筒井康隆のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
帯には「わが最高傑作」とあり、昨年(2024年)、テレビで見た「筒井康隆の世界 ~文学界の巨人 90歳のメッセージ~」でも(一番良い作品は何かと訊かれた)筒井康隆本人が「モナドの領域だろう」と言っていたと記憶している。が、私は、この序盤をさほど面白いと思わず、栞を挟んだまま本棚に置き去りにしていたのだった。
が、公園、法廷、テレビショーとGODの劇場舞台が変わっていくにつれて、だんだんと面白くなってきた(私はその展開に「文学部唯野教授」を思い出していた)。最終盤、GODが去った世界の描写では、序盤のつまらない各シーンの人物たちをきっちりと拾い集めて物語を閉じる。GODを小説の作者「筒井康隆」と対応させて読むと、「伏線回収」といっては陳腐だけれど、感動ポイントになる。 -
Posted by ブクログ
比較的淡々と事実を連ねているようでもあるが、やっぱり面白い。単純な出来事も、往年の若い頃の筒井康隆氏がいかにも書きそうな内容・文体で書いてこられると、やはりそう来たかとそれだけでファンは大喜びしてしまう。
どちらかといえば、幼少年期〜青年前期ころまでがあまり発表されていない内容なので、興味の対象が大変興味深い。さらに、そういう若い時期を経ているからこそ、あの作品群が生まれてきたのだとも納得させられるものがあった。
しかし、御大のことだから、自伝に書くことと決して書かないことは、ちゃんと計算し尽くしているのだろう。
おっさんには幾重にも楽しめる本なのは間違いない。 -
Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
91歳、最後の文豪の途方もない人生
「この自伝は極力、自分が見聞きし体験したことに限っている。」
生まれて最初の記憶、初恋、戦時中に過ごした幼年期、映画とジャズ漬けになった少年期、演劇に夢中になった青年期、同人雑誌から作家デビューし時代の寵児となり、断筆宣言を経て現在の活躍まで。最後の文豪、“笑犬楼”こと筒井氏が驚異の記憶力でつづる、濃密なるライフヒストリー!
*****
一時期、星新一氏のショート・ショートと筒井康隆氏の作品を交互に読むのが習慣になっていた。どちらの作品も大好きで、今でもたまに読み返すことがある。残念ながら星氏はすでに故人となってしまったが、筒井氏は91歳の今、こうして自伝を著した。
読んでまず驚かされるのは氏の記憶力。特に少年時代、80年以上は昔のことだと思われるのだが、友達や可愛かった女の子の名前をほとんど覚えている。しかも漢字の表記の仕方まできちんと覚えている。その記憶力にただただ感嘆するばかりだ。僕も小学校時代の友人の名前を何名か覚えてはいるが、漢字表記までは覚えてはいない。
書き方が淡々としているためか、人生における波瀾や葛藤も静かな口調で語られている。自分の人生を自身の口から劇的に語ることはやはりどこか気恥ずかしさが伴うのだろう。例の断筆宣言についてもさらりと流すように書かれていた。
91歳というご高齢。もう新作小説は難しいかもしれないけれど、氏のご長寿を静かに祈りつつ、これまでに生み出された多くの作品(まだ読めていないものもたくさんある)を、これからも少しずつ味わいながら、その世界に浸っていきたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんで裏表紙にメタ・ミステリーって書くんだよー。最後のちょっと感傷的な終わり方にもはまったから、何も知らずに読んでたら文句なしに★5つついたのにー。メタだってわかってたせいで、途中で”おれたち”って表現の不自然さに気がついたもんな。そのせいで最後の衝撃は絶対にちょっと薄れちゃってるって。とか言いながら、俺もここに書いちゃってるけど。とにかくミステリーに関しては、あとがきもオビの解説もない方がいいっていうのは、ある意味真実かもしれない。
基本的に、俺って密室トリックみたいな正統派のものより、叙述トリックみたいなメタな方が好きみたいだな。「十角館の殺人」に対する評価があれほど高いのも、生まれて初めて読んだ叙述トリックのミステリーだということと無関係ではないと思うし。そういえば「殺人鬼」もそうだった。メタだと世界観をひっくり返してくれるという意味ではSFに近いということもあるのかなあ。メタじゃないやつで記憶に残っているのって「占星術殺人事件」ぐらいしかないものな。
それにしても久しぶりの一気読みだった。他にもこういう話が読みたいよー。「フェミニズム殺人事件」はどうなんだろう。
