あらすじ
顔のあるものがいない…。それが大富豪・入谷精一の葬儀だった。喪主は美貌の後妻・春子。先妻の子供である英作・信子・雅司の三人兄妹弟は、精一の莫大な遺産の出所に疑問を感じ、あるレコードが謎を解く鍵であることを知る。その「夏の初恋」なるSP盤には、奇妙な歌詞が…。富豪の遺族が踏み込んだ時空の迷宮。本格ミステリを凌駕する圧倒的パワー。「RPG試案―夫婦遍歴」併録。
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Posted by ブクログ
主体が欲望の対象とであうことがないと亡霊になるという発想が面白い。
タイムスリップなどのスリップが、ずれること、接地点をなくすことという解釈も言いえて妙だな
Posted by ブクログ
断筆宣言後の復帰作。息の長い超絶な文体を追いかけていくと、とつぜん何の前振りもなく時空間が飛び、物語の因果関係も(亡父と子どもたちの関係も)よじれていく。このスリル!
ファミリーロマンス/SFの形を借りた、実験小説の傑作。東浩紀による「邪眼鳥」解説も秀逸です。
「RPG試案―夫婦遍歴」の方は正直よくわからなかった……。
Posted by ブクログ
父精一の死を受けて四人の子が父の面影、父への欲望を追い求めて時空をも超えて彷徨うお話。語り手が非常に分かりにくく変化し、そのうえ登場人物たちの時間にズレが生じたりもするのだから、兄弟たちが翻弄されついには亡霊になってしまうことに、読み手である私も妙に共感できた気がした。最終的に亡霊にならずじまいの春子が不気味で、その美貌すらもどこか恐ろしく感じる。私には難解でしっかりと理解できた気はしないけど、面白い作品だった。
Posted by ブクログ
断筆解除後の短編二作,「邪眼鳥」と「RPG試案―夫婦遍歴」を収録.非常に端正だが息の長い独特の文体.最初こそ淡々と始まる物語は,だんだんと非現実的・異次元的流れを強くしてゆく.ついには,理不尽な時間感覚のなかで登場人物どうしが奇妙につながりながら,しかし序盤に張られていた伏線が見事に収束していく.再読するほど合点がいって,新たな面白さを発見するという印象.