木村草太のレビュー一覧
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差別の概念を整理し、日米の平等権と差別されない権利の判例の傾向を確認した上で、日本の家族法分野における男女平等の歴史、アメリカにおける差別の哲学的・法学的分析の歴史を検討してきた本書は、差別の実態を詳細に炙り出したものである.意外だったのは、裁判所の判断が時間経過とともに変化していくことだ.裁判官も人の子だから、社会情勢を加味して判決文を作成してきたのだろう.差別をしている人には、「悪いことをしている」とか「不当な差別をしている」といった自覚がないのが一般的だ.差別のしくみを分析し、どこにその悪性があるのかを解明し、問題解決の糸口を発見する ことに本書が助けとなると感じた.あまり目にしない用語として、マイクロアグレッション(微小攻撃)、緊密侵害が出てきており、詳細な説明が参考になった.
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橋本氏は元々弁護士なので、法律の解釈については素人ではないのである程度議論になると思ったが、結論的には木村氏の憲法解釈の正論にはかみ合わないことが多かった。
それは橋本氏の政策的判断の熱量が高すぎて、無理筋な法解釈に走りがちだからだ。
木村氏も指摘するように無理な法解釈ではなく憲法を改正する(ルール変更)ことが本筋なのだ。
しかも憲法が予定しているように民主的統制と専門家=法の専門家の監視が必要なことの理解が乏しい印象が強い。
ただ橋本氏が大阪府知事や市長在職中の職務執行において立憲主義、法の支配、プロセス=手続法の重要性を意識しつつ携わっていたことを強調していたことは記しておきたい。 -
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おもしろかった!
「差別発言&行為にどのように対抗できるのか」というかねてからの素朴な問題意識で読み始めたけど、憲法学者が書いてることもあり実はバキバキの法哲学本だった。
法制定の経緯や裁判所の見解、差別を論駁する法的な論理構成などが詳しく取り上げられているのでなかなか難しく、なんとかついていって一応理解して読み通すことができたけど、多分2年前の私なら読めなかったんじゃないか。
この一年仕事で裁判や法律に触れるようになり、自分がこういう法の論理に興味を持ちある程度は理解できるようになっていることに気づいて、自分という人間の幅が広がっているなーと感じてとてもうれしかった。
本はいかなる状況においても自分にとって人生の主軸なので、読める本が増えることはそのまま人生の豊かさに直結する。
同性婚、選択的夫婦別姓が実現していない司法判断の裏にも、「同性カップルは異性カップルより価値が低い」「別姓カップルは同姓カップルより価値が低い」という価値観がない限り説明しょうがない理屈があるということもわかった。これはが認められていないのは差別なのだと改めて認識できた。論証がわかりやすくて膝を打った。
学びになったことメモ
・差別の4類型①偏見(誤った事実認識)②類型情報無断利用(自分の個人的な情報を勝手に類型判断に用いられる)③主体性否定判断(対象を自律的な主体として扱っていない)④差別(ある類型への否定的な価値観や感情とそれに基づく行為)→まあ理屈としてわからなくはないが、①〜③の根底には必ずと言っていいほど④があるよねと思う。
・憲法14条の平等条項は「合理的な理由のない区別の禁止」→国が平等条項違反で訴えられたとき、反論の理屈は①区別は存在しない ②この区別は合理的だ のどちらかしか存在し得ない
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子ども向けの憲法の本は多くあるけれど、「憲法とは何か」「なぜあるのか」についてしっかり説明されているものは多くない。学校の授業では理解しにくい法の意義や他法との関連について説明されている貴重な本。平和主義との関連で国際法まで触れられているのもよい。
「尊重」「責任」「義務」「捕虜」など説明文に出てくる用語の説明はないので、小学校高学年以上向け。学校で公民を習い始めてから読む方が良い。また、知らない用語があれば大人または他書で補う必要がある。
マンガ→簡単な説明→詳しい説明という構成になっているので、マンガのみや簡単な説明まで、といった読み方のアレンジができる。たくさん読むのが難しそうな子供にはピックアップして紹介するとよい。
前後にしっかり説明があるので誤解は少ないと思うが、国家権力と公務員はイコールでないので、「憲法は公務員に向けたルール」は少々気になる。