そういえば、何でロートレックなんだろう。単に著者の趣味なのかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ作者の破天荒かつ露悪趣味の作風が極めて目立つ作品集であった
第1作目の『九月の渇き』は読むも不快にさせる描写が多いながらもオチがアフターコロナを彷彿させ読み応えのある作品
『天の一角』では一転させて社会派というべき作品ではあるが、その内容はかなりブラック
現在のネット民における死刑肯定論者に一石を投じるような作品で現在読んでも色褪せない
後半の『妻の惑星』、『家族場面』は虚構と現実と私小説とごった混ぜにした様なカオスチックな内容となっており、そのストーリーの内容は何とも理解し難い話になっているが、その異常な内容こそが魅力となっており理解しがたいながらも読み応えのあり奇妙な読書体験ができる作品となっている
筒井初心者はこの作品を最初に手にする事はまずないと思うが、現代社会にも通ずるような作品も多く意外と見過ごしがちな隠れた名作集ではないかと思う -
Posted by ブクログ
読む前は小難しい文学のお話が最初から最後まで続くのかと思っていたが、大学教授たちのドタバタ劇場があちこちで展開されるスラップスティックな小説だった。ブラックユーモアに溢れ、象牙の塔ともいわれるアカデミズムの世界を痛烈に批判。大学教授というと自分を律して研究に打ち込むイメージが先行するけど、小説内に登場する教授たちは欲深くて嫉妬深くて非常識でドジでマヌケで愛すべきおじさんたちばかりだ。
各章の前半部分はMrビーンが出てきそうなコメディー。後半では唯野教授による文学、哲学の授業という緩急のある構成。読み進むうちに筒井康隆の世界にどんどん引き込まれていくが、なにぶん無教養のため唯野教授の授業が難しすぎて理解がおいつかない。印象批評、新批評、ロシア・フォルマリズムあたりまではなんとかついていけた。現象学、解釈学、受容理論まできたらもう白眼をむくしかない。筒井康隆の博覧強記っぷりには脱帽だが、きっと島田雅彦みたいにどこかの大学の教授でもやっていたに違いないと思ってWikipediaで調べてもそんな事実はなかった。見たり聞いたりした話を自分の世界に落とし込んで、さも本当らしく小説世界を作り上げる。その力量にこりゃすげえやってひっくり返った。
-
Posted by ブクログ
何という壮大なラストなんだ。
読み終えたけど凄すぎて言葉が出ない。
第一作『家族八景』の家政婦から始まって、
第二作『七瀬ふたたび』で超能力での戦い、
そして本作、全てを超えて宇宙?、神?、精神世界とスケールが大き過ぎて頭が追い付かない。
テレパスを持った家政婦からこんなラストを誰が想像できるだろうか。
本書を読んでいてずっと気になっていたことがある。
まずタイトルのエディプスとは何だろう?
そして二作目の超能力暗殺集団と、ラストで七瀬はどうなったんだ?
エディプスとは調べればすぐ分かった。
ギリシャ神話の『オィディープス王』の物語に因んで名付けられたようだ。(オィディープスが父を殺し実母と結婚してしまう物語)
そして暗殺集団と二作目のラスト、タイトルの意味、全てが本書のラストで明かされる。が
一体どこからどこまでがあの意思の力だったのか?
全て思惑の内だったのか?
そもそも超能力者は何のために生まれたのか?
いや生きている全ての人間があの意思の力によるものなのか?
もう話が大き過ぎて頭がパンクしそう。
そして『オィディープス物語』と重ねるととても奥深さを感じる。
既知の範囲を超えた世界の描写は読み手の想像力をどこまでも膨らませ、大きなロマンを感じさせてくれる。
私もあの意思の力によって生かされているのかも?
何て思わされる、凄い一冊でした。
-
Posted by ブクログ
ついに、あの七瀬が帰ってきた!
美しきテレパス火田七瀬が。
本書ではどんな七瀬が見られるか読む前から期待で胸がいっぱいだ!
地ひびき。震動。
横なぐりの衝撃。
傾く車体。悲鳴。 ガラスの割れる音。
冒頭から何やら物騒で波乱の予感、物語は汽車のなかから出発し凄絶な旅に出る。
今回の話は凄い展開で別の物語のようだった。
まさかお手伝いさんの話からここまでスケールの大きい物語になるとは思いもよらなかった。
何が凄いかというと、前回と打って変わっていろいろな超能力者が登場するところ。
まるで映画のX-メンのよう。
それぞれの超能力者がどんな役割りを果たすのか、敵なのか?味方なのか?。
なんか童心にかえってワクワクしっぱなし。
そこに七瀬のテレパスの心理戦が入って余計にサスペンスに感じさせられる。
見所は何といっても謎の男達との戦い!
