あらすじ
「辺境の人」に置き去られた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる三代の女たち、そして彼女らを取り巻く不思議な一族の姿を、比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。第60回日本推理作家協会賞受賞作。ようこそ、ビューティフル・ワールドへ。
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Posted by ブクログ
しっかりと読み終えました。
長い小説でした。
山陰の旧家名家の赤朽葉家の万葉、毛毱、瞳子の三代に渡る物語りです。
特に、山の民の末裔で置き忘れられた子である万葉の話が貴重で面白かったです。千里眼というのが、とても興味深かったです。その子供の泪や鞄なども変わったキャラクターですし、いじめっ子でのち友人になった黒菱みどりもとても個性的に描かれてました。
長女の毛毱は、不良で暴走族の製鉄天使アイアンエンジェルの頭として中国地方制覇をする美女でブサメン好みで、その青春が描かれました。その後売れっ子漫画家になるのです。異母妹の百夜との対比もよく書かれていました。
次に、その子供の瞳子の話ですが、これは万葉が最後に残した謎を解くことに費やされました。
その時代時代の空気をうまく表現していて、自分の事も思い出しながら読みました。
私は、古い小説ですがパールバックの「大地」を思い出しました。
もっと書けることありますが、これくらいにします。
是非みなさんにも読んでいただきたい小説でした。
Posted by ブクログ
鳥取の製鉄業を営む旧家に生きる女性三代の話
千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし
目次で
第一部最後の神話の時代
第二部巨と虚の時代
第三部殺人者
とあって、第三部の最後の女性は殺人を犯してるのかと思っていたら違った
第三部では平成の世代で
自分の在り方に悩みながらも孫が祖母の最後の言葉を探っていく
女性三代を通して
高度経済成長、ハブル崩壊、平成へと移る様子
女性たちの生き様
周りの人たちとの関わり
すべて描写されていて…圧巻
読者を飽きさせない
読後感半端なかった
私にはかなりおもしろかった
最初は字が少し小さいなぁ…読めるかなぁと心配だったけどサクサク読めた
Posted by ブクログ
今まで読んだことのないタイプの小説で初めはなんだろこれと思っていたが、50ページほど読んだところでこれは面白い!と思い始めて一気に読んだ。
この一冊に一つの世界が詰まっている、閉じ込められているように感じる。スノードームのような錯覚。と思っていたら3部目は一挙に外に飛び出して、しかもミステリー持ってくるか!純粋にエンタメとして大変楽しめました。
著者もこれを書いているときは楽しかっただろうなと思ったら、あとがきにそう書いてありました。
Posted by ブクログ
「その大屋敷は山の樹木や土になかば埋もれるようにして、巨人の手で押されてやわらかな山に押しこまれでもしたかのように、ちょっとかしいで、のっそりと建っていた。‥‥赤朽葉家はまことに、どこもかしこも、赤かった。それは暗い、腐りかけた紅葉の赤とでもいう色彩で、山の頂に、まさに王者の風格で堂々と、しかしちょっとかしいで、建っていた」
この文章だけで充分ワクワクする!
ワクワクゾクゾクしながら物語は進む
日本の歴史の流れの中で赤朽葉家の歴史も流れる
その中で生きる人々のなんとも愛くるしいこと
どの登場人物も愛おしく好きになれる
女三代
やっぱり女は強し!だけれど
その強さの中に必ず素敵な殿方がいたりして‥
一言
おもしろかった!
桜庭さんの作品また読んでみたい
Posted by ブクログ
桜庭一樹先生の代表作の一つ。
1番大好きな作家さんなのに、なぜ今まで読まなかったのだろう。
桜庭先生独特の世界観が大好きです。
ミステリーと聞いていたけれど、1部、2部は全くミステリー色がなく、あれ?と思っていたところ、3部でミステリー色が出てきました。
3部の主人公が付けられるはずだった、「自由」という名前、これは「家」というものから「自由」になる世代という意味で付けられたのではないかと思います。
万葉も毛毬も生き方は違えど、「家」に属して、「家」を守っていた女たち。
瞳子はきっと「家」に縛られず、「自由」にこの物語が終わった後も生きていくのでしょう。
そして、きっと赤朽葉家は静かに終わりを迎えるのでしょう。
最後の3行は私たちのような、これからの未来を生きて、作っていくための人に向けた言葉。
ビューティフルワールドを作って、生きていく私たちへの言葉です。
Posted by ブクログ
終戦後から平成の中頃までを、実際の出来事にも触れながら紡がれる女三代記でした。
語り部である三代目、瞳子が私と同じ頃の生まれで、誰か人伝に聞いた話のように読むことができ、社会情勢や価値観、暮らしなど移ろう時代を登場人物に想いを馳せて読んでいました。
特に一代目万葉の時代の話が、実家に伝わる古い話とどこか似ていて、お気に入りです。
Posted by ブクログ
三部の最後までネタバレしてるので注意!
