私が考える理想の研究者とは、人類がこれまで歩んできた歴史とともに、現在の社会を見つめ、少し先の未来までをも見ようとする「優しい研究者」です。
「持続可能な開発(SDGs)」という概念が近年注目されていますが、「持続可能な開発」とは、おそらく「次世代を見ようとする努力そのもの」なのではないかと考え
...続きを読むています。持続可能な開発とは、言い換えれば、次世代まで継続して豊かな社会を築くことです。そのため、これまでの歴史を振り返りながら、今起こる現象を読み解き、次世代まで豊かな社会を築くには何が必要かを問う姿勢が重要なのです。
しかし、これから起こりうる未来を想像することはそう簡単なことではありません。そこでお勧めしたいのが『未来を読む‐AIと格差は世界を滅ぼすのか』です。この本には、『銃・病原菌・鉄』の本で有名なジャレド・ダイアモンド氏や『サピエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏など、名立たる知の巨人たちが予想する未来が分かりやすく書かれています。そして、歴史や現在を紐解くことで浮彫となる、次世代まで豊かな社会を築くための重要なヒントやモチーフが、この本のあらゆるところに散りばめられています。
例えば、ダイアモンド氏は、最先端のテクノロジーが普及していく社会だからこそ、「伝統的社会」の叡智に着目することの重要性を説いています。なぜかという点は、実際に本を手に取って読んでみてください。この他にも、次世代まで豊かな社会を築くために重要となるヒントがたくさん隠されています。特に開発について研究をする人たちには非常に有益となる本となるでしょう。
次世代まで豊かな社会を想像(創造)できる「優しい研究者」が増えることを、切に願うとともに、私自身もそういった研究者になれるよう日々努力をしていきたいと思っています。(名古屋大学大学院国際開発研究科 博士課程 綿貫竜史)