村上春樹のレビュー一覧

  • 職業としての小説家(新潮文庫)

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    村上春樹の創作観や人生観が、これほど率直な言葉で語られている本も珍しいと思う。エッセイとして気軽に読める一方で、小説を書くという営みの奥深さや、村上作品そのものへの理解を大きく広げてくれる一冊だった。

    特に印象的だったのは、「小説を書くというのは鈍臭い作業である」という感覚だ。ひとつのテーマを、何度も形を変え、メタファーとして繰り返し描き続ける。効率とは真逆の営みだが、その非効率さこそが小説という表現の本質なのだろう。実際、最近読んだ『センスと哲学』とも重なる部分があり、村上作品における反復や“語り直し”の意味が少し腑に落ちた気がした。

    また、「文章を書くというより、音楽を演奏している感覚だった」という言葉も非常に興味深い。村上春樹の文章は、意味以上に“リズム”で読ませる部分が確かにある。理屈で積み上げるというより、身体感覚で流れていく。その独特の読み心地の理由が、創作側の感覚として語られていたのが面白かった。

    さらに、自分のオリジナリティを見つけるには「加算ではなく減算が必要」という考え方も印象に残る。情報や選択肢が溢れる現代では、何を足すかより、何を削るかの方が難しい。そして最終的には、「それをしていて楽しいか?」という極めてシンプルな問いに立ち返る。その姿勢には強い説得力があった。

    個人的には、「まず本をたくさん読み、その次に世界を注意深く観察する」という話も刺さった。意味や価値を急いで判断するのではなく、まず素材として世界を見つめること。その視点は、小説を書く人だけではなく、何かを感じ取り、言葉にしようとする人間全般に通じる態度なのだと思う。

    そして最後に残ったのは、「小説家は小説を書いていると同時に、小説によって自分自身も作られている」という感覚だった。作品とは単なるアウトプットではなく、その人自身を変化させていくものなのだろう。だからこそ、村上春樹の小説群を読み続けることで、こちら側の世界の見え方まで少しずつ変わっていくのかもしれない。

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    2026年05月23日
  • 回転木馬のデッド・ヒート

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    日頃短編集というものはあまり好まない私でも、楽しく、軽やかに読むことができた。言わば本書は村上作品を嗜む上でのウォーミングアップといったところだろう。

    いくつか気に入った話があるが、その一つは「タクシーに乗った男」である。この話には非常にロマンがあり、「現実に起こり得ないようで起こり得ることがあるのだ」という人生に対する期待感を持たせてくれる。

    また、「ハンティング・ナイフ」という話に関しても、スプートニクと同様、やはり村上春樹にリゾート地を描写させたらピカイチだと思った。

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    2024年08月29日
  • やがて哀しき外国語

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    村上春樹は小説よりもエッセイの方がおもしろいなーって思ってる笑
    特に遠い太鼓は好き。職業としての小説家も好き。エッセイを読んでこの人面白いってのが俺の村上春樹の入り方だったなぁ。
    このエッセイは何年も前に途中まで読んで、あれ?村上春樹にしてはなんかビミョーかもってなってそのままになってた本。改めて読んでも、やっぱりビミョーではある。でもそれがなぜなのか、何が他のエッセイ本と違うのか、今も昔はよくわからん。
    村上春樹の外国旅行記や、実際に住んでみてのエピソードは興味深いんだけど、どうしてもこの本は普通って感じてしまう。なぜなのか...。

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    2024年08月28日
  • 村上T 僕の愛したTシャツたち

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    さすがや。Tシャツのセンスさいこーです。
    写真見てるだけでTシャツ好きとしては幸せになる。
    それぞれのTVシャツにまつわるエッセイも、読みやすく肩の力が大いに抜けていて、純粋に楽しい。
    本と本の休憩時間に、休憩、頭空っぽにしたい時に良い本。いいね。

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    2024年08月10日
  • 猫を棄てる 父親について語るとき

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    [こんな人におすすめ]
    *村上春樹さんの本は難しくてよくわからないと思っている人
     村上春樹さんの作品と思って身構える必要はありません。彼が父親の人生をたどりながら自分自身のルーツを探っていく過程は、私たちが多かれ少なかれ持っている感情と重なる部分があります。村上春樹さんの作品を遠巻きに見ていた人こそ、彼を身近に感じ、親しみを持つ可能性が高いです。

    [こんな人は次の機会に]
    *村上春樹さんの小説が大好きな人
     推しのことをすべて知っておきたい人にはぴったりな本ですが、小説の文体や表現方法が好きな人には物足りない可能性があります。

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    2024年07月31日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉後編―(新潮文庫)

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    感想を書くのも難しいと感じる作品。
    大人子供関係なく性を全面に押し出していく著者。
    そこにどういう意図があるのかまだ分からない。また死の内容も絡んでくる。
    性と死の不思議な世界観。
    スピッツの世界観に近いようか感じがした。

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    2024年07月29日
  • 1Q84―BOOK2〈7月-9月〉後編―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ついに青豆と天ごが巡り合う。それは不思議な話。話が一気に進んだ感じ。青豆は物語の始まりの首都高階段へ、天ゴは死にかけてる父の元へ。
    空気さなぎの内容も明らかになり、登場人物が自分達の置かれた状況を自分達なりに理解し始める。それは読んでいる側も同じでなんだかよくわからない点が少しずつつながっていく感覚が、心地よい。
    けども全体として何が起こっているか今ひとつわからないまま。
    天ゴの母の謎。青豆の死後、今後明かされるであろう謎がまだ多いがその分期待も大きい。
    レジバ、パシバ。リトルピープル。空気さなぎ。
    月が二つの世界。少しずつではあるが前に進んでいる。つぎはどうなる?期待しかない。