通勤時間にちまちま読む私には超大作すぎるけど、その分すごく面白かった。
万葉の見る神話の世界にぐっと引き込まれ、
毛鞠の突き抜ける衝動と喪失の歴史に踏み潰され、
一部・二部に対して比較的軽く、二部の喪失から癒えてきた傷口をさらっと爽やかにグリグリされる瞳子の三部。
視覚的にずっと美しい。
鉄砲薔薇と箱の渓谷や、曜司の乗るお座敷列車が浮き上がるシーンは、死にまつわることなのに美しすぎる。
桜庭一樹は生きている人間はもちろん、死んでゆく人間も美しく書き上げてくれるから信頼と愛を捧げたい。
最高。最高で最高に辛い。
泪がすごく好きだったので生まれると同時に作中での死が確定して、亡くなるまでずっとしんどかったし、
いざ死ぬと喪失感がすごくてそのあと泪の話が出てくる度に静かに本を閉じて休憩した。
最後に瞳子のことを抱きしめる三城の気持ちを考えるとつらい。
男に生まれてしまったが故に三城と結ばれる未来を選べず、自死してしまったかもしれないかつての友人(まぁおそらく恋人)の泪とそっくりに生まれた女の子の瞳子を、泣いている瞳子を抱きしめるなんて……。
優しいな三城は。
女に生まれていたら、って泪はきっと1度は思っただろうな…………。
しんどい。
そして豊寿さんも好きだったのに……そんな……ってなる。
友人の枠からはみ出ないように節度を持って万葉に接する豊寿が大好きだったので、死ぬなんて……。
この作品に出てくる男たちはみんな魅力的すぎる。
女たちももちろん魅力的なんだけど、男たちに狂わされる。
瞳子の今の自分に対する評価とか、未来への不安は共感できるところがあって最後の「ようこそ」は、瞳子を含む生まれた人間たちに対する歓迎の言葉。
瞳子とは違う種類だけど、三城もまた傷と不安を抱えて生きていくしかないのだ……。
今生きている私たちと同じように。
Posted by ブクログ
鳥取の旧家での女三代の物語。戦後日本史、家族、青春、恋愛、いろんな側面から楽しめる。
一部ごとに主人公がかわる三部構成になっていて、特に第一部の万葉の話と第二部の毛毬の話は濃い。第二部まででだいぶお腹いっぱいになった。
Posted by ブクログ
戦後不死鳥のように生き返り、猛烈に成長し、そして行き詰まる現代までの日本の歴史を、ある旧家の3代の女たちを主人公に書き上げた長編。あとがきにも記されてるけど『百年の孤独』などのラテアメ文学の影響がよく見て取れるので、マジックリアリズムがどんなのか軽く知りたいって人にもおすすめ。沢山の登場人物が出てくるのに誰もが個性的で魅力を感じた。特に出目金おばさんの黒菱みどりはキャラが濃くて好き。マコンドは最後消し飛んでしまったけど、本作は私たち自身の未来に希望を持たせる締めくくりで、充実した読後感だった。
Posted by ブクログ
三世代に渡る一族の物語。なかなかの名作。鳥取の旧家の土着的な雰囲気あり、ミステリアスな雰囲気あり、と思えばコメディタッチな部分もあり、楽しめる部分は多い。三世代それぞれが生きた時代の日本社会の描写がいささか表面的な気はするが、世代によって移り変わっていく時代を書くということが主眼であり、それ以外については瑣末なことであろう。三世代目の娘が同い年というのも共感を覚えた。
Posted by ブクログ
高校時代にいわゆるスケバンとして、不良たちの間で伝説的存在となり、その後大人気漫画家となった女性の生涯……って気になりませんか?そんな人物がこの小説には出てきます。彼女の名前は赤朽葉蹴鞠です。
上の話だけ聞くと、たとえフィクションでも「そんなやつおれへんやろ~」となると思います。実際、ライトノベルやマンガのキャラ付けとして表層的に書くなら、なんとかなるかもしれません。でも小説として、そして一人のリアルな人間として、その人生を描くのは至難の業だと思います。しかし、それを可能にしたのが桜庭一樹さんなのです。
なぜ、そんな破天荒な人生を描くことが出来たのか。それは、蹴鞠が生まれ、そして生きた「時代」の空気感、そしてその前後の「時代」も一緒に描ききったからだと思います。
この小説の特徴は三世代に渡った小説だということ。彼女たちは大きな製鉄会社の奥様という立場になります。
