あらすじ
その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは徐々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日――直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。
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切実な痛みをもった、女子中学生が主人公の青春小説です。
読んだあと、切なくて苦しくて悲しくてたまらないのに、なぜか爽やかな気持ちになりました。
主人公のなぎさには引きこもりの兄がいて、不思議な転校生の藻屑は、父親に虐待を受けています。
藻屑の抱える苦しみ、なぎさの抱える悩み、幼さの中に見え隠れする深い絶望とかすかな希望。
この物語は、藻屑という不幸な少女の、やるせない人生を描く鬱物語なのか。
それとも、藻屑との出会い、交流をとおして、痛みをともないながら残酷に成長していく、なぎさの切ない青春物語なのか。
それとも、運命に抗い戦った、あまたの少年少女たちに捧げる、暗く哀しい救いに満ちた、鎮魂歌レクイエムの物語なのか。
きっとそれら全ての要素を持つ、鬱で青くて、儚くて、清く正しく間違っている鎮魂歌。それこそが、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」なのではないでしょうか。
まるで、清涼感あふれる真夏のサイダーのような、青春文学の傑作。
2人が再び出会ったとき、この世界が、全ての子供たちが幸せな、楽園のような世界になっていることを願って。
子供、そして、かつて子供だった人に読んで欲しい、もろくて儚いストーリーです。
Posted by ブクログ
9/26再読。"好きって絶望だよね"、"大人になって自由になったら。だけど十三歳ではとこにもいけない"桜庭一樹の言葉選びが光る。藻屑が死ぬのは最初にわかっているのに死んでしまうシーンでは涙が出てしまった。それまでなんだコイツと思ってた担任の先生をすごく好きになる。"おまえには生き抜く気、会ったのかよ……?"のセリフが胸に刺さる。実際どうだったんだろう?どうしてなぎさと逃げられなかったのか。お父さんに捕まって行けなかったのだと思いたい。
Posted by ブクログ
鬱小説として名高いお話
でも、この物語の本質はそれだけではない
以下、公式の説明
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直木賞作家がおくる、暗黒の少女小説。
ある午後、あたしはひたすら山を登っていた。そこにあるはずの、あってほしくない「あるもの」に出逢うために――子供という絶望の季節を生き延びようとあがく魂を描く、直木賞作家の初期傑作。
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中学生の山田なぎさは、世の中に出るための「実弾」を求めている
そんななぎさのクラスに転校生 海野藻屑(うみのもくず)が現れる
彼女は美しく、芸能人の父を持つが、美しい顔とは裏腹に体には痣があり、何より自称人魚という空想に満ちた奇矯な言動「砂糖菓子の弾丸」を放つ
周囲の人間が藻屑に興味を示す中、関心を寄せずに藻屑の隠し事を見抜くなぎさに藻屑は惹かれる
彼女たちの生きる未来とは?
中学生のため、世間に出るには生活するための実弾が必要
手っ取り早い手段として、なぎさは近くにある自衛隊に入隊をしようと思っている
砂糖菓子の弾丸は、空想のため現実世界に影響を及ぼす力はない
だけど、かろうじて自らの精神を助けることはできる
物語の冒頭で、とある事件の情報が提示されてあって
読者はそれを意識しながら読み進める事になる
ミステリではその事件がその通りではない事がよくあるけど、これはそういった物語ではない
そんな期待をして読むと、その期待は裏切られる
残酷なまでの現実を突きつけてくる感じ、これが初期の桜庭一樹かぁ……
藻屑がなぎさに「好きって絶望だよね」とこぼすところ
無償の愛というのは、親から子へのものではなく、子から親に対するものなんだよね
愛というか、信頼に近いものかもしれないけど、親であるというだけで切っても切れない縁がある
もし、その縁が善くないものであるならば、それは絶望でしょうね
サイコパス診断として有名な問い
藻屑は答えられないので、一応普通の人と同じ反応になぎさは少し安心する
それと同時に、藻屑が普通の子であることに若干の失望も感じる
まともな子が奇抜な振る舞いをしているというのも、ある意味で普通の厨二病のようなものか
マンガで読んでいたので、物語の概要は知っていたけど
やはり文章で読むと印象が変わるなぁ
あと、子供に藻屑なんて名前をつける事に疑問を感じる人がいる
世間一般ならそうでしょうねぇとも思うけど
フィクションなら、サザエさんの祖先に「磯野藻屑源素太皆」という人がいたりする
まぁ、そんな巫山戯た名前が出てくるあたりもコメディフィクションたる所以なのでしょうけど
Posted by ブクログ
増田佳江『不規則な部屋』(2009年)を装画に使ったカバーが、情感が有って素晴らしい(カバーデザイン/鈴木成一デザイン室)。富士見ミステリー文庫版は、内容とはちぐはぐな萌え絵が表紙で興醒め。
海野藻屑は「ボク少女」で、ラノベによく有りがちで、食傷気味ですが、萌え系と違って、この子には血が通っています。藻屑は「自分は人魚」だと嘘を付きますが、私の中学時代にも「私は多重人格者だ」と言っていた女の子がいたので、リアルだと感じました。思春期の苦しさを思い出しました。十代の時に読んでいたらどう感じたんでしょうか?
