あらすじ
最初の記憶は五歳のとき。公営住宅の庭を眺めていたあたしにママが言った。「逃げるわよ」。母の名前はマコ、娘の名前はコマコ。老人ばかりが暮らす城塞都市や奇妙な風習の残る温泉街。逃亡生活の中でコマコは言葉を覚え、物語を知った。そして二人はいつまでも一緒だと信じていた。母娘の逃避行、その結末は。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
この本は桜庭一樹が全て詰まっている。
「私の男」のザラザラした不快感。「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」のティーンエイジャーの複雑で理解不能な闇。「荒野」も「製鉄少女」も、そして全編通して「地獄行き」。前半はマコとコマコの非現実世界での、リアルで暗い逃避行。後半は駒子の幸福へ背を向けて大人になる姿。相変わらず靄のかかった暗い世界なのだが、なぜか読み出したらやめられない陶酔感。長い話でしたが、とても印象的な心に刻まれる小説でした。
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わたしにとって初めての長編小説。
いつもの薄いものではなくかなり分厚い。
重くて指の筋が違えそうになりながらも、
夢中で読み進めてしまう。
マコのためのコマコ。
絶対服従。
共存ではなく忠犬コマコ。
可愛くて愛しくてでもおっかなくて
他人には不幸に見えることも
2人には幸福でしかない。
小さなコマコが大きくなり、
罪悪感を抱くところが切なくて悲しかった。
わたしはコマコの味方だよ。
コマコに会いたい。抱きしめたい。
と感じてしまった。
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再読。この分厚い本は第1部と第2部に分かれているように、異なる物語をコマコという糸でつないでいる。第1部の母と娘の物語は辛い話ではあるんだけれど、小さな子供にできることは服従し愛することで、ほかの選択肢などないのだろうなと想像する。第2部はその娘が作家になるのだが、本とは何か、小説家とはどんな生き物なのかなどが語られるのが、桜庭さんが透けて見えてその赤裸々さが面白い。『私の男』が最高だと思っていたけれど、これもいいな。角田光代さんの解説が私の代弁者のようなど真ん中さでウレシイ。
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続けて読むのではなく、1ヶ月か少なくとも1週間に一章ずつ読み進めて行くべき小説。
前半と後半では全然違う小説だが、前半の奇想集のような地獄巡りと、後半の現実界での地獄巡りが対になり、孤独な主人公にとっての家族というものを様々な角度から浮かびあがらせる。
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桜庭一樹の物語の中で一番好きな物語だ。
眞子と駒子の親子はずっと旅を続けている。
駒子には戸籍がない。だから学校へも行けない。言葉を話すこともできない。
それでも駒子は幸せだった。
何故って、何よりも自分を必要としてくれる眞子がそばにいたから。
でも子どものままではいられない。
時が経てば駒子も成長する。大人になっていく。
文字を覚え、本の中にある世界を知り、物語に魅了される。
眞子だけを見ていた駒子は、もう存在しない。
求めているのは眞子だけではないのに。
駒子だって苦しいほどに眞子を求めていたのに。
眞子の心は揺らぎ、脅え、少しずつ疲弊していく。
突然の別れ、置いていかれた駒子。
切なくて、哀しくて、けれどどうしようもなく惹きつけられる。
そんな物語だった。
言葉を紡ぎだすというのは作業ではないんだな、とあらためて思った。
心の奥底にあるものがあふれるように言葉になっていく。
作家というのはそうして物語を作りだしていくのだろう。
どこか荒唐無稽で、なのにとてもリアルで。
きっと好きな人はとても好きで、受け入れられない人にとってはどうしようもない物語なのだろう。
人生はやり直せない。過去に戻ることもできない。
でも、過去を通り抜けてきた軌跡が未来を作る。
そして未来は不確定でだからこそ素晴らしいのだ。
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この本は好き嫌いがはっきり分かれるだろうな。感覚的にどこか共感できる人、恐らく女性にはたまらなく心の片隅に沁みる一冊になるだろう。ダメな人は全くついて行けないだろうし、読解ミスを引き起こすと思う。それほどアクの強い作品、私には心に突き刺さるトゲのような一冊になった。
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「幸福から、立ち直らなければいけない」という言葉を読んだとき、体を駆け巡る何かの正体が分かった。駒子の体を支配していたのは、愛による幸福の記憶だったのだと。
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個人的には著者さんといえば「少女感」という言葉が浮かんできます。これはそれを極限まで書ききってやろう!こんにゃろう!という気合いの詰まった1冊だと思いますん。
変質的な愛と幸福に包まれた母との逃避行・その後の余生、その中で傷ついて絶望して、堕ちながさまよい続けた、主人公コマコの生き様から目が離せなかったす。
結構な分厚さだったけど、それを感じなかった。
Posted by ブクログ
