友井羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大正2年名古屋近郊で起きた強盗殺人事件で、全く無関係であるにも関わらず、真犯人の1人沼澤に主犯と名指しされ逮捕された岩田松之助。
文字通り殴る、蹴る、水責め、床に並べた棒の上に正座させるなどの、江戸時代を思わせる拷問を受けながらも関与を一貫して否定するが、証拠調べやアリバイ確認もおざなりに済まされ、無期懲役刑が確定する。
獄中で無実を訴え続け、何度となく暗闇の独房に入れられるが、裁判書類を読み陳情書を書くために50歳を前にして文字を学んだ岩田が小菅、網走の刑務所を経由し、秋田で仮釈放されたのは事件から21年の後、岩田は56歳になっていた。
出所後も無実と再審を訴え続け、いつからか「昭和の巌窟王」と呼ばれるようになった岩田。
二度の大戦を挟み、事件から50年後に再審、無罪を勝ち取った裏には、本人の類稀なる不屈の精神力と忍耐、正義感があった。
初めに岩田の話を聞いてくれた新聞記者の白井、夏川、神林、新藤ら支えてくれた弁護士、白井からスクープを奪った後名古屋政財界の顔役となった古賀、異端の検事結城、岩田の国会証言をお膳立てした代議士赤塚、岩田の生活を助けた古物商の木村チヨ、事件当時に岩田が働いていた硝子工場主服部、秋田刑務所で進むべき道を教えてくれた大崎所長など、快活で真っ直ぐな性格ゆえに周囲の人々にも恵まれた。
生来の嘘つきで、そのたびに証言を覆す沼澤の虚言で50年を棒に振った岩田は、再審への希望を抱く都度、幾度となく司法の厚い壁にはじき返される。
名古屋高裁に森裁判長という人を得て、ようやく下された再審開始の判断にも、名古屋高検は異議を申し立てる。
異議申し立てを判断する判事は、あろうことか、恒例の岩田が審理中に死去することを願って判断を引き延ばすという挙に出る。
新藤弁護士が見つけた、現行法では可能な高裁判断への異議申し立てが事件発生時の旧々刑事訴訟法では認められないという法律の穴は、皮肉にも本件が約半世紀という長きに亘っていることの象徴でもあった。
最高裁でようやく勝ち取った再審の判事に再び指名されたのは森だった。
無実の判決に涙の快哉を叫ぶ支持者たち。
森裁判長が語る反省と謝罪の弁は、これまでの岩田の生涯を見てきた者たちの胸に強く響いた。
本事件の後、重大事件にも雪冤の事例が現れるようになったが、官僚的で硬直的は司法の実態は本質的に何も変わっていない。
本書では真っ当な働きをした日弁連も、今ではすっかり左傾化、政治化してしまった。 -
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ネタバレ「泣きたい午後のご褒美」の続き気分で読み出したが、今回はミステリー要素もあり、なかなか楽しい。
それぞれおもしろいのだが、秀逸だったのが、「ペンション・ワケアッテ」。
いやいや、日本語って奥深いとつくづく思う。
主人公は訳あり旅行に出てきて、なんだか感じ悪さMAXだったけど、いつの間にか前を向いていた。
一方的に別れを告げた男との唯一の繋がりの象徴である手紙を、愚かだと思いつつも大事にしてしまう切なさは伝わってくる。
だけど、一番大事な話を一方的に手紙で済ませようとしたつまらない男の幻想から目が覚めて、本当によかった。
どの作品も、とてもおいしそうなお夜食ばかり。
読んでいておいしくて楽しい。最高である。
2025/09/19 11:42 -
Posted by ブクログ
新刊かと思い購入したら新装版だった。
東日本大震災からまもなく15年という節目でもあり、3.11迄約一ヶ月、自分の中でも風化させてはいけないという思いとボランティアにも興味があったので手に取った作品。
『スープ屋しずく』の著者というのも理由のひとつだ。ミステリー仕立てになっているのは予想外だった。
タイトルの『ボランティアバスで行こう!』という軽快さとは裏腹に、震災現場と作業の描写がとにかくリアル!
それもそのはず、著者が実際に目で見て触って体験したものだから説得力がある。
バスのなかでの独特な空気感、被災地での作業中の泥の匂いや瓦礫の重さ、被災者との微妙な距離感、実際に現場で体験した空気が生々しく伝わってくる。
特に各章の終わりにある「ボラバス体験記」被災地で汗水垂らした者にしか書けない感想やコメントがとても興味深い。
この物語のポイントはミステリー仕掛けになっているところだ。
探偵役の成子がボランティアや被災地の「謎」を鮮やかに暴いていく。
その「謎」も誰かを思う優しさからで、最後に恩送りという善意の連鎖に胸があたたかくなった。
参加した登場人物の理由も想いも様々。
最初の動機こそ何であれ、その勇気と行動力は素晴らしい。
もし自分も行くとなると仕事や経済的な理由を言い訳に躊躇してしまうかもしれない。
そして、もしかしたら明日は自分が被災者側かもしれない。
けれど本書を読んで「情けは人の為ならず」誰かを思う気持ちは回り回っていつか自分に帰ってくる。
善意の連鎖、恩送りという言葉があたたかでボランティアが今までより身近に感じられた。
スープ屋しずくが炊き出しに来てくれればもっとあたたかくなるかもしれない。
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Posted by ブクログ
スープが自慢のスープ屋「しずく」は、昼と夜をメインに営業しているが、
ひっそり早朝にも営業をしている。
OLの理恵は、早朝出勤途中にぐうぜん店に立ち寄ると、店のスープの虜になる。
理恵は、職場の同僚たちとうまくいかず、愛用のポーチ紛失事件が発生し、
ストレスで体調を崩していた。しずくの店長でシェフの麻野は、理恵の
悩みを見抜き、真相を解き明かしていく。
この作品は、連作短編で、ぶっちゃけありがちなストーリー展開であり、
たくさん日常ミステリーを読んでいれば、何度と巡り合うタイプではある。
ですが、この作品には、魅力あふれるスープが登場し魅了され、スープを
食す人を癒す。そんな中で、店長の麻野が客の悩みを安楽椅子探偵ばりに
解き明かしてくれるという読みやすいストーリー。
この作品を読む前に読んだミステリーではないが、十三湊の「出張料理みなづき」
も類似した感じがあり、たまたま似ることはあると思いますが、
こちらも読みやすく、オススメします。