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1913年、硝子職人の岩田は、身に覚えのない強盗殺人の罪で突然逮捕された。待っていたのは21年以上に亘る獄中生活。出所後も殺人犯の汚名がつきまとうが、岩田は最後まで希望を捨てなかった――。警察の拷問、不当な裁判。国家によって人生を破壊された男が、たった一人で反旗を翻す。日本司法史上、前代未聞の再審無罪を勝ち取った不屈の魂、その闘いのすべて。
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Posted by ブクログ
大正時代に起こった「吉田岩窟王事件」を下地にしており、内容が濃く読み応えがあった。
真犯人が嘘をつき全く関係のない人間を死刑囚にすることができるなんて、あって良いはずない。
警察も検察も裁判官も、揃って事実に向き合おうとしなかった結果に起こった冤罪。
時代も災いし、取り調べや留置中の扱いは苛烈。
そんな中でも決して屈することのなかった主人公の心の強さと自分自身に対する誠実さは真似できるものではない。
事実、読んでいて「そんなこと話したら不利になるんだから、言わなきゃいいのに」と思うシーンが何度かあった。おそらく、多くの人はぼやかして話そうとするんじゃないだろうか。
それでもこの人は、すべてを正直に答えるのだ。だから、話すことには常に一貫性があり、考えや気持ちがストレートに伝わる。
それで必ずしも上手くいくわけじゃないと思うけれど、この物語の中ではその正しさが後の自分を助けてくれる。
人としての在り方を問われている気持ちになる。
こんな大罪を犯した過去を持ちながら、その後も冤罪がなくなることはない。
保身というものの恐ろしさを感じた。
Posted by ブクログ
1913年8月13日の夜、愛知県の千種町今池で起こった強盗殺人。逮捕されたふたりの男のうちの片方が警察の取り調べの際中、事件の首謀者として名前を挙げたのは、岩田松之助だった。岩田にとっては身に覚えのない罪で、ほんのすこしの間、同じ硝子工場で働いていただけの人間が何故そんなことを言うのかも分からなかった。無実を訴えるものの聞く耳は持ってもらえず、一度は死刑を求刑され、そして監獄生活の中でも自身の無実を訴え続けた男は、出所後、周囲の協力も得て、デュマの『巌窟王』にもなぞらえられる存在となっていくが、彼の前には分厚い壁が立ちふさがっていて――。
急に身に覚えのない罪を糾弾されたら、自分自身をどこまでも信じられるでしょうか。もしも自分だったら最初のほうで挫けてしまうかもしれない。読みながらそんなことを何度も考えてしまったのは、主人公の岩田が周りからどういう扱いを受けようとも、「やっていないものはやっていない」と頑なに自分の心を曲げなかったからだと思います。1913年からはじまった物語は戦後を過ぎても続き、社会情勢、時代の様々な出来事が絡み合いながら、その時代だからこそ描ける展開になっていて、時代ミステリとして、とても美しい物語だなぁ、と思いました。誠実に生きた魂が辿りつく先にある光景に、強く心を揺さぶられる作品でした。
Posted by ブクログ
行動することには何かしら意味があることを教えてくれる小説。
大正2年(1913年)の名古屋で強盗殺人事件が起き、ぬれぎぬの”昭和の岩窟王事件”を題材にしている小説。
21年もの歳月を残虐な拷問や理不尽な懲罰の繰り返す姿があまりにも辛く。
読むのが辛かったです。今の時代はいかに人権が守られているのか尊く感じました。
また、雪冤のために行動する岩田氏の姿に心が震える感じがありました。
一つの行動が人生を変える可能性があると思うと「無理」、「できない」はあまりにも恥ずかしいことだと感じました。
内容は重いですが、先が気になってどんどん世界に引き込まれる魅力的な小説です。
この小説はあまりにも学ぶものも多く心が震える一冊でした。
Posted by ブクログ
大正〜の冤罪ストーリー。
なんと、実話をもとに構成されているとのこと。
昭和巌窟王令和8年の現在で還暦過ぎ方なら覚えがあるのでしょうか。
当時の無茶苦茶な取り調べ、不充分な証拠にも関わらない有罪判決、獄中での二十年余りの生活、そして出所後の生き方。
30歳過ぎで罪を背負わされ、そこから50年に渡り、一貫して無罪を主張し、不屈の精神で汚名を返上それた人生。そこには、本人の熱意と人柄はもとより、潔白を証明しようとされた周りの方々の想像を絶する尽力がありました。
戦中戦後の混乱も相まって、証拠焼失等の極めて不利な状況において罪を晴らしたことは、全ての関係者の力があってこそのものでした。
最後に、再審などは今にもまして認められるわけがない当時、保身に囚われず、最終的に携わられた裁判長の判決の結びに敬意を。
「被告人、否、ここでは被告人というに忍びず、 〇〇翁と呼ぼう。 あらゆる迫害にたえ自己の無実を叫び続けてきたその不撓不屈の精神力に対して、 深甚なる敬意を表しつつ、 翁の余生に幸多からんことを祈念する」
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小説・文芸
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