中島岳志のレビュー一覧

  • 別冊NHK100分de名著 ナショナリズム
    100分de名著シリーズ、コンパクトに物事の争点が把握できるので(深さとか、広さについて異論はあるでしょうが)、いいですよね。「ナショナリズム」という概念、私には、なかなか把握の難しい代物で、理解するためにいろいろと試行錯誤が必要でした。まだ、考えはまとまっていないものの、この一冊は、視点を与えてく...続きを読む
  • 別冊NHK100分de名著 メディアと私たち
     私たち自身がどのような視点やバイアスを持ってメディアやネットの情報に接しているかを考えさせられる。特に日本人特有の「空気」について論じた『「空気」の研究』に興味を持った。戦艦大和の出撃が決定された「空気」や、身近なものでは会社の会議で最高決定権を持つ人の発言への忖度など、個人の意思に反していても集...続きを読む
  • 保守と立憲 世界によって私が変えられないために
    保守と立憲 中島岳志

    昨年、『リベラル保守宣言』を読んでから、中島先生の本を読み漁っている。共著である『利他とは何か』と含めると、本書は8冊目にあたる。中島先生の言う、保守思想というものは非常に納得感がある。本書でも、その他の書籍と同様に、保守主義について、「人間の無謬性への懐疑主義的な人間観」と...続きを読む
  • 保守と大東亜戦争
    116ページ
    田中美知太郎と反時代精神のところ。
    民主政治は、「劣悪者」を指導者に選ぶと、途端に「最悪の独裁政治に転化」してしまいます。そして、独裁政治は「組織の末端において愚劣さは倍加される」ため、国民はさらに劣悪な状況に置かれることになります。


    戦争中に声高に「国体」を叫んだ人間と、戦後に「...続きを読む
  • 保守と立憲 世界によって私が変えられないために
    保守とは何か、という点が極めて分かりやすく痛快に論じられている。

    リベラルと保守を対立構造で理解しがちだが、リベラルの対義語はパターナル(父性的)である。そのため、左が革新(リベラル)で右が保守という認識の仕方は改めた方が良いだろう。

    保守という政治的立ち位置とは何か、という観点から日本の政治を...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    そうそうたる顔ぶれがそれぞれに「利他」について説いているんだけど、何となく見えてくるものがある。特に、伊藤亜紗と中島岳志の利他論に学ぶところが大きい。すなわち……。
    利他とは、人のためになることのようなとらえ方が一般的だと思うけど、それを意識的にするのは「利他」ではない。何らかの気持ちのメカニズムが...続きを読む
  • テロルの原点―安田善次郎暗殺事件―(新潮文庫)
    寂しさというものがテロを起こさせるのか。どう見ても、本人が悪いと三者的には感じるが、本人はそんな気もないのだろう。 
    そんな中、文庫版あと書きで元首相銃撃に関して「社会を変えるには、こんな手があったか」という声が書かれていた。恐ろしいベクトルだ。自分として、周りの人が少しでも良い状況でいられるように...続きを読む
  • テロルの原点―安田善次郎暗殺事件―(新潮文庫)
    テロルの原点 安田善次郎暗殺事件 
    中島岳志

    凄い本を読んでしまった。少なくとも2023年では暫定1位である。
    個人的に、今年の年始にタモリが番組内で「2023年はどのような年になるのでしょうか」と聴かれた際に、「新しい戦前になるのではないでしょうか」と発言したことが、ずっと印象に残っている。
    ...続きを読む
  • 石原慎太郎 作家はなぜ政治家になったか
     日本語表現・分かりやすさ3/3。内容の価値3/3。
     「幾度もの挫折の末に、彼がたどり着いたのはナショナリズム」(p,113)は、少し違うと思う。たどり着いたのは政治家という仕事であり、それをやっていくための芸風がナショナリズムである。
     参院選に初めて出て当選したのが68年。その2年前に肝炎で入...続きを読む
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている
    2023/02/03
    【感想】
    日本に蔓延している“閉塞感”の原因について、最近考えている。その中で、似て非なるものを混同してしまっている現状を感じていた。
    この本では、言葉とコトバ、命といのちは異なるというスタンスから始まる。どちらも前者はとても記号的で無機質なように感じる。
    「コスパ」なんて言葉...続きを読む
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている
    正月から良い読書体験ができた。信頼関係のある二人の対談集なので相補的に「コトバ」豊かな内容が広がっている。取り上げられたリーダーは、聖武天皇、空海、ガンディー、教皇フランシスコ、そして大平正芳。大平氏は「アー、ウー」の人というイメージだが、その「アー、ウー」に「コトバ」を生み出す思索があるというのは...続きを読む
  • 自分ごとの政治学
    氏の手になる、新聞や雑誌への寄稿は、なるべく目を通すようにしている。鋭く的確な時評も多く、新たな視点を獲得できる可能性が高いから。そんな彼による、基本的な政治のはなし。面白くない訳がない。単純に右か左かって割り触れるものではなく、その中にもグラデーションが存在する。それは多分、当たり前のことなんだけ...続きを読む
  • 自分ごとの政治学
    日本は小さすぎる政府?
    ガンディーのスワデーシーとスワラージ
    死者を背負うということ「われわれは死者を会議に招かなければならない。」
  • 保守と大東亜戦争
     私が戦争の歴史認識をする上でバイブルにするかもしれない一冊である。 革新右翼が軍国主義を生み扇動して、軍部が日本を破滅に導いた。 軍国主義も戦後の共産主義も大衆の熱狂と言う意味でコインの裏表であること。 海軍も陸軍統制力を強めるためサディストによるリンチがあったこと。 そして軍人的断言法による言葉...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    ずっと以前から、私が求めていたものは利他だったんだなぁとわかった。
    小さい頃から「意志が弱い」ことがコンプレックスだったけど、むしろその「余白」が私には力になっていたのかもしれない。

    状況に身を置き、そこから生まれる力にほだされて、気づいたら動いてしまってきた。
    「そうやって仕事増やして、自縄自縛...続きを読む
  • 「利他」とは何か
    荒木博之のbook cafeで紹介されたものを偶然拝聴し、「利他」の在り方を本書で触れてみたいなと思い、手に取ってみた。総じて、利己的な利他へ陥ることへの警鐘と。「うつわ」としての自己からさらに上位へと昇華したものとの関わりからの達観した感覚を受け取りました。

    第一章 「うつわ」的利他 - ケアの...続きを読む
  • 「リベラル保守」宣言
    本当のリベラル、保守とは何なのかよく考えさせられる。なんでもかんでも、右なのか左なのかラベリングすることだけに執着し、思想や立場の本質を忘れがち。
  • 自分ごとの政治学
    昔学んだ知識ではどうにも世の中が理解できないなぁという、まさに学び直したい私にピッタリの「きほん」が、丁寧に書かれている本。

    言った者勝ちのような、主張の強さが押し切られてしまうような世の中で、この先の社会はどうして行けば良いのか、ものすごく大切なヒントを頂けた気がします。
  • 「利他」とは何か
    近代的な「主体」を前提とした「利他」は利己の変奏に過ぎない。では、利他がたちあがる場とはどのようなものか。そのことを5人の論者がそれぞれのフィールドに引きつけて読者にわかりやすく説いてくれている。5人話はどれも本当に面白い。
  • いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている
    「大切な思いが『言葉』にならないことって、私たちにはよくあると思います。『言葉』にならないからといって、その思いが存在しないというわけではありません。時に沈黙の方が雄弁であることさえあります。」

    政治は観察するものではなく参与するもので、今の私たちはその参与意識が極めて低いのだと2021年最も強く...続きを読む