あらすじ
なにから逃げるの? どこに行くの? わたしをひとりにしないでねっ。『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の後日談を含む全7編を収録。青春・SF・家族ドラマ……。読了後、世界は動き始める。想像力の可能性を信じる、桜庭一樹10年間の軌跡。かわいいかわいい由美子ちゃんセンセ。こどもみたいな、ばかな大人。みんなの愛玩動物。そんな由美子ちゃんの一言で、わたしと彼女は、退屈な放課後から逃げ出した。(「じごくゆきっ」)。とある田舎町に暮らす、二人の中学生――虚弱な矢井田賢一と、巨漢の田中紗沙羅。紗沙羅の電話口からは、いつも何かを咀嚼する大きくて鈍い音が聞こえてくる。醜さを求める女子の奥底に眠る秘密とは。(「脂肪遊戯」)。
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Posted by ブクログ
マイノリティに刺さる物語を書くことに長けた作家さんだなと改めて感じた一冊
高校生の女の子が副担任の女性に囁かれたある一言で恋と共にじごくに落ちた時の「クラリとして、かなしくなって、私はたちまち、落ちた」この一文凄く素敵。この一説はほんためのあかりんが紹介していて、聞いた瞬間に惚れて書店に走った笑
絶対地獄に落ちると分かってる恋。そんな恋に落ちる瞬間をこんなラブリーに表現出来る作家さん中々いない
50年前に一世を風靡しスキャンダルによって姿を消した人気アイドルA。Aが消えてからアイドルという存在が1人も出てきてない日本で、再びアイドルを誕生させる為ある計画を実行する「A」という物語も良かったです
賞味期限が短いとされるアイドルという存在が今
日本には沢山いて、アイドル戦国時代の今だからこそ読んだ人それぞれに色んな感情が芽生えると思う
個人的にお気に入りの一冊
Posted by ブクログ
「砂糖菓子〜」の時もそうだったけど、改めて子どもは生まれ落ちた先が地獄でも逃げることなんて簡単に出来ないんだなと。耐えてサバイブ出来た人間だけが大人になれるんだ。砂糖菓子の時は理不尽という棒で頭をガツンと殴られたような衝撃だったけど、これは真綿で首を絞められてる感じ。私は本のこちら側で祈るしかできない。みんな生きてね。生き残ろうね。
Posted by ブクログ
ちょっと不気味で、怪しいお話が多いような印象の短編集。
基本的に本を選ぶときは
タイトルと表紙の印象で選ぶため(個人的に)
読み始めてすぐから本の中にどっぷり引き込まれるものに当たるととても嬉しい。
「じごくゆきっ」という表題のように
不気味で怪しいながらも軽快なトーンで話が進み
怖くないし、ねっとりしてない。
さらっとしている感じ。
でも、作中では怪しげな動きがあってどんどん読み進めてしまう。
桜庭一樹さんの本は初めて読みましたが、
どの短編も同じような雰囲気を感じられ面白かった…!