彼女たちと時代を描くうえで、この製鉄会社というキーワードも効果的に機能します。高度経済成長で大きく成長しながらも、石油危機や公害問題で縮小や、業態の変更を余儀なくされ、オートメショーン化や産業構造の変化で、職人たちも減り、シンボルだった巨大な溶鉱炉も停止、そして工場の取り壊し……。
赤朽葉家の製鉄は、一つの時代の始まりと終わりを描きます。
そして、それと呼応するように、時代の若者たちの意識も変化していきます。働けばその分報われると信じられた高度経済成長期。学生運動が盛んになり、若者たちのうねりが仕事以外に向き始めた時代。
学生運動の熱も冷め、若者たちのうねりのぶつけどころが無くなった時代。そして、バブル崩壊後の失われた20年、希望や生きる目的が見えにくくなった現代。
こうしたそれぞれの時代と、その時代を生きた若者たちの空気感を描きったからこそ、万葉の時代も、わたしの心情も、そして蹴鞠の不良時代から、漫画家への転身という破天荒な人生も、時代の要請として描き切ることが出来たのだと思います。
この話の謎の中心となるのは、千里眼として未来予知ができた祖母万葉が視た空飛ぶ男の謎。でも読んでいくうちに、その謎が吹き飛ぶくらい万葉、そして蹴鞠の人生の濃さに夢中になると思います。(蹴鞠の人生が濃すぎるだけで、万葉の生涯もかなり濃くて面白いです!)
そして、現代、万葉が死の直前につぶやいた「わたしは人を殺した」という言葉に導かれ、現代の語り手、瞳子は赤朽葉家の謎に向き合います。そして謎の先にあるのは、時代の終わりと、そして未来への小さな決意だと思います。
この小説の最後の文章って、冷静に読むとちょっと青臭いです。しかし、それぞれの時代のうねりと女性の生涯を読み切ったあとならば、この文章が美しく、そして読者を勇気づけてくれるものになっていると思います。
第60回日本推理作家協会賞
2007年版このミステリーがすごい!2位
第5回本屋大賞7位
Posted by ブクログ
著者の別作品のシリーズに『GOSICK』なるライトノベル作品が存在する。一九二四年、架空の西欧の小国ソヴュールを舞台とするホラーテイストのミステリである。二〇一一年には悠木碧主演でアニメ化もされた。
此の『GOSICK』シリーズに関して、著者が何処かで、歴史上、近代とは日本にとって青春の時代ではなかったか、というようなニュアンスのコメントを残していたと思う。
即ち、子供から大人へ。神秘から科学へ。換言すれば近代とは神秘の残り香を宿した最後の時代なのである。本書『赤朽葉家の伝説』もまた『GOSICK』と同様の通奏低音の下に書かれた作品であろう。
サンカ、服わぬ山の民。其の遺児たる万葉は、同時に神秘の時代の落とし子でもあった。
本書は第六十回日本推理作家協会賞受賞作とある。ならば、まあ、推理小説の類であろうと頁を繰るのだが、其処に展開されるのは神秘の落胤・赤朽葉万葉から始まる少し不思議な女三代記である。
然も質の悪い事にこれが結構面白い。途中まで本書がミステリである事を本気で失念して娯しんでしまった。
だがミステリを愛好する向きには安心されたし、本書はちゃんとミステリである。本来御法度とされる筈の神秘の要素も不可欠な仕掛けの一つ。日本推理作家協会賞受賞は伊達ではない。
然し乍ら矢張り自分としてはジャンルの枠組みで縛るのが勿体無いくらいには純粋にクオリティの高い作品であったと感じる。単に小説作品として面白いのである。
これまで読んだ桜庭一樹作品では『私の男』が個人的にはベストであったが、若しかすると首位交代も有り得る……。
Posted by ブクログ
山陰の製鉄業で財を成した旧家の三代に渡る女性の年代記
以下、公式のあらすじ
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「山の民」に置き去られた赤ん坊。この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。2006年を締め括る著者の新たなる代表作、桜庭一樹はここまで凄かった!
