藻谷浩介のレビュー一覧
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この本からは、物事の考え方について、とても学ぶところが多かった。新聞や世論の上で無根拠に常識となっている、曖昧な意見に何も考えずに乗るのではなく、税務署や市町村のホームページ上から誰にでも手に入るシンプルなデータから、自分自身でロジックを立てて考えることの重要さがよくわかった。
「失業率」のような相対値や「前年比」のような短期指標ではなく、「就業者数」や「高齢者人口」のような絶対値を用いることや、「課税対象所得額」のような全数調査による確実な数値を用いるべきということも、勉強になったことだった。
講演録の内容をベースにしているということで、語り口が上から目線で、ちょっとそこが気になるところ -
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タイトルの件はまさに誰もが疑問に思うところ。
まして建築なんかやっていたら、やれ都市間競争だ、再開発だ、とそういうものばかりに晒され、「ホントにそれ正しいの?」と思いつつ、「仕事だから仕方ないじゃん・・・。」と。まあそういう忸怩たる思いはあるわけです。
この本を読んでいて思ったのは、結局のところ地域ごとにいろいろな目標や考え方があっていいのだということ。
グローバルな競争に乗る(経済成長をめざす)のは、東京、大阪の2都市くらいでいいわけで、日本全体がそれをめざす必要は全くない。
その他大勢は、金儲けではなく、多様な儲けでみんながハッピーに暮らせるようになればいい。
多様な儲けとは、美味いもの -
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気鋭の経済学者とコミニュケーションデザイナーの「地域の豊かさ」を通して、「これからの経済と豊かさ、お金」を問う対談。
ともに現役で地域に関わる2人の対談なので、実感を伴った考察や提言が並ぶ。藻谷氏の物議を醸す辛辣さもここでは影を潜め、明るいトーンで「自給自足の豊かさ」「バブルまでため込んだ日本の物的、文化的ストックの価値」を語り、未来の希望を肯定的に語る。
明るい気分になるし、自分でも未来を考えたくなる内容だが、少し物足りないのは、やはり地方や高齢化とは切り離せない医療に関する話題が出なかった事。
次に同じ筆者の論を読む時には是非そこんとこ期待したい。 -
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罠、ワナ。
これは捕らえられて、どうにも出来ない状態。経済学的に定義されている言葉は〝流動性の罠“であり、先ずはそれとこの本の金融緩和の罠の違いに戸惑う。ほとんど同じ意味に聞こえるが。
「政策を打っても効かない」状況、逆に「政策が効きすぎて止められない」状況。金利を下げても期待通りの投資や消費が得られず、もはやゼロ金利に近く打つ手がないのが流動性の罠。
金融緩和の罠は、金融緩和をやめようとして金利を上げると、国の借金(国債の利払い)が急増したり株や不動産バブルが崩壊。円高・株安が起きて景気悪化になるなど、やめたくてもやめられないまさに“罠”にハマった状態。どちらかというと、流動性の罠を解 -
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ネタバレ「里山資本主義」の言葉を初めて聞いたが、とても魅力的な考えだと思った。今の社会はお金が最優先になっているけど、能登半島や東日本の震災のように、いざという時お金はただの紙切れとなってなんの役にも立たない。しかし、里山暮らしでは食べ物やエネルギーを自分達で自給した暮らしが可能なので、災害があってもあまり影響を受けない。もちろんお金は大事だからある程度稼ぐ必要はあるけど、里山の恩恵も利用する。出来ないことはお金に頼り、自給できるものは自給する。この二刀流の生活が1番基盤が強くて良い生き方だと思いました。自分も今ベランダ菜園をしておりゆくゆく田舎暮らしをする予定なので、とても参考になりました。お金だけ
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旅をしているような気分で読める、好奇心を満たしてくれる本。
ただ、一カ所に長く留まるような旅ではなく、次々と移動するので、深く味わうというよりも、テーマをもって確認してそれを満たすという「社会人旅」という感じ。象徴的なのは、空港ラウンジで一息。ビジネスクラスでの移動など、バックパッカーというよりも取材旅行だ。
例えば、途上国の成長とそこに潜む問題点の探求。ラオス、東ティモール、パラグアイ。治安が悪かったニューヨークのサウスブロンクス、今はどうなったのか。バルカン半島の複雑な歴史と現状を、旧ユーゴスラビア諸国とアルバニアについて。ルクセンブルクの経済と社会。レバノンとヨルダン、戦争と平和。
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率直に、理想論すぎると感じた。田舎の良いところだけに目を向ける田舎礼賛のきらいを感じた。マネー資本主義のサブシステムとしての里山資本主義を掲げながら、途中でマネー資本主義の上での日本の未来を語り、主題がよくわからなかった。経済換算できない価値を大事にするという意味では賛同できる考えであったが、マネー資本主義を知らないとこのシステムの妥当性は判断できないと感じた。これはタンザニアの彼がいうシステムからの脱却とほぼ同義だと思う。結局のところ個々人が何に幸せを感じるかであり、里山資本主義が正しいというのは、お金で物を買うことに幸せを感じる人の主義を否定し、彼らの生きるところを奪うことになると感じた。
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