貴志祐介のレビュー一覧

  • 秋雨物語

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    ホラーというより、“世にも奇妙な物語”を思わせる不思議な短編が4つ入った1冊。
    その中でも特に印象に残った2作。

    『フーグ』
    悪夢のあと、まるで夢そのもののような場所に突然移されてしまう作家・青山の体験が描かれる。本当に瞬間移動しているのか、精神のフーグという症状なのか、境界が分からなくなっていく感覚がじわじわ迫ってくる。残された原稿を通して、現実と非現実が静かに溶けあうような怖さが残る一編。

    『こっくりさん』
    子どもの頃に遊んだ“こっくりさん”の、闇に触れるようなアレンジ。死の選択を迫る儀式なのか、人生をやり直すための導きなのか、その曖昧さが心にひっかかる。ただ怖いだけではなく、人の弱さや暗さにもそっと触れる物語で、最後には静かに納得できる余韻が残る。

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    2025年12月07日
  • 十三番目の人格 ISOLA

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    ネタバレ

    怖かったらどうしようとドキドキしながら読んだのだけど、思いのほか怖くなく、面白く読めました。
    というのも、ISOLAのターゲットは主人公ではないことが明らかで、直接恐怖の矛先を向けられることがなかったからだと思います。

    主人公の由香里は、人の感情を読み取ることができる能力を持っている。
    そのために家族とは絶縁せざるを得なかったけれど、カウンセラーのようなことをやって生計を立てている。
    そして、阪神淡路大震災の被災者の声を聞くというボランティアをしていた時、多重人格障害の疑いのある女子高生・千尋と出会う。

    幼い時に事故で両親を失い、叔父夫婦の家で育てられた千尋は、それまで12人の人格を持っていたが、震災をきっかけに13番目の人格が現れる。
    その非人間的なくらい感情のゆらぎのない冷徹さ。
    元から千尋の中にあったわけではない、13番目の人格が、千尋の周囲に多くの死者を作り出す。

    ISOLAの正体は、ある程度まで読んだらわかる。
    しかしなぜ、そこまで非人間的な存在になってしまったのか。なれてしまったのか。

    由香里の、人の感情を読み取る能力というのは、例えば感情に色がついて見えるとか、感情ごとに形が決まっているとか、そういう共感覚的なものかと思っていたら、わりとはっきり感情を言語化して受け取っていたので、それはちょっとやりすぎでは?と思った。

    由香里と真部は初対面の次の日にはもう食事をともにし、互いに好意を抱いている。
    そういうこともあるけれど、命を賭してまで互いを守りたいという強い気持ちになるには展開が早すぎるのではないか。
    由香里は真部のトラウマの正体を彼の心から読み取ることができるけど、真部はほぼひとめぼれ状態だよね。
    まあ、由香里は美人設定だからしょうがないのかもしれないが。

    真部も、年齢こそ少し上らしいけれど、高身長で将来を嘱望されている大学助教授だし、イケメンだし、頭が良くて思いやりがあって、適度に鈍くて適度に腹が決まっていて、文句なしの男。
    なのに高校生の男の子のように初心。
    ありえへん。絶対モテたやろ。
    女性作家が書いたのだとしたら「妄想か!」と言うところだけど、男性作家が書いているので「願望か!」と言っておこう。

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    2025年12月05日
  • 硝子のハンマー

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    昔観たドラマの原作ということで読んでみた作品。
    ドラマの方のストーリーは全く覚えていなかったので、新鮮な気持ちで読めました。
    色々な仮説と検証の中にはそれが答えかと納得してしまうものもあったりで読んでいて何回も騙されてしまいました(いい意味で)。
    最後の方でタイトルの意味が分かった時にはなるほどなと考えさせられました。
    続編を読むのも楽しみです。

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    2025年12月03日
  • 悪の教典(下)

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    生きてる人間に対して心霊的な恐怖を感じたのは初めて…めっちゃ怖
    上巻では怖い言っても心理的な方かぁって感じだったのにメインで潜在的な恐怖を感じさせてくる
    蓮見のサイコパスさが…
    でも蓮見と園田のアクションシーンはメディアで見たいな絶対少年ジャンプ

