中島岳志のレビュー一覧

  • 保守と立憲 世界によって私が変えられないために

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    保守と立憲 中島岳志

    昨年、『リベラル保守宣言』を読んでから、中島先生の本を読み漁っている。共著である『利他とは何か』と含めると、本書は8冊目にあたる。中島先生の言う、保守思想というものは非常に納得感がある。本書でも、その他の書籍と同様に、保守主義について、「人間の無謬性への懐疑主義的な人間観」と定義する。人間は道徳的にも能力的にも不完全であり、罪や悪から完全に開放されることはない。そのため、完全な社会等作りえない。そのため、保守は理性の外科医を理性的に把握する。理性はいかなる時代においても無謬の存在ではない。人はいかに合理的に行動しようとしても、過ちや失敗を繰り返す。社会は想定外のことが起

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    2023年12月04日
  • 保守と大東亜戦争

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    116ページ
    田中美知太郎と反時代精神のところ。
    民主政治は、「劣悪者」を指導者に選ぶと、途端に「最悪の独裁政治に転化」してしまいます。そして、独裁政治は「組織の末端において愚劣さは倍加される」ため、国民はさらに劣悪な状況に置かれることになります。


    戦争中に声高に「国体」を叫んだ人間と、戦後に「平和」を叫ぶ人間が同根の存在であると認識し。その両者からの距離をとることを言論の核と据えました。118ページ。

    林健太郎1968年全共闘と対峙した東大文学部長
    歴史修正論争歴史認識論争は1993年頃から始まっており、様々に力強く日本の侵略戦争であることから目を逸らすなと論争を冷静に繰り広げた。

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    2023年10月11日
  • 保守と立憲 世界によって私が変えられないために

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    保守とは何か、という点が極めて分かりやすく痛快に論じられている。

    リベラルと保守を対立構造で理解しがちだが、リベラルの対義語はパターナル(父性的)である。そのため、左が革新(リベラル)で右が保守という認識の仕方は改めた方が良いだろう。

    保守という政治的立ち位置とは何か、という観点から日本の政治を観察する姿勢を学べる。

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    2023年10月10日
  • 「利他」とは何か

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    そうそうたる顔ぶれがそれぞれに「利他」について説いているんだけど、何となく見えてくるものがある。特に、伊藤亜紗と中島岳志の利他論に学ぶところが大きい。すなわち……。
    利他とは、人のためになることのようなとらえ方が一般的だと思うけど、それを意識的にするのは「利他」ではない。何らかの気持ちのメカニズムが働くにせよ、本人的には説明がつかないうちに、自分のためでなく動いてしまうことが利他なのだ。
    一生懸命に利他的なよき人物であろうなどと努めてしまうが、そんなことを考えているうちはまだまだということだろう。考えてみれば、利己的な言動だってわざとそうしているのではなく、自然とそうしてしまうからこそ利己的な

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    2023年08月15日
  • テロルの原点―安田善次郎暗殺事件―(新潮文庫)

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    寂しさというものがテロを起こさせるのか。どう見ても、本人が悪いと三者的には感じるが、本人はそんな気もないのだろう。 
    そんな中、文庫版あと書きで元首相銃撃に関して「社会を変えるには、こんな手があったか」という声が書かれていた。恐ろしいベクトルだ。自分として、周りの人が少しでも良い状況でいられるようにつとめたい。

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    2023年04月28日
  • テロルの原点―安田善次郎暗殺事件―(新潮文庫)

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    テロルの原点 安田善次郎暗殺事件 
    中島岳志

    凄い本を読んでしまった。少なくとも2023年では暫定1位である。
    個人的に、今年の年始にタモリが番組内で「2023年はどのような年になるのでしょうか」と聴かれた際に、「新しい戦前になるのではないでしょうか」と発言したことが、ずっと印象に残っている。
    そうした中で、今年に入ってから同じく中島岳志氏の『血盟団事件』、小島俊樹氏の『五・一五事件』、そして本書を手に取った。なぜなら、新しい戦前の起点をどこにするかということの参照点は、やはり私自身も安倍首相の銃撃事件にあり、1930年代のテロリズムの脅威と、この事件に重なりを見出さざるを得ない。
    私自身、