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1953年から現代より10年前くらいまでの山陰地方を舞台にした地方の名家の三代記
製鉄業で栄える旧家の赤朽葉家
冒頭は現代パートの三代目視点の回想という形
後に赤朽葉に嫁ぐ事になる万葉が、山の民に置いていかれるところから物語が始まる
千里眼万葉時代
不良毛毬時代
名探偵瞳子時代
祖母の万葉は予知の能力があったのと、戦後と高度経済成長に伴う赤朽葉家の隆盛期
母の毛鞠は激動の世の中と丙午の年に生まれた気性と合致してしまった不良の時代でもあり、赤朽葉家の衰退を少女漫画家としての稼ぎで留めた時期
物語の語り手である瞳子は過去を振り返りながら、祖母の語った言葉の真意を探す
果たして、祖母の万葉は本当に人を殺した事があるのか?殺したとしたら誰なのか
戦後、高度経済成長、所得場像計画、職人の減少に伴う近代化、それに伴う公害問題
団塊ジュニア世代の学歴社会の受験戦争と落ちこぼれの二極化、暴走族の台頭、バブル景気など
歴史としての出来事や、少し上の世代の出来事として実感はないけれども知っている空気感、そして実体験として存在する社会情勢
本としての分量もさることながら、物語としての情報量も多い
万葉は地方の昭和史そのものだし
特に、毛鞠時代の暴走族の勢力争いなんて、城平京のスパイラル外伝「鋼鉄番長」を読んだような気分だ
それでいて、途中から少女漫画家に転身するあたりは漫画家の修羅場エッセイのようでもある
そして、瞳子も途中までは祖母や母に比べて平凡な女性の人生かと思いきや、いきなりミステリになる
しかもその謎の対象がこれまで語られてきた赤朽葉の歴史という構造に面白さを感じる
万葉が昔に見た、空飛ぶ一つ目男のイメージ
その人物が誰かは判明しているが、なぜ飛んでいるのか?
そんなところにヒントがあるとはねぇ……
あと、面白いなと感じたのは、みどりと万葉の関係かな
子供の頃は苛めっ子と苛められっ子だったのに
みどりの兄の死をきっかけにそれまでとは違った関係性になり
晩年は落ちぶれたみどりが同居しているのが普通になるというね
それにしても、赤朽葉はほぼ無関係の高等遊民が多いなぁ
現代でこんなことできる家はまずない
もしかして、富裕層では未だにこんな事ができたりするのかしら?
Posted by ブクログ
始め物語が頭に入ってくるまで時間がかかり何ヶ月にも渡って読んでしまったが、軌道に乗ればストーリーが面白く早く読めた。文章はくどいところがあり、同じ言い回しが何度も出て来たり時系列が分かりにくかったり、個人的には必要のない文章があったりで、それが読みにくかったかなと思う。でも最初の千里眼の伏線が本当に最後に綺麗に回収されてスッキリした。
Posted by ブクログ
女3代いやタツさんも入れると4代の昭和の戦後の高度成長時代から平成、21世紀に跨る赤朽葉家の歴史の物語
それぞれが不思議な力を持っており、家の存続に力を果たす
男よりも女性の方が守るという事に合っているだろう
それにしてもそれぞれ不思議なエピソードでグイグイと引き込まれていく
また、周りの登場人物たちも個性が強くネーミングセンスも抜群、サンカの存在や古代より受け継いできたたたら場など物語に華を添えまくっている
トーコにも必ず何かしらの能力はあるはずで、鞄にもあるのかな?
