ジャレド・ダイアモンドのレビュー一覧
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ネタバレ昨日までの世界(上)(下)―文明の源流と人類の未来
「銃・鉄・病原菌」のダイアモンド博士の最新翻訳本です。
今回のテーマは、国家を持つに至る前の部族の段階の社会と国家社会との差異を考察することによって、違いを明確にし、部族社会の特長を国家社会に応用する術を学ぶというもの。
「見知らぬ人との関わり方」「戦争と平和」「子育て方法」「老人への接し方」「危険への対処方法」「宗教」「多言語」「非感染性疾患」など様々なテーマを扱っています。
具体的な事例の記載も豊富に収録されています。
博士らしい、客観的な比較と違いの要因の分析など、安心して読める内容です。
今の安心・安全暮らしの中で、改めて人類史の -
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下巻は、オーストラリア、アメリカ、日本という異なる政治・社会背景をもつ国の脆弱性、地球規模のスケールの危機問題を歴史的文脈の中で解き明かしていく。
面白いのはオーストラリアの存在。日本にいると何となくイギリスの別荘地みたいな感覚で国家としてのアイデンティティがどこまであるのか分かりにくい。差別的な国だが、至近は中国人に侵食され、差別国家の個性が揺らいでいるという皮肉的な状況、そんな印象だ。
アボリジニ政策から白豪主義によるアジア系移民への差別、先住民の存在そのものを歴史から消し去ろうとする冷酷な国。その後の謝罪や共和制論争の動きは、植民地主義的価値観の見直しが始まったことを示唆するが、それ -
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国が成立し、維持されている事は当たり前ではない。日本にいると麻痺するが、日本でさえ黒船以降に内戦、外戦を重ねたが、幸いにも大きな戦後の分割統治もなく、治安が保たれているために平和に日々を暮らせている。だが、一歩間違えば、国家的危機、個人的危機に見舞われてもおかしくはなかったし、完全に不安が解消された訳ではない。本書はそうした国の危機について。上巻ではフィンランド、日本、チリ、インドネシアを取り上げる。
特に、フィンランドやチリについて本書で学んだ事が多い。普段、あまり気にしない国だからだ。
フィンランドは今でも人口5百万強の国で、当時も到底ドイツやソ連と張り合えるような国力ではなかった。だ -
大野和基 / ジャレド・ダイアモンド / ユヴァル・ノア・ハラリ / リンダ・グラットン / ニック・ボストロム / ダニエル・コーエン / ウィリアム・J・ペリー / ジョーン・C・ウィリアムズ / ネル・アーヴィン・ペインター3.9 (30)
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久々のジャレド・ダイアモンド。第三のチンパンジー「完全版」もう30年も経つとは… その後の研究成果で博士の予想が外れてたりもしてるが、今読んでも興味深いテーマ。他の動物と比べたヒトの特異点を探っていき、「大躍進」の秘密を探ろうという内容。700万年前に類人猿と分岐して以来、解剖学的に現代人と同じ人類は10万年前に現れているが、「大躍進」はたかだか1〜2万年前で、何がそのきっかけになっているのか。言語が最も重要で、それによって文化や芸術も発展してきたと予想。どの本でもそうだが、博士の博識ぶりに感嘆させられる。ユヴァル・ノア・ハラリがサピエンスを書くときに相談を持ちかけたのももっともだと思わせる。
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大野和基 / ジャレド・ダイアモンド / ユヴァル・ノア・ハラリ / リンダ・グラットン / ニック・ボストロム / ダニエル・コーエン / ウィリアム・J・ペリー / ジョーン・C・ウィリアムズ / ネル・アーヴィン・ペインター3.9 (30)
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ネタバレジャレッド・ダイヤモンド、ユヴァル・ノア・ハラリ、リンダ・グラッドストンなど2010年代20年代のスーパー著作家達を取り揃えたインタビュー記事。
特に気になった箇所のみ
ダイヤモンド氏
国家間格差‥貧しい国から裕福な国に人が動く。野心に満ちた移民でイノベーションが生まれる場合もあれば、テロや感染症につながる場合もある。貧しい国への資金援助は格差を平準化するのでお互いに利益がある。
ハラリ氏
お金や国家など虚構を信じる力によってサピエンスは今の地位にいる。戦争など虚構のために起きる悲劇も多いため、現実と虚構の区別をつけて虚構を利用すべき。対象とするものが苦痛を味わうものは現実。国家や貨幣はそれ -
