貴志祐介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読み物としては面白く、続きが気になる。
合理的かどうか、自分の利益になるか、害になるか、それがすべての判断基準の男、ハスミン。
教師になった目的はなんなのか。
生徒を陵辱するため?
支配しやすいから?
しかし、それにしては問題が発生しやすい場所な気がする。
逆に言えば、問題が発生しやすいからこそ、それを隠れ蓑にもできるのか。
登場人物、特に教師の発言、特に蓮見と釣井は自分以外を見下しており、言葉の端々に動物蔑視の言葉を多用しており、それがすごく嫌い。
そしてリアル。
人間がつくりだした言葉の中には動物を蔑視する言葉がたくさんある。
模倣のために共に過ごした憂実の存在が、蓮見が共感性を得られる最後のチャンスだっただろう。
誰かのために人を殺したのも、これが最初で最後か。
女性を性的欲求を満たすためのペットや道具として見るハスミンは気持ちが悪いし、なんか浅いなと感じた。
なんだ、結局その程度のよくあるサイコパスかと。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ
積み本から選んでみた、従来の貴志さんの不気味に構築された恐怖譚だろうと思ったがちょっと期待外れだった。
一時、二重人格や多重人格の本や映画をよく見かけた。この本はその頃買ったのか、題名のせいか作者の貴志裕介さんの名前をみたからなのか、積んである理由は覚えていない。平成10年発行で12版になっている。人気があって重版になったのかもしれないので、読んでみた。
加茂由香里は人の強い感情がキャッチできるエンパスだった。特殊能力があるための悩みがあったが、能力を使って心に障害を抱えることになった人々を助けられないだろうか。
被災者を助けるボランティアを志して神戸に来た。
両親のない少女が、阪神大震災で怪我をして西宮の病院に入院していた。
少女・千尋の学校のカウンセラーと協力して相談相手になった。そこで千尋の中に顕著な12の人格がいることに気が付く。
暫くして異質な13番目の人格が見つかった。12までの人格には名前をつけたが、13番目の人格「ISOLA」は強い憎悪を秘めて、他の人格を圧倒していた。名前は「雨月物語」の、復讐する女の怨霊から「磯良」と名乗った。
幼い時の事故で大きなトラウマを持つ千尋を、苛めてきた人たちが、次々に心臓発作で死んでいく。
全ての人格を統合して千尋を救いたいと思う由香里は、「磯良」について調べ始める。
そして「ISOLA」は「R]が「L]になっていたことに気づいた。
千尋に面会に来た医師から、彼女が「ISOLATION TANK」と名付けた装置を使って、幽体離脱の実験をしていたことを知る。指導していた助教授の真部も関係した実験であった。
彼女は真部に近づいていく。
千尋に憑依した「ISOLA]が凶暴な姿を見せはじめる。
まさに手に汗握る展開だったが、真実性(科学的な根拠)が少し弱い。
それらしい装置や話を絡めただけ、「雨月物語」から名づけられたという怨霊の「磯良」が不気味だが、それも単なる怪談話の引用で、二人が由香里を迷路に誘い込んだところで、本体から「磯良」を分離する治療法を試すために、幽体離脱の実験装置を動かすがそれも軽い。
後半の研究者二人の関係も、千尋の悲惨な体験を利用するような部分があったが、話の幕切れは、なにもかもなだれ込んで終わった。ホラー要素を詰め込んではいるが、少々不消化のままになった。
第3回日本ホラー小説大賞長編賞佳作。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本格的な密室殺人事件で面白かった。第58回日本推理作家協会賞受賞作(2005年)
日曜日の昼下がり、株式上場を控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓は防弾ガラス、オフィスは厳重なセキュリティーを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の社長室の隣で仮眠をとっていた専務が逮捕されて・・・
弁護士青砥純子と、防犯コンサルタント榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。
