旧来の「成長経済」を説明する経済理論ではなく、現在の先進国における「成熟経済」を説明する経済理論が必要である、という話。
人々が所得を「現在の消費」と「将来の消費=貯蓄」に振り分けるというのが伝統的な経済理論であるが、成熟経済における貯蓄には
「資産が増えるからカネをたくさん持っているという満足感
...続きを読む(資産選好)も得られる」
という性格があるので、旧来の財政・金融政策によって好景気をつくり出そうとしても金が貯蓄に回されてしまい、金持ちはより金持ちになって格差は拡大するし、政策効果も得られない。
そのように成熟経済を理論的に説明しながら、政策提言をしている一冊である。とても説得力がある。
難点があるとしたら、「第6章 政策提言」が抽象的な書き方になっていて伝わりにくいということか。その前の第2章~第5章で具体的に書いているから繰り返さないというのは美学としてはわかるけど。
あとまあ、現在の経済システムの安定性を前提にした議論だとも思う。新書なのでそれでよいのだけど。