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迫る衆院総選挙。行き詰まる自公政権の受け皿はあるのか。保守論客の中島岳志氏が、コロナ対策や多摩川の防災、下北沢再開発等の区政10年で手腕を振るう保坂展人・東京都世田谷区長と、理論と実践の「リベラル保守政権」待望論を縦横に語り合う。
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Posted by ブクログ
政治思想の研究者である中島先生と、現世田谷区長の保坂氏の対談本。 中島氏が評するように、保坂氏が他と異なるのは、1人の人物内にある与党性と野党性の同居。 保坂氏は社民党として初当選し、自社さ政権時に、当選1年目ながらに自民党の重鎮たちと政策論議を行ってきた。 そうした中で、当時の自民党幹事長の加藤紘...続きを読む一氏が、政策の各テーマに対して自民3人、社民2人、さきがけ1人の6人でユニットを作り、あえて多数決では決まらない熟議での政策決定の方法を執ったことが原体験と言う。そうした中で、加藤氏の、「保坂君が納得することに普遍性が宿る」という対立する立場の中でも熟議によって合意形成をする胆力のある与党政治家に触れてきたことで、自身の政治スタイルを確立したとも言っている。 また、これは本書の最後に記載があるが、小さい政党で与党に参画したことによって、対話する相手も格段にレベルが高い中で揉まれることが自身の成長や政治家としてのスタイルに繋がったとも後述している。 そうした中で、与野党を経験しながらも民主党政権後に、世田谷区長に立候補し、世田谷区長として10年以上区政を引っ張ってきている。今、「引っ張っている」という言葉を使用したが、中島氏の評するように、民主主義の中でのリーダーシップとは、スピード感をもってグイグイ引っ張るということではなく、時間をかける忍耐性でもあると言う。中島氏の保守思想にもあるように、人間は誤りを犯すという積極的諦念をスタート地点として、設計主義的に政権運営をするのではなく、人々から主体性を引き出し、それらを実現する手助けをするようなリーダーシップが、本来は求められている。保坂氏は下北沢の再開発や、各種討議事項においても、何十回と市民が集まり、熟議を行う会を開き、立場や意見を一度、度外視した上で、もう一度下北沢らしさとは、世田谷区らしさとは、ということを再帰的に考えた経験が、市民全体の政治リテラシーや満足度を引き上げているとも考えている。また、コロナの際には世田谷区モデルという対応策をいち早く構築し、過去からの霞が関人脈や政治家とのつながりも最大限に生かして、国政も動かしていく実行力も兼ね備えている。まさに理想的な区政のトップとしての振る舞いもある。 最後に印象に残ったのは、野党としての役割ということへの考え方で、特にコロナのような緊急時には与党は即時即応が原則となるため、野党はあえて数か月後や半年後を考えた世界中の知見収集や建設的な意見集約と与党への呼びかけが必要という言葉であった。政治に対してわかりやすさを求めるメディアの中で、与野党は長らく対立的なメッセージを強く打ち出してきたが、与野党のいずれも経験した保坂氏ならではの、与党と野党のお互いの価値の出し方という点が非常に建設的で感銘を受けた。こうした与党性、野党性は一般企業でも会社内の合意形成に非常に重要であるとも感じる。結果責任を負うリーダーはよほどではない限り、緊急時の即時即応のかじ取りをせざるを得ないからこそ、リーダーができないことを中長期、幅広いスパンであえて行うという棲み分けのポジショニングが非常に重要であると感じた。 政治がエンタメ化し、簡略化される世界の中で、保坂氏のような奥深く、複雑な事象を、複雑性を毀損せずに時間をかけて合意形成に至らしめるリーダーシップある政治家が、今後増えていくことを望んでやまない。
リベラルの反対は保守ではなくパターナルか、なるほど。そしてパターナルな与党のオルタナティブであるべき野党もまた規模の小さいパターナルになっている、という点にはこれもまたうなずける観点だった 今の体制にNOを攻撃的に突きつけたくなる。その方がカタルシスを感じられるからなのだろう 毎日のように流れて...続きを読むくるニュースを見聞きしているとその不可解さに攻撃的な言動をしがちである。だがこの本を読んでると自分の眉間の皺が緩まっていくのがわかる。 必要なのは時間をかけてでも対話しながら一緒に考えていく。民主主義を盾に強引に多数決という数の論理で押しきるんじゃついてこない
政治のことがわからないので勉強のために読みました。 世田谷区の保坂区長の実績を振り返りつつ、自公政権のオルタナティブになるには、野党なにが足りないかを考えるという内容でした。 印象に残ったのはパターナルvsリベラルとリスクの個人化vs社会化の2軸で政治のスタンスを整理する方法です。 自民のやり方は...続きを読むパターナルかつリスク個人化に分類されているので、本当は、野党が逆張りで代替案を提示すべきなんだ、ということを知ることができました。 保坂区長は区民との熟議を通して政策を考えたという話がありましたが、これはオードリー・タンの「傾聴」と同じスタンスだと思います。 また、不動産を公共財として使うという政策も、さまざまな書籍で語られているポスト資本主義を体現するものだと感じました。 自分はそんな価値観に共感できるので、この本で勉強した内容を頭に置きつつ、政治に参加していきたいと思います。
強いリーダーシップの一方的な決断ではなく、 「事態を正確に読み解く力」 「現場からの声を傾聴する力」 「自らと異なる主張や分析が正しければ受け入れる力」 というのが、本書を貫くテーマ。 具体的な実績を野党は、というけれど、 与党も何も出来ていないのでは?
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