藻谷浩介のレビュー一覧
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僕はかつては「観光立国なんて胡散臭い」と思っていた。しかし、藻谷氏の『デフレの正体』を読み、「人口減少で内需が縮小する日本においては、訪日外国人をいかに増やすかが重要」ということを知った。
そのうえで、『観光立国の正体』。
この本では、観光産業は単なるサービス業でなく、地域全体の「総合力」が問われる産業なのだと知った。
・資本や経営だけでなく、多少コストが高くついても必要な資材はできるだけ地元で調達し、住民がいお互いに支えあう。
↑こういう考えはとても大事だと思った。「少しでも安く」という考えしか頭になく、例えば外部から安い食材を仕入れているようでは、地域が潤う観光業にはならない。
また、富裕層をいかに取り込むかが重要だと知った。「1万円」のランチなんて、普通は食べないと思うが、富裕層や、富裕層でなくても特別な日には食べる。1000円のランチを10人に売るより、1万円のランチを一人に売ったほうがはるかに利益が出る。薄利多売に慣れ切った日本の産業(観光業だけでなく)にとって示唆に富んでいる。
休日分散化、人材育成、既得権益をどうするか、といった問題にも触れており、単なる観光の話でなく、日本社会をどうするかといった深い問題に立ち入った本だと思う。 -
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<目次>
はじめに 観光業界の「ルパン」
(1)観光立国のあるべき姿 (山田桂一郎)
第1章 ロールモデルとしての観光立国のスイス
第2章 地域全体の価値向上を目指せ
第3章 観光地を再生する~弟子屈町、飛騨市古川、富山県の実例から
第4章 観光地再生の処方箋
(2)「観光立国」の裏側(対談:藻谷浩介×山田桂一郎)
第5章 エゴと利害が地域をダメにする
第6章 「本当の金持ち」は日本に来られない
第7章 「おもてなし」は日本人の都合の押し付けである
おわりに
<内容>
経済が縮小していきつつあるなか、「観光立国」を謳う日本だが、どうもうまくいっていないようだ。「里山資本主義」の藻谷氏が、スイス、ツェルマット(まさに「観光」を売りにしている地域)でスキーのインストラクターから観光ガイドを経て、JTIS.SWISSを立ち上げた山田氏とともにまとめた本。前半は山田氏が書き、後半は二人の対談だが、日本の「観光」のダメさ加減が前面に出されている。
日本はまだ高度成長期の国内の観光の発想(会社の団体旅行や農協さんのツアーなど)のイメージを引きずる人たちが多く、彼らが新しい発想(この本のような)をする若い人の足を引っ張る(特に自治体や観光協会の重鎮など。後者が政治家になったりすると目も当てられない)構図が展開されているようだ。悪い実例も次々とあからさまにしているし、良い実例も時間経過とともに悪く変化することも多く(自治体の長が変わると多いらしい)、「さもありなん」と思った。
彼らが勧めるのは、「地域一体」であり、「マーケットイン(旅行者、特にインバウンドの観光客が何を望んでいるのかを知ること)」であり、「リピーター」を作ることである。また海外の「セレブ」に進められるコンテンツがない(泊まるホテルもない)も問題らしい。我々が考えている、「こんないいものがあるから推し進めていこう」は、ダメなのだ。「こんないいもの」までは良い。そこから「需要」があるのかを見抜かなければならない。そこには絶対調査が必要ながら、それが哀しくもされていない。こういうところにこそ、「データ」が必要なのだが、政府からしてダメらしい。
どうも、「老害」があちこちにはびこっているようで、彼らが一掃されないと、日本の将来はないのかな… -
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本書が述べたいことは、大きく2点。
①各地域はマーケットインの発想で観光施策を立案、実行せよ。決してプロダクトアウトでは考えるな。
②その際の実行部隊は、①を実行することができる新しい観光推進団体が良い。地域の古参のメンバーが跋扈する組織では難しい。
山田氏は、スイス在住でスイスの観光施策に詳しく、地域ボトムアップ型の施策を進められている現状を紹介しつつ、そうした方法を日本にも根付かせていくため、各地で実践している。スイスでは、地理的な制約が大きいこと、歴史的な背景が根深いことから、地域ボトムアップ型がうまくいってるとのこと。日本でも可能だと考え、現在各地で観光アドバイザーをしている。藻谷さんは少々口が悪い部分もありますが、総論的にはとても参考になる。どこの国のどこの階層の人間にターゲットを絞って施策を行うのか、そしてそれを継続的にデータを取りながら行っていくことが必要であるが、現在の地方を取り巻く観光施策は「大手旅行会社、交通各社が取り巻く観光協会が中心」になってしまい、補助金を垂れ流すだけになりがちであることに警鐘を鳴らしている。たしかに、自分の会社でも毎年のようにプロモーションやイベントは大手広告代理店、周遊プランの提案は大手旅行会社となっており、どこまで地元が主体的に考え、PDCAサイクルを回しているのか疑問に思うことは多い。
現在観光施策を担当でやっている自治体職員は「自分のやっていることが良いのか?」と気づきをもらえると思うので、ぜひ一読してもらえればと思う。