「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」も近々読んでみたい。
Posted by ブクログ
穏やかならぬタイトルなのに、”っ”を織り交ぜたひらがな表記により、ちょっとコミカルな雰囲気が漂う本作。殺人やら虐待やらが平気で登場する一方、そこかしこで顔を出すおかしみも含めて、タイトルにうまく表されている。内容は、最初と最後以外、設定もジャンルもバラバラな短編集。苦手なSFジャンルということもあってか、唯一『A』だけは全く好きじゃなかったけど(☆2つ)、それ以外は軒並み高品質。どうやら、最初と最後が『砂糖菓子』の後日談らしいけど、背景が同じというだけで、全く別の作品。むしろ、ラス2の短編の方が同系統ぽかった。ちなみに個人的に一番好きなのは、最初の一編かな。
Posted by ブクログ
文の一つ一つは読みやすいのに、物語は湿っていて、重い。それでいて手が止まることのない面白さ。読み進めていくごとに、各々が抱えた「じごく」を、解消できない孤独感を見せられる。やるせなさに包まれる。でもまた読みたくなる。なんで?ほんとにすごい。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」もそうだったが、ただの鬱小説ではなく、書かれている人々の感情、嫉妬、自己愛、狂気、孤独、偏愛、焦燥感、ぜんぶが刺さって抜けない。読み返したくなる。ただ嫌な展開を書くだけなら誰でもできるけど、それすら良いところに変えてしまうほどの圧倒的なストーリー構成力。
ジャンルを問わない短編集だが、それぞれのジャンルの世界観の面白さが際立つというより、桜庭一樹さんの書く人間の醜さだったり、弱さだったり、愚かさだったりをベースとして世界観がスパイスになっているという感じであった。
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読みこちらにも手を出したが、この方の描く世界が、「じごく」がすごく好きだ〜。
Posted by ブクログ
制服は女の子の戦闘服というような話が好き。
表題の「じごくゆきっ」で着るのは制服でこそないもののロリータ服もまた武装のようで好き。
どの話も常に嫌な空気が満ちていて良かったです。
Posted by ブクログ
徐々にガールたちの可愛そう具合が増していくのが
恐ろしくかわいそうでした。
みんないい終わり方でない。
でもそれがいい。それが正解なじごくゆきっ。
個人的には「A」と「じごくゆきっ」が好き。
哀れだなあと思っちゃった。
短編がどんどん進むにつれて
増していく桜庭ワールド。
砂糖菓子とのつながりはあまり感じなかったですけど
どれもすき。
また砂糖菓子が読みたくなった。
Posted by ブクログ
同性愛者の間の虐待されて育った女の子の話が好き。法律や正義なんかでは入っていけないような不定形の闇がある感じがした。最後の「脂肪遊戯」では前六篇の話が少し入っていたのにはいつぞや読んだ重松清の短編集と同じような構造だなと思った
Posted by ブクログ
桜庭一樹先生らしい,夢の中にいるような,矛盾だらけで,だから納得できるような気がする短編集.
「暴君」 カミュの「カリギュラ・誤解」は学生時代に読んだはずなのだけれど,全然憶えていないや(「暴君とは」「物事が見えなくなった魂」ねー,んーと,まったく記憶に引っかからない.再読してみるか.再読して:「罪こそ我が家」は「誤解」からか.良くこんなフレーズ引っ張ってきたなー).少女の肉体はまるでオバケヤシキか,うん,桜庭節だね.
「ビザ-ル」 同郷の更田さんに押し切られて二股交際を始めたカノさん.更田さんは,やくざの抗争の流れ弾で障害を負ってしまい,土砂崩れで壊滅的被害を受けた故郷の町の過去の夢に捕らわれてしまう.交際を始めたときには競馬かなにかで勝ったような薄笑いをうかべた更田さん.そのときドロボウみたいに笑ったカノさん.見捨てることを決めたとき,ガラスに映った泣いているつもりの顔は,またドロボウみたいに笑って見える.ちょっとゾクッときた.
「A」 アイドルの神様のお話.生ける屍はさすがにムリだけど,アバターを使ったアイドルは今後普通になっていくのだろうな(2Dならもういるし).
「ロボトミー」 この短編集の中で一番良かった.娘のユーノに異常に執着するユーノママにつきまとわれて半年でユーノと離婚したタカノ.再会したユーノは記憶障害を患っていて,それは離婚の直接の原因となったタカノの暴力のせいだとユーノママになじられる.何年か悶々としていたら,ユーノママからユーノの面倒をみるように指示する呪いの遺書が届く・・・.多幸感に包まれ同じ時を繰り返すユーノ,仕返しをしたりもするタカノ.最後の,「あっ、おかえりぃ。タカノ」・・・「・・・うん。ただいま、ユーノ」は,どう表現したらいいのだろう,ホントーにいい.
