筒井康隆のレビュー一覧

  • 残像に口紅を

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    ネタバレ

    とても面白かった。最初の頃は言い換えてる言葉を考えるのが楽しかったがどんどん難しくなって行った。よくこんなこと考えるなぁと感嘆。

    それはさておき、私が購入した文庫本には帯がついていて「究極の実験小説にして最高に切ない恋愛小説」とあり、最高に切ない??恋愛小説???となった。
    そういうシーンもあるけど、これは佐治勝夫の内面の話なのでは…となった。私が変なのかな。

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    2026年08月08日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    旅のラゴスは、物語の王道である「主人公が旅に出て、何かを得て、帰還して愛する人と添い遂げる」という筋書きから外れたお話だったと思う。最愛の人には会えず、持ち帰ろうとした書物は捨てられて…最後は定かでない最愛の人に会いに、死への旅に出る。でも、主人公が持って帰ってきた知識は、たとえ書物が奪われても人が伝え続ければ、決して失われない。また主人公が苦心した、大昔の失われた文明の知識をどうやったら今の世界に溶け込ませられるかという視点。知識や技術も扱う人の人間性に依るのだ、と感じた。

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    2026年08月06日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    読んでて何度も旅をしてみたくなった!
    ロマンの詰まった壮大なSF物語。

    ラゴスという男の旅を通して描かれる人生。
     高度な文明を失った代償として、人々が特殊な能力を獲得した世界。旅先で遭遇する集団転移や壁抜けなどといった、奇想天外な発想に読んでて飽きさせない。ワクワクした!

    時には奴隷、時には王様といった、老いを感じさせないラゴスさんの生き様っぷりに圧倒された。
     何にも執着せず縛られないラゴスさんの生き方には憧れる。

    旅の一冊として持って行きたいと思った!

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    2026年07月26日
  • 残像に口紅を

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    使える音が徐々に減っていく小説。音が消えるとそれを使うものが 実際に消えて行ってしまう世界。
    読むのにかなり体力が必要だった。はじめはほとんど違和感なく進んでいくからいいのだけど、だんだんと難しい単語が増えていくから何を言いたいのかじっくり考えて辞書を引いていかないといけなかった。でもそれが楽しかった。
    この本の後に読む本はいつもよりもサクサク読めると思う。トレーニングだ。

    かなりメタ的な視点が含まれていて、作中の主人公が始めの方でいっていた現実と虚構が同時に起こっている感覚が少しわかった。
    言葉が減ると登場人物の性格も変わっていくのが顕著に表れていて、人のパーソナリティと言葉が密接に関わっていることを再認識した。

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    2026年07月25日
  • 筒井康隆、九十歳のあとさき―老耄美食日記―

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    店名や料理、値段が分からず記号のようだ
    いちびりと思う私が貧しいのか
    ただ、光子さん共々生命力に圧倒される
    施設に入って車椅子になって酒は減るも美食は変わらない
    執着の記憶や読者、映画の鑑賞量も流石
    孤独の表現は様々あろうが、何よりも読ませる筆力に感服

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    2026年07月22日
  • 筒井康隆、九十歳のあとさき―老耄美食日記―

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    オークラ神戸へ垂水から夕食へ出かける記述を読んで山里でメシ食いたくなった。河鍋暁斎の展覧会に託けてなつ休みさオークラへ。海風が気持ち良い

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    2026年07月22日
  • ダンシング・ヴァニティ(新潮文庫)

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    コピー&ペースト小説、漫☆画太郎小説、はたまた何度も見るが微妙に細部が違う夢小説、サザエさん小説、走馬灯小説、エンドレスエイト小説 形容できません

    多分、真面目な読者程序盤早々に面を食らって本を閉じるか呆れると思うけれど、よく耳にする日本音楽を頭に浮かべて欲しい。恐らく同じ単語は繰り返されているし、何なら背景に流れる音楽は何周か同じフレームが流れているはず。そのガワを文学に取り入れたのがこの作品だと思う
    物語、ストーリーテリングより技法運営を見る本、だろか。
    何か20年後くらいの僕の頭の中、見え方はこうなっているような気がして。そんなこと考えながら読んでいたら本編339頁に4時間もかかりました
    もう少し歳を重ねたら何か違う物が見えてきそう(気付けそう)
    話筋とはまったく関係ないかもしれないがスルメ味がまだ隠されているような豊かさがある
    それが御大の策略なのかはわかりませんが…

