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Posted by ブクログ
筒井らしいスラップスティックな狂気に満ちた短編集である。本作のテーマは狂気ではないかと思うぐらいに狂った短篇が多い。
「九月の渇き」はスカトロ趣味が混在した異様な短篇である。特に大便がうず高く積まれて期限切れのアップルパイのように層をなしている便所の描写や、液体を欲するあまり、他人の小便に打たれてアンモニア臭で赤く目を腫らした赤目こと「能客派」などの怪人など、静かに狂ってしまった世界の描写がとにかく生々しい。
「大官公庁時代」は今となっては時代性を感じるが、それが言い訳にならないぐらいに露悪趣味に溢れた短篇である。組織の仕事の全容を把握している人間は誰一人としておらず、末端の不始末が全てを狂わせていくという描写もさることながら、小悪人が奸計を働かせ、どうしようもなく狂った世界の中で欲望のままに行動するという人間のあさましさが出ていて非常に良い。はしたない、あられもない嬌声をあげるから橋内アラレという名前も悪意に満ちていてひどいが、さんざん慰みものにした後、翌日会社にやってきたら混乱はよりひどくなっており、日報課長が馬になっていたというトボケ具合も中々である。狂騒的かつ、不条理ではあるものの、狂った理由が意外にちゃんと説明付けされていたのには驚いた。この短篇集の中ではこれが一番好きである。
筒井康隆の短篇集の面白いところは、明確なオチが予想できず、オチすらも投げっぱなしになる予測不可能さである。当初想定していた話が思いもよらない方向へ転がり始める様がとにかく楽しい。巧みな描写力に裏打ちされた自由自在な発想力と露悪趣味こそが筒井文学の真骨頂だろう。
Posted by ブクログ
作者の破天荒かつ露悪趣味の作風が極めて目立つ作品集であった
第1作目の『九月の渇き』は読むも不快にさせる描写が多いながらもオチがアフターコロナを彷彿させ読み応えのある作品
『天の一角』では一転させて社会派というべき作品ではあるが、その内容はかなりブラック
現在のネット民における死刑肯定論者に一石を投じるような作品で現在読んでも色褪せない
後半の『妻の惑星』、『家族場面』は虚構と現実と私小説とごった混ぜにした様なカオスチックな内容となっており、そのストーリーの内容は何とも理解し難い話になっているが、その異常な内容こそが魅力となっており理解しがたいながらも読み応えのあり奇妙な読書体験ができる作品となっている
筒井初心者はこの作品を最初に手にする事はまずないと思うが、現代社会にも通ずるような作品も多く意外と見過ごしがちな隠れた名作集ではないかと思う
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