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    2025年11月27日
  • もの語る一手

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    ネタバレ

    綾崎隼さんが将棋のアンソロジーに寄稿してると聞いては読まないわけにはいかない!
    今回の綾崎さんの作品は、「僕らに嘘が一つだけ」の2人と同世代の朱莉さんが主人公。もう一度僕らに〜も読み返した上で、こちらも読み返したいな。

    一話目は青山さんのお話らしく、前向きな気持ちになる門出の話。
    葉真中さんは初読み。ただただ少年の手腕に鳥肌。
    弟子にしたかった少年を冤罪から救うという白井さんの話にはびっくり。そういう将棋との絡め方もあるのか。
    橋本さんも初読み。この一戦を勝てば夢が叶うという相手への対応って悩ましい。そこで手を抜かれて夢を叶えること、本気で相手してもらって破れること。
    芦沢さんは気になっていた単行本の表題作?思いがけず読めて嬉しい。本気で目指していて、応援もしてもらって、でもそれを辞めたい時の気持ちを思うと胸が締め付けられた。

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    2025年11月24日
  • コロッサスの鉤爪

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    防犯探偵・榎本シリーズの4作目。鏡の国の殺人に比べて、表題作のコロッサスの鉤爪がトリック、人物描写、動機のいずれにおいても印象が強かった。まず、密室は密室でも”音の密室”とは言い得て妙であったし、トリックも人間、動物、技術など複数の要素が組み合わさって成立していた点がよくできているなと感じた。

    特に、タイトルの”コロッサスの鉤爪”は犯人に復讐を動機づけた決定的な瞬間であると同時に、犯人が大切に想っていた存在を次々に傷つけられた悲しさを象徴するキーワードでもあり、他に候補がないくらいこの物語を表わしていると思った。

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    2025年11月15日
  • 硝子のハンマー

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    密室で起こった事件。状況からして犯人は一人であるものの、その人物「久永」は事件当時猛烈な睡魔から眠っていた。弁護士である主人公は「久永」の無実を証明するべく、防犯コンサルタントの「榎本」と共に密室の謎に挑む。あらすじの通り、シンプルなミステリーであるが、謎の難関さから導き出した答えが何度も何度も否定されてしまう。その度に「これすらも無理ならどうするのか?」といった問いが生まれ、作中のキャラ達と感情がリンクする。後半は犯人の壮絶な過去と経験から犯行に至るまでを語られ、最後は名探偵よろしく謎を解く。現代において探偵としての謎解きに違和感なく落とし込めていると思うが、内容は王道のミステリーである。

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    2025年11月15日
  • コロッサスの鉤爪

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    奇天烈な発想であれ、可能性を一つ一つ排除していく姿勢が好ましい。
    それにしても純子、こんなにポンコツだったか?

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    2025年11月10日
  • 梅雨物語

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    皐月闇
    俳句をテーマにしたミステリー

    ぼくとう綺譚
    昭和初期の銀座
    引き込ませる文体と心理・情景描写はさすが・・!
    頭の中にありありと情景が浮かんできて、ゾクっとさせられる
    なんか最後の一行で一気にチープになってしまったのが残念だけど....

    虫やキノコなど天使の囀りに通じるバイオホラー的なお話もあり
    梅雨時期のしどけないジメッとした雰囲気に浸りがら読むのにちょうど良い
    博識で小説なのに勉強になる 調べながら読むので時間がかかるけど面白いです。

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    2025年11月07日
  • 悪の教典(上)

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    ホラーはホラーでも心理的なホラーだったか
    人心掌握に長けている、一見絵に書いたような完璧教師。自らの目的の為には他人の命も即座に排除する様は、念入りで抜け目の無い計画とも相まって正にホラー
    ただ、授業の仕方は面白いな
    普通に受けてみたい笑

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    2025年11月02日
  • 悪の教典(下)

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    いやー面白かった!
    ハスミンが凶行にかられる過程が良い。
    電気、アーチェリー、剣道、などなど、細かいところまで知識蓄えて書いたんだなーと驚かされました。

    ただ惨劇に入ってからが長く感じて、緊張感というか気持ちの昂りが途中で落ちてしまった。顔と名前を覚えきれないクラスメイトに感情移入できないのも相まって。

    それでもラストはさすがです。とても良かった。

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    2025年10月22日
  • 悪の教典(上)

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    限りなく⭐︎5に近い⭐︎4。
    貴志祐介さん、すごいっすわ。ハスミンのことをじわじわ明かしていくのがすごくうまい。序盤は、あれ?くらいだったところから、終盤はぐいぐいぐいっと。

    ちょっと行動が雑?と思うところはあったけど、惹きつけられるエンタメ性は抜群。
    下巻早く読みたい!

