木村草太のレビュー一覧
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日本国憲法のメッセージをわかりやすく説いてくれるいい入門書だと思う。
諸外国から日本は立憲主義でなく立憲君主制だと思われている。日本国憲法は国民の権利ではなく、天皇を守る為に立憲したものになっている。日本は天皇制をどうするという議論をしないままの「慣性の天皇制」になっている。日本は国体に固執したし、他の国は反対はしたもののアメリカは天皇制を維持する方が、日本を制御しやすいと見抜きこのような形になった。
ただ、日本国憲法がGHQからの押し付け憲法かといえばそうとも言えない。日本側の意見も反映されている。
奥平氏は立憲主義とは国家の問題、民主主義というのは社会の問題。ジョン・ロールズは「民主主 -
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ネタバレ木村草太氏の憲法入門書。君が代の不起立問題・一票の格差問題などなどホットな話題から、日本人の宗教観・憲法9条などの根深い問題までさまざまな課題を扱っている。一見関係ない無駄話のように見える話題が導入に書かれており難しい憲法の話題にすんなりと入っていけた。
団体とは、要するに、共通の「ルール」に従う「人の集まり」である。「ルール」と「人」の二大要素のうち、「ルール」は頭の中にしかないが、「人」は目に見えるし、触ることもできる。団体の「正体」を、「ルール」だと見るのが擬制説、人間という「実在」だと考えるのが実在説だが、団体の「正体」などという怪しげなものを観念する必要はなくて、擬制説と実在説は同 -
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憲法改正問題が取り沙汰されている中、平易で読みやすく、現実的な問題を憲法を通じて解説してくれる良著だと感じた。作者を変えて、何冊か読み、自分なりの考えを持つべきなのだろう。
著者は引用する。憲法は終わりの無い仕事であると。
自衛権の行使以外に武力を行使してはならない、というのは、憲法第9条以前に、現在国際法の大原則である。9条の内容というのは、それが守られるような、国内外の状況を作っていかなければならない、という意義そのものなのだと。
現在の憲法があるのが当たり前のように感じているが、その存在意義を改めて考えることは、現在の国の成り立ちを考えることでもある。 -
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最近何かと喧しい「憲法」周辺。この本は特に改憲の是非に議論を絞ったものではないが、憲法をめぐる諸問題に触れながら、国家のあり方を議論するうえでのベースとなる考え方のいくつかを示してくれている。
この本の特徴としては、君が代不起立問題や公務員の政治活動等の憲法上の問題について重要なファクターを抽出し、これをより卑近な例に置き換え、その場合に生ずる不都合からより根源的な論点を照射する方法が多く取られていること。例えば、
・君が代を否定する思想をもつ公務員にその斉唱を強要する行為と、ベジタリアンに肉を強制的に食べさせる行為との違いは何か?
・公務員が職務時間外に政治活動をするのを禁止すべきという -
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ネタバレ「ニッポンのジレンマ」に出演していた若手憲法学者の本。テレビ出演時の意見が興味深かったので、購読。
<国家と憲法の定義>
国家:権力を作ることを目的とした組織。
権力:暴力を背景に有無を言わさず人に言うことを聞かせる権利のこと。
憲法:国家のルール。国家の領域範囲、王位継承の方法、裁判の手続き、軍隊の指揮権の所在などを決めたもの。
<入学式での「君が代」ピアノ伴奏拒否事件の判決について>
・入学式で「君が代」伴奏を拒否したピアノ教員は、「君が代」を軍国主義と結びつけて拒否した。
・反対論者は、「君が代」を古い日本の歴史と結びつけて擁護した。
・どちらも「君が代」と思想、歴史 -
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最新判例を素材にした憲法の入門書。
著者の見解が前面に押し出されているが、最高裁の論理を丁寧に分析しているので、司法試験受験生にとっても参考になると思う。
特に、第一章(君が代不起立問題)、第二章(一票の較差)、第六章(公務員の政治的行為)については、司法試験論文で出題されても文句が言えない分野だと思うので、本書を読んで議論の要点を押さえておくことは有用だと思った(もっとも、君が代不起立問題についてはその性質上、そのままの事例が試験に出ることはないと思うが)。
個人的に、裁判員制度や生存権についての記述はあまり説得力を感じなかったが、全体的には参考になる部分が多く、面白かった。 -
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「差別は狡猾だ。狡猾な相手と対峙するには、精緻な準備が必要となる。本書では、差別から個人をまもるために必要な法理論を検討する。」
という文章から始まり、差別のしくみについて、とても丁寧に整理して書かれている本。
うんうん、そうだよね、と思ったり、そうなんだー(知らなかったな、認識してなかったな)、と思うことあり、一方で、それは差別だと言われても、、、書かれているような論理を突き詰めると差別と呼ぶべき事象に該当するのかもしれないけど、うーん、正直な気持ちとしては、なんか、それまで差別と呼ぶのは生活実感とは違うんだよね、私にとっては、やっぱりそれを同じ扱い(をこの本では「平等」と呼んでいる)にす -
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今日は令和4年8月15日だ。正午少し前から毎年の様に戦没者への哀悼を示す番組が国営放送(NHK)で流れ、武道館には天皇皇后両陛下だけでなく岸田首相も訪れ、正午の時報がなれば1分間の黙祷が捧げられる。1945年8月15日は昭和天皇による玉音放送が流れた日であり、ラジオで初めて聞く天皇の言葉の前に、何やら難しい事を言っている様だが、日本が戦争に負けた事だけは確からしい、と膝をついて泣き出すもの、心の中では生き残れたと安堵するもの、様々な感情が渦巻いた日でもある。特に戦争遂行の最前線にいた軍部には腹を切って自決するものも多数いた。
終戦記念日と呼ばれるこの日は、この様に先の大戦において国民が戦争に負 -
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子どもの人権をまもるというテーマに沿って……かな? けっこうそうそうたる人々が稿を寄せている。宮田雄吾(大阪共立病院・大村椿の森学園)、山野良一(名寄市立大学・専門社会調査士)、駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表)、仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)、熊谷晋一郎(東京大学・当事者研究)、大塚玲子(編集者・ライター)、内田良(名古屋大学・教育社会学)、大貫隆志(「指導死」親の会共同代表)、大原榮子(「メンタルフレンド東海」世話人代表・名古屋学芸大学)、前川喜平(元文部科学省事務次官)、白濵洋子(佐賀女子短期大学・学校保健)、内藤朝雄(明治大学・社会学)、山下敏雄(弁護士)、村田和木(
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無秩序という悪を是正するため、主権国家権力を頑張って打ち立てた。今度はその国家を縛るために憲法が必要になった。この順番が大事。
対談形式だが、お互い忖度なく、反対意見についても論点が分かりやすい。解釈論、実務面での実際性、実効性について、政治の現場を経験している橋下徹の論拠は明確である。
しかし、日本語の解釈を巡った議論は憲法に限らず至る所で存在するが、その調整コストは計り知れない。言葉のニュアンスの違いがどこまで社会に変化を齎らすか。自衛隊を国防軍に表記変更した場合の社会変化のシミュレーションなど、別の観点に興味が向いた。認知社会における言葉の重要性、神話の大切さ、という所だろうか。