桜庭一樹のレビュー一覧
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私は桜庭一樹の作り出す世界観が心底好きだなと改めて実感した作品。 まんまとメロメロになった。 あらすじを読んだ時点でこれはいかにも好きな感じだなと思ってたけど、本当にはずかしいくらい好みど真ん中で降参してしまった。 言葉ひとつひとつに力があって、でもたくましいだけじゃなくしっとりした色っぽさもあって、読点のタイミングや台詞回し、文章の端々に桜庭節が強めに効いている。 桜庭さんの選ぶ言葉は、くせがあるんだけどわざとらしくなく巧みだから、流れるようにすっと沁みて馴染む。 気持ちよく読めるのに何回も戻って目で追いたいフレーズがそこかしこにあって、いつも少しページを繰る手が止まる。 「私の男」でも「ほんとうの花を〜」でも、短編でもそうだけど、掴みどころはないのに人間くさくて生々しい、乾いてるのに湿っぽい、邪気がないのに色っぽい、そういう矛盾した愛情の発露が桜庭作品のいちばんの魅力だと思う。 大好きです。
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ネタバレすごく甘酸っぱくて
女の子たちが精いっぱい生きていて
でも、そこには消えないとげがあって…
ここにでてくる女の子は3+1人。
一人は最後のほうにほんのちょっぴり出てきます。
この子も消えないとげを持つ子です。
マイノリティを知る、という意味で
最後に出てくる皐月という子の部分は
読んでおいてほしいなーと思います。
これ、実はこの感想を書いている人が
部分的に当てはまります。
ただし皐月ほど強烈ではないですが。
だからすごく胸がキューっとしましたね。
一部の人には私がそういう人だとは言っていますが…
(というか格好で察しがつくと思います)
また読みたくなる、そんな本です。 -
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「GOSICK GREEN」
新大陸に到着した早々、難事件を次々解決したヴィクトリカと久城。開業したグレイウルフ探偵社には依頼人が殺到。伝説の銀行強盗が脱獄したというが?奇跡の名コンビが、またもN.Y.中を巻きこむ大活躍?
新大陸に到着し、新居は決まったが、家具がない。人の好い管理人から、家具を譲ってくれる未亡人を教えて貰ったヴィクトリカと久城。しかし、未亡人の住む家は奇怪な仕掛けが施されていたカラクリハウスだった。その未亡人は、アーサーキング別名ドルイドという建築家の妻で、彼の夫は、様々な建築物を手掛けていたのだった。一方で、伝説の銀行強盗が脱走したと報道され、ヴィクトリカの下に、ある依頼人がやってくる。
新居が決まった翌日の話であるので、時系列ではPINK→GREENの様。メイントピックは、銀行強盗との対決とドルイドが隠した地図探し。新シリーズでは、ミステリテイストは薄めな感じがしていたが、今回は前シリーズに近いテイストになっている気がしました。
新シリーズになってからはミステリよりも一層、ヴィクトリカと久城の関係性や”今後どうやってアメリカで生きていくのか”に焦点が当たっているストーリーになっていると感じていますが、今回は、ミステリも推理テイストだし、次から次に起きる展開もある。稀代の大強盗・KIDの監獄脱出からの銀行再襲撃予告という大きなイベントに、KIDの見えぬ仲間たちが絡む久方ぶりのミステリー感。そこに、キャラクターの濃いメンツが其々の個性を発揮する。特に、KIDの仲間達は、非常に強力。そして、最後の地図探しに至る流れもGOODでした。
それに加えて、ヴィクトリカも良く笑う。そして泣きもする。非常に良い。しかし、九城も自分発信のヴィクトリカを思う気持ちには照れるくせに、ヴィクトリカが発信するものには全然気づかない。更に、九城がデイリーロード社で組むニコとの関係性が変わっていく点もポイント。最初は、九城を相棒と認めない仕草ばかりが目立つが、徐々に久城を信頼していく。久城も粗暴なニコの態度に珍しく憤怒していたけど、最終的には相棒が自転車からニコに変わっていく。この点も微笑ましい。
推理テイストなミステリー感、次から次へと起きる展開、そして人間関係の変化+ヴィクトリカの笑み。多くの要素が詰まった久方ぶりの良いGOSICK感だ。この感じが続いてほしい。
