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Posted by ブクログ
西さんの中ではかなり純文学よりな一冊だと思う。派手な何かが起きるわけじゃなく(起きるっちゃ起きるのだけど)、静かに温泉旅館での一泊二日が過ぎていく。その間の登場人物それぞれの心の動きと独白をかなり濃密に描写した物語は、ボタンのかけ違いのよう。修復しようにも歩み寄らないと実現できない。修復不可能なまま、凸凹な四人の現在地を炙り出している。
チューニングをミスした楽器が奏でる不協和音を聞いているような不穏な読み心地なんだけど、うわー、人生ってこんなことあるよなーって共感してしまう場面が幾つももあった。
物語は章ごとにナツ、トウヤマ、ハルナ、アキオの一人称独白で展開されるのだけれど、その書き分けがすごい。文体が微妙に全部違っていて、本当にキャラクターそれぞれが綴っているようで、明るくない話なのだけれど心情描写が生きいきとしている。同じ一泊二日が描かれているから「あの時、こいつこんなこと思っていたんだ!」って答え合わせになっているのも面白い。
実は読んだのは二回目。最後のアキオパートのあるシーンがとても印象に残っていて、そこに辿り着いた時、ああ!これこれ!ってなった。褒められるシーンじゃないんだけれど、ある種の鮮やかさがあって爽快。芥川龍之介『蜜柑』や梶井基次郎『檸檬』のような、どんよりした世界から解放される感覚で脳が痺れた。
あらすじ。
温泉宿で一夜を過ごす、2組の恋人たち。静かなナツ、優しいアキオ、可愛いハルナ、無関心なトウヤマ。それぞれ過去に引っ張られ、深刻な欠落を隠し合っている彼らは決して交わることない。食事をし、温泉に入ってもどこか満たされないまま夜は更けていく。そして翌朝、宿には一体の死体が残される──。
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