編小説こそ、は先生の良い面が凝縮されているように感じています。
本作品は先生の「夢」を再現したかのような浮遊感を感じる作品が多いように感じましたし読者・特に昔からのファンに対するラストメッセー...続きを読むジなのかな、、と。
傑作とは感じませんが、良作。
「プレイバック」に七瀬が出てきたら★あと一つ足しますw
Posted by ブクログ 2024年01月16日
今年で90歳の筒井さん。「最後の作品集」と言われたら、とりあえず読まないわけにいかない。さすがに昔ほどの毒はもうないけれど、レトロ感たっぷりで、ドタバタや批判精神も忘れない御大〝らしさ〟が散りばめられた走馬灯のごとき25篇。芳山和子や小松左京ら懐かしい面々が登場する「プレイバック」が感慨深かった。ほ...続きを読むとんどマニア向けと言えそうな一冊。
Posted by ブクログ 2024年01月14日
”最後の作品集”と言いながら、今後も「最後最後詐欺」として恐らく作品を出してくれるであろう筒井康隆御大の最新短編集。
25の超短編、すなわちショートショートを収めたものであり、エッジの効いたブラックユーモアはいまだに健在であり、読者を安心させてくれる。
個人的に気に入ったのはコロナ禍の日本社会を...続きを読む5拍子・7拍子のリズムで風刺的に描いた「コロナ追分」、そして「時をかける少女」や「文学部只野教授」など筒井康隆の過去の名作の主人公が突然現れて著者とユーモラスな会話を繰り広げるドタバタ劇「プレイバック」など。
最後、と言わずにまだまだ元気でこうした作品を読ませてほしい。
Posted by ブクログ 2024年01月07日
端々のワードセンスは流石と思いつつ、個人的には「夜を走る」が面白すぎたせいで、筒井先生の短編集に対する期待値が上がりすぎていたように思う。
インタビューで御本人が「書く力が弱くなった」とおっしゃっているし、収録作品の内容からしても筒井先生なりの終活の一環のつもりなんだろうか。
ちなみに御年89歳、う...続きを読むちのばーちゃんと同い年です。それを考えると無理に「書け」と言うのは酷な気もしますが、やっぱり、もう一発ガツンとくるやつ読みたいなという気持ちも正直あります。