舞台である鳥取県境港市のザラザラした空気感が伝わってきます。これって舞城王太郎にも通じている気がします。
イケメン嫌いな桜庭さんに申し訳ないのですが、友彦に萌えました!映像化・音声化される時は、是非とも石田彰様にお願いします。
辻原登氏の解説も秀逸。
Posted by ブクログ
藻屑のことは結局救えなかったのに、砂糖菓子の弾丸はもうどこにもないのに結局クラスで無視されないようになって、兄が社会に馴染めるようになって、なぎさが進学できて、良い方向に進んでいってるのがとても悲しい。
Posted by ブクログ
高校生の頃に出逢った大切な本。
桜庭一樹さんの本は高校生〜大学のときに読み漁りましたが、そのきっかけとなった一冊です。
10代特有の、将来への絶望やもどかしさ、息苦しさが生々しく描かれています。
いわゆる「少女小説」とも呼べる本書なのですが、大人になった今読み返しても、主人公たちに感情移入して胸が苦しくなります。
子どもは親を選べない。
産まれてくる家庭を選べない。
その残酷さを知っているからこそ、大人になって読み直しても、この物語の残酷さが私の心を揺さぶり続けるのだと思います。
以下は、特に印象に残っているフレーズ抜粋です
「好きって絶望だよね」-53ページ
「こんな人生、ほんとじゃないんだ(‥)きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気。きっと全部、悪い嘘」-159ページ
「もう誰も、砂糖菓子の弾丸を撃たない。(‥)どこまでも一緒に逃げようなんて、言ってくれない。」-187ページ数
Posted by ブクログ
2人の少女の悲劇の物語であり、救いの物語でもある
これはきっと自衛のための戦争であり、砂糖菓子の弾丸を手に取り必死に戦おうとする姿が印象的でした。
山田なぎさと海野藻屑は全く違う人物だけど、山田なぎさはきっと海野藻屑だったんだと思います。
強烈な醜さと美しさを纏った作品でした。
匿名
家庭と学校という狭い世界で生きなければならない二人の中学生の話。もしそこが地獄だったら。無理に適応しようとしたり現実逃避したり。
間に合いはしなかったが、子どもを助けたいと思う大人の存在が救いになります。
話は鬱だが、子供の視点で書かれていてとても読みやすいです。
Posted by ブクログ
透き通っていて、美しくて、どこかさらさらとしている悲劇。
ストーリーは少し乾燥度の高い悲劇。とても美しい話だと思った。主人公の感情描写が綺麗でとても好き。
生き残った子だけが大人になる。大人と子供の狭間を揺れる私にとても刺さったお話でした。
Posted by ブクログ
間違いなく読んだ本の中のベストテンに残り続けると思えた一冊。
タイトルからしてすでに秀逸だ。
砂糖菓子の弾丸を打ちまくった藻屑は死んでしまった。
私はこの本を夏のじめっとした部屋の中で読んだ。この環境で読んで良かったと心から思う。まとわりつく様な気持ちの悪い暑さと、この文章は非常に相性が良い。
藻屑が本当に人魚だったら良かったのにという感想を目にして、私も心から同意した。藻屑は自由を手にして海の底で卵をポコポコと産んで微笑を浮かべているべきなのだ。
「この人生は全部、嘘だって。嘘だから、平気だって。」
Posted by ブクログ
おすすめ頂き、購入してやっとこさ読むことができた作品『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』。
タイトルの意味から内容がイメージつかなかったのが理由です。表紙はいい感じだったんですが。
さてさて、何がうちぬけなかったのか?
13歳中学2年生、9月に転校してきた謎すぎる
美女海野藻屑(うみのもくず)。親は芸能人だがどうやら問題のある家庭のよう。
藻屑は自分を人魚だといい、現実として絡むのがかなりシンドイキャラ。また、主人公山田なぎさも、ひきこもりの兄と母と暮らしていて早く大人になりたーい!
あぁ、苦しい設定ですよ。
親や大人に問題あり!凪良ゆうさん的な?
