あらすじ
「生産性の上昇で成長維持」というマクロ論者の掛け声ほど愚かに聞こえるものはない。現実は内需にマイナスに働いているからだ。「現役世代人口の減少」、日本の問題はここにある! 誤った常識を事実で徹底的に排す!!
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再読。
15年前の書籍だが、著者の分析は的を射ており、現状を著者は良しとするのかは私にはわからないが、物価高騰、新卒者の初任給上昇、外国人観光客の大幅増(インバウンドの増加)などを見ると、本書の意見の意見の方向性で日本(経済)は進んでいるのだと感じる。
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自分の故郷での講演に参加した妹から薦められて読んだ、2010に書かれた本。もっと早く読みたかった。対策、提言に至るまでの前半は事実・現実をベースに、日本の問題がどこにあるのかを証明したもの。生産年齢人口の長期的な減少による消費・需要の減少が主要因なのに、それを正面から受け止めず、無理したために景気が良いとは実感できない状態。とにかく成長、などという言葉では解決できない問題。メディアからの歪んだ報道にいかに躍らされてきたかよく分かる。
■SY…数字を読まない
■GM…現場を見ない
■KY…空気しか読まない
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真打ち登場。
勝間さんによる、デフレ問題の提起の後、
エコノミスト等の書いた経済書を読んできたが、
それを突き破る本が登場したという思い。
*もちろん、本書に対する反論も期待している。
特にインフレ誘導については、
勝間さんらが主張しているコアな部分なので、
このソリューションをどのように捉えればよいのか、
知りたいところ。
また、藻谷氏の講演や書籍には、
多くのヒントがありそう。
今後もウォッチしていきたいところである。
(でも、これまで黙殺されていたのでしょうか)
Posted by ブクログ
日本開発銀行など政府関係の公職を多数勤めた経済の専門化により、主として日本経済の実態について語った本。日本経済の低迷は、生産年齢人口の減少が主因であるとの意見には納得できた。展開は、論理的であり、解決策にも違和感はない。特に高齢富裕層のお金を循環させることが大事との意見は、大いに賛同できる。ただ、文章が話し口調であり、学術的な論文形式になっていないところが気になった。印象的な箇所を記す。
「首都圏では00-05年の5年間で106万人の人口増加があったが、生産年齢人口は減少している。0-14才は6万人の減少、65歳以上が118万人増加している」p99
「首都圏の高齢者福祉の現場が需給逼迫している原因は、住民の加齢による高齢者の絶対数の激増という単純な事実であることを誰も言わない」p114
「団塊世代が住宅を買い終わってしまえば、日本史上二度と同じレベルの住宅需要が発生することはない」p124
「(日本の経済状況について)戦後復興の中で、たまたま団塊世代が生まれた。彼らが加齢していくのに伴い、そのライフステージに応じてさまざまなものが売れ、そして売れなくなっていく。この単純なストーリーで説明できてしまう」p125
「つまり恒常的に失業率の低い日本では、景気循環ではなく生産年齢人口の波、つまり「毎年の新卒就職者と定年退職者の数の差」が、就業者総数の増減を律し、個人所得の総額を左右し、個人消費を上下させてきた」p131
「国内新車販売台数、小売販売額、雑誌書籍販売部数、国内貨物輸送量、蛋白質・脂肪摂取量、国内酒類販売量、一人当たりの水道使用量は、まさに「人口オーナス」の直接的な表れです」p135
「同じような商品が供給過剰に陥っていないこと、顧客側の品質への評価が価格転嫁できていること、総じて言えば「ブランド」が高いかどうかが、内需そしてGDPが拡大する決め手なのです」p147
「(定年退職者が増えると)多くの高齢者である投資家は、さらに投資額を増やすことばかりに関心があって、豪邸一軒、車一台新たに買いません。パーティー一つしないのですから、内需は縮小の一途です」p148
「発生した消費者余剰(もらっても使われないお金)は、高齢者が老後に備えて確保する極めて固定性の高い貯蓄という形で「埋蔵金」化してしまい、経済社会に循環していません」p168
Posted by ブクログ