最後に、星1つつけなかったのは、観光はまちづくりに優位することはあってはならないと思うからである。その点が、あまりしっかりと言及されていなかったので、星4つに。たしかに、地域経済を循環させる意味でも観光分野は地方にとっては最大の関心事であるが、無理に観光施策を進めることでまちがぎくしゃくしてしまっては意味がない。であるから、まちづくりをしつつ、そこに観光のエッセンスを入れるようにして地域の魅力を高めていくような地域経営がこれから求められているだろう。もちらん、お二方は「当たり前だ」とお思いでしょう。 -
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先日、小菅村でご講演を聴かせて頂いた藻谷浩介さんの新刊『和の国富論』(新潮社)を拝読。
講演会終了後に著書サイン会となり思わず1冊購入。さすが藻谷さん、商売上手(笑)一言二言でしたが、小菅村の林業について会話させて頂きました。全国を廻られ各地の先進的な林業を見聞きして来られた藻谷さんからもっと林業についてお聞きしたかったが独り占めできず我慢。
本は6名の方々との対談集です。
その6名のお話から日本経済を再生させる6カ条。
1)企業統治は「ガバナンス強化」より「家業化」せよ
2)農林漁業は「効率化」より「需要高度化」せよ
3)地方創生は「雇用」よりも「営業生活圏」の確保で
4)リーダーは「進学校」より「崩壊学級」で錬成せよ
5)老後不安は「特養増設」より「看取り合い」で解消へ
6)日本国民は「参勤交代」で都会と田舎を往復せよ
この本を速水林業の速水亨さんもFacebookで紹介されておられましたが、対談者のお一人の速水亨さんの経営哲学から多くを学ばせていただきました。
『生産性向上に向けた壮絶な自助努力』
『フェアな競争を担保する国際的なルールの重要性』
『日本の林業はこれからアメリカの人工林施業技術に学ぶべき点が多い』
『海外で違法伐採された木の日本への完全輸入禁止』
『森林組合のような組織が団結して丸太の販売交渉力を獲得すべき』等々勉強になりました。
ご興味を持たれた方は、ぜひご購読を。 -
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ネタバレこれからの日本を予想する。
和の国富論というタイトルはこの本の良さを表しているような表せていないような…
アダムスミスの国富論の、「自由競争こそが経済成長と完全雇用に導く」という側面だけが強調されるが、その前提として、「市場の参加者に、他者に同感する能力と、自己の感情や行為を他人の目で見て帰省する習慣が求められる」ことも指摘されていた。
その共感力をベースにした国作り、経済の維持は日本独自のやり方が近いとこにいるのではないか。
それぞれの分野で一家言を持つ、6人の実践家と藻谷氏の対談集。藻谷氏がエコノミスト、アナライザーとして本を書くだけでなく、こういった形で「実際の経済はどう動いているのか」にじかに触れて吸収していく姿勢がすごいと思います。
けっしてショーケースに入った「経済」でなく、日本の今後につながる道を示しています。
ただし、本の帯にあるような「脱競争の新しい成長戦略」を示しているわけではありません。(そもそも成長しつづける経済を維持できるか…)しかしこれからの戦略、行動のヒントになる切り口を示している本であることは間違いありません。 -
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専門の分野とそうでない分野とあって、大変勉強になった。特に農業。最近若者が農業に従事する機会が増えてるが、地元住民と衝突したりなど続かないケースが多いってこと。農業は太陽などの自然エネルギーをいかに効率良く食物にするかが重要な事とか、あんまり知らなかったので、いかに自分が無知であるかをよくよく知らされた。今の日本は閉塞感が漂っていて、まだ始める前からもうダメだと自分達で思い込んで、自滅してしまうケースが多いけど、まだ日本は捨てたもんじゃない、これからが勝負なんだと思って物事に取り組む事が重要らしい。私は医療分野に携わっているので、まずは自分の分野から。
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コミュニティーデザイナーの山崎亮氏と日本総研の藻谷浩介氏による対談から生まれた本書。
経済成長というのは一つの指標であり、それに比例して幸せになるとは限らない。
4章のタイトルにある通り、まさに「幸せは計るものではなく、実感するもの」ということだろう。
ただ、ブータンのように国民の幸福度が高いといわれている国は、発展途上であるからこそなのかもしれない。
つまり、高度成長期を経てモノの溢れる時代を経験する前の日本人は、今のブータンの人々と同じような感覚だったのかもしれない。
ブータンと日本の違いは、モノの豊かな時代を経験し、物欲というものを実際に体感しているかどうかだ。
「物欲まみれ」というステージをきちんと通り過ぎた後で、初めて次のステージに行けるのではないかという藻谷氏の意見はまさにその通りで、今私たちはその岐路に立っているのだろうと思う。
幸福とは人それぞれ違うから、正しいも間違いもないのだけれど、経済的な面より、精神的な面で豊かになりたいなと思う。
そして、色々な選択肢が増えればより幸福に近づけると思う。
また、各地に素敵に生活している人がたくさんいることを知って元気が出た。
どんな世の中でも逞しく生きていく力を身につけたい。 -
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商店街や限界集落、観光といった「地域活性化」とひとくくりにされがちな話題について、それぞれ地域課題に直面している方々と藻谷浩介さんとの鼎談をまとめたもの。