でも不思議と藻屑のキャラが次第に愛おしさすら
感じてくる。なぎさもクラスメイトから友達、
かけがえのない親友以上になり・・・。
冒頭から藻屑が死んでしまうことが提示されての
一カ月間のお話となるので、ショッキングな結末
と感じることはなく。
不思議と前向きになれる小説でございました。
解説込み200ページですが、なかなかの読後感です。オススメ作品です。
Posted by ブクログ
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
このタイトルの意味はいまいち、わかるようではっきりとした答えは言えない。
実弾はお金。
砂糖菓子の弾丸は空想など、、、
とにかく可哀想。変な転校生かと思う。でも愛情と憎しみがわからない。って言うのはよくある。虐待されている子供によくみられるよね。
最初に死亡ニュースが書かれているので最後も予測ができ、話の流れ的に特に驚くことはない。だけど涙が出る。
実際に現場を見たら終わり。
教員の立場を考えても本当に辛いだろうな
Posted by ブクログ
登場人物や文体から独特な世界観が展開され、最初はなかなか感情移入しづらかった物語にどんどん引き込まれた。子どもに対する虐待というテーマを扱っているため、読んでいてしんどい部分はありましたが、短い物語の中で感情を動かされました。タイトルの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」、おそらく「砂糖菓子の弾丸」は藻屑のことを指しているのだろうけれど、読み終わった後に改めてタイトルの意味を考えると暗い気持ちになる。
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現実主義的で自衛官を志望している、なぎさと、自分は人魚だと述べる夢想的な藻屑の二人を中心に物語が展開される。
共通して、理不尽で大人に対して子供は無力であるという現実に対抗しているけど、その方法が「実弾」と「砂糖菓子の弾丸」で対比されているのが面白かった。読み終えてタイトルについて考えるとぐっとくるものがあった。
Posted by ブクログ
父が死に兄がひきこもりの山田なぎさは、人生に直接関係のある「実弾」にしか興味がない。
たとえばその日の糧についてだし、たとえば毎日しなくてはならない料理についてが「実弾」である。
ある日砂糖菓子の弾丸を打ちまくる転校生、海野藻屑がくる。ミネラルウォーターを投げたり、嘘をついたり、虐待された痣を汚染と言い張る。
この話は海野藻屑が虐待の果てに殺されて近くの山にバラバラで捨てられるまでを描いている。
子供が放てる砂糖菓子の弾丸では大人の実弾には、勝てない。
海野藻屑のちょっとした魅力がすてきで、悲しい本でした
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「生きているだけで偉い」とよく言われるが、この本を読んで偉いというよりもすごいことだと思った。この世は生き残りゲームみたいなもので、生き抜いて大人になれるだけで奇跡なのかもしれない。
Posted by ブクログ
海野藻屑という風変わりな名前の少女のバラバラ遺体が発見されるところから始まり、その少女が死に至るまでを追ってゆく。
冒頭を読んで「これはハッピーエンドは望めないな」と思いながらも読み進めていくと、主人公の山田なぎさ視点のラノベっぽい文体から「ひょっとしてそこまで酷い展開でもない?」と一瞬思ってしまったが、そんなに甘くはなかった。
波打ち際を意味する「なぎさ」という主人公の名前は、深海まで藻屑を救いに行けないことを匂わせているんだろうか。
とにかくやるせないお話でした。
Posted by ブクログ
友人に薦められてなかなか読めていなかったけどようやく読めた。2人の主人公の女子中学生のお話。砂糖菓子の弾丸って何って思っていたが最後は意味が分かりとても興味深い作品になった。最初に結末が分かっているからこそ物語の傍観者として最後の結末を予想しながら読み進めることができた。なかなかに面白い本だった。
Posted by ブクログ
ラストには驚愕させられた。本谷有希子著『乱暴と待機』に通じるものがある。ダークな内容をライトな小説として読ませる。詳細について語らないほどにイメージを膨らませてしまう。とても上手な書き手だと関心した。
Posted by ブクログ
主人公のなぎさの家は貧しくて、収入という「実弾」を求めている。
転校生の藻屑は虐待を受けていて、自分は人魚で体のアザは汚染だと言って「砂糖菓子の弾丸」を撃っている。
なぎさの兄の友彦は引きこもりで魔術という「砂糖菓子の弾丸」で自分を守っている。
藻屑は実父に殺される。
藻屑の事件を機に友彦は外に出て自衛隊に入る。
世界中で今日も子供が殺されている。
子供は砂糖菓子の弾丸で社会とは戦えない。
この本の1番の秀逸な点はタイトルだと思う。
Posted by ブクログ
鬱小説1位と言われるこの小説。
いろんななことをかかえている13歳の女の子2人が出会ってしまう。
13歳なんて、あまりに小さくて脆くて無力だ。
最近はいろんな問題をかかえた内容の小説が多いから特にこの小説が鬱小説1位とは思わないけど、衝撃的な始まりから終わりまで晴れやかな気持ちで読めるページはなかったなぁ…
Posted by ブクログ
砂糖菓子の銃弾で、必死に世界と戦う2人の少女に心打たれる。何とも、心苦しくなるが、最後まで引き込まれる。
生き抜いた子どもだけが大人になれる。何とも悲しい。
Posted by ブクログ
砂糖菓子の弾丸を撃つ藻屑と、実弾にこだわるなぎさ。二人の少女の物語。
子供は大人の前では力を持たない。
昔力のない子供であったであろう担任が地味に好きだった。
自分が子供のときに読んでいたらもっと好きだったかも。
Posted by ブクログ
「生き残った子どもだけが大人になる。」
オーディブルで聴いた。
悲しい。子どもって不自由。
ともひこは結構すき。
海野藻屑がどうしても好きになれないって思ってたけど、終盤になるにつれて藻屑の明るさが苦しくなる。