あらすじ
考え方を変えなければ、停滞は続く──。
人気解剖学者と『里山資本主義』の地域エコノミストが、ウクライナ戦争、コロナ禍が私たちにもたらすもの、必定といわれる南海トラフ後の日本の在り方を語る。
時代を生き抜くための異色対談。
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Posted by ブクログ
この本の主張は?
「経済成長」をめぐる幻想と実態を、解剖学者・養老孟司と地域経済の専門家・藻谷浩介が対話形式で読み解く一冊。
日本社会が盲目的に信じてきた「成長」の正体を疑い、人口減少や自然災害リスク、地方の暮らし、世界標準から見た日本の特殊性をもとに、「これからの日本に本当に必要な価値とは何か?」を問い直しています。
印象的だったポイント
「経済成長」が今やバズワード化し、実態を伴わずに使われていることへの違和感
高度経済成長の記憶がある世代とそうでない世代の価値観の断絶
アベノミクス下の株価上昇と実体経済の乖離
日本の都市人口密度がいかに高く、地方分散が進んでいないか
「空気」で動く日本社会が、自律的な未来戦略を描けずにいる現実
Posted by ブクログ
説明して分かってもらいたい藻谷浩介と、聞かれれば自分の考えを話すことはできるけど自分からはあまり能動的に発信しない養老孟司の対談本。2038年の南海トラフ巨大地震の話、循環再生で自足する話、教育の話。どれも単独で完結する話ではなくて、互いに関連している。その根っこには日本人の特性みたいなものがあって、理論と実践、中枢と現場の間にはいつまで経ってもチグハグさが残っている。日本は一度ご破産にしないと変われない国だから、南海トラフ地震に来てもらって、ご破産にするしかない、という養老孟司がたどり着いた説は少し逆説的だけど、きっとそうなのだろう。自分で対応するしかないと考えよ、ということなんだろうな。とても勉強になる。
この本の中に引用された本で、いくつか読みたくなるものがあったのも楽しみだ。
Posted by ブクログ
養老孟司と藻谷浩介の対談本であるが、二人とも大勢に流される人ではないためにとてもいい対談となっている。毎年のように「景気対策」という名目で借金を重ねて大型予算を組んでいるが、予算を増やし続けているのに国内消費が減っている。また、現在の日本では半分以上の人が働いていない人である。このような社会であるにもかかわらず、経済成長を目指して、リフレ経済学者やMMT(現代貨幣理論)を主張して、湯水のように税金をばら撒けという無責任な主張が罷り通っている。
そもそも、半分以上働いていない社会において、働いている人に「もっと働け」というモチベーションは湧いてこない。またむやみに経済成長すれば地球環境の崩壊を早める。経済成長すれば解決する問題はかなりあるのであろうが、だからといってできない経済成長のために巨額の財政支出を繰り返すことはもうやめよう。って思いました。
Posted by ブクログ
世界から見た日本、日本人の変わったところを客観視して具体的に伝えてくれる。
しかも包み隠さず率直に。
とても考えさせる問いでした。
2038年に大震災が来るとなん度も紹介されていましたが、来ることがわかっているのに備えないのはおかしい。まさにその通り。
東日本大震災を間近で経験したわたしは、あのような経験は2度としたくないと思いますが災害大国日本に住んでいる限りは対策しないといけないと感じます。
もう一つ感じたのは日本人の同調主義です。
皆と同じでなければダメとか、あいつは考え方が皆と違うからおかしいとか、そんなくだらない考えは排除したいと感じた。
子どもを育てる環境から改善していきたいと思いました。
皆で考えようは考えているうちに入らない。
考えるのは1人でいい。
議論は皆でするもの。
自分の考えがいかに日本人的だったかを思い知らされる本でした。
Posted by ブクログ
藻谷氏のデータに基づいた話に、養老氏がうなずきつつも、ところどころワンポイントで口をはさむような印象だったか。養老氏は、日本は大地震で御破算になった方がいいんじゃないか、という。でもそれってさぁ。内田氏が別の本で、維新とかグローバリスト系の人たちの目論見って、加速主義で破滅まで行こうとしている、みたいな話に近いものがあると思った。養老氏は話が面白いから、維新ほどに拒否感は感じていなかったんだけど、そういうところは、なんとも?なところ。
あと印象に残っているのは、補助金だ、生活支援だといって、お金を刷ってお金をばらまいても、収支でみると市中に出回っているお金はずっと少ないという。みんな貯金にまわしたり、あるいは海外に流出しているということだろうねぇ、という意見はあぁそうなんだ、と考えさせられる。なかなか単純じゃないね。
Posted by ブクログ
どういう経緯で、この二人が対談したのか、出版というのは面白いモノだ。