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    2024年07月23日
  • 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(上)―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    秋川まりえの絵を描いたり、穴の絵を描いたりした。免色と秋川のつながりもできた。最後に秋川まりえが失踪した。次の最終巻でどうなるか。

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    2024年07月23日
  • 螢・納屋を焼く・その他の短編(新潮文庫)

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    村上春樹は喪失の物語だと思っている。『ノルウェイの森』の原点と言われる『螢』、『納屋を焼く』『踊る小人』など、これぞ村上春樹という作品の数々に酩酊しながら読み進める。何が起きているか分からないままに、文体に酔いしれる読書体験は唯一無二だと思う。だからこそ、こんなにも読み続けられる作家であり、評価されるのだろう。皆と同じではダメなんだ(言い過ぎか?)。オリジナリティがほしいのだ。

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    2024年07月21日
  • 村上春樹、河合隼雄に会いにいく

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    98年の本だから26年前だけれど。この頃も社会的な悩みは変わらないのだと感じた。その時の大人が今の若者に対してまた「近頃の若者は弱い」と言っているのは、嫌味というか繰り返すものだなぁと。
    勿論中身は変わっているのだろうけど。
    もっと昔の哲学・思想面との考察も面白かった。村上春樹さんの作品にも興味を持った。河合隼雄さんの分析は流石だなぁ。

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    2024年07月14日
  • 村上朝日堂超短篇小説 夜のくもざる(新潮文庫)

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     通常の短編集よりもさらに短い短編集が収録されている。大半の作品がシュールでユーモアな話で、現実では起こりえない話が展開される。また各作品には安西水丸によるイラストも収録されており、絵を眺めるだけでも楽しめる構成となっている。

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    2024年07月11日
  • カンガルー日和

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    ネタバレ

    短編集には村上春樹さんの奇想天外な面白さの片鱗はあるが、長編が読みたくなる。この短編のモチーフを育て熟成させるのだろうか。
    「鏡」は高校の教科書に掲載されたという。
    怪談話を読んでいる感じでぞわぞわしてくる。リズムある文体がどんどん身体に入ってくる。結末が村上春樹さんらしい。
    僕が見たのは、ただの僕自身だったと。

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    2024年07月03日
  • 中国行きのスロウ・ボート

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    村上春樹作品は割と読んだけど、これは初めて読みました。80年代初めに発表されたものなので、時代感覚が違っていてかえって新鮮。登場人物が煙草を吸うシーンが多いし。
    舞台設定が日本だったりシドニーだったりするけど、読むと全然そこっぽくなくて架空の街だし、そのシーンは必要かと思う描写があったり、筆者の仕掛けや意図を読むことを求められてる?という部分も多々あった。
    個人的には「ひつじおとこ」の話が好きだった。

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    2024年06月29日
  • 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(上)―(新潮文庫)

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    ぼちぼちでしたね。
    3冊目での終盤でやっと盛り上がってきました。
    ちょっと進みが悪くてこずっています。
    最終巻に村上ワールドを期待します。

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    2024年06月22日
  • 村上T 僕の愛したTシャツたち

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    さらっと。
    何がっていうのでもないけどなんかよかった。

    歳を重ねてからのTシャツって難しいと思うけど、こんなふうに思い入れがあって着るのはいいな。
    そうは言っても、村上春樹はマラソンランナー。体型を維持しているからさらっと着れるのかなと、そういうとこはさすがだなと勝手に思いました。

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    2024年06月23日
  • 村上朝日堂 はいほー!(新潮文庫)

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     この本に収録されている「チャンドラー方式」は小説を書くコツが一部公開されており、村上春樹の頭の中をのぞくようで面白い。本のタイトルは忘れてしまったがレイモンド・チャンドラーから小説の書き方(それでチャンドラー方式と呼んでいる)を学んでおり、それによると、まずデスクとひとつ定めることからはじまる。次に文章を書くときに必要な道具を、そのデスク上にそろえておく。そして毎日ある時間、それはたとえ文章を書く気分でない日でもデスクの前に座って過ごす。これがチャンドラー方式らしい。

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    2024年06月20日
  • 螢・納屋を焼く・その他の短編(新潮文庫)

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     複数の短編が収録されており、その中の一つ『螢』は、のちの長編小説『ノルウェイの森』につながる作品である。本作では、主人公が住む学生寮にまつわる出来事が描写されるが、これは『ノルウェイの森』の前半部分に似ている。また今年の夏公開のアニメ映画『めくらやなぎと眠る女』も収録されている。

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    2024年06月02日
  • 騎士団長殺し―第2部 遷ろうメタファー編(上)―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    あらない。
    この話し方を英語を含めた多言語でどのように訳すのか気になった。
    鈴の音から始まる肖像画家の自分を探す物語なのか?10代の少女が出てくる、なんだか達観した女性が出てくるいつもの感じ。
    気に入ったフレーズはない。最後の方でイデアの世界に行く場面が雑な気がして。

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    2024年06月01日
  • 騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(下)―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    あらない。
    この話し方を英語を含めた多言語でどのように訳すのか気になった。
    鈴の音から始まる肖像画家の自分を探す物語なのか?10代の少女が出てくる、なんだか達観した女性が出てくるいつもの感じ。
    気に入ったフレーズはない。最後の方でイデアの世界に行く場面が雑な気がして。

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    2024年06月01日
  • みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫)

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    単行本で読んでいたが、文庫版のためのちょっと長い対談が読みたくて、文庫版で読んだ。村上春樹が文章以外にラジオでの活動、父親のメモワールを書いた経緯などが分かって良かった。

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    2024年05月09日