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気がつけば、おれは石川五右衛門だった…。神出鬼没に時空を飛ぶ作家一家。読者を物語のブラックホールに突き落とし、ねじれた迷宮へと誘う表題作。被害者の遺族が死刑囚の刑を執行するという狂気の設定で、獄中で執筆し続けた囚人作家の断末魔を描く『天の一角』。長年の忍従に暴発した作家夫人の怒濤の糾弾を活写する法廷劇『妻の惑星』等、表現への熱い慟哭が刻まれた傑作7編。
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Posted by ブクログ
気がつくと石川五右衛門であった表題作「家族場面」は、ページをめくるという行為がこれほど興奮させる行為だったのだということを我々に再認識させる。 死刑制度について深くえぐった作品である「天の一角」、妻の反乱をユーモラスに描いた「妻の惑星」、「猿のことゆえご勘弁」など7つの短編集どれも筒井康隆らしい...続きを読むユーモア、シュールさが織り込められている。読んだことのない作家は短編集を読むと、自分好みかどうかわかる。
笑どころはありつつもシリアスな短編集でした。文学色強め。 死刑執行の行く先を描いた「天の一角」は今まで読んだ筒井の短編の中でかなり好きな作品になった。
筒井らしいスラップスティックな狂気に満ちた短編集である。本作のテーマは狂気ではないかと思うぐらいに狂った短篇が多い。 「九月の渇き」はスカトロ趣味が混在した異様な短篇である。特に大便がうず高く積まれて期限切れのアップルパイのように層をなしている便所の描写や、液体を欲するあまり、他人の小便に打たれて...続きを読むアンモニア臭で赤く目を腫らした赤目こと「能客派」などの怪人など、静かに狂ってしまった世界の描写がとにかく生々しい。 「大官公庁時代」は今となっては時代性を感じるが、それが言い訳にならないぐらいに露悪趣味に溢れた短篇である。組織の仕事の全容を把握している人間は誰一人としておらず、末端の不始末が全てを狂わせていくという描写もさることながら、小悪人が奸計を働かせ、どうしようもなく狂った世界の中で欲望のままに行動するという人間のあさましさが出ていて非常に良い。はしたない、あられもない嬌声をあげるから橋内アラレという名前も悪意に満ちていてひどいが、さんざん慰みものにした後、翌日会社にやってきたら混乱はよりひどくなっており、日報課長が馬になっていたというトボケ具合も中々である。狂騒的かつ、不条理ではあるものの、狂った理由が意外にちゃんと説明付けされていたのには驚いた。この短篇集の中ではこれが一番好きである。 筒井康隆の短篇集の面白いところは、明確なオチが予想できず、オチすらも投げっぱなしになる予測不可能さである。当初想定していた話が思いもよらない方向へ転がり始める様がとにかく楽しい。巧みな描写力に裏打ちされた自由自在な発想力と露悪趣味こそが筒井文学の真骨頂だろう。
「九月の渇き」「天の一角」「猿のことゆえご勘弁」「大官公庁時代」「十二市場オデッセイ」「妻の惑星」「家族場面」
SFの巨匠、筒井康隆氏の著作。短編が数本収録されていたが、中でも「九月の渇き」「天の一角」「猿のことゆえご勘弁」おもしろかった。
作者の破天荒かつ露悪趣味の作風が極めて目立つ作品集であった 第1作目の『九月の渇き』は読むも不快にさせる描写が多いながらもオチがアフターコロナを彷彿させ読み応えのある作品 『天の一角』では一転させて社会派というべき作品ではあるが、その内容はかなりブラック 現在のネット民における死刑肯定論者に一石...続きを読むを投じるような作品で現在読んでも色褪せない 後半の『妻の惑星』、『家族場面』は虚構と現実と私小説とごった混ぜにした様なカオスチックな内容となっており、そのストーリーの内容は何とも理解し難い話になっているが、その異常な内容こそが魅力となっており理解しがたいながらも読み応えのあり奇妙な読書体験ができる作品となっている 筒井初心者はこの作品を最初に手にする事はまずないと思うが、現代社会にも通ずるような作品も多く意外と見過ごしがちな隠れた名作集ではないかと思う
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