ジャレド・ダイアモンド / ブランコ・ミラノヴィッチ / ケイト・レイワース / トーマス・セドラチェク / レベッカ・ヘンダーソン / ミノーシュ・シャフィク / アンドリュー・マカフィー / ジェイソン・W・ムーア / 大野和基3.5 (4)
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つぎの一〇年において、これらの問題は日本にどのような結果をもたらすだろうか? 現実的にみて、日本が現在直面している問題は、一八五三年の唐突な鎖国政策の廃止や、一九四五年八月の敗戦による打撃に比べれば大したものではない。これらのトラウマから日本がみごとに回復したことを思えば、今日、もう一度日本が時代に合わなくなった価値観を捨て、意味のあるものだけを維持し、新しい時代状況に合わせて新しい価値観を取り入れること、つまり基本的価値観を選択的に再評価することは可能だという希望を私は持っている。
――本書の出版が2019年。さて10年後、本書で取り上げられた、日本、アメリカ、世界の問題はどうなっている -
ジャレド・ダイアモンド / ブランコ・ミラノヴィッチ / ケイト・レイワース / トーマス・セドラチェク / レベッカ・ヘンダーソン / ミノーシュ・シャフィク / アンドリュー・マカフィー / ジェイソン・W・ムーア / 大野和基3.5 (4)
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資本主義に対して各識者が色々な主張をしているが、中には反対するような論説もありそれぞれが論理だっているので難しい問題なのだと再認識。脱物質化で環境問題にも対応できると言っているアンドリューマカフィー氏の章だけハテナがたくさんあった。人類が利用している資源量は近年になって減ってきているという主張だが、そもそもが採りすぎですでに環境破壊が相当進んでいるのに、どれほど利用資源量が減ってるからOKと言えるのだろうか?さすがに今までと同じ経済活動で良いとは言えないと思ったが、本を読んでみたい。
原発問題は「化石燃料に比べればマシ」という一方、「長期的なリスクあるからダメ」というところで、やはり政治的な決 -
3.6 (32)
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「コロナ後の世界」というタイトルですが、あとがきによれば、本書はもともと2019年から進められていたインタビュー企画に、今回のコロナ禍を組み合わせて内容を深めたようです。まず中身以前に、この6人をよく選んだなという意味で強いユニークさを感じました。たとえていうなら、服のセレクションショップで、「思いもよらないセレクションで面白いなあ」と感じる感覚でしょうか(これは選んだ服自体が良い/悪い、を超越した感覚です)。「銃・病原菌・鉄」などの著者であるジャレド・ダイヤモンドを先鋒に(なんて贅沢な!)、次鋒は人工知能の研究者で「LIFE3.0」などの著者であるマックス・テグマーク、そして人生100年時代
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現在2023年4月末。先日、まもなく新型コロナが5類になることが正式決定されたとニュースで流れた。
この本に掲載されているインタビューや手記は2020年。コロナ禍がいよいよ始まり、おそらく世界中の誰もが、今まで非日常と思ってきたことを日常的なものとしなくてはならないという不安に覆われはじめてきた、そんな時期の発言だ。そのような意味では、更に数年後、コロナ禍を振り返るための格好の史料となりうると思った。
この本の中で多くの識者たちが言及していたと思うが、人間にとって一番厄介なのは、人間の心の中に生じる差別、偏見、批判なのだ。どのような状況下にあっても生じるこの心の動きに、私たちはどのように打ち勝 -
3.6 (32)
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Posted by ブクログ
ヒトと動物の違いは何か、について人類学的な様々な角度から考察。実はホモサピエンスは類人猿類で最後に分岐されたわけではないこと、高度な技能を音声機能の進化により伝達できたことがはじまりであること、口伝だった時代に大事だった年寄り、高度な技術の蓄積が子どもの長い未熟期間につながり、オスもメスと協力して長い子育てをするようになることで、乱婚ではなくなること、などなど、仮説ではあるが壮大なつながり、構造の基、文化や社会が形成されているという、構造主義にもつながる考察が多くて興味深い。自らの遺伝子をいかに残すか、の共通したルールフレームから解釈できる体系を切り開いたダーウィンは本当に歴史を変えた転換点を