「そうだったのか!」という目ウロコ本。提言も具体的で納得感が高い。「難しく考えて簡単な答えを見落としてしまう」「本質を捉え損ねて効果の薄い打ち手を乱発してしまう」というのは日々の仕事で自分もやりがちなので、他山の石としたい。オススメの一冊。
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【読書メモ】
●経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ。
●日本は、中国任せるものは任せ、フランス、イタリア、スイスを追って高級品分野にシフトしていくべきなのです。だって、ハイテク分野では日本にかないっこないフランスやイタリアが、人口でも半分ほどしかない彼らが、ブランドの食料品と繊維と皮革工芸品を作ることで、日本から貿易黒字を稼いでいるんですよ。東北地方と大差ない人口のスイスなんか、医薬品に高級時計なんかもあって、人口比で見ればはるかに大きな黒字を稼いでいます。日本だってアジア相手に同じことができるんです。
●第一に地域経済を左右するのは何と言っても雇用の増減(就業者数の増減)であり、第二に失業率だの有効求人倍率だのは定義上も現実にも必ずしも雇用の増減とは連動しないものだからです。
●「生産年齢人口減少」と「高齢者激増」の同時進行を、「少子高齢化」というズレた言葉で表現する習慣が、全国に蔓延しています。ですが「少子高齢化」というのは、少子化=子供の減少と、高齢化=高齢者の激増という、全然独立の事象を一緒くたにしているとんでもない表現であり、「子供さえ増やせれば高齢化は防げる」というまったくの誤解の元凶にもなってしまっています。さらには最も重大な問題である「生産年齢人口減少」を隠してしまってもいますね。
●「少子化」といえば「出生率の低下」だと思っている人が非常に多いのですが、そうではなくて文字通り子供の減少、つまりは「出生数の減少」こそが少子化です。そして「出生率の低下」というのは、少子化が起こる二つの原因の一つにすぎません。もう一つの原因が親の数の減少、正確には出産適齢期の女性の数の減少です。こっちは出生率とは違って後でいじることができません。ちなみに最近の日本で起きているのも、正にこの「親の数の減少」による「出生者数の減少」でして、少々出生率が上がったくらいでは改善は生じません。
●株主資本主義なるものは、短期的視野の株主と長期的視野の株主を同等に扱うという現状のやり方を放置している限り、GDPの停滞ないし減少を不可避的に招くのです!
●日本の産業は、付加価値額を上げる方向に、人減らしではなく商品単価向上に向け努力するべきなのです。その結果として生産性が上がるのです。
●現在の先進国において絶対的に足りないもの、お金で買うこともできないのは、個人個人が消費活動をするための時間なのです。
●では日本経済は何を目標にすべきでしょうか。「個人消費が生産年齢人口減少によって下ぶれしてしまい、企業業績が悪化してさらに勤労者の所得が減って個人消費が減るという悪循環を、何とか断ち切ろう」ということです。
①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう
②生産年齢人口が該当する世代の個人所得の総額を維持し増やそう
③(生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう
●第一は高齢富裕層から若い世代への所得移転の促進、第二が女性就労の促進と女性経営者の増加、第三に訪日外国人観光客・短期定住客の増加です。
●それでは、企業に何ができるのでしょう。一言で言って、年功序列賃金を弱め、若者の処遇を改善することです。特に子育て中の社員への手当てや福利厚生を充実すべきなのです。彼ら若い世代にはたとえ大企業の社員であっても金銭的な余裕はありませんから、手取りが増えた分は使ってくれますし、休みが増えた分は消費活動にも回してくれます。・・・現在進行しつつある団塊世代の退職によって結構な額が浮いてくる人件費を、なるべく足元の益出しに回さずに(利益を出せば出すほど配当などの形で、あなたの商品を買いもしない高齢富裕層に還元されてしまいます。)、若い世代の人件費や福利厚生費の増額に回すということです。
●成功のカギは、①高齢者の個別の好みを先入観を排して発見すること、②高齢者が手を出す際に使える「言い訳」を明確に用意することに加え、③多ロット少量生産伴うコスト増加を消費者に転嫁可能な水準以下に抑えること、になります。私はこの③を「値上げのためのコストダウン」と呼んでいます。