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    2023年03月27日
  • 石原慎太郎 作家はなぜ政治家になったか

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     日本語表現・分かりやすさ3/3。内容の価値3/3。
     「幾度もの挫折の末に、彼がたどり着いたのはナショナリズム」(p,113)は、少し違うと思う。たどり着いたのは政治家という仕事であり、それをやっていくための芸風がナショナリズムである。
     参院選に初めて出て当選したのが68年。その2年前に肝炎で入院しているが、絶対安静でありながらベッドに身を起こして原稿を書いていたという。何故かといえば、そうでもしないと食えない、そういう仕事をしているから。この時彼は34歳ぐらいのはずで、経済的な意味での将来への不安は大きかったであろう。人間30代で仕込みを終わらせておかなければ、40代50代で楽に大きく稼

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    2023年02月03日
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

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    2023/02/03
    【感想】
    日本に蔓延している“閉塞感”の原因について、最近考えている。その中で、似て非なるものを混同してしまっている現状を感じていた。
    この本では、言葉とコトバ、命といのちは異なるというスタンスから始まる。どちらも前者はとても記号的で無機質なように感じる。
    「コスパ」なんて言葉がもてはやされ、遂には「タイパ」という言葉も耳にするようになった。そんな社会では、殺伐としてしまうのもやむを得ないなぁ、なんて考えた。

    この本を読んでいて一番思考したことの一つは「寛容さ」だ。この寛容さを考えたときに、最もしっくりした例えは“おみそ”だ。
    子供の頃、友達の弟や妹たちと一緒に遊ぶとき

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    2023年02月03日
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

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    正月から良い読書体験ができた。信頼関係のある二人の対談集なので相補的に「コトバ」豊かな内容が広がっている。取り上げられたリーダーは、聖武天皇、空海、ガンディー、教皇フランシスコ、そして大平正芳。大平氏は「アー、ウー」の人というイメージだが、その「アー、ウー」に「コトバ」を生み出す思索があるというのは言い過ぎな感じもするが、氏の生き様も踏まえての評価では理解できた。ともに利他の研究家であるが、「利他というのは、自分が受け手になった時に始まる」「意識して利他の発信者になろうとすることは、逆に利他の暴力になる可能性が大きい」というのは日々の日常臨床では感じるところ。「いのちの政治学」というのは「私の

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    2023年01月08日
  • 自分ごとの政治学

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    氏の手になる、新聞や雑誌への寄稿は、なるべく目を通すようにしている。鋭く的確な時評も多く、新たな視点を獲得できる可能性が高いから。そんな彼による、基本的な政治のはなし。面白くない訳がない。単純に右か左かって割り触れるものではなく、その中にもグラデーションが存在する。それは多分、当たり前のことなんだけど、上手く言語化して分かりやすく提示されている。

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    2022年11月29日
  • 自分ごとの政治学

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    日本は小さすぎる政府?
    ガンディーのスワデーシーとスワラージ
    死者を背負うということ「われわれは死者を会議に招かなければならない。」

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    2022年10月30日
  • 保守と大東亜戦争

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    ネタバレ

     私が戦争の歴史認識をする上でバイブルにするかもしれない一冊である。 革新右翼が軍国主義を生み扇動して、軍部が日本を破滅に導いた。 軍国主義も戦後の共産主義も大衆の熱狂と言う意味でコインの裏表であること。 海軍も陸軍統制力を強めるためサディストによるリンチがあったこと。 そして軍人的断言法による言葉を奪うことによる絶対的服従が行われていた。 戦場では大本営の場当たり的な判断で日本軍が狂気になっていたこと。 アジア諸国の欧米の植民地からの解放は成り行きにすぎずこれは私見だが 日本はアジア諸国を沖縄の基地のごとく扱っていたこと。 アジア諸国に対して主従関係を確立しておいて人種差別の抵抗とは言えない