丁度いいサイズの読み応えと満足のいく物語でした
Posted by ブクログ
話は3部作構成。鳥取の名家赤朽葉家の女三代の物語。里で拾われた山窩の子供、千里眼の万葉。未来に起きることを幻視する。大奥様のタツのひと声で赤朽葉に嫁入り。その娘でレディースから漫画家になった毛鞠。恋愛、抗争、友情、そして青春の終わり。更にその娘、まだ何者でもない瞳子。万葉、毛鞠が主役の2部目までは、これはいわゆる大河小説か?という展開。日本の経済発展、オイルショック、バブルへと。
当時の風潮を思い出しながら波乱万丈の2人の人生を愉しむ。それが面白い。自分の親の世代の万葉も、自分の世代の毛鞠も私の知ってる時代とは少し違う気もするが地域の違いか、個人の違いか。そこは小説だから御愛嬌。
そして瞳子の出てくる3部目になって思い出したかのように殺人の話が出てくる。登場人物が、その昔の殺人を告白するのだ。誰が殺されたのか?なぜ?どうやって?という謎解きに瞳子が挑む。その謎を解く伏線は前の2部、大河小説部分に隠されている。だからこんな突飛な2人の女性の人生を描いたのかと、そこで気づく。
そもそもこれは推理小説なのか?と思いながら読んで、違うけど面白いなと思い始めた頃に謎が提示されるから、そのときにはもう推理小説としての興味を失っている。謎解きはどうでも良いのだが、上手に作っている。それが良いのか悪いのかわからんが何より小説にいちばん大事なこと、お話として面白いので十分だ。
Posted by ブクログ
女三代の話。
朝ドラにもありましたね、そういうの。
毛鞠と青春時代が重なり、懐かしく読みました。
面白かったけど、結局万葉はなぜ、誰から捨てられたのか、そこが気になった。
Posted by ブクログ
読み初めは、堅いタイトルに加えて時代小説っぽい感じで最後まで読めるか心配していましたが、不思議な世界観と登場人物に魅了され一気に読んでしまいました。
明るい内容ばかりではないですがどことなく朝ドラのような雰囲気がします。
どの時代にも栄枯盛衰があり、流れにのれる人と取り残される人がいる。その繰り返しで今があるんだなと思います。後半で急にミステリー感が出てきてちょっと驚きました。
いい意味で奇怪
どんな思考回路を持っていたら
こんな物語が生まれるのだろうか。
驚きと尊敬しかない。
その時代背景と、必死に生き抜く各世代の女たちの
力強くもメッセージ性の強い物語だと思う。
あと、人との繋がりや家族の繋がりを
大事にしたいと思った。
Posted by ブクログ
戦後から平成初期にかけた日本の歴史に沿ったある特殊な一家についての物語だった。学校の教科書で習ったような風習や当時の様子が描かれていて、懐かしい感じがした。またそこから十数年前の常識は今の非常識なのはいつの時代も同じだなと感じた。時の流れが早くりつつあるように思える現代では、世間の常識より自身の信念こそが最も大切なのかもしれない。
Posted by ブクログ
タイトルからも堅苦しそーだなあでも読みたいなあ読まなきゃなあを彷徨ってたこの超大作をようやく読めました。読んで良かった。堅苦しさとはなんのことやったのか。物語への没入のしやさすさ。戦後からの時代背景を詳細に踏まえながら、赤朽葉家の物語は語られます。時代に沿ったり沿わなかったり、旧家の有り様も表現豊かでとても面白かった。
なにより、文体や語り草にとても笑ってしまう。
『寝取りの百夜』は腹抱えて笑いました。死に様も全く裏切ることなく、とても良いキャラでした。
万葉、毛毱、瞳子の3世代がもちろん色濃く強く素晴らしい主人公でしたが、周りを取り巻く女性たちのなんと華やかで可笑しなことか。黒菱みどりがとても印象的です。この女性が出てくるたびに、万葉の少女時代が思い返され、飛行人間の謎をそのたびに思い出してたのですが、これはまた最後に解決されるお話。切なくも、強かった男のお話。
毛毱とチョーコの関係性はとても儚く、寂しいものでした。チョーコという人間の考え方にはとても共感するものがあり、この陰影な考え方は毛毱が大きく強い赤い光であることを再確認していた。
だからこそ、毛毱の最後には驚いた。チョーコが迎えに来たのか、毛毱がチョーコを迎えにいったのか。死してなお、胸を打たれた。
桜庭一樹さんの全体小説、とても楽しませていただきました。流石の一言に、尽きます。
Posted by ブクログ
3章で構成された物語ですが、1,2章は独特の世界観で引き込まれます。ところがミステリー小説と思っていたのにその要素が無い?…。3章目で漸くその展開がありました。昭和から平成に生きる女性の愛憎を時に恐ろしく、時にコミカルに描いた作品です。とても面白く印象深い作品でした。
Posted by ブクログ
あまり好きな作風ではなかったが、読破して良かったと思える良作。
祖母、母、娘三代にわたる、旧家の物語を、当時の社会情勢を交えて描いている。
創作ながら、地に足がついており、登場人物たちの名前に違和感を残すのみだった。
その時代の空気感や、社会の変遷から派生する登場人物たちの悩みなど、大きな視点と小さな視点のバランスがうまく取れていた。
Posted by ブクログ
親子3代のお話だったので、時代の流れを感じられました。
それぞれの時代の若者の特徴をすごく的確に表現しているなと思いました。
このまま物語が続いていたら、令和の若者はどんなふうに表現されるのでしょう?