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    2026年07月21日
  • 家族八景(新潮文庫)

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    ネタバレ

    職場の人に借りたもの。
    筒井康隆は名前だけ知っている状態だったが、たいへん面白い。主人公の七瀬がいろんな家庭で人の心を覗き見るオムニバス形式。
    夫婦や家族の在り方は、どの時代も似たようなものなのかもしれないと思えた。
    好奇心で家庭に踏み込む七瀬を無鉄砲に感じたり、でも年頃の女の子らしいと感じたり、能力のせいか歳のわりに達観している様子も受けとめやすかった。
    続編を見たくなった。

    ちょくちょく表れる男性の欲望は、女性からするとやはり狂気で気持ちが悪く、恐ろしい。
    「水蜜桃」は特にだった。自分も10代、20代の頃はよく変な男の目線や言葉に傷ついてきたが、素晴らしく気持ち悪い性欲を表現しているなと感嘆。
    「紅蓮菩薩」は、妻の感情の描写が恐ろしく、怒りの表現が引き込まれた。ただ、子どもの描写がほぼ無いことと、最後の結末を思うと子どもが本当に気の毒でしかない…。

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    2026年07月21日
  • 脱走と追跡のサンバ

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    マルチバース(という言葉)もインターネットもない頃に、これらがもたらした世界の中での自我というものが表現されていて凄いと思うし、終章に出てくる、「はっきりした本物などはない、それらもパロディ(模倣)である」という感覚も、生成AI作品時代を予見しているようだ。

    著者の描く、非現実的な光景やドタバタの状況は、読んでいて「何が描かれているか」がわかりやすく伝わってきてストレスがないのを実感した。これは説明が筋道だって的確だからだろうと思う。

    違和感を覚えた世界からの脱走という切り口での自我からの逃走というテーマが最後まで明確に貫かれていて、少し理屈っぽいというか、全編ドタバタではあるものの、個人的にはもう少しナンセンスなおふざけに振り切ってもらったほうが良かったかなぁ。

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    2026年07月20日
  • パプリカ

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    ネタバレ

    抱いたら女は自分のものになるだろう、簡単に好きになるだろうというような文章全体を通して感じられる思想の偏りがちょっと厳しい部分はありました。
    設定自体はおもしろいですが、必要以上に性描写があるのと男性の欲望と願望を詰め込みました、という印象。
    精神病や分裂病など、今の時代にはNGワードのオンパレードなので時代を感じました。

    でも、第二部は本当に面白いです。怒涛の展開。

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    2026年07月18日
  • 銀齢の果て(新潮文庫)

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    老人同士のバトルロイヤルを、70歳のじいさんが書いたというだけで面白い。読み終えてから作者について調べると、同郷・同校だったこともあり、なんとなく親近感が湧いた。

    一方で筒井康隆本人は、家の近所で気に食わない若者を杖で殴りつけるなど、かなり豪快で過激な人物だったらしい。いわゆる「老害」と呼ばれるようなタイプだが、私は結構こういうジジイは嫌いじゃない。

    本書では、少子高齢化社会を「良識による悲劇」「何もできない老人の氾濫」と痛烈に批判し、介護に追われる家族の苦悩をさまざまな視点から描いている。

    そんな作品を読むと、筒井さんは自分の傍若無人な振る舞いが社会や家族から白い目で見られていることを十分自覚していたのではないかと思う。自覚したうえで反発し続けながらも、その一方でどこか負い目も感じていたのではないだろうか。

    また、本書には自身の理想的な死に様も投影されているように感じた。老害と呼ばれようが、死ぬまで気に入らない社会や若者に噛みつき続け、その果てに彼らの手で命を落とす。そんな最期を望んでいたのではないか。

    しかし現実には、誰にも殺されず、老衰でも死ねず、ただ長く生き続けてしまった。その「死に損なった老人」の姿を、主人公・九一郎に重ねているようにも思えた。

    著者を知ってからもう一度読むと、また面白い一冊だと思う。

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    2026年07月16日
  • 夢の木坂分岐点(新潮文庫)

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    ネタバレ

    同著『虚人たち』にみられるような実験的な作品。小説内で登場人物の名前が微妙に変更されていたり、彼らの立場とそれによる周囲の機敏な反応が本作の特色で、類のない構成となっている。小説というフィクション内で、さまざまな世界線、可能性が展開されており、それぞれの場所で予想外の出来事を待ち受けている。