しかし、キャラクターの良いロバート・ウルフ(呼称トロル)は、もっとストーリーに絡んでくると思ったけど、今のところおとなしい。自動車王だけに今後、非常に使い勝手が良いと思えるが、果たして次巻では主役級として出て来てくれるのだろうか。後、グレヴィール・ド・ブロワ。こんな感じにいつの間になったのだ。これもいつか描かれてほしい所だ。 -
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捨てたい捨てたくないここにいたいいられない 「まことに遺憾ながら」美しく生まれてしまった少女・七竈が、ずっと縛られていた地元・旭川を捨てるまでの話。閉塞的な田舎では目立ち過ぎる美貌のせいで常日頃生きにくさを感じている七竈に対し、彼女の目の前に現れては彼女の「こころのかたち」を少しずつ変えていく「可愛そうな大人」の様子を、七竈本人や飼い犬で元警察犬のビショップ(!)、七竈の母・優奈やその親友の多岐、その息子であり七竈と瓜二つの顔を持つ少年・雪風の視点でどことなく芝居かかった大袈裟な語り口で描かれています。リリカルな雰囲気ながらも時折突き刺すような応酬が印象的です。
物語は厳しい母に育てられただ感じのいい女性としてデザインされた自分の「こころのかたち」を変えるために、優奈が「辻斬りのように」男遊びをするところから始まります。その過程で体を重ねた美しい男との間に私生児として生まれ落ちたのが七竈なわけですが、七竈も「いんらんな母」のせいでとても生きづらさを感じることになっていきます。美しすぎること、雪風と顔が似ていくこと、雪風が自分と血を分けた兄弟であること、だから自分の初恋が間違いなく叶わないこと。呪縛を捨てたいこと、でも少年とは離れたくないこと、だけど一緒にはいられないこと……。物語の中で、七竈を芸能界にスカウトしに東京からやってきた元アイドル・乃木坂れなが「女の人生は母を許す、許さないの長い旅だ」と七竈に告げるシーンがあるのですが、この言葉がこの話のテーマに対するアンサーである気がします。優奈も自分の母への怒りからこころのかたちを変えようとした。七竈もそんな母の呪縛を解くために何もかもを捨てた。七竈は多分ある瞬間には母を許せるかもしれない、だけどやっぱり許せないかもしれない。
決別の際、「母を許さないことが私の純情です」「なら僕も父を許さないことにする」という会話を七竈と雪風はするのですが、作中でも述べられているように時の流れは大事なものを容赦なく墓標にしてしまいます。だからおそらくこの約束も思い出として風化してしまう。それでもこの瞬間だけは、彼らが間違いなく固く誓い合ったという事実が残るのだと思います。これから先、二人が母を、父を、許す許さないの折り合いをつけていかなければならないしても。大切だったはずの何かが墓標になってしまっても、確かにそこにかけがえのないものがあったという事実は変わらないので。
長くなりましたが、雪風との決別のシーン、乃木坂れなの前日譚のラストシーンともに切ないながらも爽やかな読後感は流石です。桜庭一樹さんの書く賢明でなくとも懸命な少年少女の生き様を存分に味わえる一冊でした。 -
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能も狂言も人形浄瑠璃も見たことないので、
実際にどのような”動き”をするのかは全く想像するしかないのですが。
後書きでは「舞台での人形は本当に死ぬ。首が飛ぶ、崖から落ちればそのまま動かなくなる」とありそれを想像しながら読むと心に迫ります。
【「能・狂言」新訳:岡田利規】
能「松風」
磯に立つ一本の松の木。
行平中納言の一時の寵愛を受けた二人の女の情念。
能「卒塔婆小町」
若き日は美しかった。
その昔戯れに扱った男の怨念が憑り付いて、
いまでは卑しく年を取った。
能「邯鄲」
”邯鄲の夢”の能舞台化。
狂言「金津(かなづ)」
「はい、こうして登場したのが誰かと言いますと、金津というところに住んでいる人です」
新築したお堂に置くための地蔵を求める金津の住人と、
詐欺師”すっぱ”の悪巧み。
”すっぱ”の子をお地蔵様として金津に送り込んだ!
狂言「木六駄(きろくだ)」
伯父へのお使い品を使い込んでしまった太郎。
さあどうやって誤魔化す?!