エレベーターで12階に行くには暗証番号でしか動かない。そこに介護サービス会社の社長室、副社長室、専務室、各秘書の待機室があった。社長室、副社長室、専務室は鍵のないドアで繋がっていた。
以前、社長室が狙撃され、被害はなかったが、社長の強い意向で、前面の硝子は厚みのある防弾硝子に張り替えられていた。
また、要所には監視カメラが設置され、入るには、管理人がチェックもした。
日曜日、管理人はテレビの有馬記念に釘付けだった。
落し物入れに馬券の入った封筒がおいてあったのを見つけたが、管理人室のテレビと監視カメラのモニターは視野範囲内に設置されていて不審者を見逃すこともない。
社長の死体は、ゴンドラに乗って窓拭きをしていた清掃員が発見した。
社内にある、介護システム開発課では、介護用の猿を訓練し、介護ロボットも作り、そのデモを行っていた。
専務は犯行時間には眠りこけていたというのだが12階は密室状態だった。おりしも副社長は不在だったので、専務の話は問題にされなかった。
弁護依頼を受けたのは弁護士の青砥純子だった。
彼女は紹介された犯罪コンサルタントという男、榎本径とともに、密室の怪を解くことになる。
逮捕された専務に夢遊病に似た睡眠障害はなかったか。
監視カメラは正常に動いていたか、
何も映らないマジックのような方法はないか。
榎本は職業柄、セキュリティーの知識は豊富な上に解錠の腕も抜群だった。
彼は、調査のために夜を選んで忍び込み、犯罪の痕跡を探す。
介護猿やロボットを使わなかったか。
さまざまな疑惑が生まれ、さらに混迷の度は深まっていく。
中ほどから、犯人の生い立ちなど倒叙法ミステリに移行する。
犯人と青砥、榎本の最後のやり取りは、榎本の面目躍如、冴えた推理が犯人の智恵に迫る。
犯人の巧緻を極める計画も興味深く、それをついに突き崩す爽快感もある。
このコンビは続きがあるらしい。 -
Posted by ブクログ
この本がドラマ化されたのが2012年4月。13年も前になる。
とても面白かったのを覚えている。
今、オンデマンドで見てもきっと面白いと思う。
だけど、映像は粗く、ファッションや髪型、いろんなところに「古さ」を感じてしまうだろう。
この小説が刊行されたのは2011年。15年前。
今、読み終えたけれども、古臭さは全く感じない。純粋に面白いし、密室トリックは斬新そのもの。
きっとこれが本の「良さ」なんだと思う。
いつ読んでも変わらない面白さ、楽しさがある。
もちろん映像だって不朽の作品はあるし、何度も観ても面白いものはある。
だけど、映像技術が進歩するほど、過去の作品の粗さが目立ってしまう。ストーリーや演技は別として。
どんどん読みたいと思う新作は出続けているけれども、たまには昔の作品を読んでみるのも新作とは違う新な面白さを見つけられるかもしれない。
-
Posted by ブクログ
旅行の飛行機で読もうと買ったホラーアンソロジー。
飛行機では結局1話目しか読まなかったけど、それ以降少しずつ読み進めた。
いろんなタイプの話が入ってて楽しかった。お得感。
特に印象的だったのは北沢陶さんの「お家さん」と恩田陸さんの「車窓」
お家さんは、大正時代に大阪の商家へ丁稚奉公する少年のお話。
時代や言葉が相まってすごく雰囲気があったし、ラストも恐ろしくて好き…
こういう作品もっと読んでみたい!
車窓は、新幹線から見える看板のお話。
少ないページなのにすごく引き込まれた。
ラストはいろんな解釈ができそう。
いろんな作家さんのお話読みたい欲でアンソロジー何冊か買っちゃったけど、読むペースが追いつかず、増えてく積読本…
仕事納めもまだだけど、何を読んで年を越そうか考えるのがわくわく。 -
Posted by ブクログ
自分の書きたいことを面白く、分かりやすく伝えることがエンタメ小説の極意。
著者の長編ホラー小説『天使の囀り』がものすごくおもしろくて(これぞエンタメ!)手に取った1冊
創作にまつわる手の内を包み隠さず、プロットの一部まで公開されていて(しかも天使の囀り)、小説指南本のなかでもかなり具体的な印象
特に参考になったのが「どうすれば文章力は上達するのか?」というところ。
好きな作家の文体を真似したり、模写したりというのはよく言われることだけれども、結局それだけだと劣化コピーになってしまう。
著者が自ら効果的だったと語るのは、「自分が書いた文章を何度も推敲すること」。そうすれば自分の癖も見えてくるし、何より実際に書くという行為に進める。
面白い物語を考えて、小説の形にしたいと思っている人におすすめ