あらすじ
とある事情から逃亡者となった“ぼく”こと巣籠カナは、逃げ込んだダストシュートの中で全裸の美少女・白雪を発見する。黒く大きな銃を持ち、記憶喪失を自称する白雪と、疑いつつも彼女に惹かれるカナ。2人は街を抜け出し、東京・秋葉原を目指すが……。直木賞作家のブレイク前夜に書かれた、清冽でファニーな成長小説。幻の未公開エンディング2本を同時収録。
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Posted by ブクログ
日々はもちろん不安だった。ぼくは十六歳、十七歳と歳を取っても、相変わらず同じ生き物だったのだ。弱くて、傷つきやすくて、プライドだけ高くて、そのくせ人の気持ちには絶望的に鈍感な、そんなだめな生き物だ。突破口はみつからなかった。相変わらず自分が嫌いだった。そういうものなのかもしれない。(本文より)
読んだ当時は学生時代で、精神的にいまよりも未熟な部分が多く、瑞々しい言葉たちがすごく刺さったのを覚えている。二十代後半になった今でもまだ、大人ってなんだろう、とよく考える。
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この本を初めて読んだのは中学3年生の頃でした。当時は主人公の巣籠カナと同じ学年だと思いながら、カナが言っていることや思っていることに共感したり、そういう考え方もわかる、といった雑駁な印象を抱いていました。
けれど世間知らずな私は、カナが見ている繁華街や東京の景色がイメージできず、漠然とした読み味だったのを覚えています。
大人になってから久しぶりに読み直してみましたが、むしろ大人になってからのほうがグサグサに刺さる小説だったことを思い知らされました。
かつて中学3年生だった私がどんなことに毎日悩み、苛々したり、将来に迷って苦しんでいたか、私はすっかり忘れてしまっていました。
白雪が渡してくれたドールと「いまの巣籠カナを大事にしてよね」というセリフは、まるでそれを初めて読んだ私より、その先の未来にいる私に向けて言っているかのような気がして、とても印象に残りました。
当時の自分を忘れないように、この本を大事にしたいと思います。
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物語の最後に分岐があるのが珍しいなと思います。ゲームみたいで好き。
少しどろっとしててでも描写は軽快でふわっとしてて。白雪は宇宙人なのか誘拐された娘なのか…でもきっと巣籠カナにとってはどちらでもいい気もする。
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」や「少女には向かない職業」と似た文体な気がしました。
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こんなにファンタジーの世界観溢れるものは
はじめて読んだ。
やはり桜庭さん素晴らしい。
子ども目線をスラスラ書けている。
子どもにとって大人は理不尽で、
大人にとって子どもって理不尽で、
だけど大人も子どもも宇宙人も
みんな生きるために必死で、
つまり生物はみんな我儘なのかな。
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『推定少女』桜庭一樹さん
10代向けのSF小説かと思いきや、
多感な時期の少年少女の心の葛藤が
リアルに描かれていて、
アラフォーの心をも鷲掴みにした作品でした。
共通言語を持たない、ゾンビが蔓延る世界。
大人はいつの日を境に、ゾンビになってしまうのかな。
”ドン・キホーテの偽物みたいな店“とか、
雑居ビルの階段に置かれているあの小道具たちの名前、
主人公が嫌悪を示す義父のあの匂い。
こういう鋭い背景描写に、グッときました。
SFっぽいけどリアルな世界感があって
SFが苦手でもすんなりと入ってくるので
楽しかったです。
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《大人》からの逃避行。それは自分が大人になってしまうことから逃げることでもある。渡される進路希望調査票、未来を選ばない「ぼく」。不思議な少女と二人、行く宛のない旅をする。
ぐるぐる目が回るような展開、どこまでがブラックアウトでどこまでが現実なのか……曖昧だけど確かな少女の手触りが残る読後。駆け抜けるような物語に着彩する描写が何よりも少女のキラキラポップチューン。最高だ。
ラノベというかノベルゲーム的文体で最後にエンディングが分岐するという構造にもびっくりした。元々は単一エンドだということだけど、この結末が複数存在して、それがそれぞれ独立したものではなく互いに重なり合ったものになっている(!)というところにノベルゲームを超えた何かを感じた。
複数のエンドが存在するノベルゲームにしばしば言及される問題として、「結局トゥルーエンドが唯一の真エンドで、他のエンドはキャラクターの描写や情報の補完に充てられる副エンドでしかない」といったものがあるが、『推定少女』はどれが真エンドか選び取れない気がする。僕たちはしかし選び取らなければいけないのか、可能性を?