狂言「月見座頭」
座頭と男は気が合って楽しい時間を過ごすが、
男には相手が盲目と言うことで意地悪心が湧き上がり…。
【「説経節」新訳:伊藤比呂美】
語り物「かるかや」
刈萱(かるかや)の総領、加藤左衛門重氏は、花見の最中に浮世を離れることを決意し、妻と幼い子供たちを残して出家する。
父を恋う子供たちは、長じて父を探しに出る。
すれ違う親子。
しかし僧門に入った重氏は、現世への思いを断ち切る。
立ち去る父の哀れ、追えない子らの哀れ、待つ身の妻の哀れ。
【人形浄瑠璃 近松門左衛門「曽根崎心中」新訳:いとうせいこう】
天満屋の遊女お初と将来を誓い合った平野屋の手代徳兵衛は、
金銭詐欺にひっかかり身動きが取れなくなってしまう。
弁明は聞かれず、無実にして死罪は免れなかろう。
お初と徳兵衛はあの世への道行を進む…。
***
最後の道行の文章が美しく美しく。
これは近松門左衛門がすごいのか、
いとうせいこうがすごいのか。
舞台で見たらさぞかし胸に迫るだろう。
【人情浄瑠璃 近松門左衛門「女殺油地獄」新訳:いとうせいこう】
油や河内屋の次男与兵衛は、生来の遊興癖、怠け癖とズル賢い気質から借金を重ねる。
向いの小さな油問屋豊島屋(てしまや)の嫁のお吉は娘三人を育てる気風のいい女。
良からぬたくらみを持った与兵衛は、豊島屋へと忍び入る…
***
動きのある文章でテンポよく話も進み、
お吉の明るさで弾みもつき、
そんななかで何も考えないかのごとく
与兵衛の行動がひたすら深みに堕ちていく様相が
不穏さを見せ続ける。
激しくしかし密かな家族の愛、
クライマックス”油殺し”惨劇の迫力、
そして殺人が露見するミステリー要素…
これは確かに見事な脚本。
【「菅原伝授手習鑑」新訳:三浦しをん】
梅は飛び 桜は枯るる世の中に 何とて松のつれなかるらん
菅原道真の領地の四郎九郎の三つ子、梅王丸、松王丸、桜丸は、
それぞれ菅原道真、藤原時平、斎世の宮の牛車番。
斎世の宮は道真の娘刈屋姫と駆け落ちし、
時平は道真の筆法伝授を巡り道真を失脚させる。
主人たちの関係が変わった三つ子たちは、それぞれの主人に従うこと気持ちを示す。
梅王丸は道真の流罪先を訪ね、桜丸は自害する。
道真への忠誠を指した梅と桜に対し、あくまでも彼らを追及する松。
しかし松王丸は、誰よりも苛烈な方法で道真への忠誠を示していた。
これらの話がのちの世まで知られているのは、天神さまとなられた菅丞相の御恵みであろう。
…という、シリアスな話を「少年少女名作文学集」かなんかで読んだのですが、いざ全体版を読んでみたら、以外に軽妙だったりユーモラスだったり色艶っぽかったりという場面も多かった。
悪役時平公が、牛車で大立ち回りを演じる場面などさぞかし迫力であろう。きっと人形の首がクルッとかわって怒髪天を抜くかのような顔面に変わり…などなど頭に浮かんできます。緊迫場面、ゆったりした場面、人間心理の妙、じつにバランスが取れています。
【人形浄瑠璃 ・歌舞伎 「義経千本桜」新訳:いしいしんじ】
壇ノ浦にて平家を滅ぼした義経だが、兄の頼朝に追われることになる。
義経の正室卿の君の犠牲、暴れる武蔵弁慶、義経を慕う静御前、そして忠臣の佐藤忠信。
捕る者逃げる者らの思惑を経て、義経一行は北上する。
海の上で義経以降は、壇ノ浦に沈んだはずの平知盛の襲撃に逢う。
知盛は壇ノ浦を逃げ延び、安徳天皇を擁し再起を図っていた。
宿敵との戦いは、共通の目的を持ち…
清盛の直径でありながら、平一門からはぐれた平維盛は、 正室若葉の内侍はわが子六代との再会を目指し、身を潜めていた。
そしてやはり壇ノ浦から逃れた平教経との邂逅…
後白河法皇から賜った鼓に情を寄せる狐の思慕、
男女、親子、そして主従の情景が絡み合い…
…ということで、「●●は生きていた!」「▲▲は実は※※だった!」などなど、想像を広げまくって自由闊達に書かれた脚本でした。
【人形浄瑠璃・歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」新訳:松井今朝子】
「江戸時代の赤穂事件を足利尊氏の執権高師直に置き換えて上演」ということは聞いていましたが、高師直相手に仇討なんてしたらさすがに歴史を変えすぎないか…?と思っていたのですが…いやあ、筆は強かった、史実なんてかっ飛ばして仇討しちゃいましたよ(笑)
高師直は、塩谷判官の妻”顔世”に恋慕するが、袖にされた恨みを判官にぶつける。
塩谷判官は高師直に切り付け、切腹と家の取り潰しを申し付けられる。
塩谷判官の家老大星由良助は、遊びに興じる振りをして仇討の機会を探る。
由良助の嫡子力弥は、判官の同僚桃井若狭守の加古川本蔵の娘小浪と婚約していたが…
…えーっと、高師直を討ち取ってしまいましたが、今後の歴史をどうするつもりなんだ(笑)。人がエンターテイメントを求める気持ちは史実を超越する(笑)