あらすじ
「信じること」を解明する
「100分de宗教論」(2024年1月2日放送)が待望の書籍化!『予言がはずれるとき』『ニコライの日記』から『大義』『深い河』まで。豪華著者陣が名著の核心を読み解きながら、心理学やノンフィクション、政治学、文学といった「多角的な視点」で宗教をとらえる。新たな取材を加え議論を分かりやすく整理した決定版!
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Posted by ブクログ
宗教とは何かを考えるうえで参考になる名著を、4人の有識者がそれぞれ1冊ずつ紹介している本です。
どの章も非常にわかりやすく、宗教(的な考え方)の大事さも恐ろしさも感じさせてくれる作りになっています。
別の本で半分ファンみたいになっている釈徹宗氏の著作だったため購入。認知的不協和や自我防衛機制、成熟した宗教的人格について述べている同氏の章は、読んでいるだけで何だか安心感を覚える内容です。
―宗教はどうしても信じている人と信じていない人との境界を生み出します。その境界ができないようであれば、生きる力にもならないことでしょう。しかし、その境界を超える回路がどれだけ多様にあるか、そこが大切です。(釈徹宗)
―そこから見えてくるのは、「信じる/信じない」という境界がはっきりあるわけではないということです。それはどこまでもグラデーションになっていて、人はその狭間で揺れ動き続けるのでしょう。信仰は揺れ動く。しかし、それでも自分はそこから離れられないと思ったときに、信仰は「本物」になっていく。(最相葉月)
―宗教は倫理や道徳ではありません。かくかくしかじかだからこうなるのだと合理的に納得させられるとしたら、それは科学であって宗教ではないのです。言い方を変えれば、科学ではないから宗教と呼ばれ得るのです。信じるか信じないかです。(片山杜秀)
―「自分の意志で選んだわけではない」という思いが、彼にとっての神という存在の根本にあるのではないかと思うのです。大津にとって信仰とは、「私が信じる」といった主格的なものではなくて、「私に信仰がやってきてとどまっている」といった与格的なものだったのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
(2024/10/10 2h)
最相葉月『証し』を読み終え、著者について調べたら本書が出てきました。
2024年1月のNHK放送分をまとめたもののようです。
釈徹宗「人間と宗教のメカニズム」(『予言が外れるとき』)★★★☆☆
最相葉月「信仰に生きるということ」(『ニコライの日記』)★★★★★
片山杜秀「絶対的な「信じる心」と戦争の時代」(『大義』)★★★★☆
中島岳志「神はどこにいるのか」(『深い河』)★★★☆☆
宗教にまつわる書について、さまざまな視野から選ばれ、解説されています。
新興宗教と信者と信仰のメカニズムについて、正教の伝導について、天皇信奉(絶対観念)について、与格としての信仰について。
特に『大義』のほうは意外性もあり、面白い選書と思います。
4冊の解説を100余ページで読めるお得感がありました。
Posted by ブクログ
4人の作家がそれぞれ宗教についての学びの深い本を1冊ずつ取りあげて紹介・解説している本。とりわけ各章末の考察欄が非常によい。
「宗教は社会や家庭と対話を重ねながら価値観をすり合わせて共に成熟していくことが重要」
「宗教に対して疑いがあって当然、逆に100%疑いがない方が危うい」
「信仰は信じる・信じないの間で揺れ動くが、離れられないと思った時に本物になっていく」
「論理を超えた妄信があるからこそ宗教と呼ぶ。」
「宗教には体感できる非日常性がなければならない。」
「念仏とは与えられるもの(与格的)であり、自分の無力さに絶望し祈ろうという気さえ起きないようなときに初めて他力が開かれる」
要約すると以上のようなメッセージに集約されるが、どれも密度が高い。
私はこれまで論理的・科学的・心理学的・社会学的な目線から宗教を見てきたが、それを超えたトートロジーな部分こそが宗教たる所以であって、そこに功罪があることを知ったのは大きなパラダイム転換になった。
一筋縄ではいかない、多面性を持った「宗教」の本質に近づくことが出来る有意義な一冊だと思う。