【感想・ネタバレ】「差別」のしくみのレビュー

あらすじ

「差別と偏見はどう違う?」「差別と区別は?」──差別が許されないことには、ほとんどの人が賛同する一方で、その定義は難しい。法律家の間でも、そのあいまいさに苦戦している。同性婚・夫婦別姓などのジェンダーをテーマにした「差別」から、人種をめぐる「差別」まで、その構造を気鋭の憲法学者が徹底検証する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

章数が多く内容も難しいですが、かなり丁寧かつ簡潔にまとめられており読みやすい一冊でした。
差別されない権利、差別と区別の違いなど身近なテーマ(同性婚、異性婚)を基に論じられており、とても参考になり勉強になりました。不合理な区別が差別に繋がる、差別者は差別してる自覚がないといった言葉が印象に残ってます
定期的に読み返したい本だなと思いました。

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2025年05月05日

Posted by ブクログ

法律の文を多く扱っていて読み慣れない部分はありましたが丁寧な解説で理解できました。
差別感情やマイクロアグレッションなど、その時の人間の心理を勉強したくていくつか差別に関する本を読み始めようと思い、本書が1冊目でした。タイトルで買ってしまったので、読み進めて法律や人権の話ばかりで戸惑いました。しかし、差別感情という心理に目を向ける前に、実際に世の中はどうなっているのか?差別問題に人々はどう立ち向かってきたのか?そして何が差別で何が差別でないのか?と言ったことを論理的に理解することができ、差別そのものを理解するために視野がひらけたため、私にとって差別を勉強するための一冊目としては適当だったと思います。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

第1章の「はじめに」で本書の意義を、「差別から個人を守るために必要な法理論を検討する」とある。
これは差別という行為が、たびたび「差別の意図はない」という狡猾な抗弁で追及を逃れようとするからと告発する。
この差別主義者の行動パターンを第3章で類型化したものは興味深い。
・事実の無視:常に一方向
・制度の濫用:リーガルハラスメント
・差別利益と陳腐な言い訳
・両論併記:土俵に立つこと自体が目標
第4章以下では差別が歴史的に強者の弱者に対する侮辱ないし個人の尊厳を認めない点に由来することを米国の奴隷解放~黒人差別、更にアファーマティブアクション、日本の戦前の家制度、男女不平等の歴史からひも解く。
更に選択的夫婦別姓制度、同性婚制度という現代の社会における憲法上の問題(24条を中心として)を訴訟となった判決の分析により現時点での司法の到達点を明らかにしている。

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2024年12月14日

Posted by ブクログ

差別の根源は、個人を特定のグループ、属性に括ることに端を発していると思う。
男だから、、、日本人だから、、、
そのグループに対して、過去の経験値から、男はこうだ、日本人はああだ、
と決めつける。経験値は個人のものから、通念的なものまで幅広い。
質の悪いのは通念レベルまで行ってしまったものだ。
この本の事例にもあったが、「黒人にしては理知的だ」酷い言葉だ。
黒人は理知的ではない、と決めつけている。
個人として見れば理知的、それでいいはずなのに、黒人にしては、がついてくる。
これが差別だ。
これはまだましな方で、、結局その人自身の評価をしているから。
質の悪いのは、その人の属性だけで、中身を見ずに判断してしまうこと。
これぞ差別だ。
なぜそんなことをするか。
楽だからだ。考えなくていいから。分析しなくていいから。
朝鮮人は放火する、井戸に毒を投げる。だから殺していい。
関東大震災で多くの群衆がそう思い込み、罪のない朝鮮人を殺したという。
大震災の恐怖がそうさせた、という部分はあるにしても、だからといって、
殺していいわけがない。
それができてしまうのも差別。

この本はそういうことを言っているわけではない。
冷静に、差別の事例、それに対する憲法、法律、さらに判決を掘り下げる。
夫婦の姓、同性婚まで踏み込む。

法律は論理的でなくてはいけない。
そうでないと、人の主観で判断が変わってしまう。
ひとつの事実に対して誰が考えても同じ結論にならなくてはいけない。
もちろんどう事実を認定するか、は大きい。
しかし、現実には裁判官によって答えが変わる。
裁判官と手論理的とは言えないのだ。
木村草太さんはそれを暴いてくれる。

ある意味恐ろしい本だ。
大学の教科書になるのではないか。
なかなか頭がついていかなかった。

差別とは何か/差別をする人はどんな行動をするのか?/差別と憲法の歴史/なぜ差別者は「差別の意図はない」と言うのか?/憲法24条と家制度/夫婦同氏問題と合理的配慮/合理的根拠のない区別/差別と区別の分類論/平等権と差別されない権利の違い/秘密の差別の害悪/分けるには理由がいる/理由の説明からの逃避 など

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2024年08月05日

Posted by ブクログ

ひとことで『差別』と表されることも分解して考えるとひとつのことではなくて、複雑なものであることがわかる
差別に限らず物事にアプローチする際に大事な観点に気付かされました

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2024年04月02日

Posted by ブクログ

差別の概念を整理し、日米の平等権と差別されない権利の判例の傾向を確認した上で、日本の家族法分野における男女平等の歴史、アメリカにおける差別の哲学的・法学的分析の歴史を検討してきた本書は、差別の実態を詳細に炙り出したものである.意外だったのは、裁判所の判断が時間経過とともに変化していくことだ.裁判官も人の子だから、社会情勢を加味して判決文を作成してきたのだろう.差別をしている人には、「悪いことをしている」とか「不当な差別をしている」といった自覚がないのが一般的だ.差別のしくみを分析し、どこにその悪性があるのかを解明し、問題解決の糸口を発見する ことに本書が助けとなると感じた.あまり目にしない用語として、マイクロアグレッション(微小攻撃)、緊密侵害が出てきており、詳細な説明が参考になった.

