桜庭一樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
《大人》からの逃避行。それは自分が大人になってしまうことから逃げることでもある。渡される進路希望調査票、未来を選ばない「ぼく」。不思議な少女と二人、行く宛のない旅をする。
ぐるぐる目が回るような展開、どこまでがブラックアウトでどこまでが現実なのか……曖昧だけど確かな少女の手触りが残る読後。駆け抜けるような物語に着彩する描写が何よりも少女のキラキラポップチューン。最高だ。
ラノベというかノベルゲーム的文体で最後にエンディングが分岐するという構造にもびっくりした。元々は単一エンドだということだけど、この結末が複数存在して、それがそれぞれ独立したものではなく互いに重なり合ったものになっている(!)というところにノベルゲームを超えた何かを感じた。
複数のエンドが存在するノベルゲームにしばしば言及される問題として、「結局トゥルーエンドが唯一の真エンドで、他のエンドはキャラクターの描写や情報の補完に充てられる副エンドでしかない」といったものがあるが、『推定少女』はどれが真エンドか選び取れない気がする。僕たちはしかし選び取らなければいけないのか、可能性を? -
Posted by ブクログ
桜庭一樹の物語の中で一番好きな物語だ。
眞子と駒子の親子はずっと旅を続けている。
駒子には戸籍がない。だから学校へも行けない。言葉を話すこともできない。
それでも駒子は幸せだった。
何故って、何よりも自分を必要としてくれる眞子がそばにいたから。
でも子どものままではいられない。
時が経てば駒子も成長する。大人になっていく。
文字を覚え、本の中にある世界を知り、物語に魅了される。
眞子だけを見ていた駒子は、もう存在しない。
求めているのは眞子だけではないのに。
駒子だって苦しいほどに眞子を求めていたのに。
眞子の心は揺らぎ、脅え、少しずつ疲弊していく。
突然の別れ、置いていかれた駒子。
切なくて、哀しくて、けれどどうしようもなく惹きつけられる。
そんな物語だった。
言葉を紡ぎだすというのは作業ではないんだな、とあらためて思った。
心の奥底にあるものがあふれるように言葉になっていく。
作家というのはそうして物語を作りだしていくのだろう。
どこか荒唐無稽で、なのにとてもリアルで。
きっと好きな人はとても好きで、受け入れられない人にとってはどうしようもない物語なのだろう。
人生はやり直せない。過去に戻ることもできない。
でも、過去を通り抜けてきた軌跡が未来を作る。
そして未来は不確定でだからこそ素晴らしいのだ。 -
表示が変わっただけ?
表紙が全面赤のGothic REDと内容は同じです
2回買わないように気をつけましょう。
新大陸編はこれまでの環境と全然違うので読んでて目新しさが目立って楽しいですね -
Posted by ブクログ
○ばらばら死体ができ上がるまでどのような心境の変化があるのか。内面に迫るルポのような細やかさを備える一冊
大学講師の吉野は、昔世話になっていた「泪亭」という神保町の古書店で沙漠と出会う。自分の境遇と重ね合わせた吉野は、昔から持っていたカギを使い部屋に侵入し、沙漠を襲う。金がもらえるのでは、と思った沙漠も吉野に迎合し、受け入れる。ある日吉野は沙漠を連れ出し、実家のある下北半島に車で向かうが・・・
貧困が人間の何を変えるのか、裕福な人との違いは何なのか。
何が違うというのだろう。だって、同じ人間ではないか。
でも何かのはずみで、何かのきっかけで転落するし、人を殺してしまう。
淡々と、吉野、沙漠、沙漠の友人・里子、泪亭の主人・佐藤、吉野の娘・夕のそれぞれの口から、吉野や沙漠の生活や生き様が語られる中で、人生のどこにいったい転落してしまう危険性を孕んでいるかなんてわからなかった。吉野は大学講師という職をしながらも借金の返済生活を続けていたし、佐藤も昔の自動車事故をずっと引きずったまま生活している。
淡々と、吉野は沙漠を殺す。
昔母親を殺したときのように、淡々と鉞を振り下ろし、淡々と道すがら破片を捨てていく。
淡々と語られる口調はなぜか逆に人間それぞれの人間味を表しているようで、ルポを読んでいるかのような、殺人者と周辺の人間の内面を細やかにとらえた作品。しかし淡々と色がなく描かれているが、そこに殺され方のグロさが赤くアクセントとしてずっと残り続ける。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ(モコ&猫)
読みながら泣いてしまった。
甘酸っぱさと気持ち悪さと純粋さがそれぞれ侵食するようにじわじわとある。私はモコのような女の子が好きだし、猫のようになりたかった。
猫がモコに対して時々抱く殺したいような心持ち、悲しいけれどなんとなく分かる。猫は謎だ。猫は勝手だ。でもそれだけモコは特別だった。
田舎者から見る、異彩を放つ都市、東京。
モコは猫にとっての東京だったのではないか。愛しているけど分かり合えず、ずっとそこにはいられない、東京。
(このたびはとんだことで)
七竈に出てきた犬と一緒の技法だ!と読みながら思っていたので、後書きにもそれが書かれていて嬉しかった。
女は美しくも滑稽で、恐ろしいな。
(青年のための推理クラブ)
読書クラブの方も大好きだったので、なんだか懐かしい気持ちになった。爽やかでよい。あっちもまた読み返そう。
(冬の牡丹)
私には姉がいるが、姉に対して文句を言い出したら止まらない感じはよく分かる。ここぞとばかりに言っちゃうね。あるある。
昔から絶対敵わないし、一生勝てない相手。姉。
妹よ、お前は越えていないのだ。決して姉を越えてはいない。越えるってなんだよ。結婚したら偉いのかよ。子ども産んだら人に勝てんのかよ。つらい。牡丹の気持ち、泣いちゃう感じ、わかる。
でも我が家は仲良し姉妹です。やはり若いうちに喧嘩してぶつかっておくべきだ。
田沼さんに癒された。ああいう人が牡丹の近くに居てくれてよかった。牡丹は家を出て正解だった。
(五月雨)
なんともファンタジーで、それでいて穏やかな小説だろう。
清香は加瀬亮で脳内再生した。かっこいい。
(赤い犬花)
大好き。号泣。
そもそも私は都会っ子と田舎っ子の組み合わせがめちゃくちゃ好きなのだ。たまらんわそりゃ。
太一の喋り方が現代っぽくてリアルで、それがすごく可愛い。柔らかくって優しい感じ。しかし度胸はある。それがまたいい。
それぞれ家庭に問題があって、でもそれに順応しながら生きている。順応できない子は生きていけない。いやだな。
大人がダメダメでも、それを反面教師にして子どもは育つのかもしれない。
でも大人が子どもを苛めちゃダメだ。見放しちゃダメ。向き合わなければ。