中島岳志のレビュー一覧
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My life is my message.
(私の人生そのものが、私のメッセージです)
ガンディーが晩年、残した言葉です。
ガンディーのメッセージを、現代社会に生きる我々が、どのように受け止めればよいかを考察している本です。
ガンディーの思想は、あらゆる欲望を抑制し、自己をしっかり制御するというもの。様々な対立や紛争を非暴力によって解決してきました。断食により紛争が解決したという事実は驚くべきことです。しかし、誰がやっても成功するとはかぎらないことは明らか。ガンディーという人物でしか成し得なかったこと。我々にはそこまではできない。それでは、彼から学びとれること何か。
ガンデ -
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東京裁判で唯一被告人全員無罪を主張したパール判事の判決文について2人の思想家が吟味し、対話する。本書は単なる法律論にとどまらず、パール判事の法律観や思想を読み解きつつ、どのように教訓とすべきかというメッセージを提示している。
まず、そもそもの法律論的な観点から言えば、そもそも東京裁判は事象が行われた後に制定した法で裁く、という意味で無効であるというものである。(読む前の私も含め、知らない人も多いのではないかと思うが)A級、B級、C級戦犯という言葉は、何に対しての罪であるか、という意味であり、序列があるわけではない。それぞれ「a.平和に対する罪、b.(通例の)戦争犯罪、c.人道に対する罪」とな -
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中島岳志氏と縄文、、、初見ではなぜ中島先生の新著で縄文が取り上げられているかの意図がよくわからなかった。
しかしながら、読み進めていくにつれ、本書が縄文というキーワードを追い求めた人々の思想や幻想を追う論考であり、ナチュラルとナショナル、という戦前の農本主義と近い現象であることがよくわかった。戦後、岡本太郎に始まり、柳宗悦の民藝論、島尾敏雄の「ヤポネシア」論、吉本隆明、スピリチュアリズム、太田竜のような左翼思想家、さらには梅原猛等、多くの人が縄文を論じ、理想視した。終戦直後に国家神道等の戦前の世界観が崩壊し、日本人が自分自身のアイデンティティを喪失したことで、戦前の思想が受け継ぐ弥生時代からの -
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ページ数としては短いながらも要点がまとめられており、
気づけばいつの間にか読み終わっていた。
楽しく学べるので1000ページくらい読みたかった。
右翼(原理主義):原点になっている過去の時代に回帰すれば、理想社会の実現が可能と考えている
左翼(進歩主義):未来に向けて社会が進歩していった先に理想社会があると考えている
時代のベクトルが逆に向いているという発想はなかったので新鮮だった。
左派 vs 右派 という構図の無効化
左派は、近代の進歩主義に対する懐疑的な事件(原発事故)があり、自然との調和を講じる。
右派は、原理主義の考えに基づき過去の叡智を求めるが、人間の理性は必ずしも正しくない -
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6人の論客が日本の問題点を明らかにする。
275ページの新書に6つの論文。
1人40-50ページと短い文章だが、
その中に鋭い視点を見た。
一番鋭いと思ったのは中島岳志氏。
「保守とリベラル」という対立軸に、新しい視点をもたらした。
「リベラルとパターナル」がそれ。
パターナルとは、家父長的、権威主義的。
そこにリスクの社会化、リスクの個人化という軸を合わせ、
4象限で自民党の政策の変遷を分析する。
田中大平のころの自民党はリスクの社会化+リベラルだった、
それが小泉で個人化、リベラルとなり、
安倍で個人化、パターナルとなったと。
自民は時代とともに鵺のように変遷していると。
ちなみに「民主 -
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ガンディー、誰もが知るインド独立のリーダーであるが、彼は政治家、宗教家、活動家等既存の枠組みでは表現できない独特な魅力を持つ。そんなガンディーについて、政治学者である中島岳志氏が迫る。