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SF的とはいってもハードSFの類ではない。『砂糖菓子』と同様、大人になるまでの中途半端な位置にいる少女の苦悩が如実に描かれている。子供を馬鹿にして物事を自分たちに都合よく判断しようとしかしない大人や、反対に子供の自分を捨てきれずにぐずる大人、子供の気分をわかったつもりでいる大人への目線がリアル。こちらはミステリアスな雰囲気が強く、より物語にのめり込めた。百合好きな人は絶対に読むべき。
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ファンタジーだ。ファンタジーだ。
いい物語は、終ってしまうのが悲しい。登場人物と、他人とは思えなくなって、もう会えなくなるのがつらくなる。小説の力ってすごい、改めて思い知らされる。
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独特な設定なのに引き込まれる文章でどんどん読み進められた。子どもの真剣な悩みを思春期や反抗期、厨二病といった言葉で片付けてしまうことの残酷さを、同じ子どもながら忘れていたなと思った。
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桜庭一樹が…つまっている…。
女の子に見える髪が長くて痩せた男の子とか、弱くて社会的ネットワークとの繋がりが希薄だけど、不安定な中学生女子に優しいハグをあげられるゲーマーお兄ちゃんとか、私が好きなものを好きな作家の文章で読めるの嬉しい。
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実際のところは思春期に読んでないから評価できない……。でも自分はこんな思春期のもやもやを経験しなかった気がするので、読む時期が変わっても特に感想は変わらないのかもしれない。終始そうなんだ〜という感じではあった。
物語としてはエンディングが分岐するのが作者の脳内をよりしっかり見れた気がして面白かったし、自分と異なる考え方や感受性をもつ人の世界を垣間見るという点で面白かった。裸の美少女がいかつい銃を振り回す感じがフェチズムを感じてよかった。
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とらえどころのない話だなあと思って読み進めた。
男なのか女なのか、宇宙人なのか、異常者なのか、主要登場人物たちのキャラクターをつかめないまま話が進んでいく。
挙げ句、結末すら曖昧というか読者に解釈を任せるような感じだ。
と思ったが、なるほど、このとらえどころのなさは、登場人物たちの思春期の不安定さ、危うさ、自我のゆらぎ、そういったモヤモヤそのものなのだと捉えると、少しスッキリした。
あっと驚くどんでん返しを期待したり、伏線回収を期待したり、大団円を期待したり、そういう小説の読み方は「大人」なのであって、そういうカッチリした流れのストーリーを期待してしまう読者はこの小説に登場する大人そのものなのだ。
思春期の雑多な妄想を思い出させるようなお話でした。
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読んだ感想は、解説で高野和明さんが語り尽くしてしまっている。ただただその通りだと感じた。
桜庭一樹さんの小説の登場人物は、やはり好きにしかならない。
そのくらい良いので、是非読んでください。
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「大人との共通言語が無い」という部分に大きく共感した。
親の愛や、血の繋がらない大人からの愛護心など、バイアスのようなもののせいで、大人には言葉が伝わらない時がある。
大人は子どもを経験しているのに、なぜ伝わらないのかが分からなくて、童心は忘れるものやと思う。
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謎の少女と出会っての逃亡劇。彼女は精神異常者なのか、宇宙人なのか、ロボットなのか・・・?
わけのわからないまま逃亡する思春期の少女を通した歪んだ世界。結局主人公は元通りの生活に戻るも、一連の奇妙な出来事は彼女に何をもたらしたのでしょうか?