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    2025年10月20日
  • 悪の教典(上)

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    ネタバレ

    読み始めた時は当初は面白くないほどみんなに慕われ・頼られる完璧な高校の先生、蓮見。しかし段々と本来の魔の顔が見えてくる。計画的な犯行によるサイコパスさがあり、途中から蓮見に対して恐怖を感じた。

    性的描写が多いように感じられたため、読む場所は注意が必要かもしれない。

    面白い本だったため是非、続編も読んでみたいと思う。

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    2025年10月19日
  • 兎は薄氷に駆ける

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    著者の作品を読むのは数年ぶりでした。
    一時期とてもハマって多くの作品を読んでいました。
    その時のイメージはホラー作家だったのですが、最近は社会派小説も手掛けているのですね!
    本作は読み応え抜群でとても良い作品でした。

    本作は冤罪をテーマとしたゴリゴリの社会派小説でありながらも、ミステリー要素もしっかりある上に人間の恐ろしさについても描かれていました。
    これまで冤罪をテーマにした作品を多く読んできましたが、何を読んでも悲しくなるし恐怖も感じます。
    今の日本の司法では、いつ自分がこのような目にあってもおかしくないと思わされます。
    ずっとその問題を指摘されているにもかかわらず、今も警察や検察の体制が変わらないのは何故でしょうか…

    社会派小説を読むと様々なことを考えさせられます。
    目を背けずに考え続けたいと思います。

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    2025年10月03日
  • もの語る一手

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    祖父に誘われても覚えきれなかった将棋。そんな私でもすごく楽しむことができた。青山さんと貴志さんのものは特に楽しめました。アマチュア(将棋教室)から的中屋、女流棋士と将棋1つを取ってもいろんな話が出来上がるのはすごい!しかも皆さん超有名な作家さん。1冊で得できました。

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    2025年09月29日
  • 兎は薄氷に駆ける

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    言いたいことがあったとしても、こんなやり方には賛成できないわ。もっと別の方法はないものだろうか。そもそも父親のことがなければ、こんなことにはならなかったのだろうけど。

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    2025年09月27日
  • 悪の教典(1)

    無料版購入済み

    映画化されててタイトルくらいは知ってた
    頻出するトラブルを解決すべく有能な英語教師が暗躍し、その果てに待っていたのは犯罪史上に残る未曾有の大事件だった! と紹介文にあったけど、映画も原作のまだな私には1巻読んだ限りじゃまだ何のことやら
    続き気になる

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    2025年09月19日
  • 十三番目の人格 ISOLA

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    ★★★★☆ハズレがない。感情を読み取ることができるエンパス賀茂由香里、多重人格障害少女森谷千尋。研究者高野弥生さんが後半ああいう形で関係してくるとは思いもよりませんでした。相変わらず好みのホラーで、一気に読み終えました。読み終えた後もまた、不安ですね。

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    2025年08月30日
  • 梅雨物語

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    あらすじに“ホラーミステリー”とあったが、かなりミステリー色が強めの中編集。
    俳句の解釈から真相に迫る「皐月闇」が後味の悪さも含めて1番好み。
    じっとりとした夏の夜にぴったりな一冊。

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    2025年08月23日
  • 慄く 最恐の書き下ろしアンソロジー

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    角川ホラー文庫30周年記念アンソロジー第3弾『慄く』。有栖川有栖、恩田陸、貴志祐介ら豪華作家陣が集結し、異なる切り口で「最恐」を描き出す一冊。
    北沢陶さんはしっとりとした時代物の趣がありながら、確実に恐怖を刻み込み、恩田陸さんは怪異も人外も出ないのに、言葉の積み重ねだけで背筋を冷やす。
    櫛木理宇さんの一篇は真っ向から怖く、しかも霊的ではなく“フィジカルに強すぎる存在”で迫るのが鮮烈。物理的強さがここまで効果的に恐怖になるとは…。
    多彩な恐怖の形を堪能できる、満足度の高いアンソロジーでした。

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    2025年08月21日