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    2022年10月12日
  • 「利他」とは何か

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    ずっと以前から、私が求めていたものは利他だったんだなぁとわかった。
    小さい頃から「意志が弱い」ことがコンプレックスだったけど、むしろその「余白」が私には力になっていたのかもしれない。

    状況に身を置き、そこから生まれる力にほだされて、気づいたら動いてしまってきた。
    「そうやって仕事増やして、自縄自縛してる」
    これも真実だろうけど、それは「だから私はダメなんだ。バカ」ということに帰するのではない。
    そもそも、状況に流されてまとまりがつかなくなったという物語の帰結で私をマイナス評価する必要なんてないのに、そういう気持ちにさせられてしまうのはなぜなのか。
    他者から受ける評価への恐れ、かな。

    もっと

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    2022年03月29日
  • 「リベラル保守」宣言

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    本当のリベラル、保守とは何なのかよく考えさせられる。なんでもかんでも、右なのか左なのかラベリングすることだけに執着し、思想や立場の本質を忘れがち。

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    2022年02月22日
  • 自分ごとの政治学

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    昔学んだ知識ではどうにも世の中が理解できないなぁという、まさに学び直したい私にピッタリの「きほん」が、丁寧に書かれている本。

    言った者勝ちのような、主張の強さが押し切られてしまうような世の中で、この先の社会はどうして行けば良いのか、ものすごく大切なヒントを頂けた気がします。

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    2022年01月14日
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

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    「大切な思いが『言葉』にならないことって、私たちにはよくあると思います。『言葉』にならないからといって、その思いが存在しないというわけではありません。時に沈黙の方が雄弁であることさえあります。」

    政治は観察するものではなく参与するもので、今の私たちはその参与意識が極めて低いのだと2021年最も強く感じたことだった。リーダーが変わってもそれを選ぶ私たち自身が変わらなければ何一つ問題は解決されないのだ、受け手側に問題があるのだ、と知ることができた。

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    2022年01月06日
  • 別冊NHK100分de名著 ナショナリズム

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    どの本もとても示唆に富んだもの。各解説者も深い考えを持っていて、大変勉強になりました!番組も含めオススメです

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    2021年12月08日
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

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    行政には、楕円形のように二つの中心があって、その二つの中心が均衡を保ちつつ緊張した関係にある場合に、その行政は立派な行政と言える。      大平正芳 
    (引用)いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている、著者:中島岳志、若松英輔、発行所:株式会社 集英社クリエイティブ、2021年、253

    本来、危機的な状況に陥ったとき、一国のリーダーの発する言葉は、とても重たいはずだ。時としてリーダーは、新型コロナウイルス感染症拡大時における都市封鎖(ロックダウン)や飲食店の営業時間短縮要請など、国民に対して厳しい措置を取らなければならない。いや、国民への影響だけに留まらない。一国のリーダーであれば

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    2021年12月04日
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

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    なかなかの良書です。リーダーの言葉が重要視されるなか、自らの言葉で語り、統計上の「命」ではなく一人ひとり「いのち」に向き合った人物として、①聖武天皇、②空海、③ガンジー、④聖フランシスコ、⑤大平正芳、を取り上げて論評しています。
    コロナ禍での独・メルケル首相の演説はつとに有名ですが、(原稿の棒読みではなく)こうした言葉が出てくるのは、「無私」であり他者の痛みが分かったうえでの「利他」であると論じています。
    いずれの人物についても、歴史背景や文献・原典を精緻に考証しており、良心的な記述の読後感は「清涼感」という印象です。「終章」の結論として、「すべてのいのちを生かすために重要なのがリーダーの選び

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    2021年11月11日
  • 自分ごとの政治学

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    読みやすい、わかりやすい、スラスラ読めるけど私たちの生活や今の社会を思い浮かべながら読むことができる。
    私にとって、特に「ガンディー」のところや、「死者」のところは新しい見方でした。

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    2021年11月06日