●格差是正ではなくて、一定の絶対水準以下に落ち込んだ社会的弱者の、人間としての最低限のラインまでの救済こそが必要です。当然そこまで落ち込んでいない人との格差は残りますが、少なくとも「貧富の差に関係なく受けることのできる教育と平均寿命は違わない」というようなところが目指すべき水準になるのではないかと思っています。
●反証がないことだけを暫定的に信じる、明確に反証のあることは口にしないようにすることが、現代人が本来見につけておくべき思考法です。実際には世の中の多くの事象は証明されていない(証明不可能な)ことなのですから、反証があるかどうかを考えて、証明はできないまでも少なくとも反証の見当たらない命題だけに従うようにしていれば、大きな間違いは防げるのです。
●今の日本に本当に大事なのは、仕事と称して縮小する市場相手に死に物狂いの廉価大量生産販売で挑むことではなく、家庭を大事にして再び子供が生まれやすい社会にすることでしょう。その重要な責務を、女だけに担わせて男は担わないというのは、時代錯誤も甚だしい。仕事が大事で家庭が後回しというのは、今世紀の日本ではもはや社会悪のレベルに達した考え方です。
●日本で女性の就労を進めるには、さらに三つの壁があります。それは、①男の側の心の壁(「自分は女ではない、男である」ということを誇りに思うよう躾けられてきた一部男性の「人格形成不全」)、②女の側の心の壁(女が頑張ると女が足を引っ張るというさみしい現象)、そして心ではなく③現実の壁(働く女性の代わりに家事を誰が分担するのか)、の三つです。心の問題に関しては、若者への教育を改善しつつ世代交代を待つしかないともいえますが、最後の問題については、明らかに心強い援軍が存在します。企業社会から退場しつつある高齢男性です。彼らが社会人として蓄積してきた能力と手際を持って、若い女性の代わりに家事に当たれば、その分彼女たちは所得を得て経済を拡大することができ、高齢男性の側も賞賛を得ることができます。
●私は「努力できるのにしない人間をそれなりに締め上げること」は必要だと思っていますが、「努力できる、できない」を「結果から一律に判別する」のはそもそも難しいと思っています。さらには、医療福祉や教育といった、個人の生存権や次世代の機会均等に関係する部分を締め上げに使うことは反対です。
●高齢者の激増に対処するための「船中八策」
1)高齢化社会における安心・安全の確保は第一に生活保護の充実で
2)年金から「生年別共済」への切り替えを
3)戦後の住宅供給と同じ考え方で進める医療福祉分野の供給増加
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経済変動を人口構成の変化でうまく説明する藻谷氏の新著です。
今のデフレや不況をうまく説明するのは「労働力人口の減少」と明示され、改めて納得しました。
前著の「実測!ニッポンの地域力」でも明らかでしたが、これを北海道にあてはめれば大体の景気動向は解ってくるのではないでしょうか。
そこからちょっと発展させて商圏を仮定して(例えば石狩市は独立した商圏ではなく、札幌圏、など)今後数十年の人口動態予測と重ねれば小売業、飲食業など、個人消費関連の産業のマーケット規模は大体解るのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
現在日本で起こっているのは、100年に1度の不況といった景気循環の話ではなくて、2000年に1度の生産年齢人口の減少といった構造的変化であるということ。高齢者激増(超高齢化)、生産年齢人口(現役世代)減少、少子化(出生率低下×出産適齢期人口減少)は、日本国内に満遍なく恐るべき変化をもたらしていること。景気の波より人口の波。その人口の波に飲み込まれておぼれてしまうのではなく、能動的に乗りこなす意志と実行力が本当に重要。
(3つの目標)
①生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める
②生産年齢人口に該当する世代の個人所得総額を維持し増やす
③個人消費の総額を増やす
(処方箋)
①高齢富裕層から(消費性向の高い)若年世代への所得移転
・団塊世代の退職で浮く人件費を若者の給料へ(年功賃金を改善し、若者の処遇を改善、手当てや福利厚生の充実。エコへの配慮と同じ感覚で自発的に取り組むこと。
・利得と建前の言い訳付与と値上げのためのコストダウン