Posted by ブクログ
2008年。(第5回)。7位。
GOSICK好きなのよ。
鳥取の旧家女性3名の歴史。万葉はフィリピン系の感じで山の民に捨てられ、鳥取で育った。中国山脈あたりって八咫烏も住んでいたような。旧家の大奥様タツの指名により輿入れ。世の中は鉄鋼業が盛んだった。泪、丙午の娘の毛鞠、鞄、孤独の4人を生む。毛鞠は中学生より暴走族で中国地方を配下に収める。やがて引退、そして人気漫画家に。長男の泪の死により、父の決めた男と結婚、瞳子を産む。鉄鋼業も衰退していく。この話は瞳子が語り手。
昭和の歴史と絡めた一族の歴史。
Posted by ブクログ
日本推理作家協会賞を受賞した作品。この人の本は初。
戦後まもなくの鳥取県紅緑村に、一人の赤ん坊が置き去られていた。
「山の民」の子と見られるこの子を村の若夫婦が引き取り、その子は後に製鉄業で財を成した旧家・赤朽葉家嫁入りする。
それが赤朽葉家の「千里眼奥様」こと、赤朽葉万葉だった。
時代は過ぎ去り、万葉の娘・毛毬は中国地方最大のレディースの頭から漫画家に転身する。
そして孫の瞳子は、旧家の娘として何が出来るかわからぬまま、空虚な自分を感じていた。
本来ならば“自由”と名付けられるはずだった瞳子。彼女は祖母と母の本当の物語を知る為に動き出す。。。
非常にスケールの大きな作品である。
何しろ親子3代に渡る、長い時代を掛けた物語なのだから当然か。
第一部の「万葉編」は、昔の風景と神話と戦後の高度成長など、多くの要素を含みながらも
“山の子”である万葉があれよあれよと赤朽葉家に嫁入りし、数多くの子供を産んで行く、
情緒溢れる「成長譚」のような物語だった。
個人的には一番面白いと感じた。
第二部「毛毬編」になると、その時代を知っているせいもあってか
妙な古臭さ(ダサさ?)を感じ、毛毬や友人達の言葉使いに青臭さを感じてしまった。
ある意味狙い通りなのかもしれない。とりあえず突拍子もない物語である。
第三部「瞳子編」は、正直面白味を感じる事が出来なかった。
何もない瞳子。彼氏と上手くいったりいかなかったり、
突然浮かび上がる“万葉の殺人疑惑”の謎を探ったり。
そしてその謎の真相も、それ程驚くような内容でもなかったりする。
語り手としての瞳子は必要だったのだろうが、彼女自身の物語は何一つなかった。
そもそも、個人的にこういった「時代を生きた女性達」みたいなお話はそこまで好きではない。
赤朽葉家は女性がいなければどうしようもないのか?という疑問も湧く。
あまりにもあっさりと人々が死んでいくのも、味気ないものである。
それでも、読み応えはあったし話の展開の仕方は読み易かった。
直木賞を取った『私の男』も読んでみようかと思う。