川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“「わ、わたしも、遠近両用にできないんですか」
勢いこんで聞くと、お店の人は重々しく頭をふり、
「残念ですが、お客さまは、遠くを見る時は左の目しか使っていらっしゃらないし、近くを見る時には右の目しか使っていらっしゃらないのです。遠近両用にしても、無駄なのでございます」
と、きっぱり答えるのだった。
す、すると、わたしはいつも片目でしか世界を見ていなかったのか!?
ころびやすいのも、すぐに部屋の中のものにぶつかってあざをつくりやすいのも、すべてそのせいだったのか!?
生まれて初めて知るその事実に、大ショック。”[P.16_無駄なのでございます。]
これは本当かなぁ嘘かなぁとぼんやり思いながら読 -
Posted by ブクログ
“六月某日 曇
携帯電話が鳴る。
いさんで通話ボタンを押し、「もしもし」と、自負に満ちた気持ちで言う。
「あの、今国分寺の踏切を渡ったところなんですけど、法事、大丈夫ですか」相手が言う。
国分寺。踏切。法事。まったく覚えのないことばかりで、驚愕する。
「あの、どちらにおかけですか」
「は?カワダさんですよ?」
もしかするとわたしは本当はカワダという名字で、今日は法事の日で、今すぐ国分寺の踏切まで行かなければならないのではないかと、恐れおののく。
居ながらにして。
携帯電話を握りしめながら、つぶやく。やはり携帯電話は、怖いものなのだった。”[P.20_居ながらにして。]
3巻目。
日記と称しつ