・生前贈与の促進
②女性就労の促進と女性経営者の増加
③訪日外国人観光客・短期定住客の増加
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約15年前に書かれた本ではあるが、今でも状況は変わっていない
私達は政府やオールドメディアの言うことばかりを鵜呑みするのではなく、しっかりと日本の状況を見て、考える必要がある。
少なくとも今の政府メディアが言うことを信じて進めば、失われた◯年は増えていくだけだと思う。
私達国民1人1人が自分で考え、方向性を決めていかねばならない。
子供達に残すのは絶望感ではなく、希望である。
そんなことを決意させてくれる一冊だった
Posted by ブクログ
デフレが続く日本についての対処法が的確であり、この当時から主張されている内容は現在でも喧伝されるべき内容です。
ただし、デフレが続く日本の主軸理由が人口の減少というのは少し的外れに感じますし、貨幣供給などの金融政策に関しても筆者の考えと私は異なります。どちらかといえば、日本国内の政治的(政策の)な動き、国内の主要企業の動きがデフレに進んだ大きな要因と考えます。
人口減少によってもGDPが変化していない、あるいは増加している国もかなりありますし、農業部門でも従事する人口が減っても4倍以上の収穫量を維持しています。生産維持を含めてGDPの付加価値は必ずしも人口減少で一括りにできるものではないでしょう。
Posted by ブクログ
如何に自分の思慮が浅く、日々の様々なことに疑問を持つことなくやり過ごしているか思い知らされた。
景気をよくしよう!と言うのは、健康になろう!と言うようなもので、なぜ不健康なのかが分からないと対処のしようがない、その通りだと思った。
生産年齢人口の減少は日本の雇用や内需を維持させつつ同時に生産性も高めていけるチャンスだと説いていたが、企業が景気対策を政府任せにしない、困窮した高齢者へのセーフティネットワークを万全にすることで高齢者の退職を促し、その分を若い世代に回すなんて実際可能なのだろうか...
「寡欲都市 TOKYO」にあった“美しい縮小”とも重なるのかな?
Posted by ブクログ
藻谷浩介(1964年~)氏は、東大法学部卒、日本政策投資銀行勤務を経て、日本総合研究所主席研究員を務める、地域エコノミスト。
私は新書を含むノンフィクションを好んで読み、興味のある新刊はその時点で入手するようにしているが、今般、過去に評判になった新書で未読のものを、新・古書店でまとめて入手して読んでおり、本書はその中の一冊である。(本書は2011年の新書大賞第2位。累計販売部数50万部超)
私は、著者の本では、『世界まちかど地政学』(2018年)と『世界まちかど地政学NEXT』(2019年)をこれまでに読んでいるが、本書はもっと早く読んでおくべきであった。
本書は、タイトル通り、バブル崩壊後に定着した日本のデフレ(実際の時期はバブル崩壊より後ずれしており、その背景は本書で語られている)の正体を解き明かし、その処方箋を示したものだが、その分析の手法は、政府やマスコミ(時には学者も)が語る曖昧なイメージや「空気」に捉われずに、徹底してデータと事実に基づいたものであり、分かりやすく、かつ説得力がある。
そして、本書が示すデフレの正体(=日本経済の停滞の原因)とは、「生産年齢人口の減少による内需の縮小」であり、それが、団塊世代の一次退職→彼らの年収の減少→彼らの消費の減退→内需対応産業の一層の供給過剰感→内需対応産業の商品・サービスの値崩れ→内需対応産業の採算悪化→内需対応産業の採用抑制・人件費抑制→内需の一層の減退、というスパイラルで、国内経済の縮小を引き起こしているとする。原因は、巷で言われる、国際競争力の翳りでも、地域間格差でもないのである。
更に、「生産年齢人口の減少による内需の縮小」が原因である以上、解決するための目標は、生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める、生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす、個人消費の総額を維持し増やす、の3つであり、具体的には、①高齢富裕層から若者への所得移転、②女性の就労と経営参加、③労働者ではなく観光客・短期定住客としての外国人の受入れ、を進めることなのである。巷で言われる、生産性を上げろ、経済成長率を上げろ、公共工事を景気対策として増やせ、インフレ誘導をしろ、エコ対応の技術開発でモノづくりのトップランナーとしての立場を守れ、という話ではない(もちろん、やり方次第で役には立つが)のだ。