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    2026年07月12日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    単行本は1986年刊。もとは「SFアドベンチャー」連載(84.4~86.6)。12話からなる。
    読ませるが、筒井康隆にしては古典的だし、定型的過ぎないか。古典的・定型的というのは、「遍歴」小説風という意味で。後年のほかの作家の作品群(たとえば時雨沢恵一の連作『キノの旅』など)は、まったくもってこの路線だもん。
    新潮文庫の解説は、筒井と同世代の、科学史の村上陽一郎(執筆時は東大教授)。一種のビルドゥングス・ロマンととらえている(ありゃ、「遍歴」小説じゃん)。そういえば、村上先生は、漱石の『三四郎』もビルドゥングス・ロマンと言っていたような。

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    2026年07月12日
  • 残像に口紅を

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    言葉の音が消えるとその音を使って表す対象物もこの世から消える、その縛りのなかでこんな文章が書けることに驚く。

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    2026年07月05日
  • 佇むひと リリカル短篇集

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    雲の厚さで曇りの度合いが違うような、そんな大なり小なりの不穏さがどの物語にも宿っている。

    灰色の空気が垂れ込む中で、登場人物それぞれが切実さを抱えていて、その性格や質感がある種の光となって世界を照らしている印象を受けた。

    表題作や「下の世界」「母子像」に見えるような理不尽さが好きで、いつの時代もこういう話が現代のまともさを測るものさしになっていると思っている。

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    2026年07月05日
  • 不良老人の文学論(新潮文庫)

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    2014年頃までの筒井康隆氏の世に発表されたちょっとした文章(文庫の解説など)を集めた内容。「不良老人」はまじめに書いてないですよ、との逃げにも通じるものがあるが、そんなことはなく善良に書かれているように観察された。森博嗣の「実験的経験」の文庫解説もあり、これは以前読んでいたと思うが、天邪鬼ぶりは森氏のほうが徹底している。筒井氏と森氏の両方好きな人は多いように思える。

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    2026年07月04日
  • 笑うな(新潮文庫)

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     ブラックなユーモアや笑いの洪水に、笑うなと言われても笑わずにいられなかった。

     短い紙幅の中で技巧を凝らし、シニカルに物事を捉える視点が面白く、語彙力をフル稼働させた巧みな文章に引き込まれた。

     いくつかオチが理解できなかった作品があってとても悔しい。教養を深めねば⋯

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    2026年07月03日
  • 残像に口紅を

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    試みとしてすごく面白いし、文字の種類を削って書けてしまえる語彙力と文章力にも感嘆した。が、話がメタ過ぎてあまり引き込まれない。
    筒井康隆を初めて読んだので、この作品だけそうなのか、他もこうなのか、分からないので『時をかける少女』を読んでみたい。

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    2026年06月29日
  • カーテンコール

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    掌編小説が25篇も収録された豪華な作品。レトロ感満載な小話からここ最近の時事関連のもの、メタ要素や言葉遊びに特化したものまでジャンルが幅広く全て面白かった
    偶に著者関連や考えの話があって感慨深いものも
    特に好きなのは「美食禍」と「コロナ追分」

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    2026年06月27日
  • 筒井康隆自伝

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    2025年刊。もとは「文學界」連載(24.4~25.4、頚椎負傷のため途中に休載が入った)。
    幼年期から老年期の現在までを語る。演劇に熱をあげた高校時代、SFにのめり込んでいった青年期が詳しい。中年期以降、多産な時期は駆け足。
    東京移住は31歳。原宿前の新居には、いろんな仲間が押しかけてきた。ある夜は、下で「おう」という声。ベランダから顔を出すと、小松左京と星新一。まるで中学生の遊び友達。
    『おれの血は他人の血』は月刊「ポケットパンチOh!」に連載された。担当編集者は、のちに血液型性格学で一世を風靡する能見正比古。筒井はそんなことはまったく知らずに、あの作品を書いたのだとか。まるでギャグみたい。(ちなみに、この作品は映画化された。主演はいまは亡きサイクリストの火野正平。)
    (p.s. 筒井は2009年から10年にかけて、朝日新聞の書評欄に「漂流――本から本へ」を連載した。幼少期・少年期・青年期にどんな本を読んだか、それが作家としての自分にどう影響を与えたかを、その時のエピソードも含めて語っていた。連載は66回。メリハリのついた、よくできた自叙伝だった。別バージョンの筒井康隆自伝。)

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    2026年06月26日