「じごくゆきっ」 女子高生の金城さん(16才)は,副担任の由美子ちゃん先生に夜汽車に乗ってどこかに逃げようと強引に誘われる(誘い文句はじごくゆきっ).雪の鳥取砂丘か,一度行ってみたいな.
「ゴッドレス」 父親の香に支配されて育ったニノは,香から香の恋人の勉と結婚しろと命令されて,困惑していたら,今度は勉をとるなと激しい暴行を受ける.勉が殺されて数年経ってから,勉を殺した(おそらく偽りの)記憶がよみがえる.「砂糖菓子」や「私の男」をなんとなく彷彿させられる作品.
「脂肪遊戯」 「暴君」の紗沙羅ちゃん再登場.紗沙羅ちゃんが脂肪の鎧をまとったのは,予想通り.賢一君が退屈と感じた,有り触れた美人になった紗沙羅ちゃん.もう少女たちの神様でいる必要もなく,金堂さんに憎まれることもなくなったのだろうか.いやそれは別の話か.
Posted by ブクログ
かわいくておばかな由美子ちゃんセンセ。かわいそうでかわいい皆の愛玩動物。そんな由美子ちゃんと、わたしは退屈な放課後から逃げ出した。二人きりの駆け落ち。向かう先はじごくゆきっ。(表題作)
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の後日談を含む7編を収録した短編集。……との事ですが、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んだのがかなり前でしたので、どの話がどう繋がっていたのか申し訳ないですがよく分かりませんでした。とりあえず、そちらを読んでいなくても物語的には問題ないと思います。
桜庭一樹さんは、思春期の潔癖さ、頑なさを書くのがとてもお上手だと思っていて、この本でもそれが表れています。若いキラキラした感性、ばかな大人を嘲笑う優越感、”特別”でありたい気持ち、いざ大人になってみると、ガワだけで内面は幼い頃から何も成長していないと気付いてしまった絶望、でもそれを隠して大人ぶる虚栄。
グロテスクで後ろめたくて情けなくて、目を背けてしまいたいものを可愛らしくデコレーションして差し出されたようなやるせなさを感じ、辛いけどそこが魅力でもある。
特に心に残った作品を2つ紹介。
『A』
2050年代、かつて一世を風靡した伝説のアイドルを復活させるため、ある女性を訪ねる広告代理店の職員の話。「アイコンの神」として祭り上げられる象徴としてのアイドルの姿に、”消費”される”商品”としての悲哀を感じます。私も推し活している身なのであまり突っ込んだことは言いづらいですが。
『ゴッドレス』
同性愛者の父にコントロールされて生きてきた女性の話。本当に読むのが辛い。
父は暴君だが、うつくしい庇護者でもある。憎いけれど、憎しみだけでは言い表せない渇望のような感情がもどかしくて苦しい。
Posted by ブクログ
この作者は初めて。
ライトノベルでデビューを果たした作家らしく、この文庫は一般大衆向けか?
短編七編からなり、ややパンチが足りないというものもあるが、どこか非現実的、屈折した登場人物が多く、全体的に面白く読めた。
Posted by ブクログ
5年振りくらいに本を読みたいと思って手に取った本。ただの小説だが、ちょっと不気味で不思議で読む手を止まらせない愉しさがある小説でした。桜庭一樹さんらしい!
トラウマよみがえりには注意
ほぼ毒親&機能不全家族集です。思い当たる人は気が滅入ります。
特に「ゴッドレス」は暴力被害者の成れの果てで最悪な気分。
しかし同じ毒親でも「ロボトミー」は秀作に仕上がってます。
ところで、作者、キリスト教を書くのなら、カトリックとプロテスタントの違いくらい理解してほしかった。
ミサはカトリック、賛美歌はプロテスタントです。ごっちゃにしてるから私は集中できませんでした。