著者は、本書の内容に対して、(伝統的な経済学の知識を有する人々から)反発を受けることは百も承知しており、想定される反論への反・反論を随所に交えているのだが、私は学生時代に経済学をかじっているとはいえ、反・反論の適否の判断はつかないし、この類の本の常として、著者の主張を鵜呑みにすることには慎重になるべきかも知れない。それでも、私としては、「経済規模に決定的な影響を与える人口が減る社会で、(生産性の向上だけで)経済成長を維持することはできるのか?」という漠然とした疑問は常々感じていた(る)ので、著者の主張は抵抗なく受け入れることができた。
長引く日本経済の低迷の原因と、具体的な処方箋を考えるに当たって、大いに参考になる一冊である。(10年以上前の本だが、現在にもそのまま通用する)
(2022年10月了)
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「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ。」この本の要旨を一言でいえばそういうことになりましょう、と著者はあとがきで述べているが、確かに一言でいえばそうだ。団塊の世代、団塊ジュニアのいびつさが非常に大きな影響を及ぼしている。
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10年近く前に出された本だが、今現在の経済状況にそのまま当てはまる。今の経済不況をもたらしている原因は生産年齢人口の減少であり、その事実を知ってずっと景気が回復しないことも納得。若者の所得を増やすこと、女性の就労を増やすこと、外国人観光客を増やすことがこれから求められるということも、うーん、なるほどーと目からウロコだった。
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日本の経済現象を人口構造の基本的変化(=少子高齢化)から説くのは藻谷先生の一貫したやり方。
この本は、これまで各地で行ってきた講演を集大成した一冊。
私などは藻谷先生の話は至極当然だと思うが、あちこち(特に経済学者)から反論もあるらしい。
経済学者って、けっこうアホな人が多いような気がする。
藻谷先生は話も上手そうだし、内容も面白そうなので、一度講演を聞きに行ってみたいものだ。
Posted by ブクログ
デフレの正体を、「団塊世代の一次退職→彼らの年収の減少→彼らの消費の減退→内需対応産業の一層の供給過剰感→内需対応産業の商品・サービスの値崩れ→内需対応産業の採算悪化→内需対応産業の採用抑制・人件費抑制→内需の一層の減退という国内経済縮小の流れが渦を巻いているのです」と説明している。
社会学部出身の自分としては、著者の主張のように、人口構成の変化に気がつけなかったことが恥ずかしい。
本書で残念なのは、著者は貧困者の救済も必要としながら、そのあたりの記述は迫力がないというか、貧困の現場で起きていること(湯浅氏や堤氏が著す貧困の実態)を理解していないような気がした。日本政策投資銀行勤務だから仕方がないか。
そんな粗探しより、銀行員(一介の会社員)が学者や政治家・評論家よりもまともなことを言っているのだからそれだけで十分著者はすごいと思った。
Posted by ブクログ
あとがきに書いていますが、
「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、
つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」
というのが、この本の要旨です。
前半部では、具体的な数字をもとに、
国際競争の面や地域間格差など、よくよく言われていることを
バスッと斬って捨てます。それも、論理的に、盲を開くように。
中盤は、人口の波について。つまり現役世代が減るために、内需が減るのです、
ということを丹念に語ってくれます。
後半部は、筆者の提案です。
以下、ツイートから。
___
生産性向上の名の下、機械化したりして一人あたりの仕事量を増やし、
退職者をつのり人件費を削ったところで総体的にみたら経済の規模を縮小していることになるんか。
内需が減少するものねぇ。
生産性向上で人件費を抑えるくらいならば、
商品力向上に力を注ぐべきだぁね。