参考図書やリンクの紹介があるのは便利だが、(図書は)どれも小学生には難しいように思う。
ワークシートが付属しているのも便利。しかし4章のワークは大人が手伝わないと難しいと思う。 -
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「差別」をいかに定義するかというところから始め、アメリカの奴隷解放など差別と憲法の歴史、憲法24条と家制度、同性婚・夫婦別姓の問題とそれに関する訴訟、差別されない権利を基礎づける研究者による議論などを取り上げ、法的な観点から差別の構造を論じる。
自分も差別解消に関する条例制定の議論に関わったことがあり、差別の定義をはじめ差別に関する議論が非常に難しい(理論的にも政治的にも)ということは痛感しているが、本書は、錯綜する差別に関する議論を整理するきっかけとして非常に有益だと感じた。
ただ、著者の主張や紹介されている研究者の議論などには納得しがたいものも少なくなく、やはり差別の定義や差別の禁止を根拠づけるのはなかなか難しいなということを再認識もした。
例えば、著者は、差別においては同意なく被差別者の性別などの類型情報という個人情報を利用しているのでプライバシー侵害に当たると主張しているが、一見してわかるような類型情報を理由に差別することをプライバシー侵害として捉えるのは違和感があり、他にそのような説を聞いたこともなく、あまり腑に落ちなかった。また、本書の根幹である差別の定義についても、「人間の類型に向けられた否定的な価値観・感情とそれに基づく行為」という本書における定義は、具体的行為が「否定的な価値観・感情」に基づくとどう判断するのか、自然発生する「否定的な価値観・感情」自体はどうしようもないもので内心の自由の観点からも一概に否定できないのではないかなど疑問があり、十分に納得のいくものではなかった。個人的には、著者の指摘のとおり統計的差別への対応などに課題があることは承知しつつ、伝統的な理解である「合理的根拠のない(人間の類型に基づく)区別」という定義のほうがしっくりくる。
一方、差別をしたとされる人が往々にして「差別の意図はない」と言うことに対して、差別する人が主観的な「差別の意図」を持たないのは至極自然なことで、無自覚な差別こそが典型的な差別だと論じる部分や、同性婚訴訟等の判決が、国民の多数派が差別的価値観を持っているから、法制度が、それに迎合するための区別をしても正当だという趣旨の判決になっており、妥当ではないとする指摘など、本書の議論ははっと考えさせられる部分も多かった。 -
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「憲法」の本を学生時代ぶりに手にとって読みました。いちおう、法学部出身だったので勉強したことはありますが、社会に出てからというものニュースや各種メディア媒体で「憲法」「合憲・違憲」という言葉を目にし、耳にしても、どことなく意識の外だったように思います。
それが意識の中に入ってきたのは本書の中でも触れられている「9条」「96条」の問題で改憲論争が出てきた頃でしょうか。それでも学生時代のように勉強して、この問題について考察してみようとまでにはならなかった。今では悔いの残る出来事ではあります。
あとがきで奥平さんが言われているように「憲法の入門書」という位置づけでとても分かりやすく、読みやすく、それ故に自分で取り上げられていることについて考えながら読み進められた。ただ読む、理解しようとする(理解が追い付かない)ではなく、自分なりに咀嚼しながら読めるところがポイントではないでしょうか。
ひとえに、奥平さんと木村さんの力量?読者のところまで下りてきてくださっている姿勢に感謝です。
最後の方で述べられているように、日々報じられる出来事を通して憲法というものを考え、勉強していきたいと決意させられました。 -
