桜庭一樹のレビュー一覧
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ネタバレこの本は最初のページに主人公の友達となる藻屑が死ぬことが書かれていて、もうここでそんなこと書いちゃっていいの?って驚いた。話の最初は(藻屑、、すごい子だな)とだけ思いながら読んでたけど、話が進んでいくうちに亡くなってしまうこと自体は最初から分かっていたのに最後物凄いショックを受けてしまった。(嫌だ死んでないよね、生きていて!!!)とまで思うくらいに藻屑がおかれている家庭環境や過去の辛さが読み進めていくうちにボロボロと明らかになってきて悲しくなった。この物語の主人公なぎさも普通ではない家庭環境で暮らしていて、そんな2人が出会ったことが作中の唯一の救い、また奇跡だったと思っている。2人が出会えてよ
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切実な痛みをもった、女子中学生が主人公の青春小説です。
読んだあと、切なくて苦しくて悲しくてたまらないのに、なぜか爽やかな気持ちになりました。
主人公のなぎさには引きこもりの兄がいて、不思議な転校生の藻屑は、父親に虐待を受けています。
藻屑の抱える苦しみ、なぎさの抱える悩み、幼さの中に見え隠れする深い絶望とかすかな希望。
この物語は、藻屑という不幸な少女の、やるせない人生を描く鬱物語なのか。
それとも、藻屑との出会い、交流をとおして、痛みをともないながら残酷に成長していく、なぎさの切ない青春物語なのか。
それとも、運命に抗い戦った、あまたの少年少女たちに捧げる、暗く哀しい救 -
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親愛と性愛の重なり合い、言語化されるのが躊躇われるような情緒を、これ程に巧みに表現できるのは凄い。
しっかりと気持ち悪いが、花の気持ちに理解できる部分が多いのも、また歯痒くて悲しくて苦しい。
時を経ていくにつれ、純真でただ愛しかった互いの存在が、共依存のような退廃した関係性になっていくのがキツくてたまらない。
「生きている意味とは」を、ふっと考えさせられる作品。当たり前に生きることは、こうにも難しいのか。
桜庭一樹さんは、心理描写、情景描写ともに文章があまりにも上手すぎる。冒頭フィジーのエメラルドの海が、読み進めるほどに「中身のないバカみたいな美しさ」の対比を効かせてくる。
ああ、ふ -
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直木賞受賞作
『私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。‥‥傘盗人なのに、落ちぶれ貴族のようにどこか優雅だった』
40才になる腐野淳悟
結婚直前の養女、花
この2人には何かある
そう思わせる冒頭の文章
もうここから引き込まれていく
凄い話なのになんだか
美しささえ感じてしまう
以前「赤朽葉家の伝説」を読んで
すっかり好きになってしまった
桜庭一樹さん
でもこの小説はまた違った
魅力がある
最後まで謎があって
想像が止まらないのも良い
今後の2人がどうなるのかも
謎!
腐野 (くさりの)なんて名前も
ふざけてるし‥
『おまえが、濡れるといけないと思って。花』
こ -
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鬱小説として名高いお話
でも、この物語の本質はそれだけではない
以下、公式の説明
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直木賞作家がおくる、暗黒の少女小説。
ある午後、あたしはひたすら山を登っていた。そこにあるはずの、あってほしくない「あるもの」に出逢うために――子供という絶望の季節を生き延びようとあがく魂を描く、直木賞作家の初期傑作。
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中学生の山田なぎさは、世の中に出るための「実弾」を求めている
そんななぎさのクラスに転校生 海野藻屑(うみのもくず)が現れる
彼女は美しく、芸能人の父を持つが、美しい顔とは裏腹に体には痣があり、 -
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増田佳江『不規則な部屋』(2009年)を装画に使ったカバーが、情感が有って素晴らしい(カバーデザイン/鈴木成一デザイン室)。富士見ミステリー文庫版は、内容とはちぐはぐな萌え絵が表紙で興醒め。
海野藻屑は「ボク少女」で、ラノベによく有りがちで、食傷気味ですが、萌え系と違って、この子には血が通っています。藻屑は「自分は人魚」だと嘘を付きますが、私の中学時代にも「私は多重人格者だ」と言っていた女の子がいたので、リアルだと感じました。思春期の苦しさを思い出しました。十代の時に読んでいたらどう感じたんでしょうか?
舞台である鳥取県境港市のザラザラした空気感が伝わってきます。これって舞城王太郎にも -
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高校生の頃に出逢った大切な本。
桜庭一樹さんの本は高校生〜大学のときに読み漁りましたが、そのきっかけとなった一冊です。
10代特有の、将来への絶望やもどかしさ、息苦しさが生々しく描かれています。
いわゆる「少女小説」とも呼べる本書なのですが、大人になった今読み返しても、主人公たちに感情移入して胸が苦しくなります。
子どもは親を選べない。
産まれてくる家庭を選べない。
その残酷さを知っているからこそ、大人になって読み直しても、この物語の残酷さが私の心を揺さぶり続けるのだと思います。
以下は、特に印象に残っているフレーズ抜粋です
「好きって絶望だよね」-53ページ
「こんな人生、ほんとじ -
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ネタバレ気持ちが悪い話だった。父と娘の共依存、殺人、北国、肉欲、潮の匂い。汗と欲望でむせ返る湿った敷布団の匂いが小説を読み終わった今でも何処かから漂ってくるみたいだ。淳悟は父であり、花は娘で、そして母なんだ。私はこの話を「近親相姦」だとか「タブー」といった薄っぺらい言葉で表現したくない。心理学的視点で言えば淳悟が幼い花から心を、血を身体を奪ったというのが正しいんだろうけど、多分2人は元から痩せ細った枯れ木だったのだと思う。作中にもあったように「2人とも乾いて痩せている」のだ。絡み合って、奪って、補っていかないと歩けない。そこには血があって、欠陥があって、2人があるのだ。説明はそれだけで十分な気がする。
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しっかりと読み終えました。
長い小説でした。
山陰の旧家名家の赤朽葉家の万葉、毛毱、瞳子の三代に渡る物語りです。
特に、山の民の末裔で置き忘れられた子である万葉の話が貴重で面白かったです。千里眼というのが、とても興味深かったです。その子供の泪や鞄なども変わったキャラクターですし、いじめっ子でのち友人になった黒菱みどりもとても個性的に描かれてました。
長女の毛毱は、不良で暴走族の製鉄天使アイアンエンジェルの頭として中国地方制覇をする美女でブサメン好みで、その青春が描かれました。その後売れっ子漫画家になるのです。異母妹の百夜との対比もよく書かれていました。
次に、その子供の瞳子の話ですが、これは万