それを阻害するのが、短期的に株式を取得して売って利益を得る人たちとそのシステムなのだなぁ。
短期的に利益を出すことは、人件費を抑えることで実現するから。
生産者(労働者)は消費者でもあるんだよなぁ。
仕事に追われてお金を使う暇がないっていう友人がいますが、
そういう人の使われ方が内需を低下させているのかね。
___
問題は内需の減少なんですよね。
デフレで何が悪いかっていうのは、それだけ経済の規模が小さくなると、
税収が下がって国力が弱くなることです。
世界規模でそうならばどうってことないのかもしれませんが、
世界の中の一国としてデフレ傾向が続くと、各国との力関係が変わってくる。
さぁ、安倍内閣はどうやって内需を拡大する方向へ持っていくでしょう。
この本は大きなヒントになると思うんだけどなぁ。
難しいけれど、興味深い本でした。
Posted by ブクログ
この本からは、物事の考え方について、とても学ぶところが多かった。新聞や世論の上で無根拠に常識となっている、曖昧な意見に何も考えずに乗るのではなく、税務署や市町村のホームページ上から誰にでも手に入るシンプルなデータから、自分自身でロジックを立てて考えることの重要さがよくわかった。
「失業率」のような相対値や「前年比」のような短期指標ではなく、「就業者数」や「高齢者人口」のような絶対値を用いることや、「課税対象所得額」のような全数調査による確実な数値を用いるべきということも、勉強になったことだった。
講演録の内容をベースにしているということで、語り口が上から目線で、ちょっとそこが気になるところはあるけれど、説明の筋道は理路整然としていて、かなり説得力がある。
分析だけではなく、「ではどうするのか」という具体的な指針が示されていることも、よかった。
「デフレの正体」という、あまりインパクトやひねりのない単純なタイトルなので、そのぶん目立たずに損してしまっているような感じがあるものの、日本経済の根本的な問題についてきっちりと大所高所から論じた、とても内容の濃い本だった。
現実には中国が繁栄するほど、日本製品が売れて日本が儲かるのです。中国経済がクラッシュすれば、お得意さんを失う日本経済はそれこそ100年に一度の大打撃です。(p.41)
習い性と申しますか、日本人は自分のことを、「ご近所のブルーカラー」「派遣労働者」だと思い込んでいます。「賃料の安い仕事が得意だったのに、それを周辺の新興国に奪われてジリ貧になっている」と、勝手に自虐の世界にはまり、被害妄想に陥っている。ところが実際は日本は「ご近所の宝石屋」なのです。宝石屋なので、逆にご近所にお金がないと売上が増えません。ご近所が豊かになればなるほど、自分もどんどん儲かる仕組みです。事実ここ数年、ジリ貧のアメリカ相手の儲けはもう伸びていませんが、ご近所の中・韓・台が成長したおかげで、高い製品もよく売れてたいへん儲けさせていただいた。資源高で潤ったロシアからすら、貿易黒字をいただいていたのです。これで他の世界中の途上国もお金持ちになったら、日本はさらにさらに儲かるわけです。(p.46)
日本では、マスコミもシンクタンクも、場合によっては学者までもが、有効求人倍率や失業率という数字ばかりを使い、就業者数の増減をチェックしていません。理由は「学校でそう教わった」「日本では皆がそれを使っている」という以外に考えられないわけですが、それではなぜ米国経済の基本指標には「非農業部門の雇用者数の増減」が使われているのか(なぜ失業率がメインとして使われないのか)、なぜ「有効求人倍率」が使われていないのか、彼らは考えたことはないのでしょうか。(p.84)
最近は若い人にも物欲のない人が増えていますが、増える一方の高齢者はなおさら物質面では満たされていて、モノに対するウォンツがない。最も強いウォンツは、将来健康を損なった場合の医療福祉サービスの享受なので、そういう可能性に備えてお金を貯めておくのです。これは医療福祉サービスの先買い(コールオプション)なので、何にでも使える(経済学に言うところの)貯蓄ではなく、流動性が極めて乏しいものです。(p.162)
近代経済学もマルクス経済学も、労働と貨幣と生産物(モノやサービス)を基軸に構築されてきた学問です。ですが現代の先進国において絶対的に足りないもの、お金で買うこともできないのは、個人個人が消費活動をするための時間なのです。