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天皇という存在の不思議さ、ユニークさ、将来性に対する不透明さを社会学者と憲法学者が語る内容が実に斬新に感じた。女性・女系天皇を認めたとしても、今の少子化時代にあっては天皇家の絶滅はかなり有り得ること、天皇や皇室には基本的人権がなく、むしろ内閣の奴隷的な存在であり、その犠牲の上に日本国が成り立っていること、将来、天皇になることを悠仁親王や他の皇族が拒否することも何ら不思議でない、将来は悠仁親王妃になる女性がいるのだろうか?など、なるほどと思う問題提起ばかり。将来途絶えたときには誰を天皇にして制度維持するのだろう!?憲法改正が必要になる!過去の「万世一系」が危うい内容であることや、国民が天皇に敬意を払ってきたとは長い歴史()の中で言えなかったと思われること(実は昭和天皇の時代にも、明治初期にも、むしろ江戸時代には嘲笑対象)、そして日本国憲法の成り立ちが天皇を如何に表現するかが最大の関心であり。どのような民主主義を実現するのか、また9条の平和主義なども素通りで決まってきたと思われることなど、一々頷ける刺激的な本だった。リベラルな憲法学者の木村が天皇制が「外交面で国際公共価値を高めることに役立っている」と指摘していることは実に面白い指摘である。長谷部恭男氏は「みんなが天皇を象徴だと思わなくなったら、憲法第1条は意味がなくなる!」と解説しているとは愉快な話。別に憲法に書いているからではなく、事実だから憲法が象徴と書いているということだそうである。
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著者が書いたというのではなく、大阪弁護士会が主催した講演会での講演をもとにした本。後半は国谷裕子さんとの対談になっている。国谷さんの夫が大阪の弁護士さんだからこういう企画ができたんだろう、きっと。
ふだん新聞やメディアで見かける著者のコメントからすると私と同じ左寄りの人という印象だったんだけど、初めて著書(この本)を読んでみるとそうでもない。ま、それも当然で、著者は憲法学者として原則的に憲法という枠組みに沿って物事をとらえ発言しているに過ぎない。そして、それがやや左寄りに聞こえるということ。そうなるってことはつまり、現在の日本国憲法では「自由」や「平等」といった左派的思想が味つけのベースになってるってことなんだろうな。
憲法や法律、条例といった類のものは、ガチガチに固めるのでなく運用でどうにかなる余地・あそびを残しておくものだと思う。そういうことがこの本からも読み取れる。書中で解説されている夫婦別姓を男女差別という観点から違憲と訴えたのが認められなかったことや、辺野古への米軍基地移設にあたって住民投票がなされるべきといった主張は、なるほどと納得がいくとともに、憲法に含まれる余地やあそびをいかに使いこなせるかが知恵の見せどころだということが示唆される。
法とか決まりごとというと、何となく縛るもののような印象で忌避したくなりもするが、憲法や法律を良識に沿って身近な道具として使いこなせるようでないと。忌避すべきものでなく、自分たちの味方にできるものというメッセージが書題の「憲法という希望」には込められている気がする(これは著者の講演の演題でもあって、演題自体は主催者がつけたようだけどね)。 -
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現行憲法の「解釈」では、自衛隊は違憲とは
されておらず、国民も何となくそれを受け入れています。
では、その根拠になっているのは憲法のどの条文なのか。
そして軍隊ではない自衛隊はどのような組織であるのかを
分かりやすく解説しています。
現憲法9条のみで改憲論を語るのは、あまり意味がないと
いうことを学べる一冊です。
例えば最近新聞を賑わせている「改憲の為の国民投票」。
実はその内容ごとに区分して実施されなければならないのです。
自民党の改憲草案は何と53の項目にわたっていて、これを
それぞれ国民投票にかけることは不可能です。
故に2012年の自民党草案は本気の提案とは言い難いです。
だから最近は安倍総理は「改憲は9条に自衛隊を
明記のみ」と言っているのかもしれないです。 -
Posted by ブクログ
集団的自衛権を容認する安保法の改正がなされたとき,立憲主義に反するとの主張をよく聞きましたが,この本は立憲主義とは何かの理解に役立ちました。
もちろん,立憲主義と言っても,色々な見解があるとは思いますが,1つの見方として,お二人の対談は大変興味深かったです。
憲法改正をめぐっては色々な考え方がありますが,その時代時代の立法事実を検討しなければならないという点については,深く同意します。
権力を行使するにあたり,何が正解かは誰にも分かりません。そこを,適正手続を踏むことによって,一応の正当性を担保するという視点も,強く印象に残りました。
あと,日本の民主主義が成熟していくためには,知っておくべきこと,検討していなければならないことがたくさんあって,国会議員の方にはそれなりの資質を持つ方を選ぶべきだなと有権者の一人として改めて思いました。
参院選も予定されており,憲法改正の論議も出ている今,幅広い方に読んでいただきたい本です。