完全な人間に物語など必要がない。でも完全な人間などいないから、誰にでも物語というものは必要…本当にそう思います。完全とまではいかなくても、真っ当な人も物語を必要としないよな、とも。このお話だと、真田みたいな。
圧倒されました。母と娘、お互いしかいないというのは悲劇だけれどとても幸福なのかもしれないです。
幸福から立ち直る…初めて接する言葉だけれどこの感覚はわかるので不思議。とても悲しいけれど、生き続けるには欠かせないです。
母と娘ってこうだな、と思いました。これが濃いか薄いかの違いで。ここまで描写出来るって凄いな。
眞子と駒子の頃と、駒子の余生と。息苦しいけれど、物語の力も感じられました。体力奪われる読書でした。
Posted by ブクログ
共感し、ぐっとくるフレーズが目白押しだった。計画性がなく自己中心的で、自分の為に娘を使う母親と、それでもその母親が自分のたった一人の唯一無二の特別な人間で、何をされても愛している娘。「母親でも女でありたい」という女性の典型的な例みたいな母親と対照に、男性への魅せ方や愛し方が不完全な娘。第一章は、対照的な母と娘の生き方が不憫で歯痒くて仕方ない。
でも、個人的には母マコと娘コマコが一緒に生きている時の話の方が好き。
それから第二章へ進み、母マコの幻影に囚われながら生き続ける娘コマコの人生が綴られていく。死んでしまった人間は圧倒的で神のよう。母に囚われ続けるコマコに共感の嵐。それでもコマコが、自分の仕事と結婚相手が見つかったことにほっとした。物語を必要とする人間は満たされていない人間なのかもしれないと、本を読む自分にドキっとした。
母と娘が旅したありそうでない街たちの描写も素敵だった。大事にされなくて、虐待されていたとしても、それでも母親が大好きな子供が切ない。そんな親だったら離れた方が良いと第三者は思うけれど、当の本人からしたら離れたくないんだろうと思うと、昨今の虐待問題が切なくてたまらない。「幸福から立ち直る」ってズシンとくる言葉だ。
自分を痛めつけることでやっと生きていくコマコ。苦しいけれど、ページをめくる指が止まらない
Posted by ブクログ
第一部の 旅 はそれぞれの町が現実に在りそうで、
少しファンタジーな感じで、温泉街の風習とか
豚の脚とか。
コマコの夢なのかな?とも読めた
第二部のバーでの一人語りにその旅の経験が形を変えて出てくると、コマコが実体験したことなんだと、マコとの濃さを改めて感じた。
読み進めるのが苦しくて
でも読みたくて 終わらないでほしいけど
絶妙なところで終わった
Posted by ブクログ
主人公はなにやら事件を起こしたらしい母親と逃避行をする。母親は主人公を虐待するが、主人公は母親を盲目的なまでに慕う。やがて逃避行は突然の終わりを告げ、主人公は一人で生きていくことななる・・。
なんだか歪んだ母親と娘の関係。著者はそういう関係性を描くのがとっても上手いですね。主人公の数奇な人生はこの先どうなるのかな?という興味も充分に惹いてくれます。好き嫌いが分かれるかもしれませんが、心に残る作品でした。
Posted by ブクログ
直木賞を受賞した『私の男』の次の作品に当たるのですね。
第一部は母子の旅、第二部は自立を余儀なくされた娘のその後。圧巻の大部。
これを書き上げるのはどれほど苦しい作業だったろうか、と思わずにいられない。
読者としても、第二部を読み通すのはとても苦しかった。
いっぽう第一部の、日常と異世界の境を軽々飛び越える母子のめくるめく旅は最高だった。本当に最高だった。
とにかく、お疲れさまでした。
以下は余分な話。
個人的にこの著者の"小さな母音"の使いかたが苦手です。
「すこぅし」「だるぅく」「おとうさぁん」
文体からはみ出しているのを見つけるたびにぎょっとして、物語から醒めてしまう。
私だけかしら…。
一人称に「わたしはけだるげに」のたぐいがたくさん混じるのも苦手。
でももちろん、このような瑣末な点以上に惹きつけられるものがたくさんあって、あるいは引っかかる点や納得の行かない点がたくさんあることも時にはあって、とにかくいまはこの著者の作品を追っています。
Posted by ブクログ
とあるバーのスタッフさんの紹介で読んでみた。
桜庭一樹というから、てっきり男性の作家さんだと思って買ったのだが、中身を読んでみるととても男性が書いたとは思えない。あとで、桜庭さんは女性と知った。
思っていたよりもダークではあったが、別にダーク過ぎることもない。前半は、必要なのかわからないような濃すぎるエピソードもあったような気もするが、そういうわけのわからなさも確かに必要だろう。
後半は前半と雰囲気が違い過ぎるのと、作家や表現者としての生き方や考え方がたくさん出てきていて、そこは前半とはあまり関係がないような気もして、そこを批判している人もいるけれど、自分としては、表現することがいかに身を切ることかということにとても共感したので、あまり違和感は感じなかった。むしろ、桜庭さんが作家として生きることの苦しさを、コマコが何度もやった様に創作の物語のなかでのメタファーで表現したのだろうと思ってしまうような。
最後の2ページで、それほど劇的な展開というわけではないのだが、急激に鳥肌がたった。
正常であるためには狂わなければならない。
この作品を読んで共感する女性というのは、どんな生き方をしていくのだろう。
Posted by ブクログ
桜庭さんの作品が好きな人には、お勧めしたいです。読み始めると続きが気になってどんどんのみ込まれていきます、言葉づかいが堪らない。
女性受けしやすい作風ですが、面白い小説です!