各論においてその活動の正当性や将来予測、そして議論の妥当性について、データに基づいた客観性のある対話を心掛けているのはさすがといったところ。一方で対話形式の限界といえばそれまでだが、否定的な論理や疑問が出てこないために予定調和的に感じられる。
その辺りは各論者の著書を読むなり、活動を深掘りしろという話なのであろう。いずれにしても「地域活性化」というバズワードに関心のある人は、とっかかりとして読むことをおススメする。 -
購入済み
地方力の活用ってことかな
一言で言ってしまえば、地方力の活用ってことかな、と思いました。
本書で取り上げられている個々の事例、オーストリアのCLTや真庭のバイオマス発電などは、テーマとして面白いです。地方には地方でしか成しえないイノベーションがあって、それをうまく使って生き延びていこうということですね。
別に「マネー資本主義との決別」って大上段に振りかざす必要はないと思うけど、これから人口が減少していく日本でかつてのような経済成長を夢見ることはできないのはまぎれもない事実なんですから。
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■生産年齢人口の総人口に占める割合のピークは、日本は1990年頃、アメリカ、アイルランド、スペインは2005年頃、中国は2015年頃。
■中央銀行ファイナンスによる追加財政、すなわちマネタイゼーション戦略は、当初は高めの実質成長率、低いインフレ率、やや高めの名目成長率、低い長期金利、リスク資産価格の上昇が観測され、バブル的な様相が強まる。しかし、その後は、低い実質成長率、高いインフレ率、高めの名目成長率、リスク資産価格の下落が訪れる。
■人は、お金そのものが欲しい。純粋に、今お金があるからあれもこれもと実感できて嬉しい。
■完全失業者は300万人前後。彼らを100万人雇うためには消費税を数パーセント上げるくらいで十分。1パーセントの増税でだいたい60万人から70万人を雇うことができる。
■生産性が上がって輸出が増えたら経常収支が改善して円高になるが、同時に、国内の需要不足で輸入が減っても経常収支は改善するので円高になる。 -
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ネタバレあとがきに書いていますが、
「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、
つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」
というのが、この本の要旨です。
前半部では、具体的な数字をもとに、
国際競争の面や地域間格差など、よくよく言われていることを
バスッと斬って捨てます。それも、論理的に、盲を開くように。
中盤は、人口の波について。つまり現役世代が減るために、内需が減るのです、
ということを丹念に語ってくれます。
後半部は、筆者の提案です。
以下、ツイートから。
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生産性向上の名の下、機械化したりして一人あたりの仕事量を増やし、
退職者をつのり人件費を削ったところで総体的にみたら経済の規模を縮小していることになるんか。
内需が減少するものねぇ。
生産性向上で人件費を抑えるくらいならば、
商品力向上に力を注ぐべきだぁね。
それを阻害するのが、短期的に株式を取得して売って利益を得る人たちとそのシステムなのだなぁ。
短期的に利益を出すことは、人件費を抑えることで実現するから。
生産者(労働者)は消費者でもあるんだよなぁ。
仕事に追われてお金を使う暇がないっていう友人がいますが、
そういう人の使われ方が内需を低下させているのかね。
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問題は内需の減少なんですよね。
デフレで何が悪いかっていうのは、それだけ経済の規模が小さくなると、
税収が下がって国力が弱くなることです。
世界規模でそうならばどうってことないのかもしれませんが、
世界の中の一国としてデフレ傾向が続くと、各国との力関係が変わってくる。
さぁ、安倍内閣はどうやって内需を拡大する方向へ持っていくでしょう。
この本は大きなヒントになると思うんだけどなぁ。
難しいけれど、興味深い本でした。 -
Posted by ブクログ
P182「儲ける」が、お金のことしか意味しなくなったところにも、経済成長至上主義が感じられる。
田舎に必要なのは駅前のスターバックスではなく、山奥のカフェだ、ということを最近の経済統計を用いつつ説得力溢れる解説で訴える。経済成長率という指標には現れないソーシャルなストックの重要性がよくわかった。よく経済成長と地域活性化はそぐわないという問いは、「『みんなが幸せに暮らすため』という目的を忘れたお金だけの成長の議論は、実はすべて極論になってしまう」。
経済指標のロジックに惑わされてはいけない。現実に生きている人たちの幸福感は全く反映されていない。「真実を理解するには一つひとつをちゃんと考えていかないといけません」。そして一般的にイメージされる幸福は「平均は平均でしかなく、ここの事実はそれとは別に存在する」
あらゆる疑問に対して反論し、経済成長至上主義から脱却して、イタリアやフランスのような文化国家への脱皮を訴えている。