川上弘美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“「わ、わたしも、遠近両用にできないんですか」
勢いこんで聞くと、お店の人は重々しく頭をふり、
「残念ですが、お客さまは、遠くを見る時は左の目しか使っていらっしゃらないし、近くを見る時には右の目しか使っていらっしゃらないのです。遠近両用にしても、無駄なのでございます」
と、きっぱり答えるのだった。
す、すると、わたしはいつも片目でしか世界を見ていなかったのか!?
ころびやすいのも、すぐに部屋の中のものにぶつかってあざをつくりやすいのも、すべてそのせいだったのか!?
生まれて初めて知るその事実に、大ショック。”[P.16_無駄なのでございます。]
これは本当かなぁ嘘かなぁとぼんやり思いながら読 -
Posted by ブクログ
“六月某日 曇
携帯電話が鳴る。
いさんで通話ボタンを押し、「もしもし」と、自負に満ちた気持ちで言う。
「あの、今国分寺の踏切を渡ったところなんですけど、法事、大丈夫ですか」相手が言う。
国分寺。踏切。法事。まったく覚えのないことばかりで、驚愕する。
「あの、どちらにおかけですか」
「は?カワダさんですよ?」
もしかするとわたしは本当はカワダという名字で、今日は法事の日で、今すぐ国分寺の踏切まで行かなければならないのではないかと、恐れおののく。
居ながらにして。
携帯電話を握りしめながら、つぶやく。やはり携帯電話は、怖いものなのだった。”[P.20_居ながらにして。]
3巻目。
日記と称しつ -
Posted by ブクログ
“十二月某日 曇
コンビにに年賀状を取りにゆく。
がんばって書いてね、と、コンビニのおばさんに言われる。今年もあと二日しかないから、心配してくれているのである。
ええまあ、と心細そうに答えると、おばさんは顔をのぞきこんできた。
ほんとにがんばるんだよ。ものすごく暖かな声で、はげましてくれる。
ありがたくて、涙がにじんでくる。年末は寒さのせいか、涙腺がゆるんで、困る。”[P.44_ぽそ。]
2巻目。
ぼんやりと読む。
“二月某日 曇
数日前からこどもがインフルエンザにかかっている。うつるかな、うつるかな、とびくびくしていたら、案の定うつった。
午前中、まだ熱がなくて寒けだけの時にマーケットに -
Posted by ブクログ
子供がいても女っけたっぷりの母親と、
子供も大人として扱う凛々しい祖母と暮らす高校生の男の子、翠くんの恋と友情と少しおかしな家庭の事情を描いたお話。
何でもフツーと答える翠くん。
心の中はボキャブラリーが豊富なのに、自分の気持ちはうまく言えない翠くん。
自由になることは高校生の大きなテーマだね。
大人の事情に振り回されて、仕方がないと納得しつつもどこか不満を抱えて早く大人になりたいという気持ち。
平坦を好んでるような翠くんとその友人が、長崎の島で 夏休みを過ごして成長していくところでいきなりよくある青春小説になり驚いた。
ラスト、意外と普通に収まってしまったような…。
前半と後半で別の