第1章 経済と政治の戦い
第2章 大地震に備える
第3章 循環再生で自足する地域
第4章 教育問題の奥へ
第5章 日本人の生き方
という章立てで、語りあっているのですが、藻谷さんが養老孟司さんに問いかけるというパターンが多かった。
まぁとにかく、養老さんのうっちゃり方に彼なりの筋が一本通っていて、
納得させられてしまいます。
ヒトはヒト、自分が好きなように生きていくのがいいとこれからの人生の道筋がしっかり決まりました(笑)。
Posted by ブクログ
「成長」とは何だったのか――。経済至上の時代、日本は豊かさを追い求め走り続けてきた。だが養老孟司は自然との共生を忘れた結果だと嘆き、藻谷浩介は人口減少の現実を直視せよと促す。右肩上がりの幻想にすがるのではなく足元の暮らしや地域のつながりに目を向けよという声は重い。もはや量ではなく質の時代。便利さや効率の先に人間らしい幸せはあるのか。いま日本の進む道が問われている。
Posted by ブクログ
知の巨人であるおふたりの対談本。2038年と具体的にした日本の転換である「その日」。実はそこまで時間的猶予はないかもしれないけど、日本は、日本人はどこまでそれに備えられるか。他人事でなく、我が事として。なかなか、難しいよなぁ。
Posted by ブクログ
養老さんと藻谷さんの興味深い対話の本。
直近のテーマなどが取り扱われているが広い視野で語られておりおもしろい。興味深い内容であることに変わりはないが、藻谷さんの主張割合が多く、養老さんの意見は?と勘繰ってしまう
メモ
・見てわからないことは測ってもわからない。測ってわかることは見たらわかる
・火山灰は小さいガラスのかけら
Posted by ブクログ
藻谷浩介さんは、「経済成長」ありきの社会設計に疑問を呈する人。
私も同じ考えで、成熟社会の維持継続を目指す政策に切り替えるべきだと思っている。
「成長とは何だったのか」の藻谷さんの意見を聞きたかったのだが、話題が発散しすぎてよく分からなかった。
本書は藻谷浩介さんが持論を語り、養老孟司さんに問いかけるというパターンで進む。
藻谷さんの主張が養老さんに軽くいなされる場面がしばしばあって面白い。
何故か、養老さんの振りで、南海トラフ巨大地震や富士山噴火の話題になる。
コロナで今の社会の仕組みの不備が表面化しても、一部の軌道修正がなされただけで一気に改変する動きはない。
もっと壊滅的な危機に遭遇しないと、根本的な考え方は変わらないというのが養老さんの意見。
例えば、首都直下型地震で東京や神奈川が致命的なダメージを受けて初めて方針転換できるのだろうと。
養老さんの「本気で考えるためには、本気で困らなければ無理ですよ」という達観した意見はその通りだと思った。
環境問題にしろSDGsにしろ、自分の生活に影響が薄いうちは誰も真面目に考えない。
教育論でも養老さんは面白いことを言う。
東大医学部には医学を学ぶモチベーションがなくても、偏差値が高かったからという理由だけで入学してくる人がいっぱいいるのだそうだ。
○○大学○○学部卒という肩書だけが欲しい人にはすぐに辞めて貰い、勉強したい人だけが残るのがいい。
なので、「大学に合格したら、すぐに卒業証書を与えよ!」と。
私は「経済成長」は、目先の利益だけを計算して、後々の維持や保守のコストは無視した都合のいい考えだと思う。
現在、日本は人口がどんどん減り、8軒に1軒が空家だというのに、近所でもマンションがバンバン建つ。
とりあえず売れる時に造ってしまえば儲かるからだ。後先のことは考えていない。
我が家もマンションだが、2度目の大規模修繕が近く、建築物は年月が経つと傷むことを実感している。
東京に住んでいると、高層ビルの老朽化が心配事の一つ。
コンクリートの中の鉄筋もさびるが、水の配管などが先にダメになる。
赤坂プリンスホテルは38年で取り壊されたが、ホテル中に張り巡らされた排気管の老朽化を直すより壊す方が安かったからだという。
もっと古い京王プラザホテルは大金をかけて修復工事をやったそうだ。
新宿の高層ビル群は40~50年になるので大丈夫なのかなと見るたびに思う。
築30年程の都庁も雨漏りしてるし、新宿駅も大雨が降ると雨漏りで水浸しになっている。
30年後に悲惨な状態になりそうなのがタワーマンションらしい。
高額な修繕費用がかかることが分かっているのに修繕積立費は低く抑えている。
つまり、ほとんどのタワマンは補修費が全く足りていない。
30年後には住民も高齢になり、修繕や取り壊しにお金を出す人はいないだろうと言われている。
他にも高速道路や橋など、バブルの時期に作られたものが作りっぱなしのまま多数存在している。
養老さんが言うとおり、「大地震が来て壊滅的な状況にならないと何も変わらない」のでしょう。
「日本の進む道」は、悲しい結論になってしまった(-_-;