あらすじ
1913年、硝子職人の岩田は、身に覚えのない強盗殺人の罪で突然逮捕された。待っていたのは21年以上に亘る獄中生活。出所後も殺人犯の汚名がつきまとうが、岩田は最後まで希望を捨てなかった――。警察の拷問、不当な裁判。国家によって人生を破壊された男が、たった一人で反旗を翻す。日本司法史上、前代未聞の再審無罪を勝ち取った不屈の魂、その闘いのすべて。
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Posted by ブクログ
50年冤罪と戦ってきた男の人生がギュッと詰まった話。ノンフィクションとは思えないほどドラマティックな展開に本当にびっくりする。主人公を支える周りの人達がとても魅力的に描かれています。まあ、それも主人公の人柄があってこそなのでしょうが、とにかく諦めない主人公の信念には頭が下がります。
そしてとにかく読みやすい!50年分の内容とは思えないほど。
Posted by ブクログ
大正〜の冤罪ストーリー。
なんと、実話をもとに構成されているとのこと。
昭和巌窟王令和8年の現在で還暦過ぎ方なら覚えがあるのでしょうか。
当時の無茶苦茶な取り調べ、不充分な証拠にも関わらない有罪判決、獄中での二十年余りの生活、そして出所後の生き方。
30歳過ぎで罪を背負わされ、そこから50年に渡り、一貫して無罪を主張し、不屈の精神で汚名を返上それた人生。そこには、本人の熱意と人柄はもとより、潔白を証明しようとされた周りの方々の想像を絶する尽力がありました。
戦中戦後の混乱も相まって、証拠焼失等の極めて不利な状況において罪を晴らしたことは、全ての関係者の力があってこそのものでした。
最後に、再審などは今にもまして認められるわけがない当時、保身に囚われず、最終的に携わられた裁判長の判決の結びに敬意を。
「被告人、否、ここでは被告人というに忍びず、 〇〇翁と呼ぼう。 あらゆる迫害にたえ自己の無実を叫び続けてきたその不撓不屈の精神力に対して、 深甚なる敬意を表しつつ、 翁の余生に幸多からんことを祈念する」
Posted by ブクログ
これが実話なのがすごいと思った
普通の人間ならもう途中であきらめてしまうだろう
この主人公の意志の強さに感服してしまう
この事実を知れてよかった
Posted by ブクログ
2025/12/09 3
昭和岩窟王の岩田松之助をモデルにした話。この事件を全く知らず土地勘のある場所だったため驚いた。会えばみんながファンになってしまう岩田、反対に誰からも嘘つきと思われる沼澤。無実を証明するとは何か、戦前のずさんな調べにも刑務所内の暴行もあきれ返る。岩田が生涯やってない、と訴え続けた事はいろいろなカタチで種がまかれた。生きている間に無罪判決を得られてどんなに嬉しかっただろう。
でもガラス工場で窯と付き合う人生もあったはず、気の毒な人生としか思えなかった。
岩田が出所した昭和10年は小林多喜二の拷問死と同時期だったらしくその頃の警察には驚きしかない。
坂角のゆかりが出てくるのが微笑ましい。久しぶりに食べたくなった。
Posted by ブクログ
身に覚えの無い殺人容疑で逮捕され死刑判決を受ける主人公。そこから過酷過ぎる獄中生活や不当な裁判を生き抜き、冤罪に立ち向かっていく50年の奮闘。群像劇なので多数の視点で話が進んでいき、人間関係の噛み合いにも触れることができた。
人間の執念の強さの物語。
Posted by ブクログ
大正2年名古屋近郊で起きた強盗殺人事件で、全く無関係であるにも関わらず、真犯人の1人沼澤に主犯と名指しされ逮捕された岩田松之助。
文字通り殴る、蹴る、水責め、床に並べた棒の上に正座させるなどの、江戸時代を思わせる拷問を受けながらも関与を一貫して否定するが、証拠調べやアリバイ確認もおざなりに済まされ、無期懲役刑が確定する。
獄中で無実を訴え続け、何度となく暗闇の独房に入れられるが、裁判書類を読み陳情書を書くために50歳を前にして文字を学んだ岩田が小菅、網走の刑務所を経由し、秋田で仮釈放されたのは事件から21年の後、岩田は56歳になっていた。
出所後も無実と再審を訴え続け、いつからか「昭和の巌窟王」と呼ばれるようになった岩田。
二度の大戦を挟み、事件から50年後に再審、無罪を勝ち取った裏には、本人の類稀なる不屈の精神力と忍耐、正義感があった。
初めに岩田の話を聞いてくれた新聞記者の白井、夏川、神林、新藤ら支えてくれた弁護士、白井からスクープを奪った後名古屋政財界の顔役となった古賀、異端の検事結城、岩田の国会証言をお膳立てした代議士赤塚、岩田の生活を助けた古物商の木村チヨ、事件当時に岩田が働いていた硝子工場主服部、秋田刑務所で進むべき道を教えてくれた大崎所長など、快活で真っ直ぐな性格ゆえに周囲の人々にも恵まれた。
生来の嘘つきで、そのたびに証言を覆す沼澤の虚言で50年を棒に振った岩田は、再審への希望を抱く都度、幾度となく司法の厚い壁にはじき返される。
名古屋高裁に森裁判長という人を得て、ようやく下された再審開始の判断にも、名古屋高検は異議を申し立てる。
異議申し立てを判断する判事は、あろうことか、恒例の岩田が審理中に死去することを願って判断を引き延ばすという挙に出る。
新藤弁護士が見つけた、現行法では可能な高裁判断への異議申し立てが事件発生時の旧々刑事訴訟法では認められないという法律の穴は、皮肉にも本件が約半世紀という長きに亘っていることの象徴でもあった。
最高裁でようやく勝ち取った再審の判事に再び指名されたのは森だった。
無実の判決に涙の快哉を叫ぶ支持者たち。
森裁判長が語る反省と謝罪の弁は、これまでの岩田の生涯を見てきた者たちの胸に強く響いた。
本事件の後、重大事件にも雪冤の事例が現れるようになったが、官僚的で硬直的は司法の実態は本質的に何も変わっていない。
本書では真っ当な働きをした日弁連も、今ではすっかり左傾化、政治化してしまった。
Posted by ブクログ
戦前、知り合いから、やってもいない殺人犯にされてしまった男。有罪になってもずっと自分の無罪を叫び続けていた。
現実の冤罪事件を描くノンフィクション風小説。自分が無罪であるということをこんなにも長く叫び続けるパワーに驚く。面白かった。最近の再審請求に関する法整備のおかしな方向性についても考えさせられる