ガンディーの代名詞と言えば、「塩の行進」、「断食」、「チャルカ―(糸車)を回す」ことである。中島氏は、ガンディーの凄さを「喚起する力」に見出す。こうしたガンディーの行動は、非常にシンプルでわかりやすい「行」であるが、なぜ彼がこのような活動をしているのかと言えば、そこに宗教対立を超えたメタ的な信仰心を揺さぶるインド人の力を喚起するためであった。
ガンディー以前では、インド独立はヒンドゥー教とイスラム教の宗教対立や -
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宗教とは何かを考えるうえで参考になる名著を、4人の有識者がそれぞれ1冊ずつ紹介している本です。
どの章も非常にわかりやすく、宗教(的な考え方)の大事さも恐ろしさも感じさせてくれる作りになっています。
別の本で半分ファンみたいになっている釈徹宗氏の著作だったため購入。認知的不協和や自我防衛機制、成熟した宗教的人格について述べている同氏の章は、読んでいるだけで何だか安心感を覚える内容です。
―宗教はどうしても信じている人と信じていない人との境界を生み出します。その境界ができないようであれば、生きる力にもならないことでしょう。しかし、その境界を超える回路がどれだけ多様にあるか、そこが大切です。( -
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保守という用語に対する誤解(復古主義、反動、封建的、家父長的)がこれほどまで定着してしまっているのはなぜだろうか、と考えてみる。
それは、実はそのまま保守の理念の光で明るみになる。どういうことか。理性への過信である。いや、過信どころか、理性以外に人間のよってたつ判断基準などないという妄信である。
この妄信は、宇宙は一つの真実のもと、決まった法則で規定されているはずである、という思い込み(この妄信を突いた傑作SFが『三体』)を端に、人間が作る社会も一つの真実(正解)があるという演繹?がもたらしたものではないか。
自分の一日の生活ひとつでさえままならないのに、人間世界を一つの秩序(理念)でまとめる -
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オルテガ・イ・ガセットの名著である『大衆の反逆』の解説書として、中島岳志氏が簡易的に執筆された本書は、極めて平易かつ端的に原著のエッセンスを伝えている。私自身、中島岳志氏のファンではあるが、本書の解説の中で、彼の思想もハイライト的に織り込まれ、非常に読後の満足感が高い。
『大衆の反逆』とはきわめてセンセーショナルなメッセージではあるが、同時に、オルテガからの懇請でもある。彼は、大衆というものを特定の人々の性質として定義した上で、それは超克できるもの、超克すべきものとして提示し、願っている。
大衆とは、個性を失って群衆化してしまった人々を指す。さらに言えば、近代社会の中で、自分自身のよりどころと -
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(2024/10/10 2h)
最相葉月『証し』を読み終え、著者について調べたら本書が出てきました。
2024年1月のNHK放送分をまとめたもののようです。
釈徹宗「人間と宗教のメカニズム」(『予言が外れるとき』)★★★☆☆
最相葉月「信仰に生きるということ」(『ニコライの日記』)★★★★★
片山杜秀「絶対的な「信じる心」と戦争の時代」(『大義』)★★★★☆
中島岳志「神はどこにいるのか」(『深い河』)★★★☆☆
宗教にまつわる書について、さまざまな視野から選ばれ、解説されています。
新興宗教と信者と信仰のメカニズムについて、正教の伝導について、天皇信奉(絶対観念)について、与格として -
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政治思想の研究者である中島先生と、現世田谷区長の保坂氏の対談本。
中島氏が評するように、保坂氏が他と異なるのは、1人の人物内にある与党性と野党性の同居。
保坂氏は社民党として初当選し、自社さ政権時に、当選1年目ながらに自民党の重鎮たちと政策論議を行ってきた。
そうした中で、当時の自民党幹事長の加藤紘一氏が、政策の各テーマに対して自民3人、社民2人、さきがけ1人の6人でユニットを作り、あえて多数決では決まらない熟議での政策決定の方法を執ったことが原体験と言う。そうした中で、加藤氏の、「保坂君が納得することに普遍性が宿る」という対立する立場の中でも熟議によって合意形成をする胆力のある与党政治家に触