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家出少女が逃亡中に不思議な女の子を見つけて……。
話の筋はすごく不可思議なものだけど、その中で繰り広げられる子供たちの心理描写は心にとてもきました。
10代の少年少女に読んでもらいたい。
最後があっさり解決してしまうため、クライマックスからいきなり完結してしまう感がありました。
ラストが分岐しており、3通りの結末があるけど、白雪が結局何者であったかは読者の判断に委ねられているので、もやもやっとした気持ちで終わるかもしれない。
作中に出てくる人物の行動が頭の中で再生できるくらいわかりやすいのは、さすが桜庭一樹!
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結局、白雪は宇宙人だったのか、はたまた精神病棟の患者だったのかという可能性を残しつつ、答えは曖昧なまま終わる。スライムとか倒してるから、きっと彼女は宇宙人だったんだろうと思う。
大人になりたくないカナは、義父を矢で射ってしまい、宇宙人から逃げ回る冒険。
彼女の正体はなんなのか気になって、結局読む手が止まらなかった。
電脳戦士も宇宙人だったようだ。
でも、ここでいう宇宙人って、もしかしたら誰の心にもいるフレンズ的なものなのかしらね。
理不尽なことも、誰かを失うことも、家族との関係性も、みんなそれぞれ色々あるけどそれを乗り越えて大人になっているんだと、、、
Posted by ブクログ
巣篭カナ
十五歳の女の子。過失致死もしくは過失致死未遂でパトカーに追われている。逃走中にの白雪」を拾う。
白雪
カナがダストシュートに逃げ込んだ時にいた先客。雪のように真っ白な体。白雪という名前はカナの命名した。
カナの母
カナの義父
カナのゲーセン仲間のお兄ちゃん
水前寺千晴
カナと白雪が東京で出会った銃器マニアの中学生。一人っ子で、都内の有名な私立中学校の三年生。
綾小路麗々子
誘拐された女の子。
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古本屋で購入⑻
不思議な女の子がずっと正体不明のままなところが良かった。
よくわからないし、友達でいた年数は全然浅いし、考えていることは全くわからないけれど、なぜか心は繋がっていて絆が確立されている関係性が、不思議で尊くて、子供ならではの関係性だと思った。
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若い頃特有の(私がこの言葉を使っていいのか?)疑心暗鬼で単純な子供たちが抵抗するんだけど、結局夢オチだったっていう話。
何も分かってない!と思うことが子供である証拠、みたいなシーンがあったが、大人は本当に分かってるの?!と思った。
でも、“分かっている”ならあんなこと言わないよねぇ、とどうしても思ってしまう。私は子供。
もうちょっと歳をとってからまた読みたい本。きっと感じ方がかなり変わるから。
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再読。「ここから物語は分岐し、三種類のエンディングがあります。」と書かれたときには驚きと少しの落胆があった。あとがきによると編集部の要望で書きかえたものも含めて全部収録したという事情らしい。こういうゲーム的なエンディングはあまり好きではないが、作家が自由に書けないこともあるのだろう。自分を「ぼく」と呼ぶ少女は脅えながら戦っている。ただ生き延びるために戦っている。そんな時代が自分にもあったことを思い出させてくれる。
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これを読んで、アラサー主婦はきんぴらごぼうを作るためにしぶしぶ千切りを始めるのであった。
家出少女の奇想天外で不思議な体験を描いたハイスピードでポップでちょぴりダークな雰囲気が漂った小説。今の生き方に失望している少年少女たちの逃亡劇。ファンタジー展開に振り回されながら着地するエンディングは3種類。
思春期の溢れんばかりのキモチが表現されていて、懐かしく思う反面、もっとやりようがあったと思うのは完全に大人側の視点によるものですね。
エンディング2,3のような現実的な収まりはハッピーエンドであることは間違いないのだけど、エンディング1のように少女たちが子どものままでいるエンドが小説として美しく心に留めていたいと思った。