テレパスならではの情報戦、駆け引きは緊張感溢れ手に汗握る。
七瀬は女性としての魅力も増して、相変わらず男どもからはイヤらしい目で見られてしまう。心が読めるだけに辛いね!
あと男って本当にバカでしょうがない。
でも、これを読んだ女性は男が四六時中こんなこと考えているのかと呆れてしまうんじゃないかな。
七瀬達の運命は?
そして組織の全貌は?
次作『エディプスの恋人』が楽しみ!!
ヘンリー、「私も七瀬さんの賛美者になりました」
-
Posted by ブクログ
七瀬3部作の2冊目
読心力を持ち20歳になって美しく成長した
火田七瀬
ここではお手伝いさんを辞めている
母の住む家へ向かう途中の列車の中から始まる
その列車の中で3歳の男の子ノリオと遭遇
ノリオもテレパスで、心を読む事が出来るため、
継母に疎まれ虐められていた
同じ列車内で、強力な予知能力を持つ岩淵恒夫
とも知り合い、事故で転覆する列車から3人だけは恒夫の予知力で助かる
七瀬は3歳ノリオを保護して二人で生活している
その後知り合う透視能力を持ち悪用して邪悪な心を持つ西尾と戦い勝つ
念動力を持つヘンリーは、七瀬の味方
漁(すなどり)藤子17歳はタイムトラベラーで七瀬の親友となる
いろいろなタイプの超能力者との出会い
そして超能力者抹殺集団との戦いがはじまる
血みどろの戦いの末、仲間たちを皆殺されて
七瀬も瀕死の状態、というところで終わる
3作目へ続く -
Posted by ブクログ
文庫版の初版が1975年で、手元にある本は
2025年版 96刷
50年前からのロングセラー
七瀬3部作の1冊目
火田七瀬は生まれながらの超能力者
テレパシーで目前の人の心を読む事ができる
テレパスで有る事を隠し通すため、会社に勤めたりせず、住み込みのお手伝いさんとして、いろいろな家庭を渡り歩く七瀬
8つの家庭で働くなか、その家族たちの関係性や心理状態が明らかになっていく
この8家族、外見はふつうだが皆がみな、もう笑えるくらいドロドロでみにくい
若くて美しい七瀬の魅力のため、男性たちが好色の目を向け、分かっている事を相手に悟られない様に
切り抜けて行くのはハラハラしながらもおもしろい。
七瀬ふたたび に続く
-
Posted by ブクログ
誰もが一度はこんな力あったらいいな!と思ったことがあるのではなかろうか。
本書の主人公火田七瀬は他人の心が読めてしまうテレパス。
最初はワクワクした気持ちだったが、読み進めていくうちに他人の心が読めるのも辛いなと感じた。
例えば相手にプレゼントや何かしてあげた時に、「もしかして喜んでくれるかな?」と思う楽しさや不安がなくなってしまう。
その「もしかして」がなくなってしまうとつまらない。
きっと結婚や恋愛も難しいだろう。
これでは人間不信になってしまう。
人の心が分かるのも難儀だな。
タイトルの家族八景とは七瀬が家政婦として8組の家族の心に忍び寄って観察した様が描かれている。
家政婦というと中年くらいのイメージがあるけれど、七瀬はピチピチの19才、訳あって家政婦をしている。
そんな若くて美人な七瀬はどこの家に行ってもエロい目で見られてしまう。本当に男って生き物はどうしようもない。
本書の面白いというか怖いところは、やはり他人の心を読むところ。
家族でもこんなにお互いを悪く思ってたり、七瀬自体が力を制御できているようで、力に溺れ楽しんでいる風もある。
人間の深層心理にある闇が浮き彫りされ、読み手も一緒に心理戦に参加している気にもさせられる。
超能力という非現実だけど、もしかしてあの人もこんな風に思っているのではと現実でもありそうで怖い。
特に「紅蓮菩薩」と「亡母渇仰」は身震いしてしまった。
本書はシリーズ化されているので続きを読んでみたい。
今後、七瀬がどう変わっていくのか、超能力者同士の戦いとかありそうで楽しみだ。