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岡崎京子さんの漫画を読んでるような気持ちになりました。
内容は前半より後半の方が好みです。
「文字に眠る」の話が好き。
終わり方も好みでした。
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第一章で完結していたら間違いなく最上の評価。前半で息が詰まるくらい一気に読んだせいもあって、一時停滞したように感じた。犬の骨のある文壇バー、一度行ってみたい。
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幼い母娘の逃避行。幼いのはどちらもだ。彷徨いながら生き延びて、どこまでも理不尽な、だけども痛いくらいリアルな現実を目の当たりにしながら成長していく娘コマコ。そこは大人の、男と女の、エゴだらけ。母だけが絶対。それさえも母という大人の、女の、エゴなのに。それでも絶対なのだ。お母さんって偉大なんだ。覚えてない記憶にも、あなたはいる。母娘って、きっとなにより近い。血も性別も過程も。第一部 ファミリーポートレートで、そんな2人が過ごした日々を。
第二部 セルフポートレートでは、独りコマコが自分自身を消費することで生き延びていく。なんのために、誰のために…。元からない尊厳は、取り戻すこともできず、誇ることもできず、悶々とした日々の中、なにかを得ては諦めて、そして得ていく。
物語中に漂う世界はどれも異質で、なさそうでありそうで、だけどやっぱりなさそうな世界たち。どれもがおぞましくて、そしてどこかに共感してしょうがない。この、ありえない現実感はなんだろう?私がまだ見つけてないだけなのかな…
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マコとコマコ(母と娘)の逃避行。
親子というよりは、コマコを所有物、時にはいないものとして。絶対服従の関係。
10年間。
絶対服従は変わらないのだけれど、コマコも成長し、マコに対しての愛情に変化がでる。
マコがいなくなったコマコはそのあとをどういきるのか。
破壊行動、暴力。
止められない衝動。
マコはピンク、コマコは水色。
いろんなものを演じられるけど、自分は演じられなかったコマコ。
書くことから逃げた後に、出会った真田との関係。
きれそうで切れない、失ってしまうかもしれない、快適で柔らかな朝には戻りたくない、合わないし、自分を変えられないと思うのに、気になる存在。
コマコの本は読まないと言っていたのに、関係がギクシャク、彼女を変えてしまった(もとに戻りつつある、戻っただけ)その原因を知るためか、コマコの本が部屋の中に。コマコは、見て見ぬふり。
最後までどうなるか、途中で別れてしまうのか気になって読んだ。
第二部の文字に眠るは、少し苦手だった。
嘘の話をつくって語るシーンが多くて。
出会いの場面は良かった。
いろんな人と出会って、この時はわからなくても鍛冶野さんが語った意味や、繋がりをふりかえる、作家として動き出す(作家になるんだろうなと思った)大事な章なのだろうと思ったから、時間がかかったけれど、嘘の物語をとばさず読んだf(^_^;
ポルノスターの彼女との出会い。
父親から連絡がくるのをずっと待つ。
来ないんだろうな、最後がどうなるかは想像通りだったけど、彼女の叫びがつまった章。
p681-12~16
Posted by ブクログ
幸福から立ち直らなきゃいけない
マコとコマコのどうしようもなく幸せだった時間から
立ち直れないでいることは
普通に生きてきた私からしたら
とんでもなくおかしいのに
おかしいからこそコマコのように生きれるし。
現実味があるようでファンタジーな世界観。
Posted by ブクログ
大人になりきれない母親と、そんな母親にすがって生きて行くことしか出来なかった娘が、不憫だ。
負の連鎖を感じる。
そんな母だけど、娘のことは愛しているんだろうな。重い話でした。
Posted by ブクログ
事前情報0で読み始めたので、どういう話なのか
物語の幹が掴みきれないまま読み進めていったのだけど
この本に関してはそれがけっこう辛かった。
女性の方がこういう話を肌感覚で理解できるのかもしれないけど
正直自分には評価不能としか言い様が無い本だった。
Posted by ブクログ
主人公の名前が「駒子」ってことで、私と同じ名前なので読まなきゃ!って感じで読みました。
前半は駒子が母「眞子」の子分として(「まこ」の子供だから「こまこ」なんだって! なんだなんだ?!)育っていく様子でした。
母は殺人を犯してしまい、二人で逃げてたどりついた村で生活し、また追っ手が迫ってきたら逃げて…という日々で。
前半はかなりドキドキしました。
おぞましい雰囲気のシーンも多くて、えーーーん、最近こういう感じの本ばかり読んでいるーー!と思いましたが。
そして後半は「まこ」の子分ではなくなった後、つまり少女時代から大人になった駒子の物語でした。
しかし、後半はわりとありふれた人生で、とにかく長いのでダレちゃった感じで、相当読み飛ばしてしまいました。
そんな中で、駒子の中の母の存在がどうなっていくのかが興味深かったです。
幼少期の記憶というのはやっぱり大事なんだろうなぁと感じました。