Posted by ブクログ
読み終わった当初、その時の状況にも依存していたのかもしれないけど鬱蒼とした気分になった。
こういった絶望系の小説に慣れていないせいなのかもしれない。
人によっては絶望系ではないと言うかもしれないが、雰囲気が始終暗いというのはあると思う。
終わり方が三種類あって、ゲームのマルチEDのようだが、
あくまでも自分はどの終わりかたも納得できなかった。
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2回ほど積ん読になってしまったけど、後半をいっき読みしたら、なんだかよかった。あのころの私が、いるなあ、と思った。いつか大人になったら、「あの頃はなんにも考えてなかったわ」とか言っちゃうんだろうか、っていう不安。大人に対する羨望のような軽蔑。家出。大人の女性に対する嫌悪感。そういうもの全部、自分に対する絶望だってこと。わかってくれている本があってよかった。
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誰にも定義されないで。
桜庭一樹らしい小説。マルチエンディングなのも面白い。ラノベ寄りだなぁ、と思っていたら、最初はファミ通文庫だったそうです。なるほど。
巣籠カナは義父を「撃ってしまい」逃走を図る。そこで出会った記憶喪失の美少女、もしかして宇宙人かもしれない「白雪」と秋葉原を目指して逃げ続ける。「電脳戦士」のお兄ちゃんと別れ、アキバの『ブラック・パイレーツ』で出会った「火器戦士」千晴に助けられながら、補導員や警察、評論家からも逃げて、カナはどこへ行くのか。
説明できないいろいろなこと。大人から言わせれば、悩むにも値しないくだらないこと。荒唐無稽、夢のような、非現実的な話。でも、中学三年生には重要なのだ。あの頃を思い出すと、全然違う自分が「ぐるぐるして、馬鹿みたいで、ホント何考えてたんだろう」と冷静に言ってきます。わたしも宇宙人にさらわれて別人になったのかもしれない。白雪が誰かなんて、もはやどうでもいい、そんな大人に。
エンディングはボニー&クライド的な「Ending I 放浪」が一番しっくりきますが、「Ending III 安全装置」が、角川文庫としては落ち着きの良いところなのかと。
Posted by ブクログ
家出少女の「ぼく」と、ダストシュートの中から出てきた「白雪」の話。
途中から、女の子みたいにきれいな少年「千晴」も加わり、
身勝手な大人たちと宇宙人に翻弄されるお話。
大人になるっていうのは、どうも気持ち悪いものだ。
Posted by ブクログ
読んでる途中から
どうしてこんな話を大人が書けるんだろう、という素朴すぎる疑問が生まれてしまった。
ってくらい、この話は完全に子ども目線。子どもの見てる世界、考えてる頭の中。
頭の固ーいおじさんがこの話を読んだら、子どもは何を言ってるんだ!くだらん!なんて言い放つんじゃないかなーレベル。笑
今の悩みに埋れていると、昔悩んでたことなんてちっぽけに思えてくる。その時だって、それなりに全力で悩んでたはずなのにね。
子どもの世界は狭い。でも、狭いなりに自分の目で見てる世界にどうにかこうにかして、自分の生きている証を見つけようとしていたんだと思う。大人の言ってることだけを信じてすくすく育ってきましたー!なんて子は絶対いないはず。
みんなどこかで抵抗感を持って生きてきた、大人に。
この本を読んで、子ども時代の生きている証って大人への抵抗な気がしてきた。なんとなくね
Posted by ブクログ
ラノベなので、私が読むのには少々若すぎる気もするが、結構面白い。
しかし、半ば頃まで行って、この本は何なのだろ?と悩みました。ジャンル分けなど無意味とは思うけど、何が主題なのか?
で、思いついたのが、昔の冒険小説。ギャビン・ライアルとかクィネルとかポロックとか。これらの主人公はどこか虚無的なプロフェッショナルの男だけど、主人公を、ちょっと反抗的だけどごく普通の美少女に置き換えれば、こんな小説になるのかなと。
ところで、この角川文庫版には3つのエンディングが収録されています。
どれを採るかによって全体のイメージも変ります。最初のエンディング(著者自身が最初に書いたもの)では上の印象が強いけど、出版社の要請のよって書き換えられた残り二つのエンディングでは、ぐっと青春小説的な印象に変ります。
なかなか面白いものです。