最も希少な資源が労働でも貨幣でも生産物でもなく実は消費のための時間である、というこの新たな世界における経済学は、従来のような「等価交換が即時成立することを前提とした無時間モデル」の世界を脱することを求められています。我こそは経済学を究めん、と思っている方、ぜひこの「時間の経済学」を考え直し、そして、国民総時間の減少という制約を日本は乗り越えられるのか、という私の問いに答えを出してください。(p.174)
私は、「外国人労働者導入は必然だ」と主張する議論を読むたびにいつも思うのです。あなたの目の前に、教育水準が高くて、就職経験が豊富で、能力も高い日本人女性がこれだけいるのに、どうして彼女らを使おうとせずに、先に外国人を連れてこいという発想になるのか。日本女性が働くだけで、家計所得が増えて、税収が増えて、年金も安定する。そもそも女の人が自分で稼いでお金を持っていただいた方が、モノも売れるのです。車だって洋服だって日経新聞だって、働く女性が増えれば今以上に売れることは確実です。(p.226)
日本人のほとんどは歳を取れば取るほど外国では暮らせません。言葉の問題が最大ですが(日本語以外で医者にかかれるだけの外国語会話力がある人は本当に限られていると思います)、水にしても食事にしても気候風土にしても、日本の特殊に恵まれた環境に慣れ親しんだ人間はとうていこの列島を出て行けるものではありません。出て行ってもいずれ帰りたくなります。(p.251)
Posted by ブクログ
とかくデフレの原因を構造不況などにしがちなところに、一言で人口動態と言い切る著者が潔い。
また、そのための具体的施策を色々述べているのが面白い。
Posted by ブクログ
経済は、率ではなく総量の問題。目から鱗。◆◆p231 お受験エリートの欠陥=証明が出来ない命題への対処不能。現代は、反証のないことだけを「暫定的」に信じる。明確な反証のあることは口にしないようにすることが現代人の思考法では?その通り。◆◆医療問題解決を戦後の住宅政策=公団住宅から住み替えのパターンでできるのでは?◆◆著者の他の本も読むべきかな。
Posted by ブクログ
講演がもとになっているから読みやすい。前半は国が出しているデータなどをもとに分析。目からうろこです。後半はどうすればいいのかも示しています。もちろん困難が伴うでしょうけど。臆することなくがんがん書いて(しゃべって)ます。
Posted by ブクログ
ちまたで言われている不況やこれからの日本経済の行方についてなどがいかにあてにならないかを、具体的な数字をもって示してくれます。目からウロコがぼろぼろ落ちます。帯に池上彰さん、山田真哉さん、そして小飼弾さんその他等そうそうたる面々の推薦コメントがついているのも納得!の1冊。これからの未来、日本経済に興味がある方はぜひ読まれることを強くおすすめします。
Posted by ブクログ
経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ、というのは非常に納得の出来るものだった。
これだと将来の中国は日本以上にとんでもない不況がやってきそうだ。
ブランド化というのがどこまで出きるのか、それがキーのようだ。
スイス・イタリア・フランスは凄いな。
Posted by ブクログ
著者が様々なデータを用いて自分の正当性を主張しているが、すでに現在においては定かではない。
まず書きぶりが新書なみというか、話しているような表現が続くのとても読みにくい。裁判沙汰になる著者の人柄をよく表しているともいえる。
その道では極端な主張では無いのかもしれないが、あまりにも口が悪い笑ので、信憑性に欠けるように感じる。
内容はタイトル通り。これを色々なデータから説明している。いまの日本経済についての一つの観点として理解できた。面白い。
高齢者たちが資産を簡単に相続していく、資産を消費していくと特になる仕組みがあればいいね。良いお墓があてがわれるとか。誰しも自分の努力が報われたい。高齢富裕層だって高齢貧乏層だってみんな同じ。社会からのいいね!という数字が可視化されるだけでもだいぶ違うのではないかと思う。
Posted by ブクログ
まだ読みはじめ中だが、かなり面白い。
日本は不景気だといいつつも貿易収支はここ20年で5倍も増えている。
内訳はアメリカ、EU,周辺アジア諸国である。
一方、この不況はコストダウンによる内需の低下で、賃金の低下を招いている。
周辺の国々が豊かになりつつある今、日本はもっとmade in japanのブランド志向を目指すべきであって、この先彼らをよいお得意様として迎えいれられるかが鍵なのではないか?、と思いつつ拝読中…