筒井康隆のレビュー一覧
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ネタバレ作者の破天荒かつ露悪趣味の作風が極めて目立つ作品集であった
第1作目の『九月の渇き』は読むも不快にさせる描写が多いながらもオチがアフターコロナを彷彿させ読み応えのある作品
『天の一角』では一転させて社会派というべき作品ではあるが、その内容はかなりブラック
現在のネット民における死刑肯定論者に一石を投じるような作品で現在読んでも色褪せない
後半の『妻の惑星』、『家族場面』は虚構と現実と私小説とごった混ぜにした様なカオスチックな内容となっており、そのストーリーの内容は何とも理解し難い話になっているが、その異常な内容こそが魅力となっており理解しがたいながらも読み応えのあり奇妙な読書体験ができる -
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読む前は小難しい文学のお話が最初から最後まで続くのかと思っていたが、大学教授たちのドタバタ劇場があちこちで展開されるスラップスティックな小説だった。ブラックユーモアに溢れ、象牙の塔ともいわれるアカデミズムの世界を痛烈に批判。大学教授というと自分を律して研究に打ち込むイメージが先行するけど、小説内に登場する教授たちは欲深くて嫉妬深くて非常識でドジでマヌケで愛すべきおじさんたちばかりだ。
各章の前半部分はMrビーンが出てきそうなコメディー。後半では唯野教授による文学、哲学の授業という緩急のある構成。読み進むうちに筒井康隆の世界にどんどん引き込まれていくが、なにぶん無教養のため唯野教授の授業が難しす -
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何という壮大なラストなんだ。
読み終えたけど凄すぎて言葉が出ない。
第一作『家族八景』の家政婦から始まって、
第二作『七瀬ふたたび』で超能力での戦い、
そして本作、全てを超えて宇宙?、神?、精神世界とスケールが大き過ぎて頭が追い付かない。
テレパスを持った家政婦からこんなラストを誰が想像できるだろうか。
本書を読んでいてずっと気になっていたことがある。
まずタイトルのエディプスとは何だろう?
そして二作目の超能力暗殺集団と、ラストで七瀬はどうなったんだ?
エディプスとは調べればすぐ分かった。
ギリシャ神話の『オィディープス王』の物語に因んで名付けられたようだ。(オィディープスが父を殺し実 -
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ついに、あの七瀬が帰ってきた!
美しきテレパス火田七瀬が。
本書ではどんな七瀬が見られるか読む前から期待で胸がいっぱいだ!
地ひびき。震動。
横なぐりの衝撃。
傾く車体。悲鳴。 ガラスの割れる音。
冒頭から何やら物騒で波乱の予感、物語は汽車のなかから出発し凄絶な旅に出る。
今回の話は凄い展開で別の物語のようだった。
まさかお手伝いさんの話からここまでスケールの大きい物語になるとは思いもよらなかった。
何が凄いかというと、前回と打って変わっていろいろな超能力者が登場するところ。
まるで映画のX-メンのよう。
それぞれの超能力者がどんな役割りを果たすのか、敵なのか?味方なのか?。
なんか -
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小説内小説?かなり実験的な小説だった。
現実も人間が捉えた形でしか存在しないのだから、現実とフィクションの境目ってないのでは?という問いから始まり、小説家が書いたものが現実であるというテイで物語が進む。
前半はワードだけ隠されたクイズみたいになってかなり頭を使った。途中から諦めた。
表題のフレーズが出てくる箇所は主人公のちょっとキモめの感傷といった感じだった。
小川洋子の密やかな結晶を先に読んでしまったのでそちらのことを考えてしまった。
後半は抒情詩みたいで味わい深かった。制限があると文章はより美しく、真に迫った感じになる。
終わりがとても良い。終わりがとても良い。 -
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青年から老いて尚旅を続けるラゴスの人生讃歌。出会いと別れを繰り返し最終的に原点であるデーデへの想いに回帰し、旅を続ける構成がとても綺麗で、様々な女とのロマンスと別れを経験した事で数日しか共にしていないデーデという少女の神秘性が更に高まってるなと。旅する知識人はそりゃモテますわな。
彼自身でも語り悩む、自身が研究者でなく知識人である事に正直こちらもあまり乗れない部分があったのだが、彼のアイデンティティは人と人とを繋ぐ旅人である事なので納得。彼が向かう最後の旅は短い時間を共にした1人の女性を追い求める旅。旅の目的はなんでもいい、たとえ死であろうとも、それが人生。
ストレートな言葉であっても、共に旅 -
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七瀬3部作の2冊目
読心力を持ち20歳になって美しく成長した
火田七瀬
ここではお手伝いさんを辞めている
母の住む家へ向かう途中の列車の中から始まる
その列車の中で3歳の男の子ノリオと遭遇
ノリオもテレパスで、心を読む事が出来るため、
継母に疎まれ虐められていた
同じ列車内で、強力な予知能力を持つ岩淵恒夫
とも知り合い、事故で転覆する列車から3人だけは恒夫の予知力で助かる
七瀬は3歳ノリオを保護して二人で生活している
その後知り合う透視能力を持ち悪用して邪悪な心を持つ西尾と戦い勝つ
念動力を持つヘンリーは、七瀬の味方
漁(すなどり)藤子17歳はタイムトラベラーで七瀬の親友となる
いろいろ -
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文庫版の初版が1975年で、手元にある本は
2025年版 96刷
50年前からのロングセラー
七瀬3部作の1冊目
火田七瀬は生まれながらの超能力者
テレパシーで目前の人の心を読む事ができる
テレパスで有る事を隠し通すため、会社に勤めたりせず、住み込みのお手伝いさんとして、いろいろな家庭を渡り歩く七瀬
8つの家庭で働くなか、その家族たちの関係性や心理状態が明らかになっていく
この8家族、外見はふつうだが皆がみな、もう笑えるくらいドロドロでみにくい
若くて美しい七瀬の魅力のため、男性たちが好色の目を向け、分かっている事を相手に悟られない様に
切り抜けて行くのはハラハラしながらもおもしろい。
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誰もが一度はこんな力あったらいいな!と思ったことがあるのではなかろうか。
本書の主人公火田七瀬は他人の心が読めてしまうテレパス。
最初はワクワクした気持ちだったが、読み進めていくうちに他人の心が読めるのも辛いなと感じた。
例えば相手にプレゼントや何かしてあげた時に、「もしかして喜んでくれるかな?」と思う楽しさや不安がなくなってしまう。
その「もしかして」がなくなってしまうとつまらない。
きっと結婚や恋愛も難しいだろう。
これでは人間不信になってしまう。
人の心が分かるのも難儀だな。
タイトルの家族八景とは七瀬が家政婦として8組の家族の心に忍び寄って観察した様が描かれている。
家政婦というと中