友井羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
吃音の女の子が探偵役の、お菓子に関する日常ミステリ
読書会で紹介するために再読
お菓子作りの失敗の謎を探るんだけど、その理由には大抵の場合は人の悪意によるものだったりする
なのに、決して悪い気分になるわけでもない
その辺は探偵役の菓奈が断罪する事に葛藤を抱えているからかね
リスクを負わずに好き勝手に推理を披露してドヤ顔する輩よりははるかに好感が持てる
あと、料理は科学というのがよくわかる
なぜ膨らむのか、固まるのか、色がつくのかというのは科学的な理由があって
似たようなもので代用できたりできなかったり、ほんの少しの違いで結果が全く変わってしまう
おおざっぱでも何とかなる総菜と違って、特に -
Posted by ブクログ
窓やドアのつまみに糸を引っかけて、外から引き鍵をかける-単純で使い回されたミステリーのお約束のトリック。では、このトリックを使うと宣言してしまうのは?
5人の作家が同じトリックを使い、まったく別の物語を作り出す。
物語の中にはたくさんの密室トリックがあふれているけれど、現実の事件ではまず存在しない。手間がかかるし、成功する可能性も高くないだろう。読みながらそう思うことも多々あるし。
それを逆手に取った『似鳥鶏』の『このトリックの問題点』を始め、それぞれひねりが効いていて、とても面白かった。
一番気に入ったのが、突如部屋に出現した金の仏像と正体不明の彼女『彩瀬まる』の『神秘の彼女』。男子大学寮 -
Posted by ブクログ
吃音症でコミュニケーションの苦手な菓奈が探偵となってスイーツにまつわる謎を解いていく。
登場するスイーツは美味しそうだし、お菓子作りは科学実験と同じとする菓奈の考え方にも同感^^
お菓子に限らず料理もきっとそうなんだろうと思いつつ、菓奈のように材料ひとつの効力や違いを検証するってすごい!
どうしてだろうと疑問に思ったことを疑問のまま終わらせずにきちんと調べる、そういう姿勢はまねしたいなぁ。
この本を読んで初めて『吃音症』というのを知りました。
話したいのに話せない。人の反応が怖い。
傷つきたくないから何もしない。
日常にある軽いミステリー話の中に、心の弱さや葛藤もあって物語に引き込まれました -
Posted by ブクログ
こんなミステリーがあったのか・・・感動しました。
東日本大震災で甚大な被害を被った架空の小さな街「山浦」
そこへボランティアで向かう参加者と地元の人々との交流を描いた話
話は6章に分かれていて
「災害の映像を見て自分も何かしなくてはと思いました」と答えるが何か他に理油があって参加したと思われる「遠藤幸樹」
被災地で知り合った姉弟の元父親探しを手伝う女子高生の「沙月」
就職に役立つと安易な考えでボランティアバス運行の企画を立て参加者を集める主催者「大石和磨」
ボランティア活動に参加したいが大石和磨に断られ、どうして断られたのかわからず理由を探す「潤一郎」
昔の教え子が教師になったと知ら -
Posted by ブクログ
「お仕事小説」でもあるが、隠された謎を
解き明かしていく成分が強いのでミステリに(^ ^
この作者は、本当に一作ずつ全然芸風が違う(^ ^;
しっとりしてたり、コミカルだったり、社会派だったり...
でも、ジャンルは違えど、きっちりとエンタメとして
クオリティとリーダビリティをキープしているのはさすが。
何故か横文字が多いな(^ ^;
巻末の解説にも書かれているが、舞台となっている
沖縄の文化や風俗、食べ物や方言についての説明が、
生き生きとしていてとても魅力的に見える。
しかも「布石」の置き方がうまい(解説より)ので、
文化の紹介の中にさり気なく伏線が紛れていて、
読み進む内に「やられた -
Posted by ブクログ
友井羊さんは好きな作家だったので、
よく中身を確かめずに購入。
読み始めてしばらくは、
「これは女子どもが読むスイーツな本でねぇか!!
表紙見て気づけよ、自分!!」
と思いながら読んでおりましたが...(^ ^;
これが中々どうして、
尻上がりにミステリ色が深まっていく。
さらにいじめだの、保健室登校だのと言った、
今日的な「学校の問題」も絡まってきて(^ ^;
さらにメインキャラの意外な事実が明かされ(^ ^;
「いや、まさか、そんなはずは」と、思わず
何十ページも遡って確かめたくなったり(^ ^;
頭から読み進めて、少しでも「あれ?」と思うことは
すべてが伏線となり、最後にきちん -
Posted by ブクログ
中学生が自分の父親を訴える、
というストーリーが珍しく新しい。
文章は非常に読みやすいが、その分「若い」という印象。
意地悪に言うと「書き慣れてない」「こなれてない」
という感じか(^ ^;
巻末の解説にも書かれているが、文体が
基本は三人称なのに主人公の心象描写があったり、
メインの登場人物がステロタイプだったり...
伏線も分かりやすくてヒネリがないので、
途中でストーリーの全容が読める。
クライマックスシーンでは、一応「そう来たか」
という展開はあるのですが...
これも想定の範囲内の「そう来たか」(^ ^;
悪口ばかり書いているように見えますが、
読みやすい文章で、読んでる間は -
Posted by ブクログ
災害ボランティアバスを題材にした連作短編。私自身、ボラバスに何度か参加させてもらったことがあったので、いろいろ思い出しながら読むことになりました。
被災後の状況や、それを写真に撮られることに対して現地の人たちが持つ抵抗感。ボラバス参加者が直接自分の目で被災地を見たときのインパクトなどなど。
タイトルからちょっと軽めで明るい印象を受けていたのですが、本作の内容は結構ズッシリくるものでした。
いちおうミステリの体をとっていて、(あとがきでいう)小さな謎の真実を各章の主人公が解き明かす形。軸となるのは震災に絡む人のドラマと解釈してましたので、ミステリとしてのスケールの小ささはさほど気にならず。