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2024年08月09日

Posted by ブクログ

おもしろかった!
「差別発言&行為にどのように対抗できるのか」というかねてからの素朴な問題意識で読み始めたけど、憲法学者が書いてることもあり実はバキバキの法哲学本だった。
法制定の経緯や裁判所の見解、差別を論駁する法的な論理構成などが詳しく取り上げられているのでなかなか難しく、なんとかついていって一応理解して読み通すことができたけど、多分2年前の私なら読めなかったんじゃないか。
この一年仕事で裁判や法律に触れるようになり、自分がこういう法の論理に興味を持ちある程度は理解できるようになっていることに気づいて、自分という人間の幅が広がっているなーと感じてとてもうれしかった。
本はいかなる状況においても自分にとって人生の主軸なので、読める本が増えることはそのまま人生の豊かさに直結する。

同性婚、選択的夫婦別姓が実現していない司法判断の裏にも、「同性カップルは異性カップルより価値が低い」「別姓カップルは同姓カップルより価値が低い」という価値観がない限り説明しょうがない理屈があるということもわかった。これはが認められていないのは差別なのだと改めて認識できた。論証がわかりやすくて膝を打った。

学びになったことメモ
・差別の4類型①偏見(誤った事実認識)②類型情報無断利用(自分の個人的な情報を勝手に類型判断に用いられる)③主体性否定判断(対象を自律的な主体として扱っていない)④差別(ある類型への否定的な価値観や感情とそれに基づく行為)→まあ理屈としてわからなくはないが、①〜③の根底には必ずと言っていいほど④があるよねと思う。

・憲法14条の平等条項は「合理的な理由のない区別の禁止」→国が平等条項違反で訴えられたとき、反論の理屈は①区別は存在しない ②この区別は合理的だ のどちらかしか存在し得ない

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2024年06月15日

Posted by ブクログ

「差別」をいかに定義するかというところから始め、アメリカの奴隷解放など差別と憲法の歴史、憲法24条と家制度、同性婚・夫婦別姓の問題とそれに関する訴訟、差別されない権利を基礎づける研究者による議論などを取り上げ、法的な観点から差別の構造を論じる。
自分も差別解消に関する条例制定の議論に関わったことがあり、差別の定義をはじめ差別に関する議論が非常に難しい(理論的にも政治的にも)ということは痛感しているが、本書は、錯綜する差別に関する議論を整理するきっかけとして非常に有益だと感じた。
ただ、著者の主張や紹介されている研究者の議論などには納得しがたいものも少なくなく、やはり差別の定義や差別の禁止を根拠づけるのはなかなか難しいなということを再認識もした。
例えば、著者は、差別においては同意なく被差別者の性別などの類型情報という個人情報を利用しているのでプライバシー侵害に当たると主張しているが、一見してわかるような類型情報を理由に差別することをプライバシー侵害として捉えるのは違和感があり、他にそのような説を聞いたこともなく、あまり腑に落ちなかった。また、本書の根幹である差別の定義についても、「人間の類型に向けられた否定的な価値観・感情とそれに基づく行為」という本書における定義は、具体的行為が「否定的な価値観・感情」に基づくとどう判断するのか、自然発生する「否定的な価値観・感情」自体はどうしようもないもので内心の自由の観点からも一概に否定できないのではないかなど疑問があり、十分に納得のいくものではなかった。個人的には、著者の指摘のとおり統計的差別への対応などに課題があることは承知しつつ、伝統的な理解である「合理的根拠のない(人間の類型に基づく)区別」という定義のほうがしっくりくる。
一方、差別をしたとされる人が往々にして「差別の意図はない」と言うことに対して、差別する人が主観的な「差別の意図」を持たないのは至極自然なことで、無自覚な差別こそが典型的な差別だと論じる部分や、同性婚訴訟等の判決が、国民の多数派が差別的価値観を持っているから、法制度が、それに迎合するための区別をしても正当だという趣旨の判決になっており、妥当ではないとする指摘など、本書の議論ははっと考えさせられる部分も多かった。

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2024年04月13日

Posted by ブクログ

「差別は狡猾だ。狡猾な相手と対峙するには、精緻な準備が必要となる。本書では、差別から個人をまもるために必要な法理論を検討する。」
という文章から始まり、差別のしくみについて、とても丁寧に整理して書かれている本。

うんうん、そうだよね、と思ったり、そうなんだー(知らなかったな、認識してなかったな)、と思うことあり、一方で、それは差別だと言われても、、、書かれているような論理を突き詰めると差別と呼ぶべき事象に該当するのかもしれないけど、うーん、正直な気持ちとしては、なんか、それまで差別と呼ぶのは生活実感とは違うんだよね、私にとっては、やっぱりそれを同じ扱い(をこの本では「平等」と呼んでいる)にするのはムリがあるんじゃない?、と思うこともあり。

でも、こんなふうに差別の考え方を整理されていること自体が、とてもありがたい。
もう少しこの違和感を考えてみたい。

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2024年07月26日

Posted by ブクログ

アンコンシャスバイアスとか怖いですね、話し逸れますが幼少期からの教育は大事だなと思いました。アメリカの黒人の方々の「分離すれども平等」の考えは怖すぎる考えだなと思いました。なぜ人はそこまで平気で差別を出来るのだろうか?木村さんに専門の憲法以外で何故人は争うのか?とか何故戦争をするのか?などのオススメの本があったら教えて欲しいなと思いました。

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2024年06月28日

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